もぐもぐもぐ
「・・・はぁ。魚ってこんなに美味しいものだったのね。」
棒に刺し、火であぶって作った焼き魚をマスターと一緒に頬張る。
(カワウソの近くにも1匹置いたら、す巻きのまま凄い勢いで食べ始めた。賠償なんて言わずに素直に頼めばいいのに。)
塩味が足りない気がしたけど。
腹ペコの身には染みて、美味しかった。
マスターも相当お腹が空いてたみたいで、眼に薄っすら涙を浮かべて喜んでる。
心なしか顔色も良くなっていた。
思えばマスターは痩せすぎな気がする。
カルデアスの中で離れないよう抱きついた時も、腰に楽に腕が回っちゃったし。
もっと食べた方が良いんじゃないかな?
「マスター、足りなかったら言ってね?獲ってくるから。」
「ふふ。ありがとうコンラ。でも、もう十分よ。」
微笑うマスターの姿に心が温かくなる。
危うく助けそこねるところだった俺の事を、快く許してくれたマスターは本当に優しい人だ。
この優しい人にもっと微笑って欲しい。
俺はそう思った。
食事を終え、服と体が乾いたのを確認していると。(体を拭く時にマスターが貸してくれたハンカチも乾いてた。うん。やっぱり俺のマスターは優しい!)
カワウソが芋虫みたいな動きで近寄って来た。
《腹いっぱいではないが、それなりに満たされた。礼を言うぞ。》
「あ、どういたしまして。」
文句を言われるかと思ったらお礼を言われた。
このカワウソ、実はそこまで性格悪くないのか?
さすがに気が咎めてきたので拘束を外すと、カワウソはググッと猫みたいに伸びをした。
そして素早い動きで腕を駆け上がり、俺の肩に乗る。クンクンと何故か匂いを嗅がれた。
《小童、お主はちと変わったサーヴァントの様だな。魔力の流れからして・・そこの娘がマスターか。》
「え?そう、だけど・・。」
凄いなコイツ。
あっという間に色々と看破した。
ただのカワウソじゃないのは明白だけど、一体何者なんだ?
俺の問いに、カワウソはヒゲを撫でながら答える。
《ワシか?ワシはキャスタークラスの英霊だ。とある理由でカワウソに姿を変えているのだ。》
「へぇー。じゃあ、元は人間なんだ?」
《うむ。これでも生前は魔法使いの端くれだったのだぞ!》
コイツ、父さんと同じキャスタークラスなのか。
一気に親近感が湧いて。
好奇心から体を撫でようとしたら、ガブッと指に噛みつかれた。(手加減したみたいだけど痛かった!ちょっと血が出たぞ!)
牙をむいてシャーッと威嚇される。
《人間だと言っとるだろうがっ!人を
「だからって噛みつかなくてもいいじゃん!」
「・・・コンラ。そのカワウソって。」
ハッ!そうだった。
カワウソが何言ってるかわかるのは魔眼を持ってる俺だけなんだ。
マスターをのけ者にしてしてしまった!
俺は慌ててマスターに説明しようとして。
「ーーー人間の言葉をしゃべってない?」
「・・へ?」
《ほぉ・・》
その言葉に驚き、目を丸くした。
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どうやら俺と魔術回路が交じり合っている影響で。マスターも《
「まさかカワウソと話す日が来るだなんて・・。」
《さっきも言ったが、外見はカワウソでも中身は人間だからな。》
こめかみを押さえるマスターに釘を差す
事情を聞くと、この特異点(フランスだった)に抑止力によって召喚されたらしい。
でも早々にワイバーンの大群に襲われたので、この森に逃げ込み。
数日の間カワウソに変身して身を隠していたところ。魔力が足りなくなってきたので食事で補おうと魚を狙って湖に入ったら。
「俺と遭遇して捕まった、と。」
《うむ。その通りだ。》
「ワイバーンって・・何でフランスに竜種がいるのよ!?最悪じゃない!」
動揺するマスターいわく、ワイバーンは《竜種》ていう特別な種族で。
妖精とか魔獣の総称《幻想種》の中でもかなり強い力を持つ生き物らしい。
つまりその強いワイバーンがこの特異点には沢山いると。(これは確かにヤバイ)
「って云うことは、そのワイバーンがこの時代のフランスに異変を起こしてる原因なのかな?」
「まず間違いないでしょうけど・・ワイバーンが大量にいるって事は。きっとその生みの親のドラゴンもいるって事よね。ああもう!この特異点いきなりハードル高すぎっ!!」
《ワシにキレられても困るんだが。
というか、お主らこそ何者だ?この特異点という事は、他にもこの様な異変が起きている場所があるという事か?》
「あ、うん。実はね・・」
俺とマスターで人理焼却の事、カルデアの事、俺達が特異点を旅して人理修復をしようとしている事を説明した。(あと、俺達がカルデアと別行動している理由もざっくり話した。)
《神か・・。》
爺ちゃんの事を聞いた途端、忌々しげな口調になったカワウソもといマルちゃん(教えてもらった名前が呼びづらかったから略した)に俺は首を傾げる。
「もしかしてマルちゃん。爺ちゃんの知り合いだったりする?」
《マルちゃ!?・・・まぁ、いいか。
お主の祖父など知らん。ただ生前に神と少しばかり因縁があってな。》
「因縁?」
《息子を殺された。》
予想以上に重い内容に思わず口を閉ざす。
そんな俺に気にするなとマルちゃんは器用に肩を竦めてみせた。
《それ以来、神は嫌いだ。
だが、その神以上に生前のワシはクズだったのでな。神の孫であるお主に八つ当たりで害を成そうなど思っておらんから安心しろ。》
「いや、別にそんな心配はしてないけど。」
「さっきの名前、絶対に聞いた事あるわ!
くぅ・・でも思い出せない!マシュ。あの子が居れば一発なのに!!」
まさかの「自分クズでした」発言に戸惑う俺。
その横ではマスターがさっきからマルちゃんの名前を必死に脳内検索している。
マルちゃんはそんなマスターの様子を複雑そうに見て、次に俺に視線を戻した。
《ところで、お主らはこれからどうするつもりだ?》
「え?それはもちろん。
《そのドラゴンがどこにいるかわかるのか?》
「あ・・。」
俺と(脳内検索を中断した)マスターとで相談し。情報収集をする為に、森を抜けて人のいる場所へ行く事にした。
そしたらマルちゃんもついて来てくれる事になった。
「もう日も傾いてるし。暗い中、森を移動するのは危険だから今夜はここで野宿しましょう。
日が昇ったら出発よ。」
「うん。わかった!」
《ならば、ワシが見張りをしよう。》
生身のマスターと疑似サーヴァントである俺には睡眠が必要だ。
その俺達の事情を知るマルちゃんは自分から見張り&焚き火の番を申し出てくれた。
「ありがとうマルちゃん!」
《その代わりまた魚を獲ってきてくれんか。さっき補給した分の魔力がもう切れそうだ。》
「術を解いて人間に戻ればいいじゃない。多少は魔力の減りが抑えられる筈よ?」
《そうしたいのはやまやまだが。人間に戻ればワイバーンの大群がここに押し寄せてくるのでな。》
「・・どういうこと?」
《ヤツらにワシは嫌われておってな。人の姿だと匂いを感知して追いかけてくるのだ。》
「嫌われてるって・・・マルちゃん。なんかワイバーンに恨まれるような事したの?」
《ーーーまあ。そんなところだ。》
どこか自嘲を含んだ声色でマルちゃんは呟き、俺の肩から下りる。
もうこれ以上話すつもりはないらしい。
俺とマスターは顔を見合わせた。
「はぁ・・悪いけど。また獲ってきてくれる?」
「うん!任せて。」
マスターの言葉に俺は頷き。
本日二度目の素潜りの準備を始めた。
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※今回は魚を食べただけで終わりました。
そしてワイバーンにまで影響が出るとか。
マルちゃんはどんだけ息子に嫌われてるんだろうか・・。