藤丸立香視点
世の中って何が起こるかわからない。
それを今現在、私こと藤丸立香はリアルに体感していた。
カルデアに行ったら爆発が起きて。
この燃える街に強制レイシフトされて。
デミなんたらに変身したマシュのマスターになってた。
怒涛の展開に正直頭がついていかない。
けど、可愛い後輩を死なせたくないから頑張らないと!
こんな陰気な場所で死にたくないし!
話は変わるけれど。
私達は今、とある学校の保健室で休息をとっている。
外には骸骨みたいな化け物がウヨウヨしていて。
その骸骨との戦いで疲労困憊のマシュと、同じくレイシフトされた所長がベットに倒れている。
寝てはいないけれど、精魂尽き果てて立ち上がる気力もないみたい。
運動部入っててよかったな私。
体力だけは人一倍あったからなぁ。
何故か友達からはよく人間をやめてるって言われたけど。
・・・・・それにしても遅い。
あの子、大丈夫かな?
私は食料がないか探してくると保健室から出て行った男の子に思いを馳せる。
止める間もなく一人で出て行っちゃったから心配だ。
所長を助けてくれたし、何度か一緒に戦ったから強いのは知ってるんだけど。
記憶喪失だからか、なんか危なっかしい感じがするんだよね。
不安を抱きながらそんなことを考えていると、ロマンが慌てて通信を繋いできた。
《みんな気をつけてくれ!
いま急に君達の近くにサーヴァント反応がーー》
「よっと!邪魔するぜ。」
ロマンの通信を遮って、窓から杖を持った男の人が入ってきた。
「ええぇっ!?どちら様ですかーっ!!?」
「俺か?俺はキャスターのクー・フーリンだ。
よろしくな嬢ちゃん。」
「あ、どうも。藤丸立香です。」
「何やってるんですか先輩!?
下がってください!」
「あんた何なの!?馬鹿なの!!?」
失礼な。
挨拶されたら返すのはマナーです。
保健室に侵入してきたキャスターことクー・フーリン。
警戒しながらも話を聞くと、彼は味方だった。
彼いわく、この特異点ではもともと聖杯戦争を行なっていた。
しかし何の前触れもなく街は炎に包まれ、人は消え、化物が溢れだした。
残されたサーヴァントは彼とバーサーカーを除き、全てセイバーというサーヴァントの配下になってしまったという。
「セイバー、アーチャー、バーサーカー以外のヤツらはどうにか倒したんだが。
あいつらと殺り合うにはキャスタークラスは不利でな。
どうするか頭を悩ませていたところにーーー」
「私達が現れた、ということね。
なるほど・・・利害は一致するし、こちらとしてもアナタほどの英霊が味方になってくれるのなら心強いわ。」
「所長。それではーーー」
「ええ、協力関係を結びましょう。」
「やった!よろしくね、キャスター!」
「よろしくお願いします。キャスターさん。」
「おう。よろしく頼むぜ、マスターと嬢ちゃん!」
差し出した私の手を握りキャスターはニカリと笑った。
私はその笑顔に、ふとあの男の子を思い出した。
あれ?
キャスターってあの子になんか似てる気がする。
その事を当人に聞こうか迷っていると、彼が誰かを探すようにグルリと部屋の中を見回した。
「ところで・・・一緒にいた坊主はどこ行った?
霊体になってるわけじゃねぇみてぇだが。」
「えっ?キャスターはあの子のこと知ってるの?」
聞くと、私達の実力を測る為にここまでの道中を観察していたらしい。
えぇーー。
それってつまり、実力がなかったら見捨てるつもりだったってことだよね?
所長が青筋を浮かべて文句を言いたそうにしていたので、話がややこしくなる前にマシュに止めてもらった。
気持ちはわかるけど、今は我慢だよ所長!
「アイツは聖杯戦争には参加してなかったはずだ。何でこんな所にいやがる?」
「私達にもわからないんです。
彼も気づいたらこの街にいたと言っていました。」
《・・・もしかしたら、カウンターかもしれないね。》
「ロマニ?カウンターって、抑止力のこと?」
《うん。聖杯に関わっていないなら抑止力に喚ばれた可能性が高いと思う。
人理の危機にアレが動かないなんてことありえないし。》
「そうね。・・・あの子が記憶を失った事とも関係あるのかしら?」
《うーん。そこまではなんともーーー》
「おい。ちょっと待て。」
急にキャスターの纏っていた空気が変わった。
「キャスター?」
「・・・あんた。記憶がないって言ったか?」
「言ったけど、何なのよ急に。」
「つまりアイツは今、生前の事を何にも覚えてねぇってことか?」
「そうよ。私と出会った時にはすでに記憶を無くしていて。自分の名前もわからないって言ってたわ。」
「マジかよ・・くそ!
どうりで戦ってる時の動きがおかしいと思ったぜ!!」
キャスターは苛立たしげに頭を掻き、舌打ちした。
何だろう?
あの子の記憶がない事に、キャスターは酷くショックを受けているみたいだ。
でも、これで彼とあの子が顔見知りだということがわかった。
「ねぇ、キャスター。
キャスターはあの子と知り合いなんだよね?
あの子は誰なの?」
「アイツはーーー」
その言葉の続きは、突然響いた爆発音によってかき消された。
校舎全体がガタガタと揺れ、棚から物が落ちる。
「ちょっとロマニッ!何が起こったの!?」
《あぁ!サーヴァント反応が新たに一つ!
校舎裏だ!話に夢中で気づかなかった!!》
「仕事してくださいドクターッ!!」
「ごめん!って、まずい!?
あの子が現れたサーヴァントと戦ってる!!」
「ーーーッ!!」
「あっ!キャスターッ!!」
ロマンの言葉に、キャスターは目を見開き弾かれように駆け出した。
私達も慌ててその後を追いかける。
お願い!
どうか無事でいてっ!!
私は全力で廊下を走りながら、あの子の無事を願った。
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ようやくキャスニキの登場。
でもまだ会えない(苦笑)
※感想を下さった皆様、本当にありがとうございます。
そしてご察しの通り。
所長は今後、禁断の扉を開きます。
さらに、キャスニキは親バカとなる予定です。
楽しんで頂けたら幸いです。