(本人いわく天啓を受けたとの事)
その策の
・・やっぱり1人じゃ心配だ。
危ないと感じたら直ぐに逃げるって言ってたけど。今からでも追いかけた方がいいんじゃないかな?
(正直、アイツの前に出るのは凄く怖いけどマルちゃんだけ危険な目に合わせるのはイヤだ。)
この
(理由はわからないけど)マルちゃんと父さんの眼が似ていると感じてから。
俺はより、マルちゃんの事を他人だと思えなくなっていた。
「マスター。俺、マルちゃんのところに行ってくる!」
「なっ!?ダメよ!
あの変態の一番の狙いは貴方なんだから!!」
駆け出そうとした俺の手を慌てて掴んで、マスターは俺を引き止める。
「でも・・」
「彼女の言う通りだ。君は此処で時が来るまで待った方がいい。」
「ジークフリート。」
立ち塞がる様に俺の前に出たジークフリートは、静かな声で俺を諭す。
「彼なら逃亡の際に小回りがきく分、逃げおおせる可能性が高いが。君が行けば足手まといになる。2人とも敵に捕まる危険が高まるんだ。気持ちはわかる。だが、すまないが大人しくしていてくれ。」
「ーーーでも、俺。友達が危ないのに自分だけ安全な場所にいるの・・嫌なんだ。」
「コンラ・・。」
ジークフリートの正論に返す言葉が見つからない。
それでも胸に湧く焦燥は強くて。
俺は唇を噛み締めて走り出したい衝動を堪えた。
マスターはそんな俺の手を両手で包み、安心させるように優しく声をかけてくれた。
「大丈夫よ。アイツはそんな簡単にやられないわ。だって、アイツにはやらなくちゃならない事があるんだから。きっとどんな手を使ってでも目的を果たすまで生き延びるわよ。」
「あっ・・。」
そうだ。
最初はなんて意地汚いカワウソなんだと思ったけど。一緒に行動しているうちに、マルちゃんは意外としたたかで(本人は認めないけど)何だかんだで良い人だって事を俺は知ったのだ。
「・・そう、だね。マルちゃんなら。」
マルちゃんは
マスターの言葉にそう確信が持て。
俺は頷き、焦燥に駆られる心を静めてくれたマスターに笑いかける。
「ありがとうマスター。
マスターが俺のマスターで本当に良かった!」
「ッ!!」
「ジークフリートもありがとう。」
「俺は礼を言われる様な事はしていない。
むしろ、君の気持ちを無下にしてしまってすまなかった。」
「ううん。間違った事をしようとしたのは俺の方だから。」
それからは同じ事がないように気をつけてたつもりなんだけど。
危うく感情のまま、また1人で暴走してしまうところだった。
間違いを繰り返す前に止めてくれたマスターと、諌めてくれたジークフリートには本当に感謝だ。
・・・ところで話は変わるけど。
ジークフリートは悪い事をしてないのに何でこんなに謝るんだろうか?口癖?
俺は頭に浮かんだ素朴な疑問を、思い切って当人に聞こうとした。
その時ーー
「うっ!ぐっ・・・彼が始めた、ようだ。」
「っ!!」
ジークフリートが呻き声を上げ、膝を付いた。
顔を歪めてファヴニールの因子の強烈な殺意を堪える。衝動に流されまいと彼は必死に理性を保っていた。
マルちゃんが術を解いて人の姿に戻ったんだ!
俺は慌てて(何故か頬を染めて硬直していた)マスターの体を揺すり、意識を戻す。
「マスターッ!マスターッ!
ワイバーンが来るよ。マルちゃんとの合流地点まで移動しよう!」
「ーーハッ!そ、そうね。」
これからマルちゃんの臭いに引き寄せられて、此処にワイバーンの大群が来る。
そのワイバーン達と海魔を戦わせ。
数が減ったところで隙をついて近づき、あの本を壊すというのがこの先の
俺はつらそうなジークフリートを支え、マルタさんとタラスクにも声をかける。
けれど、何故か返答はなかった。
(そういえば、さっきから2人とも反応がないような?どうしたんだろう?)
不思議に思い、振り返ると。
「ーーーー。」
《ーーーーっ。》
マルタさんがコチラを見つめ、一切の表情が抜け落ちた顔で立ち尽くしていた。
驚く俺達の前で、タラスクが苦しげな声でマルタさんを呼ぶ。
《ーーーねえ、さん!
こんな、のに。
負けちゃ・・ダメっす!》
「ーーーあっ。」
タラスクの呼びかけに、マルタさんの血の気が失せていた顔に僅かに生気が戻る。
虚ろだった瞳に理性の光が宿り、強く握り締めていた拳が解かれた。
片手で頭を抑え、マルタさんは絞り出すような声音で俺達に危機を伝える。
「お、ねがいっ!ーーー逃げてっ!!」
「っ!!」
その言葉に。
何かに必死に抗う彼女のその姿に。
■■ラとして死ぬ直前に見た光景が脳裏に蘇る。
《逃げろ!■■ラ!!》
「ーーーランサー。」
あの夜の
彼女はいま、あの時の友人と同じ様に何者かに支配されかけているのだと。
ーーーギャアアアアアアッ!!!
そして、そんな俺達の頭上を。
飛来したワイバーンの大群が夜空を覆い隠すように埋め尽くした。
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※遅まきながらUA5万ありがとうございます!
これからも面白い作品が書けるようがんばります!まずはコンラくんとヤリニキを再会させなければ。