コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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白馬の聖人

 

 

第三者視点

 

 

 

「ーー殺スッ!」

 

「ぐっ!!」

 

 

正気を失い、己へと猛攻を加えるマルタの拳を。

ジークフリートは時には避け、受け流し、1人堪え続ける。

マルタが望んで己を殺そうといている訳ではないと理解しているが故に。

彼は彼女に危害を加える事が出来ず。

護りに徹するしかなかった。

 

幸いにも(同時に不穏さも感じたが)身の内で暴れていたファヴニールの因子は先程から静まっており。

マルタとの交戦を始めた当初に比べれば、少しは思った通りに彼も体を動かせるようになっていた。

 

狂化の影響で精彩を欠いた攻撃を見切り。

眼前を薙いだ腕をジークフリートはその手で掴む。

 

 

「マルタ!俺は君を傷つけたくはない。

攻撃をやめてくれ!」

 

 

己の声は届かないと知りつつも。

諦めきれず、狂気に呑まれた彼女へと訴える。

しかし、そんな彼の想いを打ち砕くように。

自由なもう片方の腕を振り上げ。

マルタは至近距離でジークフリートに重い一撃を加えようとし。

 

 

「ーーッ!」

 

 

あと数センチという所で、その動きを止めた。

 

 

「ーータラスク。」

 

 

ポツリと、己の守護竜(家族)の名を紡ぎ。

導かれる様に彼女は夜空を見上げる。

常に傍らにあった彼の魂が消えた事に、酷い喪失感と淋しさを覚え。

マルタは光が戻ったその瞳から、一筋の涙を零す。

 

 

「・・ええ。ええ。わかったわ。

あの子のことは任せなさい。

だから、アナタは安心して座で待ってるのよ。」

 

 

既にこの地(フランス)にはいない。

己の為にその身を犠牲にしたタラスク(家族)へと彼女は語りかけ。

彼から託された願いを、必ず果たす事を誓い。

自分の頬を濡らす涙を乱暴に拭った。

 

 

「・・よかった。正気に戻ったのか。」

 

 

その彼女の様子から、狂化が解けたことを悟り。

ジークフリートは掴んでいたマルタの手を放し、安堵の言葉を溢す。

張り詰めていた緊張が弛んだせいで思わず脚の力が抜けてしまい。

拳を受けたダメージもあって。

彼は倒れるようにその場に腰を下ろしてしまう。

 

そんなジークフリートに、自身が彼へと行った暴挙を察したマルタは顔を青褪めさせ。

必死に彼へと謝罪する。

 

 

「わ、私ったら何てことを!?

ごめんなさいごめんなさい!!」

 

「いや、君は悪くない。

傷も大したものはないから、気にしないでくれ。」

 

「で、でも・・あっ!」

 

「ん?」

 

「そうだわ!私の奇跡の力で傷を治せばいいのよ。それがいいわ。そうしましょう!

さあ、ジークフリート。今すぐ傷を見せなさい!!」

 

「あ、いや・・このくらいのかすり傷なら少し休めばーーーーって。何故キミは鎧を脱がそうとしているんだっ!?」

 

 

(傷の治療の為に)鎧を脱がそうとするマルタと。驚き、それに抗うジークフリート。

 

彼の妻たるクリームヒルトか。

彼を己の「愛しい人(シグルド)」に似ているという理由で()そうとするブリュンヒルデが目にすれば。

間違いなく修羅場確定の光景である。

 

だが、幸運な事に。

彼女達はこの特異点(フランス)には召喚されていなかった。

代わりに既に召喚されていた。

とある聖人がその光景を目撃する事になる。

 

 

「ーーーオホンッ!

お取り込み中に失礼します。」

 

「「ッ!!」」

 

 

唐突に話しかけられ。

2人は声のした方へ、バッと顔を向ける。

 

そこには白馬を連れた、長髪の騎士がいた。

ランサー(クー・フーリン)と同じく。

ワイバーンを追いかけ、この街へと行き着いた騎士ーーゲオルギウスは。

愛馬であるベイヤードの顔をさりげなくマルタ達から背けさせ。神妙な顔で忠告する。

 

 

「人が人を愛するのは素晴らしい事であり。

男女の事柄に他者が口を挟むのはどうかと思わないでもないですが。さずかに野外で、しかもこの様な安全とは言えない場所で事に及ぶのは。いささか不用心が過ぎるのではないかと。」

 

 

完全にマルタとジークフリートの関係を誤解しての発言に、2人は眼を丸くする。

しかし、ゲオルギウスの言わんとする事と。

自分達の今の状況(マルタがジークフリートに馬乗りになり。衣服に手をかけている。)に。

2人は全てを察した。

 

 

「」

 

 

ジークフリートは言葉も出せずに片手で顔を覆い。マルタは青褪めていた顔を一気に赤らめ。

力の限り叫ぶ。

 

 

「ち、違うの!誤解なのよーーッ!!!」

 

 

地上から天に向かって。

召喚の光が放たれたのはその直後のことだった。

 

 

 

……………………………………………………………………………

 

 

 

光の柱が掻き消え、コンラとオルガマリーの前に姿を現したのは。1匹の巨大な海魔だった。

 

高層ビル並の大きさの大海魔は。

捕らえたワイバーンを口へと放り込み、ゴクリと丸呑みにしてしまう。

そして手当たりしだいに、近くにいる獲物(主にワイバーン)を次々と捕食し始めた。

その様子にコンラは呆然とし。

オルガマリーは顔を青ざめさせる。

 

 

「タコヒトデお化けが巨大化した・・。」

 

「なんてモノ召喚してんのよあの変態っ!?

明らかに制御出来てないじゃないっ!!」

 

 

動揺する2人は。

思わず目の前の巨大怪物の暴走に目を奪われてしまう。

 

 

「ーーーやっと、見つけましたよ。」

 

「っ!?」

 

「なっ!ーーうわっ!?」

 

 

そんな周囲への警戒が薄れた、僅かな隙をつくように。上空から2人に向かって大量の海魔が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

全身がワイバーンと海魔の血に濡れた事で。

フレイズマルの術の媒体となっていた血液が流され、元の姿へと戻ったジル・ド・レェ。

彼は頭から血を浴びた事で、失っていた冷静さも取り戻していた。

 

大海魔を囮として召喚し。

精神操作の術が再び効くようになったワイバーンに乗って空から獲物(コンラ)の姿を捜す。

 

案の定、大海魔の出現に気を取られていたコンラとオルガマリーを発見した彼は。

2人のいる地点の上空で新たに海魔を召喚し。

首尾よく奇襲を加えることに成功した。

 

 

「フフフッ!手こずらせてくれましたね、坊や。ですが、これでもう逃げる事も隠れる事も出来ませんよ。ーーー大人しく供物となる運命を受け入れなさい。」

 

 

突然の奇襲と、連戦の疲労もあり。

海魔の触手に捕まってしまった2人の前へと。

ジル・ド・レェは血塗れのままワイバーンから降り立つ。

その台詞と外見は、まごう事無く猟奇殺人犯(ガチ)である。

 

 

「んーっ!んーっ!(マスターを放せ!この変態芸術家!)」

 

「んんーっ!んんっ!んーんーっ!!(んな運命あってたまるか!こっち来ないでよ!コンラに近づかないで!!)」

 

 

両手足を拘束されただけでなく。

口も塞がれてしまった2人は言葉にならない声を上げる。

そんな抗議の声を無視しながら、ジル・ド・レェはコンラの目前まで歩み寄った。

膝を折って目線を合わせ。

素材をどう加工するか思案するように、骨張ったその指で少年の顔の輪郭をなぞる。

 

 

《ーーッ!コンラッ!宝具を使って逃げてっ!!》

 

《けどっ!これ以上《穿く必勝の光槍(ブリューナク)》を喚んだらマスターがっ!》

 

《私のことはいいから!早く!》

 

 

オルガマリーに念話での指示を受けながらも、コンラは宝具の使用を躊躇う。

護るべきマスターを己の宝具にかかる大量の魔力消費によって危険に晒してしまう事を、彼は怖れたのだ。

未だ宝具を使いこなせない自身へと(タラスクの件もあって)不甲斐なさを強く抱き。彼は悔しさから涙が込み上げるのを感じた。

 

己への悔恨と、顔に触れる恐怖の権化(ジル・ド・レェ)のせいで。

涙に濡れたコンラの紅い瞳に、彼は感嘆の息を漏らす。

 

 

「あぁーーいいですね。

実に美しい鮮血の色です。ふむ・・傷がつくのは惜しい。先に眼だけ取り外しておく事にしましょう。」

 

「っ!?んー!?んー?んんんーー!!?

(え。ちょっ!?取り外す!?眼を?いま取り外すって言った!!?)」

 

「んーーっ!!!んー!んー!んんーーっ!!(イヤーーッ!!!逃げて!逃げて!コンラ超逃げてっ!!)」

 

 

愉しげなジル・ド・レェの耳を疑う「眼を取る」発言に戦慄し。恐慌状態に陥る2人。

彼はその反応をも愉快だという様に不気味な笑みを浮かべ。

怯える少年(獲物)の目元に指先を移動し、ゆっくりと力を加えーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーそいつに!汚え手で!

触んじゃねぇええええ!!!!」

 

 

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!!!!》

 

 

 

 

ーーようとしたが。

大気を震わせる怒号と共に。

数えきれぬ程に分裂し、朱い豪雨と化した魔槍が海魔とジル・ド・レェに襲いかかり。

 

彼のコンラへの凶行は阻まれる事となった。

 

 

……………………………………………………………………………

 

※マルタさんとジークフリートにあらぬ噂が。

何てことだ。前回のシリアスは何処へいった。

そしてヤリニキは変態の魔の手から息子(友人)を護れました。良かった。本当に良かった。

 

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