第三者視点
白い雲がまばらに浮かぶ青空の下。
広がる水平線のどこにも島影など見えない大海原に。
1艘の小舟が浮かんでいる。
乗っている人影は2人。
眼を開き。
驚愕の表情でこちらを凝視する(転生し冬木で暮らしていた時の容姿の)■■ラに。
コンラは目を細め、声をかける。
「・・おはよう。」
「え・・
「そうだよ、
はじめまして・・かな。」
コンラは己の
自身の半身ともいえる転生後の人格ーー■■ラへと笑い掛けた。
「いきなり呼び出してごめん。
でも、これ以外にオレ達が会える方法がなかったから。」
乱暴な形で呼んだ事を謝罪し。
此処が自分達の心の中なのだと彼は告げる。
「ここが。俺のーー俺達の心の中。」
■■ラはキョロキョロと物珍しげに周りを見回し。ふと、首を傾げた。
予期せぬ出来事の連続で、戸惑いながらも。
なんとか平静を取り戻した彼は浮かんだ疑問を尋ねる。
「呼んだって事は。俺に用があったんだよね?」
「うん。それはね・・・
オレと一緒に
「ーーえ?」
半身の口から発せられた耳を疑う言葉に。
静まった筈の■■ラの心は、再び激しく揺さぶられる事となった。
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ルー神が疑似サーヴァントの器に幻霊と化した
予期せぬ事に。
コンラの魂は生前の記憶を有する《コンラ》と。
転生後の記憶を有する《■■ラ》の2つの人格に分かれた。
しかし、《コンラ》の人格はルー神が記憶の封印を施した為。目覚めることなくその封印の内側で眠りにつき。
《■■ラ》が
本来であれば別人格となった《コンラ》はそのまま二度と目覚めず。
死に際に望んだ様に。
彼は深い眠りについたまま、優しい忘却に抱かれて要られたかもしれなかった。
けれど、運命はそれを許さない。
《いやーーいや、いや、助けて。誰か助けて!
わた、わたし、こんなところで死にたくない!
だってまだ褒められてない!誰も、私を認めてくれていないじゃない!
どうして!?どうしてこんな事ばっかりなの!?誰もわたしを評価してくれなかった!
みんな私を嫌っていた!やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや!だってまだ何もしていない!生まれてからずっと、ただの一度も!誰にも認めてもらえなかったのにーー!》
【どうしてだろう?
母さんも、師匠も。
オレを通してクー・フーリンを見ている。
どんなに頑張っても、オレを認めてはくれない。
一度でいいから、
認めてほしかった。褒めてほしかった。
ーーー頭を、撫でてほしかった。】
外部からの共鳴による干渉が封印に小さなヒビを入れ。《コンラ》の眠りを妨げ。
忘れようとしていた、彼の痛みを伴う記憶を引きずり出す。
《所長を助けてくるね。》
《ーーーえ?》
カルデアスに分解されかけた影響により。
封印のヒビが更に大きく広がり。
時折、《■■ラ》の感情と記憶の一部が《コンラ》の元へと流れ込んでくる様になった。
これによって、彼は自身と半身の現状を知る。
《苦しい。淋しい。哀しい。怖い。
胸を何かに抉られているみたいに。
心が、心臓が痛くてたまらない。》
そして、新たに流れ込んできた《■■ラ》の感情は。
心を開いていた友が父であり。
その父に殺されていたという真実と。
信頼を寄せていた人々にその真実を隠されていた事実に。苦痛を感じ、酷い孤独感に襲われ。
悲鳴を上げているモノだった。
《コンラ》はその半身の想いに。嗚咽に。
自身の最後を重ねてしまう。
《■■ラ》が。己の半身が。
『あの時』の自身と同じ苦しみに苛まれている。
同じ苦しみを、痛みを知る《コンラ》は。
《■■ラ》を助けたいと強い想いを抱いた。
『あの時』誰も自分を助けてはくれなかった。
だからこそ、半身である彼は自分が助けなければと。《コンラ》は切実に想ったのだ。
彼は《■■ラ》を救う為に。
封印の内側で思考し、ある結論に至る。
《■■ラ》を救う方法。
それは自身が唯一救われた時の再現。
【そうだ。またーー死ねばいいんだ。】
《コンラ》はそんな怖ろしい結論に至る。
けれど、彼は『それ』しか知らなかった。
生前の《コンラ》は『死』でもってしか救われた事がなかったのだから。
彼がこの解決法しか思い付かなかったのは、ある意味仕方のない事だった。
《こんな。こんなに苦しい想いをするぐらいなら
ーーー何も。
知らないままでいたかった・・》
【ーーーそう、だね。
全部、忘れてしまおう。】
《コンラ》は《■■ラ》の言葉に頷き。
半身たる彼を喪う事を哀しく思いながらも。
優しく応えた。
【《■■ラ》。忘れて。
《コンラ》は《■■ラ》を
ヒビ割れていた封印を内側から無理やり破壊し。
続いて《■■ラ》を精神世界へと呼ぶ。
そして彼は目前に現れた苦しげな半身を眼にし。
彼にとって重大なある事に気づく。
【でもーーー独りで死ぬのは淋しいよね。
オレが、そうだったから。
《■■ラ》にあの淋しさを味合わせるのはイヤだな。なら・・・】
独りは淋しい。独りは哀しい。
独りは苦しい。独りは怖い。
《コンラ》はその『孤独』を嫌という程に知っていた。それ故に・・。
「大丈夫だよ《■■ラ》。
オレが死んだ時は独りで淋しかったけど。
今度はオレが一緒だから。
2人なら淋しくない。
だから・・一緒に
そうすればもう、痛くないし苦しくない。」
《コンラ》は《■■ラ》のことを想い。
自分も共に消える事を決意する。
それが最悪の結果ーー主人格と別人格の消滅による精神崩壊ーーに繋がるとは
彼は《■■ラ》へと。
慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら。
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「ーーー。」
《■■ラ》は混乱し、座り込んだ姿勢のままで。
そんな
普段の彼であったなら。
迷う事なくその手を拒否していただろう。
けれど、今の《■■ラ》の
親友だと思っていた者に。
父だと慕っていた者に。
マスターだと。
仲間だと信頼していた者達に。
真実を偽られ。黙され。
冷静な部分では何か理由があったのだろうーーなどと考えつつも。
彼の心は裏切りにも似た衝撃を受け、傷を負った。
その傷が発する激痛を。
信を置く支えを失った孤独感と苦しみを。
先程まで味わい。のたうち。知った《■■ラ》には。
目の前に差し伸べられた《コンラ》の手が酷く得難く。眩しいものに映ったのだ。
優しい眼差しに。
慈愛に満ちた笑み。
己の身を案じる温もりの篭った言葉。
甘露のようなその全てに。
《■■ラ》の衰弱した心は惹かれ。
なりふり構わず縋りつきたくなった。
甘い甘い。
無知なる善意の毒が。
彼の心を蝕んでいく。
「・・・死ねば。
もう、さっきみたいに痛くないし。苦しくない?」
「うん。楽になれるよ。」
その肯定の言葉に。
《■■ラ》は誘われる様に手をゆるゆると持ち上げ、伸ばす。
もうあの苦痛と孤独を感じなくて済むのならばと。
《コンラ》の甘言を受け入れ。
差し出された
刹那、彼の脳裏を掠めたのは紅と山吹の色の瞳だった。
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※危なかった!
一歩間違えたら自分と心中ルートでした。
精神が死んで。身体だけ生きてるとか。
ヤリニキまで危うくハートブレイクさせるとこでした。マルちゃんの失言の罪は重い←