コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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邪竜と魔女

 

 

第三者視点

 

 

 

「いい?アンタはその子の『父親』だけど。

私はその子の『マスター』なんだからねっ!」

 

「?、ああ。

それは親父から聞いて知ってる。

それがどうしーー」

 

「その子に『大好き』て言ってもらえたからって!甘えてもらえてるからってっ!

調子に乗らないでよねっ!!」

 

「・・・は?おい。ちょ、ちょっと待て。

アンタ、まさかホントに親父の言ってた通りーーー」

 

「私だって私だって私だって私だって私だって私だってっ!!!」

 

「ーーーマジか。」

 

 

事前に決めていた、仲間との待ち合わせ場所である『街外れの広場』へ向かう道すがら。

疲労と、心から安堵したせいか。

糸が切れたように眠ってしまった息子(コンラ)を背負い歩いていたランサーは。

息子のマスターであるオルガマリーの発した嫉妬のこもった台詞に、思わず顔を引き攣らせた。

 

彼は父親(ルー神)から彼女がコンラに対し、淡い恋心を抱いている事は聞いていた。

だが、中身(精神年齢)は別として。

息子の外見は7歳の幼子である。

 

さすがに何かの間違いだろうと一蹴していたのだが。現在進行形で己を睨み上げるオルガマリーの瞳は、表情は。見覚えのある『恋する女』の嫉妬が強く滲み出たものであった為。

ランサーはルー神の言葉が、思い過ごしではない事実であった事を己の眼で知ることとなった。

 

しかもその両眼には、嫉妬の鮮烈な炎が燃えているだけでなく。依存にも似たドロリとした昏い感情も垣間見えており。

 

 

ーーおいおい。

この女がマスターで大丈夫なのかよ。

 

 

再会して早々、これから続く旅路での。

息子の身の安全に一抹の不安を覚えたランサーであった。

 

一方、嫉妬に身を焦がすオルガマリー。

彼女はランサー(クー・フーリン)に対して一言では表せぬ感情を抱いていた。

 

コンラにとって《父親(クー・フーリン)》という存在が、いかに『特別』な存在なのかは彼女も理解していた。けれど、いざ目の前でその事実を突きつけられて平静でいられるほど。

オルガマリーのコンラに対する想いは軽くはなかった。

 

彼女にとって(コンラ)は。

自身を認め、救ってくれた唯一無二の存在であり。この世で最初で最期の、たった1人の己のサーヴァントなのである。

そんな相手が一度として自分には向けた事のない幼い表情で父親へと甘え。

今もその背で、安心しきった穏やかな顔で眠りについている。

 

コンラの見た目(外見年齢)から、恋心を認める事を躊躇(ちゅうちょ)してはいるが。自身にとって『特別』な相手(コンラ)のそんな幸せそうな姿に。

慈愛の様な喜びと、自分がその『特別』ではない事への嫉妬と不安の想いが胸中でせめぎ合う。

 

この特異点(フランス)に来てから。

自分にだけ注がれていた大切な子供(コンラ)の温かな眼差しが。後から現れた父親(ランサー)に簡単に奪われてしまった様で。

強い淋しさと不安からくる焦燥に駆られ、オルガマリーはランサーへと食ってかからずにはいられなかったのだ。

 

 

ーー私だって私だってっ!

コンラに『好き』て言われたし。

だ、だだ抱き締められたし!

こんな槍男になんか負けてたまるもんですかっ!!

 

 

嫉妬と不安の感情は転じて。

心の均衡を保つために激しい対抗意識へと変わる。

 

 

「コンラは『マスター』の私が護るんだから!

アンタは引っ込んでなさいよ!!」

 

「いや。普通逆だろ。

護られるのは『マスター』の方だからな。

あと、アンタが何を考えてんのか知らねぇが。

コイツの事でオレ(父親)に対抗しても意味ねぇだろ。

そう云うのは当人同士でだな・・」

 

「な、何よそれっ!もう勝ったつもり!?

寝るのも。ご飯を食べるのも。戦うのも。

全部コンラの隣は私のなんだからっ!

アンタには渡さないっ!!!」

 

「ーーーハァ。面倒くせぇ。」

 

 

自分の助言に何故か更に対抗心を燃え上がらせたオルガマリーに。ランサーは疲れた表情で辟易(へきえき)する。普段であれば、もう少し諦めずに粘り説得を試みたであろうが。

この面倒くさいタイプの女は経験上ーー生前、破滅させられたのでーーどんな言葉を投げかけても効果は無いことを知っていた為。

彼はさっさと(さじ)の方を投げたのだった。

 

 

ランサー(父親)オルガマリー(マスター)

2人は『コンラを護る』という同一の目的を持っていながらも。

出会ってすぐにお互いの好感度は急降下し。

マイナスへと今にも突入しそうな勢いである。

 

 

「・・・・。」

 

 

そしてそんな2人の後ろを。

面倒事に巻き込まれまいと、全力で空気に徹するジークフリートーーの姿をしたフレイズマルが無言でついていく。

 

彼は間に挟まれて苦労するであろうコンラの行く末に同情しつつ。

その父親に背負われる幼子の姿に。

かつて自分も同じ様に息子(ファヴニール)をおぶっていた頃を思い出す。

 

 

あの頃の自分は妻に多少矯正されてはいたが。

変わらず自他共に認めるクズで。

それでも背に感じた、子供の驚くほど軽い体と温かな体温に。

その時はひとりの父親として。

クズなりに息子の事を護りたいと想っていたのだった。

 

 

ーーその結末が『コレ』か。

 

 

苦しみから解放する為とは云え。

息子(ファヴニール)を護るどころか殺そうとしている現状に。

フレイズマルは欲に走った生前の自身を呪わずにはいられない。

それでもその手を息子の血で濡らす決意を、他ならぬ息子の為に覆すわけにはいかず。

彼は息子(コンラ)に『赦された』父親(ランサー)の後ろ姿を、羨望と妬みの眼差しでしばし見つめた。

 

 

「ーーーファヴニール。」

 

 

後悔と懺悔に満ちた声で、彼は息子の名を呟く。

それは誰に気付かれる事もなく宙に溶け・・消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ーーー。】

 

 

オルレアン城の傍らでワイバーンを生み出しながら眠りについていた。

ファヴニール(邪竜)本人を除いて。

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

酷く懐かしく、(おぞ)ましい程に憎い匂いと気配が。『彼』の《魂》の根本を揺さぶり。

眠りについていた漆黒の邪竜ーーファヴニールの意識を浮上させた。

 

 

【ーーー。】

 

 

眠気を振り払うように頭を振り。

開いたその金の瞳で、遠い夜明けの空を見据える。大きく息を吸い込み、周囲の匂いを確かめるが。

オルレアン城から離れた街にいるフレイズマルの匂いは、既に跡形もなく消え去った後であった。

 

 

ーー気のせいか。

 

 

しかし、えもしれぬ強烈な不安に襲われた彼は巨大な腕を動かし。

生前に比べて数はだいぶ少ないが、己の黄金ーーオルレアン城にあったものーーを奪われぬよう手元に引き寄せた。

 

彼は命を落とし、この特異点(フランス)に召喚されてなお。

未だに『呪いの腕輪』の力に囚われていた。

故に今の彼の目的はただひとつ。

フランスの人間どもに《奪われた》黄金すべてを奪い返す事であった。

 

 

ーーよくも俺の黄金を。宝を。

盗人共が。必ず全員焼き殺し。

全ての宝をもう一度、この手に。

 

 

己の所持していた黄金を、召喚された先であるフランスの民に奪われたと誤った知識を与えられたファヴニールは。

黄金の献上を条件に。

請われるまま召喚主である竜の魔女(ジャンヌ・オルタ)へと協力し、力を貸していた。

 

 

「ーーーーーッ!!!!」

 

 

だが、不意に耳に届いたその召喚主の悲痛な叫びに。ファヴニールは彼方へと向けていた眼差しを、オルレアン城へと移す。

 

そして豪華に装飾された窓から覗き見えた光景は。『聖杯』を手に取り乱す、憐れな『贋作英霊(ジャンヌ・オルタ)』の姿であった。

 

 

…………………………………………………………………………………

 

 

 

「そんなっ!ジルが殺られるだなんてっ!!」

 

 

ルーラーの能力により。

ジル・ド・レェの反応が消えたことを察知し、心を乱すジャンヌ・オルタ。

けれど、今際(いまわ)のきわにジル・ド・レェが転送した『聖杯』が目の前に現れた事で。

彼女はかろうじて冷静さを取り戻す。

 

 

「そ、そうよ。慌てる事ないわ。

ジルは今は英霊なんだから、また喚べばいいのよ。」

 

 

彼女は記憶の中の。

例えどんなに苦しい戦の最中であろうと。

共に戦場を駆け、いつでも己の味方であった臣下(ジル・ド・レェ)へと想いを馳せる。

 

だが、それらは全て『創造主(ジル・ド・レェ)』が《本物を模して創った》偽りの記憶であり。

その『信頼』も『友愛』も。

『創造主』が身勝手に植え付けたモノである事を。ジャンヌ・オルタは知らない。

ーーー知らない方が、彼女は幸せだった。

 

 

「まったく・・私の手を煩わせるなんて。

随分と偉くなったものーーああ。

そういえば『元師』だったわね。」

 

 

彼女は消滅したジル・ド・レェを再度召喚しようと。微笑みながら、光を纏い宙に浮く『聖杯』へと手を伸ばし。

 

 

ーーあれ?

 

 

その指が『聖杯』に触れた瞬間。

ふと、彼女の脳裏にある疑問が湧いた。

 

 

ーーでも、何でジルが『聖杯』を持っていたのかしら?

私が彼ら(バサーク・サーヴァント)を召喚した後に彼に預けたんだったっけ?

そもそも・・私はいつジルを喚んだのだったかしら。

 

 

彼女は処刑され、再びこのフランスの地に蘇った時の記憶を思い起こそうとするが。

どうにも頭に靄がかかったようで、いくら遡っても思い出すことが出来ない。

意識がはっきりした時にはすでに、ジル・ド・レェは歓喜の涙を流して己の目の前に居たのである。

 

 

「ーー何で?ジル。」

 

 

自身では答えの出ない疑問に困惑するジャンヌ・オルタ。意図せず零れた、彼女の臣下への問いには。

代わりに触れたままでいた『聖杯』が、答えを返す事となった。

 

聖杯は彼女の無意識の望みをその膨大な魔力で叶え、答えた。

そのあまりにも残酷な『真実』を。

当事者たる彼女に『ジル・ド・レェの記憶』の一部を見せるという方法によって。

 

 

「ーーーーーッ!!!!」

 

 

ジャンヌ・オルタは『聖杯』から流れ込んできたジル・ド・レェのーーこの地に降り立ってからのーー記憶を目にし、堪らず悲鳴を上げた。

 

彼女は知ってしまったのだ。

自身が『本物(ジャンヌ・ダルク)』の『贋作(偽物)』である事を。

 

 

「ーーうそ。ウソ、嘘よこんなのっ!!

嘘でしょ!?嘘だって言ってよジルゥウッ!!?」

 

 

己という存在が、足元から音を立てて崩れていく感覚。

自分を形作っていた『名』も『記憶』も。

自分のものではなく『本物(ジャンヌ・ダルク)』のものーー偽りだったのだ。

 

ならば、己は何者なのかと。

膝をつき、髪を掻きむしり。

彼女は己の存在する『意味』を求め、もがき苦しむ。

 

 

ーー嫌だ。嫌だ。

贋作(偽物)』として創られ。

ジルの復讐の為に『贋作(偽物)』として良いように使われるなんて。

そんなの絶対に嫌だっ!

私は『私』だっ!

本物(ジャンヌ・ダルク)』の代わりなんかじゃないっ!!

 

 

自分が『聖女(ジャンヌ・ダルク)』ではないと知った今。

彼女にフランスに復讐する理由はない。しかし、彼女が創造されたのは『フランスへの復讐』の為であった。

 

己の存在理由の『復讐』と。

それを否定したい『自我』との狭間で彼女の心は激しく揺れ動く。

そんな彼女に光を与えたのはーーー

 

 

【どうした、魔女。】

 

 

意外にも、彼女が利用する為に召喚した邪竜ファヴニールであった。

 

 

「ーーーま、じょ?」

 

 

かけられた声に伏せていた顔を上げれば。

窓の向こうから、巨大な竜の金の瞳が彼女を見つめていた。彼は奪われた黄金を取り返す前に。

(原因はわからないが)錯乱した召喚主に誤って送還されては堪らないと。

利己的な理由で声をかけたのだった。

 

 

「わたしがーー魔女?」

 

【オマエ以外に誰がいる。

燃やした盗人共がオマエを見てそう叫んでいただろう。ーーー『竜の魔女だ』と。】

 

「ッ!!」

 

 

その邪竜の言葉に、彼女は自身が『何者』なのかを見出した。

 

 

「ふ、ふふふ。

そうよ。その通りよ。

私は竜を従えフランスを滅ぼす『竜の魔女(ジャンヌ)』。

救国の聖女(ジャンヌ)』じゃないっ!!」

 

 

彼女は立ち上がり。

握りしめた『聖杯』を頭上へと掲げ。

新たなる《バーサーク・サーヴァント》を己の元へと喚ぶ。

 

 

「ーーー来なさい。」

 

 

『聖杯』の光が眩いほどに強まり、静まった時には。彼女の前に新たなサーヴァント達が召喚されていた。

 

 

 

「Arrrrrrrッ!!!!」

 

「ウゥ″ッ!マリーさ、ま・・。」

 

 

《バーサーク・セイバー》

ーー裏切りの騎士ランスロット。

ーー白百合の騎士シュヴァリエ・デオン。

 

 

「ーーマリー。あぁ、マリア。」

 

「クリスティーヌ・・。」

 

 

《バーサーク・アサシン》

ーー処刑人シャルル=アンリ・サンソン。

ーーオペラ座の怪人ファントム。

 

 

「殺してやるっ!

誰も彼も、この矢の前で散るがいいっ!!」

 

 

《バーサーク・アーチャー》

ーー純潔の狩人アタランテ。

 

 

 

狂化され、正気を失ったサーヴァント達を一瞥し。竜の魔女は彼らにある命令を下す。

 

 

「各自、ワイバーンを(ともな)い。

この国中の街も村も燃やし、民を殺し灰にしなさい。『聖女』がいた痕跡を『フランス』ごと跡形もなく消し尽くすのよ。」

 

 

彼女はフランスを滅ぼす事で

フランスを救った聖女(本物)』の概念を消し。

フランスを滅ぼした魔女(偽物の己)』が

ジャンヌ・ダルク(本物)》に成り代わる事にしたのだ。

 

『復讐』の為ではなく、自身が『本物』と成る為に。彼女はフランスを利用し、史実を塗り潰し、その身に内包する怨嗟の炎をもちいて灼き滅ぼす。

 

 

「あははっ!良かったわねジル。

貴方の望んだ通りに、この国は滅びるわよ!

大好きな本物の聖処女様も消えるけどねっ!!」

 

 

竜の魔女はサーヴァント達が城から全員去るのを見届けた後。

あえて喚ばなかったジル・ド・レェ(創造主)へと嘲笑と共に。『偽りの記憶』の『信頼』を裏切られた怒りと恨みを込め、皮肉を吼える。

 

信じていた者(生みの親)』に裏切られ。

憤怒と憎しみを(あらわ)にするその姿は。

 

 

 

 

【・・・・。】

 

 

《何でだ親父!

こいつらはオッテルを殺したんだぞ!!》

 

 

 

 

遥か昔、彼がまだ人間であった頃の想いを。

呪いに囚われた邪竜(ファヴニール)の心に呼び起こさせた。

 

 

ーーいつの時代も。

《子》は《親》を選べないか。

 

 

(フレイズマル)》に信頼を裏切られ、怒り、憎み、自らの剣で殺した。

人であった頃の感情が蘇った彼は。

黄金にのみ向いていた執着が微かに薄れ。

知らず生前の己に似た召喚主へと情をかけはじめる。

 

似通った傷を心に負った《邪竜(ファヴニール)》と《魔女(ジャンヌ・オルタ)》は。抱いた傷の深さを目に見える形で示すかの様に。

無情な世界を壊し、紅蓮に包む。

 

 

ーーー魔女の放った下僕(しもべ)達の手によって。

蹂躙される無辜(むこ)の民達の悲鳴が。

フランス各地で上がり始めた。

 

 

…………………………………………………………………………………

 

 

※またもや遅刻してしまいましたっ!

申し訳ありませんーーっ!!!

もうコレは不定期更新表示にした方がいいのかもしれない(白目)

 

そして原作崩壊が留まるところを知らない。

フランス国民の皆様が大変な事になってしまった。

早くカルデア組をレイシフトさせなければ!

それにしても我が家のコンラくんはすぐに気絶してしまう・・何故だ←

 

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