藤丸立香視点
《ーーハッ!今、誰かにいわれのない中傷を受けた気がしたっ!!》
マシュと
レイシフトして早々、管制室のロマンが上げた悲鳴に首を傾げた。
「どうしたの?」と問おうとしたけれど。それより早くダヴィンチちゃんの笑い声が通信先から聞こえてきた。
《あははっ!いまさら何言ってるんだいロマニ。
君が人に
《え″。》
「え?そうなの?」
ダウィンチちゃんがサラッと言ってのけたとんでも発言に、私は目を丸くする。
ロマン。いつも悪口言われてるんだ・・。
仕事はサボるけど、悪い人じゃないのに。
「そう云えば、キャスターさんも前の特異点でドクターの事を『軟弱男』と言っていたような・・。」
大きな盾を持ち、肩にフォウを乗せながらポツリとこぼす
マシュの言う通り、保健室にキャスターが乱入してきた後。お互いの経緯を話している時にそんな事を言っていたかもしれない。
ーーー同時に、脳裏に今は居ない少年と所長の姿が蘇り。湧いた喪失感にズキリッと胸が痛んだ。
「よくわからねぇが、あの時は声を聞いてすぐにそう思ったんだよな。まぁ、あながち外れてはなかったが。」
今は出会った当初と変わらない様子で「想像通りの腑抜けたツラだった」と、笑うキャスター。
その姿に安堵と罪悪感を抱く。
キャスターが(私の未熟さが原因だから、思う資格は無いのかも知れないけれど)コンラくんの死から立ち直ってくれた事は素直に嬉しい。
私の事を恨んでもいいのに、恨むどころか
戦いに不慣れな私とマシュにとっては凄く心強くて、有難かった。
でも・・・彼はーーコンラくんは。
キャスターにとって、こんなにも早く心の整理をつけられるような。
その程度の『存在』ではなかったと私は思うのだ。
生前の自分は
酷く悔いて、キャスターは『特異点F』で必死にコンラくんの身を護ろうとしていた。
そんな『特別な存在』を喪ったのに、こんなにも早く人は心を切り替えられるわけがない。
きっと、
本当は無理をしないで休んでいてもらいたい。
けど、私達を取り巻く事態はそれを許さなくて。
父親として息子の為に戦うことで、彼が少しは楽になるならと想った事もあり。
私はあの時、キャスターのレイシフトを承諾してしまったけれど。
今はその判断を・・少し後悔していた。
マシュと談笑するキャスターの背を見ながら、その身を改めて案じていると。
ふいにロマンのショックを受けた様な、沈んだ声が耳に届いた。
《知らなかった。ボク、そんなに陰口言われてたのか・・。ううっ。ひどいっ!
もう誰も信じられないっ!!》
「そんなことよりドクター。
空に謎の『光の輪』が見えます。そちらでも確認できますか?」
《そんなことっ!?》
「嬢ちゃん。見た目によらず意外と言うな。」
「あっ、ホントだ。何か光ってるっ!」
胸中のわだかまりを一旦後回しにし。
空を見上げるマシュに
そこには確かに巨大な『光の輪』が輝いていた。
「へぇ・・何かの魔術式みてぇだな。」
《魔術式だって!?》
《ははあ。これはまた・・随分とスケールの大きな事を考える
ダヴィンチちゃんとロマンいわく。
この
今回の『
《その『魔術式』はこちらで調査するから。
君達は特異点を修復する事を優先してほしい。そこから南に進めば、村があるみたいなんだ。》
先程までとは打って変わって真面目なトーンで話すロマンの指示に私達は頷き合い。
周囲の探索をしながら。
情報を得る為、その『南にある村』を目指して歩き出した。
「のどかな場所ですね、先輩。」
青い草を踏みしめながら、眼前に広がる草原を3人と1匹で歩く。
吹いた心地のいい風が髪を揺らし。
気を抜くと、ピクニックに来ているような錯覚に陥りそうになる。
「そうだね。思わず走りたくなっちゃうよ。
マシュは外出するのは初めてなんだよね?」
「はい。なので不謹慎ながら実はワクワクしています。」
頬をうっすら上気させて笑うマシュに『守りたいこの笑顔』というフレーズが頭の中でこだまする。
私の後輩が可愛すぎていけない←
「走るといえば、先輩は確か運動部に所属していたそうですね。もしかして『陸上部』ですか?」
「うん。もともと体を動かすのが好きなんだけど。走るのはもっと好きだったから、迷わず入部したんだ。」
部活中は皆に呆れられるぐらい、暇さえあれば走っていた事を思い返す。
そのおかげで人並み以上の体力がついたのは、現状を考えると幸運だったと思う。
戦闘では指示くらいしか今の私に出来る事はないけど。いざとなったらマシュを抱えて逃げるくらいは出来るはずだ。(さすがに2人は無理なのでキャスターには自力で走ってもらおう。)
うん・・私も私に出来る事を精一杯やらなくちゃ。いつだって誰かの為に全力を尽くしていた《
私は先をゆくキャスターの姿を視界に捉えながら。そう、心に新たな決意を刻むのだった。
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第三者視点
己のマスターの前をゆく
先程は知らぬふりをした『魔術式』に内心で
ーーーアレが例の術式か。
・・・・使えるな。
輪を形造る光帯一本一本に込められた膨大な
キャスターは喪った
まず真っ先に思い描いたのは『聖杯』に願うことであったが。
カルデアスに跡形もなく魂を分解されてしまった息子を蘇らせる事は『聖杯』の力を持ってしても不可能だった。
『子殺し』の逸話の概念を利用し、そっくりな存在を創りだす事は可能だろう。
しかし、それはもう『
魂が違うならば、それはただ似ているだけの別人なのだ。キャスターが取り戻したいのは『
故に、彼はその方法を即座に切り捨て次の手を考える。その手とは『人理焼却』を利用した『人理再編』。
人類史すべてが燃え尽き、定礎が壊れた今だからこそ出来る策。
忌まわしい《あの日》に
愚かな己が起こした《過ち》を
そう、彼は望んだのだ。
生前のーー息子を殺めてしまったーー《あの日》をやり直すことを。
それは
しかし、それでもキャスターはこの策を選ぶ。
彼は、はるばる遠き地から自分に会いに来た《あの日》のコンラを。
今度こそ『よく来た』と笑顔で迎えてやりたかった。
小さなその身を傷つけるのではなく。
今度こそ抱きしめ、頭を撫で。
息子の望むままに、思い切り甘やかしてやりたかった。
コンラが味わった苦痛も傷も全て。
取り戻したあかつきには、もう二度と息子には負わせたくないと。『父親』としての愛情ゆえに、キャスターは《不要なモノ》として拒絶する。
彼は戦士の誇りを捨て、カルデアを裏切り。
英霊の義務を棄て、《生き残った》人類を
『
愛するが故に息子の
例え自分を救う為だとしても。
そんな『
その当然の『事実』に
ーーーなら、あいつらの隙を見て。
何処かに上手く『仕掛け』をしとかねぇとな。
彼は早速、狂った思考を回転させ。
自身の策を実行に移す為の下準備に入る。
《冷静な狂人》として、着々とマスターたる少女達への『裏切り』となる行為を。何喰わぬ顔で進めて行く。
完璧に隠された
この時点では誰ひとりとして居なかった。
「あれって・・煙?」
草原を南下し始めて1時間程経った頃。
藤丸立香は遠くに上空へと昇る黒い筋を発見し、目を凝らした。
同時に、ロマンから緊急を知らせる通信が入る。
それは彼らが目指している村が、
「村の人達を助けないとっ!!
行こう、マシュ!キャスター!」
「はいっ!」
「ああ。それにしても竜と殺り合うなんて久しぶりだぜ。」
襲われている村人達を助けようと3人は走りだし。紅蓮の炎に包まれる村へと到着する。
そしてーーー
「これ以上、私の故郷に!護るべき人々に!
手を出す事は赦しませんっ!!」
逃げ遅れた村人達を背に庇い。
数多の飛竜に囲まれながら。
それでもたった1人、旗を手に孤立奮闘する少女と彼らは出会う。
少女の名は、ジャンヌ・ダルク。
燃える村の名は、ドンレミ。
《救国の聖処女》が生誕し、天啓を受けし地にて。
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※遅くなりましたが、UA7万突破ありがとうございます!!
なんとか予定通りにカルデア組を出せました。
早送り感が否めませんが、ジャンヌもようやく登場。
この勢いで早く第一特異点を終わらせたい。
まさかこんなに長引くとは←
それにしてもキャスニキがカルデアを裏切る気満々過ぎるっ!