第三者視点
窮地のジャンヌ・ダルクの加勢に入るカルデア一行。
仲間と共に襲い来るワイバーン達を倒し、追い払った藤丸立香は。
助けられたにもかかわらずジャンヌを《魔女》と罵り。あるいは怯え、脇目も振らず逃げていく村人達の様子に不満と憤りを覚えた。
しかし、抗議の言葉はその当事者たる少女により止められる。
「彼らが私を《魔女》と呼ぶのは仕方がありません。ワイバーンにこの国の人々を襲わせている張本人は、どうやら《私》らしいのです。」
「? それは一体・・?」
「ーーーここでは落ち着いて話が出来ませんね。
少し南に行った所に森があります。
そこで詳しく話しましょう。
一緒に来てもらえますか?」
「うん。構わないよね?2人とも。」
仲間に確認を取り。
了承の意を示した少女に、ジャンヌは感謝を述べ
る。そして自身の後をついてくるように促しーー
「ーーー。」
「ジャンヌ?」
「あっ・・・いえ、何でもありません。
こちらです。」
ーーー促したが、一度だけ振り返り。
彼女は変わり果てた己の故郷へと寂しげな眼差しを送る。
けれど、未練を断ち切るように首を振った後は。
もう二度と振り返る事はなく、聖処女はカルデアの者達と共にその場を立ち去った。
「遅くなってしまいましたが。
先程は助けていただき、ありがとうございました。」
それは目の前にいる《
処刑された怨みを晴らすべく、竜を操りフランスを滅ぼそうとしていると云うものだった。
その異変に『聖杯』の影を感じつつ、ある異常に気づいたロマンがジャンヌへと問いかける。
《こんなこと聞くのは失礼かもしれないけど・・君は間違いなくサーヴァントなんだよね?》
「? はい。」
「ドクター?何かありましたか?」
《ああ、うん。何でか彼女のサーヴァント反応が弱いんだ。まるで『疑似サーヴァント』だったコンラくんみたいにーー》
「ーーー。」
《あ・・。》
つい零れ落ちた失言に慌てて口を閉じるも、遅すぎた。口から出た言葉は戻らない。
《・・ご、ごめん。》
「ーーー私、何でロマンが悪口言われるか。
わかった気がする。」
「Dr.ロマン、最低です。」
《グハッ!!》
急いで謝罪するも、少女2人のトゲのある台詞にガラスのハートを砕かれるロマン。
通信先で崩れ落ちた彼を心配するカルデアスタッフ達の声が聞こえたが、無視である。
「アンタ、その件については心当たりねぇのか?」
「正直、私自身にもわかりません。
ただ力を使いづらいという自覚はありました。」
漂う微妙な空気を払拭するように自ら声をかけたキャスターに。
ジャンヌはロマンの発言で空気が変わった事を疑問に思いながらも応える。
そしてこの後の動向を問われ、過ちを犯すもう一人の
しかし、竜に
独り敵地へ乗り込むという無謀な少女にキャスターは待ったをかける。
「馬鹿かアンタ。
その心意気は大したもんだが、ただの無駄死になるぜ。」
「ですが、もう私1人に出来るのはそれしかーーー」
「1人じゃないよ。」
「ーーえ?」
目を瞬かせる聖処女に、最後のマスターは笑顔で自らを指し示す。
「大丈夫。私達が一緒に戦うから、ジャンヌは1人じゃないよ。」
「はいっ!先輩の言う通りです。
なので、焦らずに確実な方法を探しましょう?」
「あ・・。」
マシュの言葉に自身が無意識に焦っていた事を自覚し、ジャンヌは羞恥に頬を染める。
心を落ち着けようと大きく息を吸い、吐いた後。
彼女はおもむろに問うた。
「共に・・戦ってくれるのですか?」
「うん。私達が此処に来たのも、この異変を止める為だし。目的は同じだもんね。」
「しかし、今の私はサーヴァントとしての力を使いこなせてはいません。あなた達の足を引っ張る事になるのでは・・」
「それは私も一緒です。実は私もつい最近サーヴァントになったばかりで。不安がないと言ったら嘘になります。」
「貴女も・・」
「はい。でも、先輩とキャスターさん。
そしていま此処にはいない人達の協力のおかげで私は前の『特異点』から帰還する事が出来ました。1人では絶対に無理だったと思います。
皆さんが助けてくれたからーー私は今もこうして生きている。
だから、ジャンヌさんも遠慮せずに私達を頼ってください。共に協力して
後輩のセリフに藤丸立香もまた同意し、力強く頷いた。
2人の真摯な言葉と眼差しを受け止め。
ジャンヌは己の胸に、懐かしい想い出が去来するのを感じた。
それは自身が《魔女》として処刑される前。
傍らにいた『
『
心をひとつに戦場を駆けた過去の記憶。
自身と彼らの手は敵の血に濡れ、穢れていた。
けれど、『愛する者を護りたい』と死と隣り合わせの戦場へ自らその身を晒した
「そう・・ですね。
ではーーーこちらこそ、よろしくお願いします。」
今は遠く感じる眩しい記憶に彼女は小さく微笑み。
この地に召喚されて以来。
出会う者達皆に罵倒され、怯えた眼差しを向けられ。
知らず『孤独感』を深めていた自身に。
『仲間と共にあった頃の記憶』を思い起こさせてくれた少女達へと。
ジャンヌは幾日かぶりに温かく満ちた心を抱きながら、自らも協力を願い出るのだった。
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「えーと。霊脈、霊脈・・」
「マスター。霊脈ってのは肉眼で見つかるもんじゃねぇ。ちょっとどいてな。」
「えっ!そうなの!?」
「先輩、もう少し後ろに。ジャンヌさんもコチラへ。」
ベースキャンプとなる『召喚サークル』を設置する為に霊脈を探す一同であったが。
まるで落し物を探すかの様に下を向き、地面を見回す己のマスターに。
キャスターは場所を明け渡すよう促し、しゃがむと地へと自身の手の平をつけた。
続いて探索のルーン魔術を発動する。
徐々に範囲を広げ、地中の霊脈と思わしき反応のある場所を特定し。指し示した。
「あの大木の辺りが強い反応を示してるな。」
「了解です。あの辺りに設置しますね。」
「さすがキャスター!頼りになるなぁ。」
「おいおい。褒めても何も出ねぇぜ。
・・・ついでに周囲の見回りもして来てやるよ。」
「うん。ありがとう!」
《あれ?キャスターくん。
何げに立香ちゃんにうまく使われてる・・?》
言葉とは裏腹に嬉々として面倒事を引き受けたキャスターに。ロマンは藤丸立香の恐ろしい人心掌握の才能を垣間見、戦慄する。
しかし、無自覚な当の本人はマシュと共に盾を設置しながら。不思議がるジャンヌに簡単な説明をしていた。
召喚サークルについて説明を受けた聖処女は、感心したように溜息をつく。
「つまりこの盾を霊脈に設置し使用すれば《カルデア》という離れた地から、支援を受ける事が出来るというわけですね。・・スゴイ技術です。」
「そうだよね。まるで『どこで○ドア』か『とり○せバッグ』みたいで便利ーー」
「先輩っ!いけません!
それ以上は危険ですっ!!」
《例えは間違ってはいない!いないけど、色んな意味で危ないワードだから!ギリギリセーフだからっ!!》
危うく某猫形ロボットの秘密道具の名を口にしかけた彼女に。慌ててストップをかけるマシュとロマン。
天然なところのある己のマスター兼先輩に。
マシュは自分がシッカリしなければと改めて気を引き締める。
ロマンは管制室で心労から息切れしながら。
心の安定を保とうと『マギ☆マリ』へと投稿を開始した。
・・・そんなドタバタな状況に陥った彼らは。
見回りに出たキャスターの他に、1匹の『獣』がいつの間にか姿を消している事には気付かなかった。
「・・・・。」
深い森の中を『見回り』と云う
身を屈め、片膝を着くと。
幾つものルーン文字が描かれた《呪符》を懐から取り出した。
「■■■■■■■」
詠唱と共にその符に己の血を垂らし。
先程マスター達へ伝えたモノとは別の『霊脈』の上へと置く。
すると、『呪符』はまるで吸い込まれるかの様にひとりでに地へと潜り。姿を消した。
ーーー術式設置完了。
干渉、流転、隠匿・・問題なし。
「ーーまっ、こんなもんか。」
キャスターは無事に『仕掛け』が済んだ事を確かめ、詰めていた息を吐き出す。
顔にかかる邪魔な蒼い髪を乱暴に掻き上げ、立ち上がると。怪しまれぬよう、中断していた『見回り』に素知らぬ顔で戻った。
「ーーーフォウ。」
そんな『裏切り者』の姿を。
気配を完全に遮断した1匹の『獣』は、高い樹の枝先から静かに見下ろしていた。
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※キリのいい所までと思ったら短くなってしまった!しかも意図せず『フォウくんは見たっ!』状態に。
ドラ○もんネタはスルーでお願いします←
もしかしたら作中のジャンヌさんは公式よりメンタルが弱いかも。
さすがに故郷の人達にまでディスられたら『城塞の如き女』と云われる彼女も精神的に弱る・・筈だ。
ロマンはすまぬ←
次回は例の騎士が登場予定です。