第三者視点
ーーとある
先頭で馬を駆るのは
それに並走するのは
昨日、望まずながら敵対した
夜の内にお互いの事情を打ち明け、しばらくは行動を共にする事にしたのだった。
《あぁ・・そうだねマリー。
無実の君を僕は処刑したんだ。
こうなるのはーー当然の因果だね。》
《お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした王妃。ですが、私もマリー様とこうして再び相まみえる事ができたことを嬉しく想います。》
「・・・・。」
アマデウスは(完全に自分をスルーして)良い顔をして消えっていった知人達を。
初恋の少女の馬にーー騎乗スキルがないのでーー相乗りしながら思い返す。
(サンソンの奴はともかく。
デオンは戦力的にこっち側に来てほしかったな。)
窮地のフランス国民をマリーが放って置く事など出来ないと初めから予測していた為。
彼は
おかげで今の彼らの戦力はライダーとキャスターとランサーの3人だけとなってしまった。
しかもランサーことエリザベートの出す破壊音波はたやすく自身を行動不能にする恐ろしいデメリット付きである。
正直な話、今後の戦闘には不安しかない状況であった。
(ハァ・・こんなの僕のガラじゃないんだけど。
また
生前は己が急逝した為、何も出来ず死なせてしまった少女を。此度はなんとしても護ろうと模索するアマデウス。
(アマデウス・・ごめんなさいね。)
そんな初恋の彼の想いに薄々気づきながらも、フランス王妃としてーー民の幸せを第一に考えると云うーー己の信念を曲げられぬマリー。
彼女は背後で頭を悩ませるアマデウスに申し訳なく思いつつ、隣の白銀の騎士と言葉を交わす。
「元師さん。
このまま行けば今日中には目的の街に着けるかしら?」
「ええ。道中、このまま怪物達と遭遇しなければ日が落ちる前に着けるでしょう。
・・・貴女達には命を救われ、馬を用意して頂き。更に今もこうして助力して頂いている。
なんとお礼を言ったらいいか。」
ジル・ド・レェは後ろを振り返り、マリーの召喚したガラスの馬達に乗る兵士らを視界に捉える。
砦を脱出する際にわかったのだが、兵士達の人数に対して馬の頭数が僅かに足りなかったのだ。
馬に乗れない兵士は徒歩となるが、それに合わせて進んでいては街に至るのに数日はかかる。
かといって砦に置いていくことは彼らに『死ね』と言っているのと同義であった。
そんな彼らに快くマリーは自ら喚んだガラスの馬を貸し、無事にこの件は事なきを得たのであった。
「彼らを置き去りにせずに済んだのは貴女のおかげです。改めて心から感謝致します。
未来の王妃殿。」
「まあっ!この時代の人にそう呼んでもらえるなんて。ふふっ・・でも、そんなに畏まらなくていいのよ?
気軽にマリーって呼んでちょうだい!」
「え?あっ、いや。さすがにそれは・・・」
天真爛漫なマリーの発言に戸惑い、言葉を濁すジル・ド・レェ。
彼とて恩人である少女の可愛らしい《お願い》に応えてあげたいという想いが無いわけではない。
けれど、仮にも未来の自国の王妃を呼び捨てというのは。軍人である彼には《不敬》に感じられ、どうしてもその《お願い》を了承する事は出来なかったのであった。
「ちょっと!アンタ達!
人が頑張って空から敵がいないか見回ってるって云うのに。頼んだ当の本人達が楽しくお
そんな彼らに一団の頭上から異を唱えたのは竜の翼を背から生やした少女ーーエリザベート。
彼女はアマデウスの口車にまんまと乗せられ、上空からの周囲の警戒を1人任されていたのだった。
だが、そんな中(本人いわく)健気に働く自分を放って楽しく会話に花を咲かせる眼下のマリー達に彼女は不満を覚え。ついに我慢できず抗議の声を上げたのだった。
怒りのまま竜骨槍をブンブンと振り回し、急降下してきたエリザベートに思わず仰け反るアマデウス。
「あっ、ぶないなあっ!
危険なのはその壊滅的な歌のセンスだけにしてくれよ。まったく・・マリアに当たったらどうするんだ。」
「ぐぬぬ・・何よっ!
どいつもこいつもマリア!マリー様って!
ロイヤルだかアントワネットだか知らないけど。
私だって、私だってがんばってるんだからっ!!」
呆れ顔のアマデウスにエリザベートは泣きそうな表情で愚痴を漏らす。
アイドルの頂点ともいえる
敵すらも
頂点への道を挫折しかける少女。
夢を諦めそうな彼女へと輝きを形にしたかのようなアイドルの少女は優しく声をかける。
「あらあら、エリちゃんったら。
寂しかったの?仲間はずれにしてしまってごめんなさいね。」
「はあっ!?ベベ別に寂しくなんてないし!
それにエリちゃんって何よっ!?」
「お友達は愛称で呼ぶものでしょう?
だからエリちゃん♪
大丈夫。エリちゃんが頑張ってるのはちゃーんとわかってるわ。よしよーし。」
「な、何言ってんのよ!?友達っ!?
って、勝手に触ろうとしないでよ!!」
まさかの
頬を染めながらも、最後の意地で頭を撫でようとする彼女の手を回避した。
(しっかりするのよエリザッ!
あの女は私のいずれ越えるべき壁。
打倒すべき目標。
と、友達だなんて慣れ合う関係じゃないのよっ!!)
クラリと魅了されかけた己の精神を奮起させ。
彼女はビシリッとマリーへ人差し指を突き付け、宣戦布告する。
「私は貴女の友達になんて絶対ならないわ!
そうやって誰も彼も惑わして意のままに懐柔できると思ったら大間違いよっ!!」
「?・・ああっ!
エリちゃんは恥ずかしがり屋さんなのね。」
「違ーーうっ!!
ああもう見てなさい!
必ずトップアイドルの座に登り詰めて吠え面かかせてやるんだから!!」
直前の落ち込みようが嘘のように元気に捨て台詞を吐き、上空へと戻るエリザベート。
その様子をマリーは元気になって良かったと笑顔で見送り。
ジル・ド・レェは見守っていた少女達の一連のやり取りを微笑ましく思い。
アマデウスはーーー
「素直じゃない・・。」
どこぞの嫌いな処刑人を脳裏に思い浮かべながら、苦笑の後にそっと溜息を溢したのだった。
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ーーーそして場面は最後のマスター達のもとへと舞い戻り、当の藤丸立香は。
「おのれええええぇぇっ!!!!
安珍っ!!この大嘘つきめぇええっ!!!」
怒れる清姫からの逃走真っ最中であった。
夜のランスロットの襲撃から続いてこの状況、悲惨である。
「だから私、嘘ついてないよ!!
ホントに貴女の旦那様じゃないし!
安珍って人でもないんだって!!」
疾走しながら藤丸立香は背後の恐ろしい形相の少女へと何度目かの無実を訴える。
彼女のその言葉は真実であった。
しかし、その真実をーーー藤丸立香が
「ああああ″ああああ″あっ!!!!
またわたくしを
またわたくしから逃げようというのですね!!!
ひどいひどいひどいひどい憎い憎い憎いにーー憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎ッ!!!!!」
《ヒィイッ!?立香ちゃん!
何を言っても今の彼女には無駄だよっ!!
むしろ逆効果で火に油を注いじゃってるから!!
ヤバさがヒートアップしちゃったから!!》
「じゃあ、どうすればいいの!?」
《もう少しそのまま粘れるかい?
後ろのマシュ達と急いで相談するから。
苦しいだろうけど、必ず何とかするから後少しだけーー》
「このまま走って逃げてればいいの?
うん、わかった!」
《がんばってーーーって。えっ、ええっ?
立香ちゃん息とか苦しくないの!?
けっこうな距離走ってる筈だけど。》
「?、大丈夫だよ?
ちょっと疲れたけど、まだまだ余裕っ!」
《あっ、うん。そっか・・・ごめん。
君のスタミナ舐めてたよ。》
体力お化けの本領を発揮する藤丸立香に、度肝を抜かれるロマン。
思わず謝罪するも当の本人はその謝罪の意味が解らず、軽快に脚を動かしながら首を傾げるばかりであった。
未だ息をほとんど切らさず、背後から迫る
反対にそのサーヴァント達は、必死の体で清姫の背を追いかけていた。
「くぅ!全然追いつけません!
先輩、脚が遅いサーヴァントですみません!!」
「魔術で《身体強化》している私達より速いなんてっ!マスターは本当に生身の人間なんですかキャスターッ!?」
「ああ。その筈、なんだがなぁ・・」(遠い目)
「いやー。あんなにも熱烈なラブコールを女性からされるなんて、彼女も隅に置けない。さすがギャラハッドが認めたマスターだ。」
「黙れ《KY騎士》。
そんなに下のモノが要らないなら去勢して身軽にしてあげましょうか?」
「」←ランスロット
殺意を滲ませた
彼は「
・・・それはさておき。
藤丸立香、清姫、マシュ達という順番で無人の平原で追いかけっこを続ける一同。
この状況を打破しようとするロマンの通信が彼らに入る。
《マシュッ!キャスターくんっ!》
「おっ、やっと来たか。」
「ドクターッ!先輩の様子はどうでしたか!?」
《『まだまだ余裕』だってっ!!》
「「「マジ(です)かっ!!?」」」
およそ人間離れしたマスターの体力に、サーヴァントたる彼らもまた驚きを隠せない。
しかし、ロマンはそれでも藤丸立香が一般人より身体能力が優れているだけの《ただの人間》である事を理解していた。
《僕も驚いたよっ!
でも、彼女の
いつまでもこうしては要られない。
急いで何か打開策を考えないとっ!》
「策、ですか・・。」
通信先のロマンの台詞にマシュ達は頭を悩ませる。
「ッ!!(サッ!)」←ランスロット挙手
良い案を思いついたのか、自信に満ちた表情で勢い良く手を上げる黒騎士。
「とにかくあの蛇の嬢ちゃんを止めねぇ事には話になんねぇな。」
「・・誰かが足止めをするしかないと?」
だが、華麗に皆に無視されるランスロット。
ーーー酷な扱いである。
「っ!!(サッ!)」←ランスロット挙手
それでも彼は諦めない。
再度
「いや、誰かじゃねぇーーー俺が行く。」
「「っ!!」」
けれど、非情にも彼の主張は再び無視される。
ーーー不憫すぎる扱いである。
「《令呪》でマスターと(蛇の)嬢ちゃんの間に俺を転移してもらえれば、後はこっちで上手くやる。
『主君と女は殺さない』主義だからな。
倒せはしねぇが、足止めの役割ぐらいはきちんと果たせるぜ。」
「ですが、それだとキャスターさんがっ!」
「そんな策は駄目ですキャスターッ!」
「心配すんな。俺の実力は嬢ちゃん達も知ってんだろ?」
「それはーー」
「ッ!ッ!(サッ!サッ!)」←ランスロット挙手
シリアスに交わされる会話にも負けず。
ついに、これが最後と言わんばかりの連続挙手。
ーーーこれは無視を続けていた
「もうっ!
さっきから何なんですかランスロット卿っ!!
喋っていいので意見があるなら早く言ってくださいっ!!」
「っ!許しが出たかっ!
ならば私の考えた策をまず聞いほしい。」
その様は我が子に良い所を見せたいと、一心にはりきる父親そのものであった。
「俺のより良い策があるって・・?」
そんなランスロットに対し、己の策を否定されたも同然なキャスターの顔に若干の苛立ちが浮かぶ。
それに気づいたランスロットは、真摯に彼へ謝罪の意を述べた。
「ああ、すまない。
君にケチをつけるつもりではなかったんだ。
ただ、私の策の方が誰が一人を危険に晒す必要がない。それだけで・・。
君の策を実行するかは、私の話を聞いてから決めてほしい。それからでも遅くはないだろう?
キャスター。」
「・・・・まあな。わかった。
そこまで言うなら聞いてやるよ。」
「ありがとう。それでは話そうか。
私の考えた策はーーーー」
キャスターの了承も得たランスロットは、おもむろに己の考えた策を皆の前で公言する。
それは・・・
「私の持つ《擬似宝具》ーーーF-15J戦闘機の背部に全員でしがみつき。
《それ本気で言ってるのかい!?
冗談じゃなくてっ!!?》
「アンタ。頭、大丈夫か?」
「あっ。忘れかけていましたが、彼もバーサーカークラスでしたね。」
「もう二度と口を開かないでください。
サー・ランスロット。」
体力的な疲労とは別の理由で3人のサーヴァントは頭痛を覚え。ロマンは管制室で唸りながら頭を抱えたのだった。
ーーーこうしている間にも彼らは走る。
平原を西へと向かい。駆ける。駆ける。
その先にあるは・・・奇しくも
かくして彼らの集結の地は決まった。
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※いったい何日ぶりの投稿なのか(白眼)
本当にいつも遅くてすみません。
今後も公私ともに慌ただしくなりそうなので、亀更新表記にします。
お待たせしてしまって読者様達には申し訳ないです。
えー、話は変わりますが(おい)←
F-15J戦闘機の最大速度はマッハ2.5。
瞬間最大速度に至ってはマッハ2.7。
ちなみにクー・フーリンの投擲する《
キャスニキいわく「俺の投げる槍より速いもんに生身の人間が(体力お化けなマスターでも)しがみつけるかっ!」との事。
・・・・・出来ない、よね?(震え声)
ランスロットの策は一人だけじゃなく、皆を危険に晒す
と云うオチでした。
次回は魔女と邪竜のハートフルストーリーになる、はずですっ!