コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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美しく輝くモノ

 

第三者視点

 

 

 

キラキラ。キラキラ。

 

 

太陽の光を反射しながら、金色の輝きがオルレアン城の近くに降り注ぐ。

 

 

キラキラ。キラキラ。

 

 

まるで光の雨のように降る美しいそれらの正体は黄金。フランス中から集められた金、もしくは金で装飾された美術品の(たぐ)いだった。

 

 

「アハハハハハハハハッ!!!」

 

 

次々と国中に散らばったワイバーン達が、回収し(奪っ)た黄金を空から落としていくのを眺めながら。

竜の魔女(ジャンヌ・ダルク・オルタ)漆黒の邪竜(ファヴニール)の傍らで高らかに嗤った。

 

 

「アハハッ!見てよファヴニールッ!!

この光景、まるで()の祝福の光を私達が受けているみたいじゃない?」

 

【・・・・。】

 

 

人の背丈をとうに超え、重なり合い。

まるで山のように積み上がった黄金の数々。

その黄金の数に比例するように。

フランスの民達は血を流し、焼かれ、無残な屍となった事は言うまでもないだろう。

 

怨嗟で穢れしその金の光が、傍からは神聖な主の光に見える光景を。魔女は滑稽だと嘲笑う。

そして、その悲劇の分だけ己が《本物》へと近づいたと想うと彼女の心は歓喜に震えた。

 

 

「もっと!もっとよっ!

もっと街を、人を燃やし尽くしなさい。

黄金を奪って来なさいっ!」

 

【ーーー魔女。】

 

「ファヴニール、貴方も喜びなさい。

貴方の大事な黄金がこうして戻ってきているのよ?奪われた貴方の宝を取り戻す度に、私も《本物》に近づいていく・・・素晴らしいことです。」

 

 

ジャンヌ・オルタは召喚した際に己の邪竜に告げたーー『フランスの民がファヴニールの黄金を奪った』というーー偽りの言葉を(もと)に。

己を《聖女(贋作)》ではなく《魔女(本物)》と呼んでくれた彼と、悦びを分かち合おうと声をかける。

彼女の伸ばした小さな手は、慈しみをもって黒き巨竜の鱗を撫でた。

 

 

「ファヴニール・・愛しい私の竜。

貴方だけが私の味方・・。」

 

 

魔女は《贋作》たる自身の存在を肯定してくれた邪竜に、短い期間で深く依存していた。

彼と言葉を交わし、触れ合い、心を通わすことで彼女は己の形を知り得(認識す)る。

彼と共にある事で、己は《竜の魔女》であると云う揺るがぬ確証(自信)を得ることが出来る。

 

ジャンヌ・オルタ(魔女)にとって、ファヴニール(邪竜)はもはや召喚獣(使い魔)などではない。

己が己たるのに必要不可欠な唯一無二の存在と化していた。

だがーーーいや、だからこそ。

 

 

(絶対に、絶対に。

気取らるわけにはいかない!

この黄金が彼の宝じゃないだなんて。

あの言葉が嘘だったなんて。

ファヴニールだけには、知られるわけにはーっ!!)

 

 

傾倒する邪竜に『黄金に関する真実』を知られる事を、魔女は何よりも恐れた。

己の本来所有する宝が此処には無いと知れば、彼はこの地を早々に去るだろう。

虚偽をついた己を見限り、彼は主従契約の破棄を求めるだろう。

 

ファヴニールの存在に執着する今のジャンヌ・オルタにとって。

彼が自身の前から居なくなる事はとても耐えられるものではなかった。

 

それ故に彼女は嘘を貫く、貫き続ける。

暗闇で迷う幼子が差した一筋の光を必死に追い求めるかの如く。足元で蠢く蟲達を踏み潰しながらも我武者羅に。

傍にいて欲しいと強く乞い願う()を引き留める為、魔女(彼女)は唯一の味方である筈の邪竜()を偽り続ける。

 

 

【ーーー。】

 

 

触れる巨竜に比べて小さ過ぎる手を震わせ。

どこか縋り付くような眼差しで己を見上げる魔女。

そんなジャンヌ・オルタの姿を。

真相を知らぬ(偽られている)筈のファヴニールは不可解な事に、慈愛のこもった瞳で見下ろしていた。

 

・・実のところ、ジャンヌ・オルタの必死の想いも虚しく。邪竜は薄々、己の元へと集まる黄金が自身が生前から所有する《己の(黄金)》ではないと勘付いていた。

 

それは己と似た境遇のーー生みの親に信頼を裏切られたーー魔女に情を寄せた事で。

彼の中の黄金()への異常なまでの執着が薄まり。それ以外のもの・・つまり周囲や他人へとしっかりと意識を向けられる程に正気を取り戻しつつあったからだった。

元々、彼の心を狂わせていた《呪いの腕輪》は生前にジークフリートとの戦いの際に《呪いの聖剣(バルムンク)》により破壊されていた。

死後のファヴニールはその呪いの残滓に囚われていた為、キッカケさえあれば彼は何時でも《強欲の呪い》から解放される身ではあったのだ。

一度《邪竜》と化したその肉体は、二度と《人》の姿に戻る事は叶わないが・・。

 

そう云った経緯により、ファヴニールはジャンヌ・オルタの嘘に程なくして気づいた。

 

しかし、彼は魔女の危惧した予想を裏切り。

ジャンヌ・オルタとの契約を破棄しようとはしなかった。それどころか彼女の嘘を黙認し、《贋作》たる彼女が《本物》に至れるよう進んで助力する腹積もりでいた。

 

ーー何故、彼はこの様な行動に出たのか?

 

呪いに囚われし彼の心の琴線に触れた召喚主の叫び。

理不尽な世界への憤怒に燃え立つ(同色)の瞳。

底知れぬ憎悪を内包した魔女の狂笑。

 

ーーまず彼がそれらに覚えたのは『共感』、『同情』、『理解』。

続いて魔女の嘘に気づいた時、抱いたのは『怒り』と『失望』。

けれど、魔女に対するそんな《負の感情》は彼の内から程なくして消え失せた。

 

己の名を嬉しそうに呼ぶ魔女の弾む声が。

縋るように鱗に触れる温かな小さな手が。

ふとした瞬間に、向けられる彼女の微笑みが。

 

ファヴニールの胸の奥で暗闇に沈んでいた。

人であった頃(彼本来)の愛情深い人格を揺り動かし、目覚めさせたからだった。

邪竜の身の内に蘇ったのは『庇護欲』、『親近感』、『慈愛』。

 

湧いたそれらの想いは《負の感情》を簡単に吹き飛ばし。

全て、今の彼にとって唯一の身近な存在である魔女(召喚主)へと凝縮された。

 

ーー結果、ファヴニールはジャンヌ・オルタに対し『家族』や『兄妹』に似た身内の様な愛情を抱くようになっていたのだった。

 

それ故に、《邪竜()》はいつしか《黄金()》ではなく《魔女()》の為に。

その呪われた異形の身を自ら望んで行使する。

 

 

【ーーああ、その通りだ。

安心するがいい魔女。

俺は・・オマエの味方だ。】

 

「ファヴニールッ!」

 

 

己の竜の応えに喜び、抑え切れぬ笑みを溢す《竜の魔女(ジャンヌ・オルタ)》。

邪竜は白い頬を淡く染めた、己の魔女の輝くような微笑みを目にし。

自身が所有する《黄金()》の輝きよりも、よほどコチラの方が美しいと想った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその《黄金()》は誰の為に使うつもりだったのか。

誰の犠牲をもって手に入れたのか。

誰の為に己の《(フレイズマル)》を殺めたのか。

 

実の弟を忘却の海に沈め、置き去りにし。

未だ《己の犯した真の罪(オッテル)》を彼は思い出せぬままに。

 

………………………………………………………………………………………………………

 

 

ーー時は狂える父親(キャスター)凶蛇(清姫)と激闘を繰り広げる2日前。

コンラが父親(ランサー)祖父(ルー神)の伝言を伝えてから、数時間経過した頃に遡る。

 

昨晩、異形の怪物達が我が物顔で闊歩したとは思えぬほど街は静寂に満ちていた。

しかし、空高く昇った日の光の下。

壊された家屋や街中に残る戦いの痕跡が、彼らに昨夜の出来事が一夜の悪夢では無かった事をはっきりと示していた。

その街の外れにある東の広場にて、1人の男と1人の女は険悪な雰囲気で向かい合っていた。

 

 

「私は反対よ。

今後、コンラを積極的に戦闘に参加させるなんて!」

 

 

女ーーコンラのマスターたるオルガマリーは、怒りを滲ませた表情で。

己のサーヴァントたる少年の父親であるランサー(クー・フーリン)へと非難の声を上げた。

彼女は護るべき対象である息子(コンラ)を、生死の境である戦場へ進んで置こうとするランサーの発言が信じられなかったのだ。

 

 

「アンタ。あの子を助けに来たんでしょう?

死なせたくないから護りに来たんでしょう?

それなのに、わざわざ危険な目に合わせようとするなんて・・何考えてるのよ!?」

 

 

思わず湧いた不信感から、山吹色の瞳で敵意を(あら)わに相手を睨めつけるオルガマリー。

そんな彼女へと、ランサーは少しばかり面倒くさげな様子で頭を掻き。理由(わけ)を説明する。

 

 

「死なせたくねぇから、オレ達が手助けできる今のうちにアイツを強くしてぇんだよ。」

 

「?、どういう意味よ?」

 

「わかんねぇのか?

此処はまだ《第一特異点》だ。

此処の定礎が上手く復元出来たとしても、アイツの旅はまだ続く。

その旅の終わりまでの長い道中、オレ達が必ずコンラの傍に居続けられるとは限らねぇだろうが。」

 

「ーーッ!」

 

 

その言葉に、オルガマリーは彼の言わんとする事を察し。ハッと息を呑んだ。

彼女の脳裏に思い起こされるのは昨夜の出来事。

敵の策略により、分断されてしまった仲間達。

この先、同じ事が起こらないとは決して断言出来ない。

 

不慮の事故か、あるいはまた敵の手によって。

彼ら3人がバラバラになってしまった場合、独りになってしまったコンラを護れるのはコンラ自身しかいないのだ。

だからランサーは息子が不測の事態に自らの身を護れるよう。自分の眼が届く今のうちに戦闘の経験を少しでも多くコンラに積ませたかった。

コンラが強くなる=コンラの生存確率が上がるという事に直結するのだから。

 

 

「オレだって出来ればコンラをもう戦場には立たせたくねぇ。アイツは・・優し過ぎるからな。

でも、今のオレ達の状況じゃ危険から遠ざけるだけじゃアイツを護れねぇ。

ならーーこの方法しかねぇだろう。」

 

「・・・・それ、は。」

 

 

オルガマリーの胸中に湧いた怒りはランサーの意図を理解した事で沈静化した。

しかし、代わりに敗北感のような苦い感情が彼女の胸を満たす。

彼女にとってコンラは『特別』で。

そんな大切な彼を『取られたくない』と、ランサーに対してオルガマリーは強い対抗意識を抱いていたのだが。

 

息子の先の事までを考え、的確な方針を打ち出した父親に比べて。

目先の事しか見えず、自身の『コンラを失いたくない』という想いを優先させてしまった己が。

酷く情けなく、ちっぽけで卑しい存在の様に彼女は思えて・・。

 

 

(こんな私が、あの子のマスターでいいのかしら?)

 

 

(つの)る不安が、オルガマリーの僅かばかりあった自信を大きく揺るがす。

 

昨夜の戦いの最中。

自分はすぐ側に居ながらも何も出来ず、コンラを2度も眼前で喪いかけた事実が。

朝日に照らされる。

父親に頭を撫でられ、嬉しそうに笑い甘えるコンラの姿が。

 

彼女の心をより昏くさせ、追い詰める。

 

 

(私、は・・この男に勝てない?)

 

 

コンラの《父親》であり、偉大な《英雄》であるクー・フーリン。

対して、自分は代わりのきく《マスター》で《カルデア所長》程度の肩書しか持たない女。

 

はじめから勝負はついていた。

いや、勝負にすらなっていなかった。

 

 

(ーーあぁ。きっと、私なんかより。

あの子に必要なのは・・コイツなんだわ。)

 

 

そう思い至ったオルガマリーは、ズキリッと痛む胸を押さえ。苦痛に歪む顔を伏せた。

本人達は気づいていないが、彼女とコンラは根本的な性質が似通っていた。

 

それは強い《承認欲求》を持っているという事。

誰かに認めてもらいたい。

誰かに必要として欲しい。

誰かに・・・愛して欲しい。

 

そんな彼女の切なる願いに応えたのが、同じ想いを持つコンラだったのは偶然なのか。

はたまた必然だったのか・・。

 

ランサーの出現により、その相手を奪われたも同然なオルガマリーの心は。

喪失の痛みに軋み、悲鳴を上げる。

それでも、大切なーー淡い恋心を抱く少年の為に必要ならばと。

彼女は手を痛い程に握り締め、その胸の激痛を受け入れようとした。

 

 

「父さんっ!マスターッ!」

 

 

だが、そんな彼女の昏い決意を踏み止まらせたのもまた。当事者たる少年ーーコンラだった。

 

……………………………………………………………………………………………………

 

 

※ハートフルストーリーって何でしたっけ?(白眼)

ジャンヌ・オルタは青髭の旦那の代わりに邪竜に依存してしまいました。

きっと原作よりも反抗期が酷い事になる。

再会したら、彼女の旗が唸りを上げてお父さん(ジル・ド・レェ)に襲いかかりますね。

そしてファヴニールこと《長男》はジャンヌ・オルタを《末の妹》に認定。

これは・・甘やかすぞ(確信)

 

話は変わりますが。

UA9万突破、誠にありがとうございます!

亀更新になってしまいましたが、がんばって引き続きコンラくんの人理修復の旅を書いていきますので。今後もどうぞ宜しくお願い致します!!

 

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