コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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ドラゴンライダー

 

第三者視点

 

 

 

「父さんっ!マスターッ!」

 

 

突如、頭上からーー彼らが聞き間違える筈のないーー少年の声に呼ばれ。

ランサー(クー・フーリン)とオルガマリーは、ハッと反射的に顔を上空へと向けた。

そして眼に飛び込んで来た光景に唖然とする。

 

 

「見て見てっ!ドラゴンライダーッ!!」

 

 

なにせ2人の話題の主が。

空を飛ぶワイバーンの背に乗った状態で『シャキーンッ!』と決めポーズをとり《竜騎士(ドラゴンライダー)コンラ》と化していたのである。

ーーーどうしてそうなった。

 

 

「待て待て待て待てっ!!

お前どこで『ソレ』拾ってきたっ!?」

 

「コンラッ!?

危ないっ!危ないからぁあっ!!」

 

 

どこぞから拾ってきたワイバーンを手懐け、乗りこなしているらしい息子に。

『こいつライダークラスの適性もあったのか』と内心で戦慄しつつ、思わず疑問を投げかけるランサー。

封じられていた《生前(コンラの時)の記憶》を取り戻した今の息子の実力ならば。いくら相手が《竜種》でも、ワイバーン程度に遅れはとるまいと。彼はコンラの身の心配はあまりしていなかった。

 

対して、生前のコンラの実力を知らぬオルガマリーは。危険生物に乗って上空を飛ぶ《想い人》の姿に衝撃を受け、慌てふためく。

数秒前までの苦痛をともなう昏い想いや決意など、今や彼女の頭の中から消え失せ。

代わりに脳内を埋め尽くすのは『もしもワイバーンに襲われたらっ!』、『もしも振り落とされたらっ!』と。

己のサーヴァントの身を心配する単語ばかりであった。

 

そんな眼下の保護者達の思いなど露知らず。

金の髪や服を風にはためかせ、楽しげに《ドラゴンライダー》の気分を味わうコンラ。

彼は自分の『カッコイイ姿(渾身の決めポーズ)』を大好きな2人に見てもらえた事を喜んだが。

それだけでは飽き足らず、騎乗するワイバーンへと笑顔で更に強請(ねだ)った。

 

 

「マルちゃん!

もっと高く!もっと速く飛んでっ!!」

 

《こやつ、また無茶な注文を・・っ!》

 

 

ワイバーン改め。

死したワイバーンの亡骸から血を摂取し、ワイバーンへと変化したフレイズマル。

彼は背に乗るコンラの無邪気なお願い(ねだり)に頭を抱えたくなった。

 

 

………………………………………………………………………………………

 

 

2人で話したい事があるという、ランサーとオルガマリーを広場に残し。

海魔やワイバーンの討ち漏らしが居ないか、街を見回る事にしたゲオルギウス達。

それにフレイズマルと共に付いて行ったコンラは。

石畳に転がるワイバーンの亡骸にガブリと噛みつき、直接血を飲み始めたカワウソ(フレイズマル)の姿に顔をサッと青褪めさせた。

 

 

「きゅ、吸血カワウソ・・可愛くない。

いつの間にあの《吸血鬼男》に噛まれたの?

マルちゃん。」

 

《何だその珍獣だか幻想種だかわからん生き物っ!?どこも噛まれとらんわっ!!》

 

「えっ?じゃあ、どうして・・」

 

《こんなクソマズイもの、ワシだって好き好んで飲んどるわけではない。これは魔力補給の為に仕方なく飲んどるんだ。

ーーーまぁ、それだけと云うわけでもないが。》

 

 

てっきり昨夜の敵であった《吸血鬼男(ウラド三世)》に血を吸われ、《吸血鬼化》してしまったのかとコンラは危惧したが。それは彼の杞憂(きゆう)であったようだ。

 

 

「そっか。なら良かった!」

 

《・・・・。》

 

 

フレイズマルが最後に零した呟きには気づかず、素直に安堵の笑みを浮かべるコンラ。

その笑顔に亡くした次男(オッテル)を重ね、複雑な心境になる邪竜の父親であったが。

付近の見回りが済んだのか。

こちらへと歩み寄って来る《聖人》2人の姿を目にし。彼はカワウソから少年(コンラ)の姿へと瞬時にその身を変えた。

 

 

「おやっ・・撮影タイムは終わりですか。

吸血カワウソなど珍しいので、ぜひ記念に撮りたかったのですが。」

 

「きゅうけーーーお主もか。」

 

 

構えていたカメラを残念そうに下ろすゲオルギウスに。フレイズマルは呆れ、思わず脱力する。

 

 

「・・というか、ゲオルギウス。

貴方そのカメラどこで手に入れたのよ?」

 

 

時代的に所持している筈ない品物を手にしている聖人仲間に、マルタが訝しげに問えば。

彼は顔を綻ばせながら快く答えた。

 

 

「このカメラですか?

コレはこの地(フランス)に召喚された時から何故か持っていまして。此処に辿り着くまでの間、記念にと心の(おもむ)くままシャッターを切ってきたのですが・・・良ければ見ますか?」

 

「いいの?見たい!」

 

「へえー。少し興味あるわね。」

 

「ワシは遠慮する。」

 

 

辞退し、血を頂いたワイバーンの亡骸から離れて瓦礫に腰を降ろすフレイズマル。

そんな彼を余所に、ゲオルギウスは撮影した画像をカメラの背面モニターでコンラとマルタに見せる。小さな四角の枠の中に次々と映っては消えるのは。

中世フランスの自然豊かな風景や、彼の愛馬であるベイヤード。そして・・。

 

 

「あっ!マルタさんだ!」

 

「」←マルタ

 

 

巨大な海魔相手に拳を振るう、勇ましい聖女の姿だった。

ーーーゲオルギウス先生。無許可の撮影は犯罪ですよ?

 

 

「すごい!マルタさんカッコイイ!」

 

「ここ、これ!?これ何っ!?

いつの間にっ!!?」

 

「ああ。それは貴女の昨夜の戦いがあまりにも見事だったもので。同じ聖人として、この勇姿をぜひ写真に収めたいと思い。ついーーパシャリと。」

 

「ついーーパシャリと、じゃないわよ!

消して。すぐ消して!今すぐ消しなさい!!」

 

 

彼女の世間での聖女像を粉々に砕きかねない画像の出現に。必死の体でカメラに手を伸ばすマルタ。

その気迫は撮影機器(デジカメ)ごと問題の(画像)データを粉砕する勢いで。

これにはお気に入りのカメラを壊されては堪らないと、ゲオルギウスも少しばかり本気にならざる負えなかった。

彼は素早く身をひるがえし、マルタの手を躱すと。大人しく傍らに控えていた賢い愛馬の背に颯爽(さっそう)と跨った。

 

 

「ふむ・・これは仕方ありませんね。

彼女が冷静になるまで間、もう一度この近くを散策して来ます。少年は任せましたよ、フレイズマル。」

 

「いやいやいや。ワシ、キャスタークラスだし。

ぶっちゃけ変身術しか使えないから戦力外なんだがーー」

 

「全速力で行きますよベイヤード。ハッ!!」

 

「消せって言ってんでしょうがぁあああっ!!!!」

 

「ーーー聞いとらんな。」

 

 

ヒヒーンッ!と(いなな)き、美しい(たてがみ)をなびかせながら走り去る白馬。

その背に乗るゲオルギウスーーのカメラを狙い。

荒れ狂う聖女もまた、彼を追って走り出す。

 

あとに残されたのは、ポカーンと突然の事態に目を丸くするコンラ。

聖人達のフリーダムさに、疲れた顔で溜息をつくフレイズマル。

 

 

「ーーすまない。

今そこでゲオルギウスとマルタとすれ違ったのだが。彼らに何かあったのか?」

 

 

最後に、1人別行動で行っていた見回りから戻って来た。《竜殺し(ドラゴンスレイヤー)》こと、ジークフリートの3人となった。

 

 

「あー、少しの。

たいした問題ではないから気にするな。

それよりその様子だと、そちらも討ち漏らしは居なかったようだな。」

 

「ああ。ワイバーンは死骸のみ。

海魔にいたっては《宝具》から召喚されたからか、死体すら残っていなかった。」

 

「そうか・・ご苦労じゃったな。ほれっ。」

 

 

フレイズマルは労いの言葉と共に、手の中にあった小さな丸い『何か』をジークフリートへ投げ渡す。

反射的にその『何か』を受け取った彼が、握った自らの手をそっと広げれば。現れたのは瑞々(みずみず)しい1つの『果実』だった。

 

 

「?、これは・・」

 

プラム(西洋すもも)だ。

此処に来る途中、民家の傍の木になっておった。

熟しているから美味いぞ?」

 

「無断で採っていいのか?」

 

「どうせそのままにして置いても腐って落ちるだけだ。なら、ワシらが食ったとて問題はないだろう?」

 

(・・そういうものか。)

 

 

フレイズマルの言い分にも一理あると。

若干(じゃっかん)気が引けつつも、有難くプラムを受け取る事にしたジークフリート。

簡単に言いくるめられてしまうあたり、彼の流され体質はやはり筋金入りのようである。

 

 

「ジーーー。」(ウズウズ)

 

「・・お主の分もちゃんとあるわ。ほれ。」

 

「っ!ありがとうマルちゃん!」

 

 

隣から向けられる物欲しそうな視線に。

視線の正体である少年へと、フレイズマルは苦笑と共に果実を数個分けてやる。

コンラはパァアッ!と破顔しその実を嬉しそうに受け取った。

ーーどうやら邪竜の父親は(息子達に似た)2人にはどうしても甘くなってしまうらしい。

 

それからーー左からフレイズマル、コンラ、ジークフリートの順にーー3人並んで瓦礫に腰掛け、彼らはモシャモシャとプラムを味わう。

久しぶりに甘い物を口にし、甘味大好き少年コンラは夢中で熟した丸い実に齧りつく。

そんな彼の様子を温かい眼差しでジークフリートとフレイズマルは眺めていたが。

ふいに、脇に転がるワイバーンの死骸が目に入り。竜殺しは気遣わしげに、双子の如くコンラと瓜二つの姿の男へと声をかけた。

 

 

「フレイズマル・・また《血》を飲んだのか?」

 

「あぁ。魔力補給の為にな。」

 

「《竜種》の血に含まれる豊富な魔力(マナ)は確かに魔力の補給には効率的だがーーもう止めた方がいい。

貴方は俺の《血》も摂取したんだ。

これ以上は何かしら影響が出かねない。」

 

「言われずともわかっとる。

・・というか《ソレ》を狙って飲んどる。」

 

「っ!?」

 

「苦肉の策だが。

非力で1つの術しか使えぬキャスタークラスのワシが、邪竜と化したあやつを殺すには《コレ》以外に手がないのでな。

お主のおかげでファヴニールの《竜の因子》の分析は済んでおるし、さっき摂取した《血》で必要な《因子量》は得た。

あとは機を見て術を行使すればいい。」

 

「それは・・だが、それでは貴方はっ。」

 

「すべて覚悟の上だ。

どこぞの幸運な父親(ランサー)と違って。ワシにはもう、罪滅ぼしの手段が他には無いのでな。」

 

「・・・・。」

 

「ワシはーー《人》を棄て《竜》になる。」

 

 

フレイズマルの瞳に宿る、揺るぎない強固な意志に。

彼の覚悟が折れぬ事を読み取ったジークフリートは、説得を試みようと開いた唇を静かに閉じる。

 

彼は知っていたからだ。

誰の中にでも、けして《譲れぬモノ》が在ると云う事を。

サーヴァントとなった今の彼が、死に際に望んだ『自らの信じるものの為に戦う者(正義の味方)』で在ろうとしているように。

 

 

(ーー?、竜?)

 

 

邪竜に至る可能性のあった者(ジークフリート)と、自ら邪竜に堕ちることを選んだ者(フレイズマル)

 

彼らが頭上で交わすシリアスな会話に。

コンラはプラムを食べ終わった事でようやく意識を向ける事が出来た。

食べる事に集中するあまり、2人の話をほとんど聞いてはいなかったが。

かろうじて耳に届いた単語に疑問を覚え、彼は指についた果汁を舐めとりながら考える。

 

 

(マルちゃん。竜になるんだ・・ん?

でも、どうやって?)

 

 

しかし、その答えは彼のすぐ側に転がっていた。フレイズマルに血を摂取されたワイバーンの亡骸。それを眼にした少年の脳裏にパッと閃くものがあった。

 

 

(そういえばワイバーンも《竜種》なんだよな。そうか。マルちゃんは《飛竜(ワイバーン)》に自分が変身する事を、《竜》になるって言ったのか。)

 

 

残念ながらコンラの閃きは、フレイズマルの真意とは異なっていた。

けれど、《飛竜(ワイバーン)》の血を飲んだ今の彼が《ワイバーン》へと姿を変えられることは事実な為。

あながち的外れというわけでもなかった。

 

 

(ワイバーン・・ドラゴン・・ドラゴンライダー・・。)

 

 

友達(フレイズマル)が《(ワイバーン)》になれると知ったコンラの脳内に。《生前(アキラの時)》に観たファンタジー映画の映像が再生される。

 

心を通わせた《(ドラゴン)》の背に跨がり、雄々しく蒼穹を翔ける《槍兵(ドラゴンライダー)》。

 

施設のテレビ画面で幼い頃に観たあの時の衝撃が。感動が。目の前に期せずして訪れたチャンスに、心の内で蘇る。

 

 

「マルちゃん・・」

 

「む?どうした?」

 

 

ゴクリと唾をのみ、コンラは真剣な面持ちでフレイズマルに向き直る。

この機会を逃せばもう二度と今回のような好機は訪れないかも知れない。

そう思い至った彼は、決しの覚悟で頼み事を口にする。

 

緊張で肩を強張らせた少年が告げた願い。

それは・・。

 

 

「俺を《ドラゴンライダー》にしてくださいっ!!」

 

「ーーはっ?」

 

 

幼い(アキラ)が憧れ。

夢見。諦めた。

ドラゴンライダーになる(竜の背に乗って空を翔びたい)。』という、生前では絶対に叶わぬ《(願い)》だった。

 

 

………………………………………………………………………………………

 

 

「マルちゃん!

もっと高く!もっと速く飛んでっ!!」

 

《こやつ、また無茶な注文を・・っ!》

 

 

ーーそして時は、冒頭へと戻る。

 

 

コンラの切実なお願い(ねだり)を、彼に甘いフレイズマルが断れる筈もなく。

渋りながらもワイバーンへと姿を変え。

数十分前の彼はその背に小柄な体を乗せて、大空を舞った。だが、そこでフレイズマルにとって予想外の事態が起こる。

 

 

「マルちゃんっ!

父さんとマスターの所まで飛んでっ!」

 

《おい。この辺りをちょっと飛ぶだけと云う話じゃなかったーー》

 

「行って!お願いっ!」

 

《》←フレイズマル

 

 

諦めた夢が叶い、テンションがMAXを振り切れたコンラがまさかの暴走を始めたのだ。

彼は《我儘(わがまま)ボーイ》と化した少年に逆らえず、少年の保護者達の元へ飛んで来たはいいが。更なる追加注文を言い渡され、ジクジクと胃に痛みを覚えた。

 

チラリと眼下に視線を移せば。

こちらを見上げる青い髪のランサーと、挙動不審な過保護なマスターの姿が視界に入る。

(背にコンラが居るので可能性は低いが)迂闊なことをすれば朱槍と赤い魔弾が下から飛んで来そうで。

彼は内心で戦々恐々した。

 

 

《も、もういいだろう。コンラ?

ワシ疲れたし。お主のマスター達も心配して・・》

 

「やだっ!!」

 

《》←フレイズ(ry

 

「マルちゃんがもっと飛んでくれるまで。

俺、降りないからねっ!」

 

《〜〜〜っ!!》

 

 

聞く耳をまったく持たないコンラに。

元々忍耐強い方ではないフレイズマルの堪忍袋の緒は、ブチリと切れた。

 

 

《よーし!いいぞ。

お望み通りやってやろうではないかっ!

泣いても漏らしても止めないから覚悟しろよ、お主っ!!》

 

 

半ばヤケクソでそう吐き捨て。

両翼を力強く動かし、フレイズマルはコンラの望み通りに急上昇を始める。

そして十分な高さまで到達すると、今度は頭部を下に向け。加速しながら一気に急降下。

しかも、ただ降下するのではなく、時おり一回転したり。左右にカーブしたりと。

それはさながら某テーマパークのジェットコースターの如く。

 

 

「あはははははっ!!わーいっ!!

ひゃっほーーっ!!!!」

 

「だめぇっ!!止めてぇえええっ!!!」

 

「ーー。」

 

 

安全装置無しジェットコースターを全力で楽しむコンラ。

その光景に絶叫するオルガマリー。

さすがにコレは不味いかと、焦りはじめるランサー。

 

そんな混沌とした状況の中。

当事者2名(コンラとフレイズマル)以外の誰もが想像していた悲劇が、ついに起こる。

 

 

《うぷっ・・・酔った。》

 

「えっ?」

 

 

初めてのワイバーンの姿での飛行に加え。

慣れぬ急激な上下左右への連続運動。

フレイズマルの三半規管(さんはんきかん)はその激しい動きについていけなかった。

彼は重度の乗り物酔いに似た症状に見舞われ、目を回しーー結果。

 

 

《うぐっ、すまぬ。

もう・・げんかい、だ。》

 

「え、えっ?

マルちゃーーーあっ。」

 

 

地上から遥かに離れた上空にて。

ワイバーンの姿を保てずに、(人の姿の次に)最も魔力の消費が少ないカワウソの姿へと戻ってしまった。

 

 

「いやぁあああああっ!!!!」

 

「コンラッ!!」

 

 

宙へと放り出された少年の姿に。

幾度目かのオルガマリーの悲鳴が辺りに響く。

 

ランサーは瞬時に地を蹴ると。

またたく間に屋根に飛び乗り、息子の元へと一直線に駆ける。

視界の端に銀色が映り、一瞬だけ眼をそちらに向ければ。同じく落下するコンラを助けようと屋根上を疾走するジークフリートの姿があった。

しかしーー

 

 

(ーーー間に、合わねぇっ!!)

 

 

どちらも、少年が落下するだろう地点から距離が離れ過ぎていた。

 

間に合わない。

息子を助けられない。

また・・血に濡れた息子の(むくろ)を見る事になるのか。

 

ランサーは絶望に襲われながらも。

足掻くように届かないと分かっている手を伸ばす。

 

 

(届けっ!届けっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!とどけっ!)

 

 

けれど、あと少しの距離を父親は埋められない。

たった数秒の(とき)が縮まらない。

そして・・。

 

 

「ーーーコンラ。」

 

 

彼は息子を助ける事は叶わなかった。

だが、それは当然である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、父さん・・。」

 

 

コンラ自身が自ら喚んだらしい《穿く必勝の光槍(ブリューナク)》に両脚の膝裏を引っ掛け、空中に浮いていたのだから。

 

1メートルほど斜め上の場所で。

両手に目を回したカワウソを掴み、逆さまの状態でコチラを見る息子。

その姿にひとまず安堵し、続いて胸の内から湧き上がるフツフツとした怒りに。ランサーは己の目を吊り上げた。

 

 

「コンラ。おまえ・・わかってるな?」

 

「ひいっ!ご、ごめんなさい・・。」

 

 

ドスの効いた父親の声と剣幕に、身を縮こまらせる少年。その少年をーーなんとか届く事が出来た手でーー掴み。光槍から降ろすと。

ランサーは凄みのある笑顔で息子へとその言葉を告げた。

 

 

「仕置だ。今すぐ尻を出せ。」

 

「」←コンラ

 

 

かくして、フランスのとある街にて。

少年の悲鳴と《尻叩きの刑》の音が響き渡った。

 

 

……………………………………………………………………………………

 

 

※コンラくん。オシリペンペンの刑をくらうの回でした←

今回はランサーが怒るのも無理ないですね。

フレイズマルはおそらく所長に酷い目にあわされるでしょう。

・・すまぬ。作者が《竜騎士コンラ》という願望を叶えたかったばかりにっ!←

それにしても光の御子の息子はすぐにデッドラインを越えようとする。ヤリニキの胃は保つだろうか・・。

 

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