コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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魔女は嗤う

 

 

 

〘んん?おやおやー☆

お孫様、後ろ見てくだせぇ。

どうやらお仲間が戻って来たみたいっすよー?〙

 

「え?・・あっ、マルタさん達だ!」

 

 

父さん(と爺ちゃん)の武勇伝(クアルンゲの牛捕り)を真剣に聞いていた俺は。急に話を止めたソウェイルに促され、(中断された事を残念に思いながらも)渋々と後ろを振り返る。

すると、数時間前に唐突に走り去ったゲオルギウスとマルタさん。

何やら縄でグルグル巻きにした黒い荷物らしきモノを、背に乗せた白馬(ベイヤード)

そして姿の見えなかったマルちゃんとジークフリート。皆が揃って此方へと歩いてくる光景が目に入った。

(カワウソ姿のマルちゃんはジークフリートの肩に乗ってるんだけど。)

 

いきなり居なくなったからどうしたのかと思ったけど。この様子だと、どうやらマルちゃんとジークフリートはマスターと別れた後。マルタさん達の見回りの手伝いに行ってたんだな!

 

・・ん?

という事は。

最後までちゃんと見回りしてないの、俺だけ?

(プラム食べて、ドラゴンライダーして、武勇伝聞いて・・やばい。やばいぞっ!

つい楽しくて夢中になり過ぎたーっ!!)

 

自分だけ途中からサボっていた事実に気づいた俺は。罪悪感に駆られ、大慌てて皆を迎えに走る。

 

 

「お、おかえりなさいっ!」

 

 

怒られるか。

もしくは一言文句を言われる事を覚悟しながら駆け寄れば。

何故か皆にホッとした安堵の表情をされた。

(あれ?いま黒い荷物らしきモノがちょっと動いたような・・?)

 

不思議に思って聞くと。

なんと父さんに『仕置き』された時の俺の悲鳴は、街の反対側の端の方にまで届いていたみたいで。

(そんなに響いてたの俺の声っ!?自業自得とは云え、恥ずかしいなぁ。)

 

その悲鳴を聞いたゲオルギウス達は(距離があったから、しっかりとは聞こえなくて。《俺の声》という確証はなかったけど。)俺に何かあったのではないかと心配してくれていたらしい。

 

・・うう。

父さんと、マスターに続いて皆にまで。

俺はどれだけ周りに心配をかけているんだろうか。これは、今後からちゃんと気を引き締めないとっ!

 

 

「ーーお疲れ様。

思ったより遅かったわね。」

 

 

俺の後ろから、ゆっくりとした足取りで歩いて来たマスターが皆に労いの言葉を笑顔でかける。

すると、何故かマルちゃんが変な奇声を上げてジークフリート背中に隠れ。ジークフリートも顔色を悪くさせて数歩、後退った。

 

マスターは労っただけだというのに。

いったいどうしたし。

 

俺と同じくマルタさんは訝しむような顔で2人(1人と1匹?)を見つめ。

ゲオルギウスは何かに納得したように『ああ。もしや・・なるほど、それで。』と1人呟き、頷いていた。

 

ううむ・・まったくわからんっ!

 

俺が困惑しながらも、皆の顔をキョロキョロと下から見回していると。

(父さんは俺達から離れた所で、ソウェイルと2人ーー1人と1槍?ーー真剣な顔で話し込んでいる。)

 

ふいに、何処からともなく強い視線を感じた。

 

 

「オルガマリー。

実は・・少しばかりトラブルに見舞われまして。」

 

「トラブル?」

 

 

マルタさんとマスターが話している間に。その視線が気になった俺は、周囲に目を走らせ視線の主を探す。

 

 

「ブルルルッ」

 

「ーーあれ?」

 

 

視線が来る方向を見定め、そちらに眼を向けると。そこに居たのは1頭の白馬ーーベイヤード。

俺はまさかのお馬さんからの熱い眼差しに驚きながらも。嬉しくて自分の心が浮足立つのがわかった。

 

今まで、主人のゲオルギウスに許可を得ず。

勝手に触ってはいけないと思って我慢してたけど。これはあれだよね?

『さあ!私の自慢の美しい(たてがみ)を早く撫でてくれ!アニマルスキー(動物好きな人間)よっ!!』っていうあの子からのアピール(お誘い)だよね?

 

ベイヤードのサラッサラッなストレートヘアー。

もとい綺麗な鬣に触りたくて内心ウズウズしていた俺は。願ったり叶ったりな、お馬さんからのお誘いに大喜びでベイヤードに近づく。

そして・・・。

 

わぁあっ!!指通りがすごいっ!

サラサラキレイだっ!

撫で心地もサイコーッ!!

これはフォウくんのふわふわ毛並みに全然負けてないぞ。むしろサラサラ毛並み部門で一等賞とれるんじゃないかっ!?

 

俺は期待を裏切らない素晴らしい鬣の手触りを。頑張って背伸びしながら、両手を限界まで伸ばした状態で存分に堪能した。

(ナデモフする為ならば、この程度の苦労たいした事ではないのだっ!)←

よく分からないけど。ベイヤード自身はなにやら酷く動揺したように、何度も。

俺→ゲオルギウス→背中の黒い荷物、と顔を忙しなく動かしては。何かを訴えるような真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。

 

・・・・ふむ。

なるほど、わかったぞっ!

 

 

「『もっともっと私の美しい鬣を撫でて、褒めってくれ』って?大丈夫だよー。

そんなに急かさなくても、君の鬣が綺麗で凄いのは。俺、もう充分わかってるからねっ!」

 

「ブルッ!?」

 

 

お馬さん自身からの催促が嬉しくて。

俺は頬を緩めながら、一心不乱にナデナデをし続ける。

これぞアニマルスキー(動物好き)の本懐といわんばかりの状況に(伸ばした両手足がプルプル震えてきたけど。大丈夫だ、まだいけるっ!)至福に浸る俺はーーだから。

 

 

「むむぐ?むぐ。むぐむぐ・・む"むぐっ!

(鬣?違う。美しいのは・・君の声っ!)」

 

「・・・へ?」

 

 

気づくのが遅れてしまった。

すぐ側にあるモノが、ただの荷物ではなく。

口と四肢を縛られ、厳重に拘束された黒い服の男だという事に。

そして、熱い眼差しを俺に送って来ていたのはお馬さん(ベイヤード)ではなく。その背に乗せられていた、この黒服の男の方だったという事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲオルギウス達を襲ったトラブルーー黒いマントに、顔半分に不気味な仮面をつけた(素顔の部分は、何故か赤く腫れあがっている。まるで殴られた痕みたいだ。)男の人は。

名前を《ファントム》という、生前『オペラ座』の地下迷宮に棲んでいた怪人だそうだ。

 

《竜の魔女》が新たに召喚した《バーサーク・サーヴァント》ではないかと云うことで。

敵の情報をGETする為に、《座》には還さず捕虜にしたらしいんだけど・・。

 

 

「クリスティーヌ・・ああっ!

君の声は、まさにクリスティーヌ。

我が愛しき歌姫のそれ・・っ!」

 

「うぇ!?くりす?えっ?・・だれ?」

 

「なん、ですってっ!?」

 

「・・・・マジか。」

 

〘わーお☆〙

 

 

どうしてか、この怪人。

生前に想いを寄せていた《クリスティーヌ》という歌姫さんと、俺を。いつの間にか同一人物だと勘違いしていたのだった。

 

いやいやいや。

ちょっと待とう!

今の俺の声は、子供特有のソプラノボイスだから女性の声と聞き間違えても仕方ないのかも知れない。けどさ・・。

 

 

「よく見てよ!

俺、男だよ!?子供だよ!?」

 

 

おそらく彼の知るクリスティーヌさんとは似ても似つかないだろう俺の容姿を。変に思わないのかと、俺は怪人ファントムに訴える。しかし・・。

 

 

「姿は違う。

けれど、その美しき声音は間違いなくクリスティーヌのもの。君こそ歌姫。

生まれ変わった。今を生きるクリスティーヌッ!」

 

 

一切の迷い無く、俺は歌姫さんの《生まれ変わり》だと返されてしまった。

 

た、確かに。俺、生まれ変わった事あるけどさ。

それは《アキラ》としてだからね!

しかも、もう死んで生前の《コンラ》にまた戻ってるから!

一貫してずっと《()》で、1度もクリスティーヌさんっていう《女性()》になった覚えないからっ!!

 

 

「ーーだからっ!

俺は《クリスティーヌさん》じゃなくて。

《コンラ》なんだってっ!!」

 

「あぁ・・ようやく、ようやく。

美しい声の君に、再び出逢えた・・クリスティーヌ。麗しき我が天使。」

 

 

だ、ダメだぁ。

この怪人、俺の『歌姫さんとは別人だよっ!』アピールをものともしない。

《狂化》の影響か何なのかわからないけど。

思い込みが凄すぎて、彼の中の《俺=クリスティーヌさん》が不動のものと化していて崩せないっ!

 

縛られ拘束されている自分の状況がわかっていないのか。俺の事をひたすらガン見しながら、ウットリした表情で俺の声に聞き入っている怪人。

変態芸術家(ジル・ド・レェ)ほどの恐怖は感じないけど・・なんだか嫌だなぁ。)

 

だから、何度も言うけどさ。

俺は貴方の大好きな歌姫さんではないんです(泣)

 

 

「ちょっと!勝手なこと言わないで!」

 

 

困り果て、俺が内心で泣きそうになっていると。

急にマスターが語気を荒げて俺を自分の後ろに押しやり。ファントムの視線を遮る様に自ら前に出た。

 

ええっ!?

相手は拘束されてるとはいえ敵だよ!?

危ないよマスターッ!!

 

驚いて、下がるよう声をかけようとしたけれど。

それより早くマスターが口を開く。

 

 

「誰がアンタの天使ですって?

違うわ!この子は、コンラはーー『私の』天使なんだからっ!!」

 

 

・・・へ?てんし?

 

 

「マスター?」

 

「ハッ!ご、ごほんっ!

ーーー間違えました。

コンラは私の・・かけがえのない大切なサーヴァント。これ以上、邪な眼で見ることは許しませんっ!」

 

「ッ!マスターッ!」

 

「邪な眼って・・お前がソレを言うのかよ。」

 

〘ひゃははははっ!!

ドラゴンライダーの次は歌姫にエンジェル☆

お孫様もお忙しい事でー。〙

 

 

一瞬、変な単語が聞こえた気がしたけど。

マスターが俺を《大切》だと言って。

俺の身を案じ怪人に怒ってくれた事が嬉しくて。そんな些細な出来事はどうでも良くなってしまった。

(なにやら父さんが呆れ顔でマスターを見つめ。ソウェイルは笑いながらクルクルと独楽(こま)のように回っていた・・解せぬ。)

 

こんなにも《サーヴァント》を想ってくれる、優しい《マスター》はきっと他には居ない。

俺は改めて、俺の《マスター》がマスター(オルガマリー)で良かった・・と。

ポカポカと胸の中心が温かくなるのを感じながら。マスターと《契約》できた、今すぐ傍らにある自分の幸福を。深く深く噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターが怒って抗議してくれたものの、ファントムの不屈の思い込み(俺=クリスティーヌさん)は正す事ができず。

最終的には放置して、当初の目的どおり敵の情報を得る為の尋問タイムが始まった。

 

拘束されたファントムの前に立つのはゲオルギウスとマルタさん。後ろには一応、逃亡を防ぐ為にジークフリートが待機し。

その肩には相変わらず(何故か怯えた様子で)マスターの動向を伺うマルちゃんが乗っていた。

 

そのマルちゃんの姿に(何かを察したような顔で)憐れみの眼差しを送る父さんと。またもや爆笑しているソウェイルに俺は首を傾げ。

 

とりあえず怪人から十分に距離をとった安全な場所でーー今度はゲオルギウスの了承をちゃんと得てからーーベイヤードを撫でさせてもらっていた。

 

一緒に鬣を愛でているマスターは、最高の手触りによほど感動しているのか頬を染めながら。

ポツリポツリと独り言を呟いている。

(馬と戯れる姿もっ!とか。

そういえばこの子、王子様なのよね?

王子ーー私の、白馬の王子様っ!!とか。よく意味の分からない言葉が聞こえたけど・・きっと何かベイヤードに対する賞賛の言葉なんだろうな!←)

 

 

「マスターに褒めてもらえて、良かったねベイヤード。」

 

「ぶるっ!?ーーーブルルッ」

 

 

俺が撫でやすいよう、頭を下げてくれていた賢いベイヤードの鬣から手を離し。今度は首筋を優しく撫でながら、笑顔で話しかける。

 

すると、ベイヤードは信じられない物を見るような眼差しで俺を凝視し。数秒後には、どこか困った様な色をその瞳に宿して小さく鳴いた。

(ーーあれ?

この眼・・俺が何か失敗したり、無茶した後で。父さんやマスターがよくする眼に似てるような・・?)

 

 

「答えてください、ファントム。

貴方をこの地に喚んだのは《竜の魔女》ジャンヌ・ダルクですね?」

 

 

意図せずベイヤードと見つめ合いながら。

過去の記憶を掘り起こそうとした俺の耳に、ゲオルギウスの真剣な声が届く。

 

あっ、始まった。

俺もちゃんと聞かないとな。

 

思考を中断し、ベイヤードを撫でる手だけはそのままに。視線をゲオルギウスとマルタさんの背越しのファントムに移した俺は。

緩んでいた表情を正して、彼らの会話に耳を傾ける。

 

 

「ああ、クリスティーヌ。

君の声を私は聞きたい・・。」

 

「ーーでは、他の質問にしましょう。

貴方の他に喚び出されたサーヴァントは、何人ですか?」

 

「ああ、クリスティーヌ。

君の唄が私は聞きたい・・。」

 

「ーーーーーでは。

1人でも構いません。

そのサーヴァント達の中に《真名》がわかる者はいましたか?」

 

「ああ、ああ、クリスティーヌッ!

どうかクリスティーヌッ!唄ってっ!!」

 

 

「」←ゲオルギウス

 

「」←マルタさん

 

 

おおぅ・・。

あの怪人、まるでゲオルギウスの声が聞こえてないや。しかも2人が透明人間になったかのようにスルーしつつ、俺に執拗に唄の催促をしてくる。

(俺、歌とかあんまり得意じゃないんですけど・・)

 

 

「ーーーゲオルギウス。どうするのこれ?」

 

「ふむ・・仕方がありませんね。

少年、悪いのですが簡単な歌を1曲唄って頂けますか?」

 

「えっ。」

 

 

まずは((歌姫さん)の声と唄に飢えている)怪人の欲求を満たし、狂える精神を少しは落ち着かせたいというゲオルギウス。

まぁ・・確かにこのままじゃあ、情報を聞き出すどころじゃないもんな。(それ以前に会話にすらなってないし。)

 

それにしても歌かぁ・・音痴ではないと思うんだけど。知ってる曲自体が多くないんだよな。

それで全部の歌詞を憶えてるのとなるとーーううん(悩み)

 

 

「短くてもいい?ゲオルーー」

 

「クリスティーヌッ!君が唄ってくれるなら!」

 

「・・・・問題ないようですね。」

 

「ーーーうん。」

 

 

ゲオルギウスに聞こうとしたら、言い終わる前に本人が速攻でOKを出してきた。

どれだけ俺に歌を唄って欲しいんだろうか。

(何だろう・・だんだんこの怪人がオヤツを前にした黒い大型犬に見えてきた。うん・・大丈夫。それ()なら怖くない!←)

 

 

「コンラの、生唄(なまうた)・・っ!」

 

「(歌か・・・生前のケルト音楽系か?)」

 

 

ーーよし!

ファントム本人からの了承も得た事だし、人前で唄う覚悟も出来た。俺は腹をくくって、一歩大きく前に出る。

歌うぞ!せーのっ!!

 

 

「俺の2つ目の母国の国歌ーーー『君が○』、いきます!!」

 

「まさかの極東の島国チョイス!?」

 

「なんでお前、それを選択したっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌を唄っている最中、父さんやマスター達が何故かざわついていたけど。俺はちゃんと最後まで唄い切ったぞ!

そして、肝心のファントムはというとーー。

 

 

「ううぐ・・美じい!グスッ!

ぎみのごえは、うだはーーうつぐじすぎるっ!!」

 

 

俺の歌声にめちゃくちゃ感動して号泣していた。

こんなにも褒めて貰えるとは思ってなかったから、嬉しいような照れるような・・・うまく言えないけど。

とにかく怪人の反応がーー戸惑いなからもーー嬉しく思えて。

(うん・・もう怖くないや。)

 

俺は恐る恐る、数歩足を進めて怪人に近づき。

笑顔でお礼を述べ、俺達への協力(情報提供)を頼む事にした。

 

 

「俺は歌姫さんじゃないけど・・唄を褒めてくれてありがとう。」

 

「ッ!ク"リステ"ィーヌ"ッ!!」

 

「あのさ・・無理やり縛っておいて言うのも何だけど。俺達に《竜の魔女》達の事を教えてくれないかな?

とっても大切で必要なことなんだ。

だから・・お願い!」

 

「ク"リステ"ィーヌ"ゥウッ!!

ーーーぎみが、のぞむならぁあ"あ"あっ!!!」

 

 

「「「《早いっ!!?》」」」

 

 

おおっ!

試しにお願いしたら、即決で(泣きながら)協力OKを貰えた。やっぱり先に本人の望むモノ(俺(歌姫さん)の歌声)をあげたのが良かったんだろうな。

相手の心理を読んでいる、さすがだゲオルギウス先生っ!

 

 

〘怪人即落ち☆お孫様マジ恐ろしやー!!〙

 

「コンラの生唄。コンラの生唄。

なんで肝心な時に撮影機器が無いの!?

代わりにしっかり脳内保存しておかなくちゃ!!」

 

「(コンラのやつ・・変なのにばっかり懐かれやがんな。)」

 

 

なにやら胃の辺りを手で押さえている父さんが遠目に見え、不思議に思ったけれど。(お腹が空いたんだろうか?あれ?でも普通のサーヴァントはお腹減らないんだよな・・あれ?)

 

ゲオルギウスとマルタさんに促されるままーー今度は俺も一緒にーーファントムへの質問を俺達は再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オペラ座の怪人ーーファントムから敵である《竜の魔女》達の情報を得て。

更に俺達・・というかゲオルギウスと父さんの持っていた情報と色々照らし合わせたところ、新たな事実が幾つかわかった。

 

まず、俺達の今いるこの街の名は『ボルドー』というらしく。なんでもワインの生産が盛んな街らしい。

(そういえば父さんがどっかからワインを見つけて、また『飲もうぜっ!』って誘って来たっけ。気づいたマスターにあっという間に取り上げられてたけど。)

 

ファントムから聞いた話だと、此処から北東に進んだ先にある『オルレアン城』を《竜の魔女》達は根城にしているとのこと。

 

《竜の魔女》ーージャンヌ・ダルクはあの変態芸術家(ジル・ド・レェ)を父さんが倒した後。

ファントム達、《バーサーク・サーヴァント》を複数人喚び出し。この《フランス》という国も、国民達も跡形もなく滅ぼすよう命じたらしい。

(なんて酷い命令をするんだっ!)

 

 

「そんな酷い事しちゃダメだよ!」

 

「ーーークリスティーヌ。

君がそう望むなら、私はその願いに従おう・・。」

 

 

もうフランスの人達に酷い事をしないで欲しくて、ファントムに注意したら。快く、もうこの国の人達を襲わないと約束してくれた。

(きっと・・この人、ホントはそんなに悪い人じゃないんだ。)

 

 

〘この怪人、ちょろいんっすね☆ひゃは!〙

 

「お前・・ちょっと黙ってろ。」

 

「ーーー驚いたわ。召喚主(マスター)の命に逆らうのは、とても難しい事なのに。どうやら(ファントム)の中の優先順位は召喚主(竜の魔女)よりクリスティーヌ(コンラ)の方が上位になっているみたいね。」

 

「《オペラ座の怪人》という概念じたいが、己の歌姫への愛の為に狂い。手を血で染めた男の物語。よく考えれば彼が愛する歌姫(クリスティーヌ)より優先するべきモノなど、この世に存在する筈がありませんでしたね。」

 

「尋問の件も含めて。(コンラ)が怪人の執着する歌姫(クリスティーヌ)と勘違いされたのは、俺達にとって幸運だったな。・・・誤認されている当人には、本当にすまないが。」

 

「・・・あら?この状況。

敵を味方にーー前の特異点(冬木)でも、こんな事があったような?」

 

《(何故、誰も槍が宙に浮いて喋っていることにツッコまんのだ!?)》←

 

 

他にも《竜の魔女》は金品をワイバーンに強奪させ、城に集めているようで。そんなにお金や美術品を集めて何に使うのかと疑問に思っていたところ。

マルちゃんから《ファヴニール(邪竜)》の黄金を求める欲求(強欲の呪い)を満たす為ではないかと告げられた。

 

 

《あやつにかけられた『呪いの腕輪』の力が『聖杯』の影響で悪い方に転じ。呪いが悪化してしまっているのやもしれん。》

 

 

『あくまで可能性だが・・』と最後に零し、重い口を閉ざしたマルちゃん。

(ーーーきっとファヴニール(息子さん)のこと。

心配してるんだな。)

 

 

・・・・そういった流れで。

新たに《オペラ座の怪人》ファントムを仲間に加え。『聖杯』を持つ《竜の魔女》の居場所を掴んだ俺達は、現在ーー。

 

 

 

 

 

「来い、コンラッ!

《手合わせ》だからって気を抜くんじゃねぇぞっ!」

 

「うん!わかった!」

 

 

ーー昨日まで居た(ボルドー)を出て、北にある広い森の中に居た。

《バーサーク・サーヴァント》達がフランス中に散り、城に居るのは《竜の魔女》と《邪竜》のみ。敵の戦力が分散している今が好機と。俺達一行は『オルレアン城』を目指し、真っ直ぐ北東へ進んでいた。

 

昨夜は辿り着いたこの森の入り口でーー睡眠が必要な俺とマスターの為にーー夜を明かし。

早朝から森の中を歩き続け、今は少し拓けた所で《食事&休息タイム》の最中だ。

(ソウェイルには申し訳ないけど、魔力節減の為に昨夜のうちに還ってもらった。本(槍?)も、夜だと充電がどうこう言って進んで戻ってったけど。何のことだろう?)

 

途中で襲って来た《魔猪》を返り討ちにして(生前も旅の途中でよく狩って食べたな。懐かしいや。)マスターと脂ののった肉を焼いて食べ。

腹ごなしに父さんが、《疑似サーヴァント》になった今の俺の『武術の腕前(実力)』をみてくれるというので、喜んで俺は手合わせを願ったのだった。

 

朱槍はーー万が一があった場合。父さん達のような《通常》サーヴァントと違う《疑似》サーヴァントな俺は、デッドエンド直行なのでーー危ないので使わず。

そこら辺に落ちていた手頃な棒で代用。

俺も同じよう(生前からの)愛用の剣を脇に置き、代わりに木の棒を構える。

 

 

「クリスティーヌ、危ない・・。

君を傷つけるモノはーー私が排除しようっ!」

 

 

さあ行くぞっ!と思いきや、まさかの乱入。

俺は慌てて、父さんに襲いかかろうとするファントムを止めた。

 

 

「ちょ、ちょっと待った!

これは模擬戦(もぎせん)だから大丈夫だよ。

それにこの人は俺の父さんだから、排除したら絶対ダメだっ!」

 

「っ!!?ーーークリスティーヌの、父親?」

 

「うん、そうなんだ。だから酷い事しないでね?」

 

「・・・・・・。」

 

 

良かった。無言だけど手袋の中に鋭い鉤爪を仕舞ってくれた。とりあえず襲う気は無くなったみたいだ。

(それにしてもあの長い爪が入るのに破れないなんて。あの白い手袋には一体どんな魔術がかけられているんだ?)

 

 

「・・・・オマエはクリスティーヌの、父親。」

 

「ーーあ"?ちげぇよ。

俺はこいつ(コンラ)の父親だ。」

 

「・・・そうか。

オマエはクリスティーヌの父親、なのか。」

 

「はぁ・・。わかってはいたが、とんでもなくバーサーカーな脳味噌してんなアンタ。」

 

 

ん?どうしてかファントムが珍しく、(歌姫さん)(歌姫さん)の敵以外の人に興味を持ったみたいだ。これは・・もしや《狂化》が解ける兆しではっ!?

 

ワクワクと期待して2人の遣り取りをそのまま見守っていると、ファントムは優雅な動作でペコリと頭を下げた。

うおおっ!これは、ついにーーっ!?

 

 

「はじめまして・・・・・お義父さん?」

 

「てめぇ殺すぞゴラァ!!」

 

「協力するわランサーッ!!」

 

「ええ!?何でっ!?」

 

 

期待は残念ながら外れてしまったけど。

それよりもファントムが『お父さん』と言っただけで激怒した父さんとマスターに俺は驚く。

(父さんは俺の『お父さん』だ。間違ってないのに。それとも、ファントムのお父さんだと周りに思われるのが嫌だったのかな?でも、そうなるとマスターは何故に?)

 

 

「おや。愛される(人気のある)息子を持つと父親は大変ですね。」

 

「少し過保護がすぎる気もするが・・」

 

「あの子が相手じゃ過保護にならざる負えないでしょ。・・・あと、私はオルガマリーが道を踏み外さないかが気掛りです。」

 

《あれは、もう手遅れだと思うぞ・・。》(震え声)

 

 

怒りの形相で怪人に(棒を槍のように扱って)殴りかかる父さん。

人差し指を構え《ガンド》を乱射するマスター。

それらを躱しながら、俺が『排除したらダメ』と言ったのを忠実に守り反撃しないファントム。

 

ま、まずいっ!

止める間もなく戦闘状態に入ってしまった。

3人を止めないと!!

 

何かを話しながら、コチラを暖かい眼差しで見ていたジークフリートやゲオルギウス達に。俺は急いで『手助け』を求める。

(さすがに3人一遍(いっぺん)に止めるのは俺1人では不可能だ。)

 

 

 

ーーーそして結局。

皆に手伝ってもらって戦う3人を止め。

俺が父さんと《手合わせ》を再開する事が出来たのは、それから1時間ほど経った後だった。

 

 

……………………………………………………………………………………………………………………

 

 

第三者視点

 

 

 

 

同時刻、コンラ一行が目指す『オルレアン城』の傍らにて。

 

 

「ーーーーえ?」

 

 

邪竜(ファヴニール)》の漆黒の広い背に座り、彼との何気ない会話を楽しんでいた《竜の魔女(ジャンヌ・オルタ)》。

彼女はふいに、己の『ルーラー』の力が《とある英霊》の《霊基》を感知し。思わず驚愕の声を漏らした。

 

 

「嘘・・でしょう?でも、この《霊基》は・・反応は小さいけれど。間違いなくーー」

 

【?、魔女。東の方角に何かあるのか?】

 

「ーーーふふふっ!

そう。そういう事なの・・下手な小細工をせず、正々堂々自分の力で勝ち取れっていうのね?

常は傍観者気取りの()も、偶には気の利いた事をするじゃないっ!!」

 

【・・・魔女?】

 

 

唐突に彼方を睨めつけたかと思えば。

1人呟き、嗤い始めたジャンヌ・オルタ。

その不可解な行動に己の魔女の身を案じ、声をかける邪竜であったが。続いて、彼女が彼へと発した台詞によりファヴニールは魔女の真意を知る事となった。

 

 

「・・ねぇ、聞いてよファヴニール。」

 

 

おもむろに邪竜を見上げ、視線を交わした彼女の黄金の瞳に灯るのは。

激しい殺意と破壊衝動の危うい()

 

 

「『聖処女(本物の)』ジャンヌ・ダルクが今。

この近くに来ているわ。」

 

 

好戦的な笑みを描く《竜の魔女》の唇は。

どこか愉しげな声音で、その事実を吐き出した。

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………

 

 

※ようやく物語がオルレアン最終決戦に向けて大きく動き出しました。長かった・・こんなに長くなるとは作者も思いもよらなかったです。もっと上手く話を巻いていかないとっ!←

 

コンラくんがヤリニキの予想に反してケルト音楽を唄わなかったのは、単純に知らなかったからです。

生前のケルト時代は歌ってくれる親しい人も居なかったし。母親のアイフェ様に子守唄とか歌ってもらえる状態じゃなかったので。

冬木で暮らしていた頃も歌自体あまり興味がなく、他の趣味(釣りとか、甘味巡りとか、動物を愛でるのとか)に全力投球していた為。学校行事で恒例の《例の国歌》を選曲することに・・。それにしても極東の島国の国歌を聞いて感涙するフランス国民ーーしかもオペラ歌手ーーとはいったい(白眼)

 

そして加速する所長のキャラ崩壊とヤリニキの心労。お父さんが血を吐く日は近い(意味深)←

 

 

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