(さすがに、私でも緊張を感じざるを得ないか)
日本本土から少し離れ、モノレールのみによって交通の繋がった巨大な施設、IS学園。その職員室前に座る男性は動揺を感じていた。そして、気を落ち着かせるためにも、今後自分に深く関わるだろうこの世界の力について考えていた。
IS(インフィニット・ストラトス)。宇宙空間での活動のために、ある日本人によって発明されたマルチフォーム・スーツである。
(とは言っても、現在のISは当初の理想とは大きくかけ離れてしまっている)
ISは、その既存の戦闘兵器を大きく凌駕する性能がゆえに、世界のパワーバランスを崩壊させた。開発者が日本人ということを利用して、技術を占有した日本に対して、危機感を抱いた諸外国はIS運用協定―アラスカ条約―を規定し、ISの軍事利用の禁止や情報の共有などを義務化した。
(まったく、愚かな者たちのせいで崇高な理念や素晴らしき才能がないがしろにされるなど許しがたいことだ。)
そして、各国の思惑が交錯した結果、今のところISは一つのスポーツとして認識されている。そんなISの操縦者の育成及び、管理のために建てられたのがIS学園である。
そんな学園の教室に彼は座っていた。周りの生徒たちは彼をチラチラ見ながらも、誰一人として話しかけようとしないため教室には妙に居心地の悪い空気が漂っていた。
(ま、無理もないことだがな)
ISには使用するにあたって大きな制限がある。
それは女性しかISを動かせないということである。理由は不明だがISは男性には動かせないのだ。つまり本来ならこの学園内に男性は存在しないはずである。しかし、この教室には正真正銘の男性がいる。
なぜ男性がこの教室にいるのか。それは彼が世界で初めてISを動かした男性だからだ。
本来、彼―織斑一夏―は自宅に近い藍越学園の入学試験を受けるはずが、試験会場を間違え、うっかりISを起動させてしまったために、この学園に入学することになったのだ。
自分以外のすべてが女性という状況に、彼は当惑していた。
(こんなところに入学することになるとは、彼もかわいそうにな。私には関係のない話だが。)
男は、そんな彼を少し離れたところ…というか窓の外に張り付いた小型の偵察機を使って観察していた。そして、針の筵状態の彼に対して、同じ男性として同情していた。
そうしていると、職員室の扉が開き、
「遅れて申し訳ありません。会議が長引いていしまって。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。おかげで自分も気を落ち着かせることができましたから。」
「そうですか。では、教室の方に向かいましょう。」
そういって、職員室から出てきた女性、織斑千冬は廊下を歩いていく。そして、先ほどの男性はその後ろをついていく。
この男性の名は 檀《だん》 黎斗《くろと》。
世界で二番目の男性操縦者であり、神である。