神の異世界探訪   作:三枚目の切り札

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副題ですが、先のことはまったく考えてません。違和感を感じたら、「こいつ諦めやがった」と思ってください。



第三話 BANした機体がやってくる

「はあぁ。」

 

初日の授業がすべて終了し、放課後になると、一夏は机にうなだれた。原因は三時間目の授業のことである。女子にクラス代表を推薦された一夏は嫌がっていたが、セシリアの不遜な態度が頭にきてしまい、そのまま黎斗の提案に乗る形でセシリアと決闘することになってしまった。

 

(代表者になんてなりたくなかったのに、勝っても負けても良いことないだろ。それに)

 

机の上にある教科書をペラペラとめくり、再びため息を吐く。

 

(そもそもISのこと、さっぱり分からないんだよな。)

 

先のことに半ば絶望していると、黎斗が話しかけてきた。

 

「昼間は散々だったね。」

 

他人事な言葉に、一夏は少し不貞腐れたように口を尖らせる。

 

「なんですか。黎斗さんが決闘って言いだしたんですよ。」

 

「それについてはすまない。あの場を収めるには仕方なくてね。」

 

あまりに素直に謝られたので、逆に一夏は慌ててしまう。

 

「いや、結局やるって言ったのは俺なんで。黎斗さんが謝ることじゃないです。」

 

苦笑を浮かべながら、一夏は体を起こす。すると黎斗は机の周りを回り、机越しに一夏の前に立った。

 

「とは言え、提案した私にもそれなりの責任はある。困ったことがあればいつでも言ってくれ。君の勝利にために協力の手を惜しむつもりは…ってどうかしたかい?」

 

気付けば、一夏が目を丸くして黎斗の方を向いていた。

 

「俺が勝てるって思ってるんですか?」

 

心底驚いたような声に、黎斗は真面目な表情をして語り掛ける。

 

「当り前じゃないか。確かに彼女は代表候補生だ。しかし、君の力は未知数、詳しい情報も知らないで、勝敗を予測するのは愚かなことだ。」

 

「黎斗さん…」

 

「それに、私は君に勝ってほしいと考えている。今の風潮を壊すためにもね。」

 

風潮という言葉に一夏はハッとする。

 

「それって、女尊男卑のことですよね。反対なんですか?」

 

「もちろんさ。才能のあるものが、そんなくだらない理由で埋もれてしまうのは、実に惜しい。私はそんな世の中を変えて、みんなの笑顔を取り戻したいんだ。」

 

真剣な顔でそう話す黎斗を見て、一夏は衝撃を受ける。

この時代、ISの登場によって男性の立場はかなり弱い。そして世の男たちの大半が、そんな現状を諦めてしまっている。

その中で立ち向かおうとする黎斗の姿勢に驚き、そして感銘を受けた。

一夏は椅子を後ろに飛ばす勢いで立ち上がると、真っすぐ黎斗を見つめて

 

「分かりました。黎斗さん、俺、絶対に勝ってみせます。」

 

そう宣言した。夕日の差し込む教室内で繰り広げられる熱血ドラマのような光景に、周りが見とれていると、

 

「織斑くん、まだ教室にいたんですね。よかったです。」

 

真耶が書類を片手に教室に入ってくる。名前を呼ばれた一夏は、ふと我に返り山田先生の方に向き直る。

 

「織斑くんの寮の部屋が決まりました。」

 

そう言われて、一夏は部屋番号の書かれた紙とキーを渡される。

IS学園には将来有望な操縦者たちが集まるので、外部者から保護するためにも寮生活が義務付けれている。

しかし、あれ?と一夏は首をかしげる。

 

「俺の部屋ってまだ決まってないんじゃなかったですか?一週間ぐらい自宅通いって聞きましたけど。」

 

「そうなんですけど、一時的に部屋割りを変更したんです。一か月くらいで個室を用意できると思いますので、しばらくは相部屋で我慢してください。」

 

「分かりました。でも、一度家に荷物を取りに行かないといけないので、今日はもう帰っていいですか?」

 

「あっ、荷物なら…」

 

「荷物なら私が手配しておいた。ありがたく思え。」

 

真耶の言葉を遮り、千冬が教室内に入ってくる。その後、夕食の時間や男性の大浴場の使用禁止の旨を一夏と黎斗に伝えられる。

 

「えっ、大浴場使っちゃダメなんですか。」

 

お風呂好きの一夏は大浴場の使用禁止にショックを受け、先生に聞きなおすが、千冬に一蹴される。

 

「馬鹿者。お前は女子と一緒にお風呂に入りたいのか?」

そう指摘されて思い出したように納得する一夏だが、真耶に『女子と一緒にお風呂に入りたがっている』と勘違いされてしまう。一夏は慌てて否定するが、今度は『女の子に興味がない』と思われてしまう。しかも真耶の言葉が廊下にいる女子たちに伝わってしまいあらぬ誤解を生んでしまう。

 

「織斑くん、男にしか興味ないのかな?」「それはそれで…」「ISただ二人動かせる、男子高校生と年上男性と禁断の恋…悪くないわね。」

 

(おいおい、勘弁してくれ)

 

そんな風に一夏が呆れていると、千冬と真耶は職員会議のために教室を出ていく。

 

「はぁ、それにしても千冬姉は相変わらず大雑把だな。」

 

二人が出ていくのを見届けると、一夏はため息を吐きながらそう呟いた。なんせ彼女が一夏のために用意した荷物とは、着替えと携帯電話の充電器。さすがにもう少し考えてほしいものだ。すると、そんな彼を黎斗がたしなめる。

 

「こら、お姉さんにそんなこと言うものじゃないよ。私はこの後、少し学園内を回るつもりだけど、一夏君はどうする?」

 

「あー、すいません。俺はちょっと、もう早く休みたいっていうか…」

 

一夏が言いづらそうにしてると、それを黎斗が手で遮る。

 

「いや、気にすることは無い。確かに一日中注目されていては、気が休まらないだろう。私は一人で学園を回ることにするよ。」

 

「そうですか。すいません!じゃあ、俺は先に部屋に戻ってます。」

 

一夏はそう言って頭を下げると、教室を出ていった。黎斗は一夏が教室から出ていくのを、見届けてから自分の荷物を片付け始めた。

 

(やはり、まだところどころに緊張が見られるな。私の年を考えれば当然か)

 

ふと、黎斗が作業の手を止める。

 

(そういえば、彼は先に『部屋に』戻っていると言っていたが、何か勘違いしていないだろうか。まあ、私には関係ないが。)

 

そして、また片づけを再開する。

黎斗の部屋は、一夏と同じ『1025号室』…ではなく、完全個室である。これは彼が社長としての仕事を続けている関係で、経営に関する重要な情報を取り扱う可能性を考えて特別に割り当ててもらったのだ。

そのことを後日知ることになる一夏は、部屋でくつろいでいたところに、先にシャワーを浴びていてバスタオル一枚の姿で洗面所から出てきたルームメイトの箒と出くわしてしまい、冗談抜きに木刀で殺されかけることになる。

その後も同じ部屋に男女二人きりという気まずさに、彼のデリカシーの無さも手伝い、二人の仲はギクシャクすることになる。

 

 

「織斑、お前のISだが準備に時間がかかる」

 

翌日の二時間目、織斑先生は授業の開始と共に一夏君にそう伝える。なんでも予備がないので、学園の方で新しく用意するらしい。なんて言っても世界初の男性操縦者だ、何でも良いからデータが欲しいのだろう。あるいは、恩でも売っておいて交渉の材料にでもする算段だろうか。

 

(無駄なことだ。この私でさえ三年の月日をかけても、ほとんどISの根幹については不明のままだというのに。いくら彼が特例だといえ、凡人が調べたところで何も分かるわけがない。)

 

ちなみに私も専用機を持っている。昨日は面倒ごとに巻き込まれるのが御免で、話さなかったがな。

もちろん、私の専用機はわが社製だ。ISコア自体は未だ複製不能故に仕方ないが、他のパーツは他社に作ったものなど信用できない。

 

「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者でしょうか?」

 

一人の女子が織斑先生に質問する。篠ノ之というのは昨日の放課後、一夏君に話しかけてきた彼女だ。まあ珍しい苗字だしな、そう思うのも当然だろう。

 

「ああ、篠ノ之はあいつの妹だ。」

 

織斑先生の返答に教室内の女子が色めき立つ。実に若者らしい反応だ

ちなみに、篠ノ之博士とはIS開発者の篠ノ之束のことである。現在は行方不明で世界中で指名手配されている。

(しかし、『あいつ』か。彼女たちにIS発表以前から接点があったことは知っているが、それだけにしてはやけに親し気だな。もっと詳しく調べる必要があるか。

 

「あの人は関係ない!」

 

いきなり箒君が大声を出す。どうやら彼女にとって姉に関する話題はタブーらしい。覚えておこう。

 

 

そんな騒動も一息つき、授業が再開する。そして授業が終わって休み時間。早々にセシリアが一夏のもとにやってきて声高らかに話始める。

 

「安心しましたわ。勝敗は見えているとはいえ、訓練機と勝負するのではさすがにフェアじゃありませんもの。」

 

「なんでだ?」

 

「わたくしはすでに専用機を持っておりますもの。」

 

「へー」

 

得意げに話すセシリアとは対照的に、一夏はひどく冷めた様子で相槌を打つ。今までISと関わりの無かった一夏にとって、セシリアの言うことの凄さがいまいちピンとこない。

 

「一夏君、この年で専用機持ちというのは、とてもすごいことなんだよ。なにせISのコアは世界中にたった467個しかないんだ。」

 

と聞いても、あまり驚いた様子を見せない一夏に飽きたのか、セシリアは黎斗に話しかける。

 

「あら、誰かと思えば、競技用の最新ISをほとんど作らず、癖の強い欠陥機や旧式の救助型や運搬補佐型のISばかり作っている、幻夢の社長さんじゃありませんか。」

 

あまりの物言いにイラっとする一夏が、文句を言おうとするが、それよりも早く黎斗が口を開く。

 

「えぇ、確かにその通りですよ。私、いやわが社は宇宙開発のためにISを開発した篠ノ之束博士を心から尊敬しています。その夢に敬意を払い、彼女の願いに届かないまでも、人々をためになるようなIS開発を目指していますから。」

 

これについては紛れもない彼の本心である。彼はISを戦争やスポーツの道具としか見ていない世の中を嫌い、そういった受注は断っている。

実際、彼の会社が作るISは救助に非常に特化しているものが多く、世界における災害時の救命率は幻夢コーポレーションができてから、飛躍的に上がっている。

また、専用機を作る際は、操縦者をしっかり見定めてから作っている。ゆえに機体は個人専用、つまりはかなり癖の強い機体に仕上がることになる。

ぶっちゃけこんな態度では、いつ国からISの製造権利を取り上げられるか分からないものだが、彼らの活動が救助活動に大いに貢献していることから、政府も容易に口を出せないのだ。

さて、そんなことを言われたセシリアと言えば、何も言い返せないのかフンっと鼻を鳴らすと、自分の席に戻っていった。

教室内の女子たちも、思うところがあるのか、少しばつの悪そうな顔をしている。そんな中で皆とは違う反応をする者が一人。箒である。

 

(姉さんのことをそう思う人がいるなんてな…)

 

今まで彼女を利用しようとした大人は数多くいたが、そんな風に尊敬するなどという言葉を聞いたのは初めてだった。姉に対する認識を揺るがされた箒はどうしていいのか分からず、ひとまず考えるのを放棄した。

 

 

時は進んで、放課後。一人の女子生徒が学生寮への道を歩いていた。その足取りは重く、そこから想像できる通り、表情もすこぶる暗かった。

 

(はあ、噂の男性操縦者、っていうか男子と近づけるチャンスだったのになぁ。)

 

原因は今日の昼休みにある。彼女は一夏が代表候補生と模擬戦いをするという噂と聞くと、一夏にISの指導を持ち掛けた。

IS操縦者を目指す生徒の多くは中学から女子校に通うので、基本的に男子との関わりは少ない。だから、男性、しかもあの織斑千冬の弟となれば近づこうとするのも当然だろう。

 

「まさか、篠ノ之博士の妹だなんて、勝ち目全く無しだよ~」

 

しかしその狙いは、一夏を独占したい箒によってあえなく外れることになった。

ちなみに、黎斗にも言い寄ってくる女子はいる。しかしそこは檀黎斗、数々の死線を潜り抜けて…きては無いが、経験豊富な彼にしてみれば、女子生徒を軽くあしらうなど軽いことである。

まあ、そんなこんなで目論見が失敗した憤りと悲しみを紛らわすため、アリーナでトレーニングをしていたらすっかり夜も遅くなってしまった。

そうして彼女が寮に向かっていると、向こうから誰かがやってくるのが見えた。

 

(こんな遅くに誰だろ?)

 

しかし両者の距離が近づき相手の全体が見えてきた途端、彼女はすぐに警戒態勢に入る。それもそのはず、いま彼女の目の前にいるのは、人とするにはあまりにかけ離れた姿をしている。

全身のシルエットこそ人に近いが、頭部と脚部がやけにギザギザしており、肩に先端のとがった巨大な十字が乗せている。また目に当たる部分は紫色の点が二つ光っていた。

IS。彼女は自分の目の前にいる存在をそう認識した。しかも珍しいフルスキンタイプだ。ほかの専用機持ちや学園の持つ機体の中でこのような機体は見たことが無かった。

それが一層、彼女の警戒心を高める。

 

「見たことない機体だけど、どなたかしら?ISの私的展開は認められていないわよ。」

 

たとえ専用機であっても、その戦闘力の高さ故にISの個人的な使用は禁止されている。

それを聞いても、正体不明のISは気にする素振りするさえ見せず、ゆっくりと彼女を見据えると、次の瞬間に飛び掛かってきた。

 

「っ!」

 

ISのいきなりの突撃を、自らのISを展開して弾く。あまりに突然の攻撃だったため、腕がジーンとしびれてしまう。

 

(IS展開しちゃったけど、どうみても非常事態だし問題ないよね。)

 

少し不安を感じながらも、先ほど弾き飛ばしたISの方に向き直り、構える。その弾かれた方はというと、空中でくるりと回転するときれいに着地した。その場所はちょうど街灯の真下であり、街灯の光に照らされ、その姿がはっきりと露わになる。

 

「なに、これ?」

 

黒い。それが彼女の真っ先の感想だった。人のフォルムに限りなく近いながらも、ISであることを認識させる機械じみた装甲は、肩や手先足先など部分的には紫色だが、ほぼ全身が真っ黒である。また、頭部からは複数のコードのようなもの人間の髪のように伸びていて、それがこのISに不気味な人間味を帯びさせていた。

『黒夢-KOKUMU-』。彼女のディスプレイにそう表示される。

 

(こくむ?それになぜ他の情報が表示されないのかしら)「あなた、名前と所属組織を言いなさい。」

 

しかし黒夢はその言葉に反応せず、右腕についてある小箱状の機械に触れると、光の刃を展開し再度向かってきた。

 

(話す気はないってことね。良いわ!専用機持ちの実力を見せてあげる!)

 

近接ブレードを右腕に展開し黒夢の攻撃を受けようとする。が、ブレードがかち合う瞬間。黒夢が視界から消える。

 

(どこに行ったの?)

 

ISの能力によって、ほぼ360度まで広げられた視界を見渡す。そして彼女のすぐ後ろで刃を振りかぶる黒夢の姿を捉える。

 

(一瞬で背後に!?この距離は刀じゃ間に合わない。)

 

そう判断し、右腕に取り付けられた物理シールドで黒夢の攻撃を受け止める。しかし、

 

ウィィィン

 

光の刃の周囲から無数のとげが出てくると、チェーンソーのようにとげが回転し始めシールドを切り裂き、その勢いのまま彼女の機体にダメージを与える。

 

「きゃあああ!」

 

ISの絶対防御を超え彼女に激痛が走る。距離を取ろうにも、黒夢の髪に抱きしめられるように拘束され逃げることができず、攻撃を受け続ける。

エネルギーが残りわずかというところで、彼女は開放されるが、心身ともにダメージの大きく、その場にへたり込んでしまう。

それを見た黒夢は、刃を引っ込めるとその小型の機械を90度回転させる。回転した機械の先には二つの小さな突起物があり、それを彼女の機体に押し当てる。

 

『警告。詳細不明の攻撃を受けています。』

 

ディスプレイに映る警告に危機感を感じ逃げようとするが、上から踏みつけられ再び地面に伏してしまう。少しすると、黒夢は立ち上がり、何も言わず闇の中に消えていった。

 

 

その数日後。

 

「織斑、オルコット、それに檀。少しついてこい。」

 

千冬が授業終了後、三人に呼び掛ける。

 

「ついてこいって、どうしたんだ、千冬姉?俺、この後用事あるんだけど。」

 

「彼と同じというのは気に入りませんが、わたくしも代表候補生ゆえ忙しい身。あまり暇はありませんのですが。」

 

「黙れ。いいからさっさとついてこい。あと織斑、織斑先生だ。」

 

断ろうとする二人を睨み一つで黙らせる。その有無を言わせない迫力に、両名とも思わず背筋を伸びてしまう。

 

「どうやら、急を要することのようですね。」

 

「あぁ、その通りだ。お前は物分かりが良くて助かる。」

 

黎斗が尋ねると、千冬は頷き廊下へ歩き出した。「ついてこい」と無言の圧力を放つその後ろ姿を、三人が慌ててついていく。

 

 

「ISによる専用機持ちの襲撃!?、それってマジかよ千冬ねっ…」

 

スパンッ!

 

「織斑先生だと言っているだろう。もちろん事実だ。最初は入学式の翌日の夜。そして次の日に二件。いずれも夜遅くに下校していたところを襲われている。」

 

会議室まで連れてこられ、千冬がISの襲撃事件を伝えると、驚いた一夏が千冬に詰め寄るが、またも頭を叩かれてしまう。

叩かれた頭を押さえ、うずくまる一夏をしり目に千冬が続ける。すると、さっき睨まれたのが余程応えたのか、おずおずとセシリアが質問する。

 

「犯人はどのようなISを使っているのでしょうか。」

 

「現在のところ、分かっているのは全体的に黒いフルスキンタイプであること、『黒夢』という名前、そしてチェーンソー型のブレードを使うことのみ。それ以外は不明だ。」

 

毅然とした態度で答える千冬に、今度は黎斗が質問する。

 

「不明とはどういうことでしょうか?この学園にはいたるところに監視カメラがありますし、なによりIS自体に戦闘データが残っているはずでは?」

 

「監視カメラだが、何者かにハッキングされたようで襲撃の際の映像は無い。ISのデータだが、こちらも何故かデータにノイズがかかって解析不能だ。」

 

千冬の言葉に三人は大きく驚く。

 

「まさか、ISのデータに干渉できるなんて。」

 

「襲撃者は技術的にも相当な腕を持っていると考えてよさそうですね。」

 

現時点において最強の兵器であるISに関する情報はトップシークレットであり、機体自体、ましてや専用機には強力なプロテクトがかかっている。

それに干渉できるとなると、相当な技術を持っていることが予測できた。

 

「ただ、うちの技術班も優秀だ。データを解析し続けたところ、不明ISについてあることが分かった。」

 

ここまで言うと、千冬はより厳しい顔になり

 

「さきほど言った通り、こいつは専用機持ちを狙っている。すなわちお前らは、奴のターゲットになる可能性が高く、この情報を知る権利がある。しかしこれは機密情報だ。それなりの覚悟がいるぞ。」

 

と続けた。真っ先にセシリアが反応する。

 

「あ、あなた、専用機持ちでしたの!?今までそんなこと一言も。」

 

「あぁ、そういえば言ってなかったね。確かに私も専用機持ちだ。」

 

ガーンという音が聞こえてきそうなほど、落胆するセシリアだが、咳払いをして気を取り直すと、堂々たる態度で言い切る。

 

「構いませんわ。このセシリア・オルコット、代表候補生として必ずやその襲撃者を倒して見せましょう。そのために敵の情報を知るのは当然のことですわ。」

 

「倒すにしろ、退けるにしろ情報は多いに越したことはありません。私もぜひ教えていただきたい。」

 

「あら、ずいぶんと弱気な発言ですこと。」

 

「現状を冷静に分析した結果だよ。専用機持ちの三年生ですら、太刀打ちできなかったんだ。そう考えるのが妥当さ。」

 

黎斗に発言にむすっとするセシリア。千冬はそんな二人から黙り込む一夏へ視線を移す。

 

「お前はどうする?一夏。」

 

「もちろん聞くにきまってるだろ。俺を狙ってくるってんなら相手のことを知っておくに越したことは無い。」

 

その答えに満足したのか、千冬はフッと笑うと、先に会議室で何やら準備していた真耶の方を向きうなずく。真耶がデバイスを操作すると、壁に複数の映像が映し出された。

 

「これが襲撃者の使うISの映像だ。そして解析の結果、こいつに使われているコアが判明した。」

 

ISの心臓ともいえるコアにはそれぞれ番号が振ってあり、それらを所持している国や団体はすべて記録され、いつでも分かるようになっている。

 

「コアナンバー002。世界で二番目に作られたISコアであり、生体接続型IS『蕾』に使われていたものだ。」

 

生体接続型IS?聞きなれない言葉に三人が怪訝な顔をする。

 

「ちょうど良い。今日、授業で習っただろ、ISは操縦者と心を通わせることができる人格のようなものがあると。これはそれを証明するために作られた機体だ。『千手システム』。機体と操縦者をコードでつなぎ、相互のつながりを強くすることで、ISの進化を促し人格の存在を証明しようとした。」

 

「なんか、すごい話だな。」

 

あまりにも壮大な計画に一夏が素直に感心する。

 

「だが、計画はすぐに失敗。ISが完成した後に何名かがテストパイロットに選ばれたが、その全員が乗ってすぐに再起不能に陥ってしまったんだ。」

 

「再起不能とはどういうことどういうことでしょうか?」

 

「蕾と接続すれば、機体が感知したあらゆる情報がコードを通して、操縦者に直接送られることになる。そして蕾に乗った誰もが蕾から送られる膨大な情報量に耐えることができなかった。

計画はすぐに凍結され、蕾に関するあらゆるデータは抹消、蕾自身も厳重に保管されることになった。」

 

「保管?普通は分解されるのではなくって?」

 

本来、古くなったISは分解されることになる。これはISのコアが有限であるため、使い捨て出来ないためだ。

 

「それが、できなかったらしい。原因は未だに分かってないが、蕾からはコアはおろか、あらゆる武装を取り外すことさえ不可能だったと聞いている。」

 

「つまり、このISがその蕾ということですか。」

 

黎斗が確認の意を含め尋ねると、千冬は首を横に振る。

 

「いや、当時の開発者曰く、これは蕾とは似ても似つかないそうだ。色も違えば形もまるで違うとな。」

 

その回答に全員が不思議そうな顔をする。蕾は分解できないから保存されたはずだ。なのになぜ改造が施されているのか。

 

「なんにせよ、世界で二番目に作られたコアというなら、その所持国は日本ということですわよね。いったいどう責任を取るのでしょう?」

 

セシリアが勝ち誇ったように話す。

IS発表当初、日本はその技術を占有した。そのため、コアの中でも若い番号を振られているのは日本国が所持しているものである。

しかし千冬はそれを否定する。

 

「話はそう簡単ではない。蕾はその能力の特異性ゆえに国連管理のもと、厳重に保管されていた。しかし、先ほど確認を取ったところ、半年ほど前に何者かに盗まれたらしい。つまり、これは国連、引いてはそれに関わった先進国全ての失態だ。」

 

一気にセシリアの顔が青ざめる。

 

「分かったなら、下手な言動は慎むんだな。安易な侮辱はお前の祖国への侮辱にもつながる。」

 

コクコクと機械的にうなずくセシリアに呆れながら、千冬は三人を見る。

 

「ちなみにこのことは各担任を通じて、専用機持ちにのみ伝えられている。そして、こいつの特徴だが、とにかく動きが変則的だ。機体と直接つながっているため、三次元的にかなり複雑な動きができる。さらに反応速度も速い。これも機体と操縦者間に余計なプロセスを踏まず操縦できるからだ。」

 

「言ってみれば、鎧を着てるみたいなことか。」

 

一夏が一人納得するように呟くと、千冬がそれにうなずく。そのとき、一夏はあることに気付く。

 

「そういえば、決闘はどうなるんだ?こんな状態じゃ中止ってことに…」

 

「安心しろ。それは予定通り行う。」

 

「なんでだよ!俺もオルコットさんも専用機持ちだろ。絶対狙ってくるだろ。」

 

「あぁ、だからそれを逆手に取る。」

 

一夏の反論に千冬が即答する。

 

「奴がこの決闘を狙ってくる可能性は高い。だからこそ、そこでやつを叩く。」

 

千冬の力強い言葉に、黎斗が異議を唱える。

 

「しかし、相手はかなり強力です。さすがに二人だけでは、危険ではないでしょうか。」

 

「それについては心配いらないわよっ。」

 

突如、若い女性の声が聞こえてきたかと思うと、会議室内に一人の女子生徒が入ってくる。赤い瞳に水色の髪、口元にはふふっと余裕のある笑みを浮かべている。

 

「ほかの生徒たちはどうだ。更識。」

 

「ええ。特にこれといった問題もなく、専用機持ち全員に話はいきました。」

 

突然入ってきた女子に三人は混乱する。

 

「あの、その人は?」

 

一夏が手を上げ質問する。

 

「ふふっ。私は更識楯無。この学校の生徒会長よ。よろしくね。」

 

パッと扇子を開くと、そこには『学園最強』と書かれている。

 

「襲撃者が決闘中に乱入したら、私が即襲撃してボコボコにしちゃうから、安心してね。」

 

そしてニコッと笑うが、一夏たちはいまいち納得しないようで、

 

「でも、一人で大丈夫なんですか。相手は…」

 

「心配ないわよ。こう見えて私、国家代表なのよ。なんだったら戦ってみる?」

 

表情は相変わらず笑顔だが、その奥に恐ろし気なものを感じ一夏はブンブンと顔を横に振る。

 

「では、そういうことだ。三名とも十分、襲撃者には気を付けるようにしろ。とくにお前らは決闘前にやられるなんてことのないように。」

 

最期の忠告に三人が了承すると、そのまま解散となった。三人が出ていくと、千冬は楯無の方を向く。

 

「奴をどう思う?更識。」

 

「檀黎斗、のことですよね。事前に言われましたが私は何も感じませんでしたよ。」

 

「そうか。」

 

そう言うと、楯無も部屋から出ていく。すると真耶が不思議そうな顔で千冬に聞く。

 

「檀さんがどうかなされたんですか。あっ、もしかして織斑先生にもついに春ががが…」

 

話の途中で容赦ないアイアンクローを受ける真耶。

 

「何をふざけたことを言っている。私はあいつに妙な不信感を感じるだけだ。」

 

「不信感ですか。うーん、私は特にそんな感じはしませんけど、考えすぎじゃないですか?」

 

「だと良いのだが…」

 

檀黎斗という男に初めて会った時から、千冬は彼に妙な感覚を感じていた。その笑顔の裏になにか大きな闇を感じるのだ。

 

(杞憂だと良いのだが)

 

そう思いながらもどうも胸騒ぎを抑えることができない千冬であった。

 

 

IS学園の学生寮、自室であう9610号室にいた黎斗は自分のデバイスに向かっていた。

そこには、なぜか今までに襲撃を受けたISと操縦者たちのデータが映っていた。

 

「念のため、他社のISのデータを取ってみたが、やはり大した違いは無いな。となると、」

 

そう言って、画面に違う情報を表示させる

 

『第三世代ISデータ

アメリカ ファング・クエイク  イーリス・コーリング(三年)

イギリス ブルーティアーズ   セシリア・オルコット(一年)

イタリア テンペスタⅡ     トライアル段階

ドイツ  シュワルツ・レーゲン トライアル段階

中国   甲龍         鳳凰鈴音(転入予定)

ロシア  ミステリアス・レイディ 更識楯無(二年)』

 

「ふっふっふ。」(こちらのデータを収集する必要があるな。)

 

黎斗は抑えきれないといった様子で、笑いながら画面を見ている。

 

『楽しそうね、クロト』

 

「ああ、とても楽しいさ、HIKA。ここまでずっと研究だったし、その研究もほとんど進展がなかったからね。」

 

どこからともなく聞こえてきた声に、当然のように黎斗は答える。

そして、さらに二つのデータを映し出す。

画面に映るデータのうち一つにはISの設計図が映っており、左上には『黒夢』と書かれている。そしてもう一つには、

 

(もとは暇つぶしがてら、構想だけで終わらせるつもりだったが、どうやらこちらの方が先に完成してしまいそうだな。)

 

―『クロニクル・カラーズ』と書かれていた。

 




黎斗の性格ですが、俺の解釈はこんな感じです。ちょっと違和感あるかもしれません。
ていうか、勢いで楯無を出してしまいましたが、この時点で生徒会長なんでしょうか?
私はアニメは一期まで、原作もまだ三巻途中なので、大まかなストーリーと福音以降はハーメルン知識しかありませんので、間違っていたら訂正お願いします。
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