鈍色の処女達   作:高嶋ぽんず

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鈍色の処女達

chapter:聖應女学院、生徒会室

初音「千早ちゃん、薫子ちゃん、折り入ってお願いしたいことがあるの。いいかしら」

薫子「どんなこと?」

初音「エルダーシスターとなった方には、戦車道を履修することを望まれているの。ここ何年か、都合があって履修できなかったのだけど、二人なら体力あるでしょう? それに、先の戦車道全国大会での大洗女子の活躍からか、最近は富に戦車道が盛り上がってるから、二人には……」

千早「その……私は、合気道などはやっておりましたが、戦車道は……」

薫子「ああ、私はちょっとだけやったことがあるけど、でも経験者っていうほどじゃないよ?」

初音「お願い、できない?」

千早「できれば、私は辞退……」

優雨「わたし……ちはやがせんしゃにのってるとこ、みたい……」

史「千早様、通信手ならお手伝いできます」

千早「優雨、史……」

薫子「どうする? 千早。わたしは構わないけど」

千早「はぁ……仕方ありませんね」

初音「じゃあ、引き受けてくれるの?」

千早「ええ……」

初音「よかったぁ。あのね? うちの学校は、イギリス系ということもあって、戦車はイギリスの戦車のみになってます。戦車道受講者は100名ほど」

千早「そんなにいるのですか?」

初音「そうよ。戦車一台につき、大体三人から五人が必要で、公式戦は最大二十輌で行われるからそれぐらいはいるの。中学からの経験者は五十人ちょっと。二人には、センチュリオンmkⅠの車長を務めていただくのが慣例になってるの」

薫子「そっか。じゃあ、私がセンチュリオンの装填手かな?」

千早「え? その、戦車道経験者の薫子さんが車長をやったほうがよろしいのでは?」

薫子「そうなんだけどね。装填手って、あれで車長よりも大変なんだよ。私は装填手もやったことあるし、千早が車長やったほうがいいって」

千早「かしこまりました。では、私が車長をやらせていただきます」

陽向「うちってイギリス系ですよね。ってことは、やっぱり英国面な戦車があれやこれやと……」

初音「残念ながらカヴェナンターはありません。あんなの使ったら、乗員か大変な事になっちゃうでしょう? それでは、お願いしますね?」

 

chapter:聖應女学院、戦車倉庫内

千早「あ、あの……薫子さん、スカート、短すぎませんか?」

薫子「確かに、ちょっと短いよねぇ。それにしても……」

千早「な、なんですか? 薫子さん」

薫子「千早って、本当に足が綺麗だよねぇ」

千早「何を言ってるんですか、薫子さんは」

?「コホン……」

千早、薫子「「!!」」

?「初めまして、エルダーシスター。私は戦車道隊長を務めさせて頂いております。美作春(みまさか はる)、と申します」

史「お久しぶりです、春お姉様」

春「ええ、久しぶりですね、史さん」

千早「お知り合いなの? 史」

史「はい、中等部の頃、お世話になったお姉様です」

千早「そうですか。宜しくお願いします、美作さん」

薫子「お願いします」

春「こちらこそ、お願い致します。確か、ナイトの君は戦車道を嗜んでおられたとか」

薫子「やってたといっても、中学の頃の3年間だけだから、そんなには……」

春「いえ、3年も学んでおられたのなら凄いと思います」

千早「美作さん、その……私達が乗ることになる戦車……センチュリオンですか? どのような戦車なのでしょう。私、戦車にはあまり明るくないもので」

春「ああ、さすがの白銀の姫君も、戦車の事はご存知ないのですね。まぁ、有り体に行ってしまえば、戦車道で使える戦車の中で一番強い戦車です」

注釈《センチュリオンは、1944年に開発が開始され、1945年に6輌が完成した第二次大戦最後発の戦車である。実戦に投入される事はなかったが、Mk.13まで改修を重ね、20年に渡って英国の主力戦車として活躍した。高校戦車道で使用が認められるのは、Mk.Ⅰのみとなっている》

千早「それを、薫子さんはともかく、私のような未経験者が乗るというのは。元々学んでいらっしゃった戦車道受講者の皆さんが乗るべきではありませんか?」

春「いえ、エルダーシスターは聖應女学院の象徴。お姉様が乗ってこそのセンチュリオンなのです」

千早「ですが、それは私達の手にあまるものですし、せめて三人で動かせる戦車はないものでしょうか。それだけ強い戦車には、相応の選手が乗るものです」

春「ふふ、やはりそうお思いになるのですね、お姉様は」

千早「それは……どういう事でしょうか」

薫子「それはね、千早」

千早「薫子さん?」

薫子「戦車の転換訓練には、それなりに時間がかかるからなんだよ。一朝一夕にできるようなものじゃないんだ」

春「そうですね、ナイトの君の言うとおりです。それに、転換訓練が終わったとしても、それでおしまいではありません」

千早「どういうことですか?」

春「戦車には、一台一台個性があります。その個性と向き合い、付き合うのにも時間がかかるのです。そして、その戦車の強さを引き出すには、さらに時間がかかります」

千早「今からセンチュリオンに乗り換えては、時間がない、と」

春「その通りです。ある戦車乗りが残したこんな言葉があります。『戦車とは、戦車が強いのではない。戦車乗りが戦車を強くするのだ』」

薫子「戦車は、性能だけで戦っているわけじゃない。乗っている戦車兵が使いこなしてこそ、その戦車の本当の力が発揮される、だっけ」

千早「つまり、今からセンチュリオンに転換しても間に合わない、ということですか」

春「ですから、お姉さま方にセンチュリオンを託さざるを得ないのです。が、私はお姉さま方には、仕方なくセンチュリオンを任せた、とは思わせてほしくありません。出来るならこの子を使いこなし、強さを引き出してほしいと願っております」

千早「わかりました。でも、どうしてそこまでこだわるのですか?」

春「先の戦車道全国高校選手権大会はご存知でしょうか」

千早「まぁ、ニュースにもなりましたから、人並みには」

薫子「大洗女子学園。あの高校は凄かった」

春「はい。私達は、大会決勝の試合を見て気づいたのです。強くあらねばならないと。自分たちが乗っている戦車に恥じぬ戦いをしなければならないと」

薫子「あの試合を見て、奮い立たない戦車乗りはいないよ」

千早「そんなに凄かったのですか?」

史「はい、千早さま。史も、決勝をたまたま見る機会がありましたけど、戦車台数が二倍以上の戦力差で勝つなんて、ありえません」

千早「二倍?」

史「戦力比は、四倍以上といってもいいかもしれません。いくら、フラッグ車を撃破したほうが勝つフラッグ戦とはいえ、さすがに……」

春「そうです。それだけの戦力差を覆して、大洗は常勝黒森峰に勝ちました。それを見た私達は、自分が今体を預けている戦車を使いこなそうと、そう決意したのです」

千早「それで、センチュリオンを私達に……」

春「はい。私達は、決して伝統のためにお二人にこのセンチュリオンを預けるわけではありません。戦車乗りとして、やらなければならないことを見せ付けられたが故なのです。おわかりいただけたでしょうか、白銀の姫君」

千早「そう言われては、私たちはセンチュリオンに乗らざるを得ませんね。それでいいですか? 薫子さん、史」

薫子「いいよ、それで。私もこれには乗ってみたかったし」

史「はい、千早様。史は千早様に従います」

春「では、お姉様方、史さん、戦車道受講者の皆さんに挨拶を。皆さんが、訓練場で待ちわびています」

千早、薫子、史「「「はい」」 」

 

chapter:櫻館談話室

千早「んー……」

薫子「どうしたの? ずいぶん難しそうな顔して本読んでるけど。眉間のシワ、残っちゃうよ?」

千早「ああ、薫子さん。戦車道の件について、ちょっと考えてました」

薫子「どんなこと?」

千早「センチュリオンの乗員についてです」

薫子「あ……」

千早「一人足りないのですが、それを美作さんにお願いしようと考えたのです。ですが、美作さんは恐らく、生徒たちをまとめるだけで精一杯のはずですし、あの方の決意を無視するわけにもいきません。センチュリオンに乗っていただくのは流石にためらわれます」

薫子「かといって、ことがことだけに誰かに簡単に頼るわけにもいかない、か」

千早「そうです。乗員の役割を確認したところ、車長、装填手兼通信手、操縦手、砲手の四名となっています。車長は私、装填手は薫子さんにお願いするとして」

史「千早様、薫子様、お茶をシナモンティーをお煎れ致しました」

薫子「あ、いい香り」

千早「ありがとう、史」

香織理「あら、いい香りね。シナモンティー?」

千早「香織理さん、お帰りなさい」

香織理「ただいま、千早」

史「千早様がお悩みになられていたので、気分転換にと。香織理様もお飲みになられますか?」

香織理「お願いできる?」

史「かしこまりました、少々お待ち下さい」

香織理「それでどうしたの? 随分難しい顔をして」

薫子「エルダーの慣例ってことで、いきなり戦車道やることになったんだけど、戦車の乗員でちょっとね」

香織理「ああ、センチュリオンの乗員が一人足りないってこと?」

千早「どうしてわかったんですか? 香織理さん」

香織理「陽向が昨日から煩いのよ。お姉様と戦車の取り合わせがー、とか」

薫子「ははは……」

千早「香織理さん、誰か心当たり無いかしら」

香織理「んー……流石に戦車道をやってる知り合いはいないわねぇ。初音に協力してもらったら?」

千早「それも流石に。私たちや生徒会長が募集したら、ちょっと大変なことになりそうですから」

香緒理「それもそうかぁ。でも、陽向に誰かいないか聞いておくわね?」

史「香織理様、お待たせいたしました」

香織理「ん、いい香り。史。相変わらず上手ね。陽向もこれぐらいできてくれたらいいんだけど」

史「ありがとうござます。千早様、御前に協力を仰がれてはいかがでしょう」

千早「雅楽乃に? あの娘に、そんな知り合いいるかしら」

薫子「ここで眉間にシワ寄せて唸ってるよりはましだと思うよ」

香緒理「そうそう、千早の眉間、シワの後できてるもの。可愛い妹たちが見たら、心労で卒倒し兼ねないわね」

千早「そんなに難しい顔してたかしら」

薫子「してたしてた。もう、戦車のわだちかってぐらいくっきり。明日からは、私も誰かいないか探してみるから」

千早「お願いね、薫子さん」

 

chapter:聖應女学院、温室

千早「姿子(しなこ)さんの話だとこちらにいるはずなのだけど――雅楽乃はいるかしら」

雅楽乃「はい、お姉様、こちらです」

千早「ああ、ここにいたのね、雅楽乃。ちょっと相談したいことがあったのだけど、今は大丈夫かしら」

雅楽乃「お姉様が? 私がお役に立てられるのでしたら、是非」

千早「実はね、雅楽乃。私と薫子で今度、戦車道を受講することになったのだけど、一人だけ選手が足りなくて、どうしても受講者以外から選手を探さなければならなくなったの」

雅楽乃「その一人に心当たりがないか、という事ですね?」

千早「ええ……無理なお願いなのはわかっているのだけど」

雅楽乃「ふふ、ところがそうでもないのですよ、お姉様」

千早「え? あてがあるの?」

雅楽乃「あるんですよ。実はもう、お姉様が戦車道を受講するというニュースはすでに学院中に流れていて、私のところにも話が流れてきているのです」

千早「では、その中に戦車道の経験者がいるのですか?」

雅楽乃「残念ながらいませんでした。ですが、それとは別に一人だけ、経験者がいました」

千早「その経験者とは、どなたなのですか?」

雅楽乃「ケイリさんです。確か、そろそろこちらに来る頃です」

ケイリ「Speak of the wolf and he will appear.

日本では、噂をすれば影がさす、だったかな?  ごきげんよう、二人とも」

注釈《噂をすれば影がさす:噂をすれば影、とも。人を噂すると、その当人が現れる事がある、という意味。陰口を叩いてる時にも現れるので、躾の一環として使われる場合も》

雅楽乃「今、ちょうどケイリさんの事が話題になったところでした」

千早「ケイリ……」

ケイリ「千早はどうやらお困りのようだね。どうかしたのかい?」

千早「戦車道をやることになったのですが、乗員が一人足りないのです。ケイリ、先ほど雅楽乃から戦車道をやっていたと伺いました。手伝って頂けますか?」

ケイリ「千早にしてはまた珍しく話が急だね。もう少し詳しく説明してくれるかな」

千早「そうですね……失礼しました。ケイリももう知ってると思うのだけど、私と薫子が戦車道を受講することになったの。それで、エルダーはセンチュリオンに乗るのが慣例らしくて、センチュリオンをつかうことになったのだけど、どうしても一人、乗員が揃わなくて……」

ケイリ「薫子も探してたようだけど、どうして戦車道受講者に頼まないんだい? その方がよほど簡単で早いと思うよ」

千早「それは、彼女たちの矜持のためです」

ケイリ「矜持?」

千早「美作さん――戦車道隊長さんがこうおっしゃっていました。『戦車とは、戦車が強いのではない。戦車乗りが戦車を強くするのだ』と」

ケイリ「千早?」

千早「戦車を強くするのも弱くするのも、乗員次第。彼女たちは、今乗っている戦車をより強くするため、今自分たちが乗っている戦車に集中させてほしい、と言いました。私は、その思いを無碍に扱いたくありません」

ケイリ「そういう事なら納得するよ。それに、他でもない千早の頼みだ。断るわけにはいかないかな」

千早「感謝します、ケイリ」

雅楽乃「それなら私もお姉さまをお手伝いできるかもしれません」

千早「雅楽乃、それはどういう意味でしょう」

雅楽乃「私、華道の関係で五十鈴流と面識があるのです」

千早「五十鈴流?」

雅楽乃「はい。大洗女子の戦車道チーム、あんこうチームの五十鈴華さんのお母様が家元の華道の流派です」

 

chapter:大洗女学園、生徒会室

華「というわけなんです、小山先輩」

柚子「なるほど。あんこうチームのみんなにはこのことは話したの?」

華「はい。皆さんは大丈夫と言ってます」

柚子「うん、じゃあ会長に聞いてみるね。会長~」

杏「どうしたー、小山ー」

柚子「五十鈴さんから、他校から戦車道の練習試合がしたいという連絡があったみたいです」

杏「んー、流石に予算がねぇ……夏休みの選抜との試合で、壊れた戦車の修理をやるだけで手一杯だし。五十鈴ちゃーん、ちなみにそこ、どこ?」

五十鈴「聖應女学院というところです」

杏「聖應。聖應、聖應……かーしまー、確か聖應って鏑木財閥が私財を投じて作った学園艦だっけ?」

桃「はい。イギリス系カトリックの、幼年部から大学まで一貫教育がモットーの学院です。戦車道は、講座としてはあるものの、いままで対外試合をあまり組んでいない学院です」

杏「小山、聖應の戦車の構成はわかる?」

柚子「ちょっと待ってください……っと、センチュリオン一輌、ファイアフライ二輌、コメット十輌、クルセイダー五輌、トータス重駆逐戦車二輌のようです」

杏「おーおー、流石鏑木財閥、お金かけてるねぇ……五十鈴ちゃーん」

華「はい、なんでしょう」

杏「五十鈴ちゃんに連絡してきたのは生徒会長?」

華「いえ、五十鈴流と合流のある華道の家元の娘さんです。あちらの生徒会の了解は取れているそうです」

杏「なるほどぉ。それなら、やりようはあるかもねぇ。むこうの生徒会長とちょっと相談してみるわ」

 

chapter:大洗女学園、戦車倉庫

華「ということで、しばらく待ってくれということでした」

優花里「そうでしたかぁ。先立つものがないとはいえ、残念です。確か、聖應ってトータスを二輌も持ってて、それ以外は足の早い巡航戦車でかためてるんですよね。見たかったなぁ、ね、西住殿」

みほ「あはは……」

沙織「聖應って、超がつくぐらいのお嬢様学校なんでしょ? そこと友達ができたら、上流階級の仲間入りして、上流階級の殿方と知り合いになって、庶民の魅力に溢れた私がモテモテになっちゃうかも~~」

華「沙織さん、それはないと思いますよ」

麻子「そうだな」

沙織「二人ともひどーい! どうしてそんなこと言うの?」

麻子「そもそも、社交界がどんな場所かも知らないだろう」

沙織「それはそうだけど……」

麻子「それより、聖應だったか」

優花里「どうしたんですか? 冷泉殿」

麻子「確か、遠縁の親戚が、一人通っていた気がする」

沙織「そんなのいたっけ」

麻子「親等でいえば十以上離れてる赤の他人だ。親戚というのもおこがましい」

優花里「でも、どうしてそんなところがこの時期に練習試合を申し込んできたんでしょうね。もう、大きな大会も終わって、あとは秋季の小さな大会しかないのに」

麻子「公式大会には出られない事情があるんだろう」

優花里「それはそうなんですけど、気になるじゃないですか。戦車とか、どんな作戦でくるのかとか、どんな流派なのか、とか」

みほ「優花里さん、ひょっとして」

優花里「はい! いってみようと思います!」

 

chapter:聖應女学院校内某所

優花里「はい、わたしは今、聖應女学院校内にいます。侵入には、いつものようにサークルKサンクスの輸送船に乗ってやってきました。聖應は、お嬢様学校で警備も厳しいと聞いたのですが、ハンディカムを没収されず、こうして撮影許可も貰えて写すことができてます。お嬢様学校なので、かなり窮屈な校風だと思ったのですが、言葉遣いや身形さえ気をつければ、むしろ自由な感じがします」

??「ごきげんよう、そのカメラ、今撮影してるのですか?」

優花里「は、はい! 親が、娘が転校した学校の様子をみたいっていって。風紀委員からも許可は得ています」

??「まぁ、転校したばかりなのですね。以前はどこの高校に?」

優花里「はい、サンダース大付属に通っていました」

??「サンダース? 聞いたことがあります。随分大きな学校なのでしょう?」

優花里「トイレの個室が千以上あったりとか、人工ビーチがあったりとか、とにかく大きかったです」

?!「花帆さん、そちらの方は?」

花帆「衛里さん。サンダースから転校してきた……えっと」

優花里「秋山優花里であります」

衛里「まぁ、優花里さん、初めまして。私、仁科衛里と言います。こちらは、友坂花帆さん」

花帆「花帆と申します、今後ともよろしくお願いしますね?」

優花里「それで、ですね。わたし、戦車道を受講しようと考えてんですけど、どんな戦車があるのか、前もって知っておきたいので戦車倉庫を見学したいんです。どこにあるか教えていただけますか?」

衛里「戦車倉庫、ですか? 確か、艦首のほうにあると聞いておりますが」

花帆「そのはずです。最近になって、久し振りにエルダーシスターが戦車道を受講なさるとのことで、校内でも噂になってるんですよ?」

優花里「え、えるだぁ、ですか?」

衛里「はい。エルダーシスター、六月末に生徒の投票によって決められる、聖應の生徒全員のお姉様です」

花帆「エルダーシスターは、全生徒から敬愛を込めて、エルダー、あるいはお姉さまと呼ばれます。エルダーシスターは、聖應という学び舎にて勉学に励む生徒の模範となる、栄誉ある称号なのです」

優花里「エルダーシスターって、そんなに凄い人なんですかぁ」

衛里「はい。私達聖應の生徒の代表であり、誇りでもあります」

優花里「では、そのエルダーさんには、どちらに行けば会えるのですか?」

花帆「この時間ですと、それこそ、戦車倉庫にいらっしゃるのではないでしょうか」

優花里「そうですか。じゃあ、探してみますね?」

 

chapter:聖應女学院、戦車倉庫前

優花里「只今、戦車倉庫前に来ております。ちょっと校内を散策した感じでは、学園艦としては小さい方ですが、非常に手間とお金がかかってる学園艦だと言えます。循環バス以外にも、無料のタクシーが存在してて、艦内の移動がとても楽です。では、潜入したいと思います」

優花里「失礼しまーす」

??「そうです、この時はトータスを前面に押し立てて、両サイドにコメット、さらにその外にクルセイダーを横陣で並べ、包み込むように包囲するのです」

??「なるほど。足の早いクルセイダーだからこそできる戦術なわけですね?」

??「その通りです」

優花里「どうやら、ホワイトボードにマグネットを並べて、作戦の解説をしているようですね。背の高い方が二人と背の低い方が一人、講義を受けているようです。他の生徒は見当たりませんねぇ。どこにいるんでしょう」

???「あの……どちら様ですか?」

優花里「ひゃい?」

???「見かけない方ですが、転校生でしょうか」

優花里「は、はい。最近サンダース大付属から転校してきた秋山優花里といいます」

???「そうでしたか。私、高等部二年の哘 雅楽乃(さそう うたの)と申します。驚かせてしまったようで、申し訳ありません」

優花里「いえ、わたしこそ不審者のような真似をしてすみません」

??「雅楽乃、どなたかいらっしゃったの?」

雅楽乃「はい、最近、サンダースより転校なさった秋山優花里という方で……」

?「秋山? 秋山優花里!?」

優花里「は、はいっ!」

?「練習試合だというのに、まさかうちのような弱小校にまでやってくるなんて……さすが優勝校、抜かりはないのですね」

雅楽乃「春お姉さま、優花里さんはサンダース大付属からの……」

春「いえ、秋山優花里、その方は大洗女子、あんこうチームの装填手です。そして、大洗でもトップクラスの諜報技術の持ち主」

??「そうなのですか? 薫子さん」

薫子「そうみたいだよ、千早。なんでも、幾つかの対戦校へスパイ活動を行い、いくつもの貴重な情報を大洗にもたらしたって聞いたことある」

優花里「あわわ……ば、バレてます」

?「薫子様、本名で入り込んだあたり、どうかと思いますが」

薫子「そういやそうだよね」

千早「なにか事情があるのかもしれません。史、紅茶の準備を」

史「かしこまりました、千早様」

薫子「さてと……詳しい話を聞かせてもらおうかな」

優花里「ひゃあっ!」

雅楽乃「あっ!」

薫子「逃げた! 千早!」

千早「はいっ!」

 

chapter:十分後、戦車倉庫

千早「それで、どうして逃げたりしたんですか?」

優花里「捕まったら、次の試合は出場できませんから」

注釈《次の試合は出場できない:オリジナル設定。戦車道のルールに置いて、スパイ活動は承認されているが、捕まったらどうなるかは明らかにされていない》

千早「春さん、そうなんですか?」

春「はい。基本的にはそうなります。実際は、スパイを捕まえた側の裁量に全てがかかっています」

千早「それなら、私は優花里さんを解放しようと思うのですけど、みなさん、どうでしょう」

春「白銀の姫君のこの判断に反対する生徒はおりません」

薫子「基本的にはそれでいいけど、私はいくつか条件をつけたいかな」

千早「条件、ですか」

薫子「うん。ちょっと聞きたいことがあるんだ。ねぇ、優花里さん。いくつか質問に答えてほしいんだけど、いいかな」

優花里「は、はい。答えられることなら、ですけど」

薫子「黒森峰戦のとき、どこまで作戦を決めてたの?」

優花里「へ?」

千早「薫子さん……」

春「ナイトの君、それは……」

薫子「な、なによ……目の前に、あの大会優勝者の立役者がいるなら、ききたくなるじゃない」

史「薫子様、お気持ちはわかりますが、その程度ならインタビュー記事でわかるのではないかと」

薫子「生でききたいじゃない、やっぱりさぁ」

優花里「あ、あの」

千早「では、私からも。優花里さんは、なにを知りたくてわざわざこの学院に浸入したのですか?」

優花里「車両構成の確認と基本のドクトリン、可能なら練習の様子も。あと、どうしてほとんど戦車道の大会に出場しなかったのか、です……」

千早「春さん、教えてよろしいですか?」

春「はい、構いません。うちはスポーツ系は弱小校。情報が漏れたところで、支障はありません」

優花里「え?」

千早「では。所有車両、並びに構成は高校戦車道連盟に提出しているものと同じです。基本ドクトリンは……」

優花里「ち、ちょっと待って下さい。捕まえたのに、どうしてそんな大事なことをわざわざ教えてくれるんですか? それに、普通ならロープで拘束ぐらいなら許可されてるはずです」

千早「それは、聖應女学院が、慈悲と寛容を旨としているからです」

優花里「慈悲と寛容……」

千早「それに、こちらの春さんも仰っていた通り、隠し立てしたところで、こちらになんの益もありません」

薫子「びっくりだよね、こんな大事なことを簡単によそに漏らすなんて」

優花里「はい……」

雅楽乃「そんなに緊張しないで。もっと楽にして下さい」

史「皆さん、紅茶を淹れて参りました。ちょうど、ウバのクオリティシーズンでいい葉が入ってきました」

千早「ありがとう、史。優花里さんも、紅茶を飲んで落ち着いて下さい」

優花里「あ、ありがとうございます」

春「お姉さま、ついでに休憩にして、優花里さんからお話を伺ったらどうでしょう」

千早「そうですね。皆さんも伺いたいことはたくさんあるでしょうし」

優花里「ええーっ!」

史「そうなるだろうと思って、マフィンとメープルシロップも用意してきました」

薫子「さっすが史」

優花里「えっと、あの、その……」

雅楽乃「優花里さん、ここは、ギブアンドテイクのほうがよろしいかと」

千早「史、お茶の休憩が終わったら、戦車道受講者の皆さんもよんできてください。ちょうどいい機会です。優花里さんに戦車道講座を開いてもらいましょう」

史「はい、千早さま」

優花里「え、ええ?」

 

chapter:大洗生徒会会議室

優花里「というわけで、捕まって色々聞かれてしまいました」

杏「まーいいんじゃない? こっちは大会や大学選抜戦で研究し尽くされてるわけだし。気にしない気にしない」

桃「それでも、聖應の実状や練度を知れたのは大きい。よくやったぞ、秋山」

優花里「そう言っていただけると嬉しいです」

柚子「でも、どうするんです? 練習試合、やるんですか?」

杏「やる。こういうのは申し込まれてるうちが花だしねぇ。燃料や砲弾の予算も、聖應のほうから出すって言ってくれたし、練習試合やるよ。というわけで、秋山ちゃんは詳細を西住ちゃんに連絡」

優花里「了解しました!」

杏「かーしまは全校に告知の準備! 小山は連盟に連絡。詳細は改めてあちらの生徒会長さんと詰めるから、それが決まり次第、試合会場と日時の決定」

小山、河嶋「「はい」」

 

chapter:学生寮西住宅

華「それで、どうだったんですか? 偵察」

優花里「捕まっちゃいました。でも、色々面白い話も聞けたんですよ」

沙織「どんな話?」

優花里「えっとですね。聖應女学院って、上級生の事を、お姉さまって呼ぶんです」

麻子「面倒くさそうだ」

優花里「それで、六月末に全生徒の投票で、エルダーシスターっていうのが決められるんです。で、そのエルダーシスター、まぁ、エルダーって普段は言われてるんですけど、そのエルダーが慣例として戦車道を受講する事になってるんです」

沙織「やった事もないのに?」

麻子「それは私達もそうだったろう」

沙織「そういえばそうか」

優花里「ただ、ここ数年、戦車道ができるような体が丈夫な人がエルダーになっていなくて、対外試合をほとんどできなかったそうなんです」

みほ「それで、公式試合に参加してなかったんだ」

優花里「はい。で、戦車道に参加できた最後のエルダーは三年前の宮小路瑞穂という方だったんですが、その頃は戦車道受講者が少なくて試合ができず、その前は入院して大半を病院で過ごしたそうです。もちろん、小さな規模の練習試合は、それなりにやってたらしいんですけど」

みほ「大会に参加しない高校とだけ練習試合をやっていた」

優花里「そうなんです。かといって、タンカスロンに参加できる車両は所有してませんし、校風として参加しないでしょう。ですから、今回、わたしたちと比較的大きな規模で練習試合をするのは、五年ぶりという事になります」

麻子「でも、どうして今になって練習試合なんてやる気になったんだ?」

優花里「それはですねぇ。全国大会決勝のわたしたちな戦いぶりを見て、火がついたそうなんですよ」

みほ「私達の?」

優花里「そうなんですよ、西住殿」

華「私達は、学校を守るため必死に戦っただけですけど、見てる方の中にはそう感じてくれる人もいたんですねぇ」

優花里「はい。ですから、哘殿が五十鈴殿と交友があったというのは、あちらにとっては本当に僥倖だったということです」

みほ「それで、会長はどうするつもりなの?」

優花里「練習試合の申し込み、受けるそうです。会長はこれから先方と日程の詰めなんかを行うそうです」

みほ「……」

華「みほさん……」

沙織「それじゃ、そろそろみんなでご飯つくろ? モテ道の道も一歩から、だよ!」

麻子「沙織しか受講しなさそうだな」

沙織「もー、またそんなこと言う」

 

chapter:聖應女学院女子寮、櫻館。談話室

薫子「しっかし面白い人だったよねぇ、優花里さん」

千早「戦車道受講者全員が寄ってたかって質問攻めにしたからです。あれでは、私でもああなってしまいます」

史「でも、優花里さんは貴重な戦訓を伝えてくれました」

薫子「そうだね、本当に勉強になったよ。車長としても、勉強になるところがあったんじゃないの? 千早」

千早「ええ、大変勉強になりました。特に、西住さんの人心掌握術などは、見習うべきところが多かったと思います」

香織理「戦車倉庫のほうで騒ぎがあったみたいだけど、なにかあったの?」

千早「香織理さん。またそんな格好で……風呂上がりなのだから、せめてバスローブぐらいは着てください」

香織理「はいはい。で、なにかあったの?」

史「香織理様、グレープフルーツジュースです。どうぞ」

香織理「ありがと、史ちゃん」

薫子「放課後、すぐにね。スパイが入り込んだんだよ」

香緒理「スパイですって? そんなことあるはずないじゃない」

千早「本当なんです、香織理さん。大洗女子の秋山優花里さんが敵情視察にとこの学園艦に潜り込んできたんです。どうもあの子、これまで何回か諜報活動をしてきたようで」

史「史も最初は自分を疑いました」

薫子「秋山さんがスパイ活動するっていう話は、噂には聞いていたんだけどねぇ。どこで手に入れたのかウチの制服着て、転校生のふりしてさ。堂々とハンディカムで撮影してたよ。しかもご丁寧に風紀委員から許可までとって」

千早「秋山さんが逃げ出して、私が追いかけて取り押さえた時はびっくりしていましたね。逃げ足には自信があったんでしょう」

史「千早さまから逃げられる人なんて、そうはいません」

香穂理「それで、その捕まえた秋山さんはどうしたの?」

薫子「こっちの情報をわたすかわりに、ついさっきまで質問攻め。戦車道受講者全員からね」

香織理「それはなんというか、ご愁傷様としかいいようがないわね」

千早「そのことについては、私もすまないことをしたと後悔しています」

薫子「秋山さん、サンクスの輸送船で聖應にきたらしくて、帰りも輸送船で戻るつもりだったんらしいんだけど、あの人たち、輸送船が離れても無理やり引き止めて話を聞いてたからねぇ。涙目で質問に答えていたよ」

香織理「うわ……」

千早「最後には、精も根も尽き果ててぐったりしてましたし。変なことを言わず、素直に帰してあげるべきでした」

香織理「それで、秋山さんはどうしたの?」

史「連絡用のオスプレイで大洗まで送って差し上げたそうです。幸い、大洗艦はそう遠くない海域を航行中でしたので」

薫子「みんな、今度は特別講師として公式に呼ぼうとかいってたけど、それを聞いた時の秋山さんのあの顔、ちょっと言葉では言い表せなかったわ」

香織理「それで、練習試合はどうなるの?」

千早「それについては、砲弾と燃料の予算をこちらもち、という条件で行う事が決定したそうです。今は初音さんが緊急予算を組んで、試合会場の選定を行っております」

薫子「審判は、富士教導隊の蝶野亜美教官がやるみたい。連盟に連絡したら即答だってさ」

初音「ただいま戻りましたぁ」

千早「お疲れ様です、初音さん」

薫子「お疲れさん、初音」

香織理「生徒会長も大変ねぇ」

初音「今回は、我が校が五年ぶりに行う規模の大きい対外試合ですから、これぐらいはどうってことありません。それに、千早ちゃんや薫子ちゃんばかりに苦労をかけてばかりだし」

千早「初音さん……」

薫子「初音……」

初音「それから、今回は希望者には抽選で試合会場で観戦が許可されます。抽選にもれた人は、試合はライブビューイングで観戦できるようにするつもりです」

香織理「初音、そんなことまでするの?」

初音「むしろ、しないと暴動が起きかねないから」

香織理「確かに、ここ最近で急に戦車道の会話を耳にするようになったけど……」

史「クラスメイトもお姉様方が大洗女子と試合すると聞いて、凄く盛り上がっていました」

香織理「今日の夕方、正式に決まったのに噂話がもう流れてるのねって、陽向がいたか……」

陽向「呼びました? お姉さま」

香織理「あなたのスピーカーのせいで、大変な騒ぎになっちゃったのよ」

陽向「おおおお姉さま、こめかみ、こめかみぐりぐりはやめてえええええ! いいいたいいたいい――っ!!」

初音「ぷっ……いいのよ、香織理さん。陽向ちゃんが噂を広げなくても、生徒会から広報を通して生徒に通知したんだし」

千早「初音さん、軽食でよければ何か作りましょうか?」

初音「あ、本当? ありがとう、千早ちゃん」

薫子「千早、私も」

千早「香織理さんと陽向ちゃんはどうしますか?」

香織理「私は心遣いだけいただくわ。太っちゃうし」

陽向「千早お姉さまのご飯ならいつでもいただきます!」

千早「ふふ、わかりました。史」

史「かしこまりました、千早さま」

薫子「わくわくするなぁ、久し振りの試合」

初音「試合会場、いいところを押さえておきますね、薫子さん」

 

chapter:聖應女学院、戦車道訓練場。センチュリオン車内

千早「ケイリさん、そのまま右前方の一本杉を大きく回り込んで停車。薫子さん、装填用意。回り込んだ先にコメット1号車が出てくるはずです。史、停止と同時に射撃を」

ケイリ、薫子、史「「「了解」」」

薫子「装填完了!」

ケイリ「停止っと」

千早「史、用意。ってーっ!」

 

ゴッ!

 

しゅばっ!

 

千早「ケイリ、後退しつつ左旋回。ここを離れます」

ケイリ「クルセイダー隊が追いかけてくるんじゃない?」

千早「わかってます。このまま真っ直ぐ進んで、トータス隊の前に出ます」

薫子「挟撃されるよ?」

史「ファイアフライ隊も史たちを狙ってきています。このままでは三方向から狙われますが」

千早「はい。ですから、急旋回で反転、クルセイダーをやり過ごしつつトータスとファイアフライにクルセイダー隊を誤射させます」

ケイリ「ふふ、千早は博打好きだな」

千早「クルセイダー対全車両ですから、これぐらいの博打は必要です」

薫子「特訓とはいえ、千早も無茶するよ」

千早「戦車道未経験者二人を抱えたチームが実力を磨くには、これぐらいのスパルタが必要です」

史「あんこうチームも、初戦はにたような状況で逆転まであと一歩まで迫りました」

千早「あんこうチームと違って、私たちに与えられた車輌はクルセイダー。これぐらいの状況でも覆せないと、大洗には勝てません」

ケイリ「千早はあの大洗に勝つつもりなんだ」

千早「勝つつもりもなしに試合に臨むのは、相手に失礼です。ケイリ、背後からクルセイダー隊がきます。合図と同時に反転。加速して前進です」

ケイリ「姫君は、無茶をさせるのが本当に好きなようだ」

 

どっ!

ばかん!

ぎぃん!

 

薫子「くぅ……装甲が厚いとはいえ、相手の砲弾が当たった音って肝が冷えるよ。さてと、横からファイアフライの砲撃、後方からクルセイダー。トータスもこちらに狙いを定めてる。どうする? 千早」

千早「よけるだけです。ケイリ、そろそろ反転します――はいっ!」

ケイリ「了解!!」

 

どかっ!!

ごんっ!!

しゅばばっ!!

 

千早「クルセイダー、ファイアフライの誤射により二輌撃破。そのまま残りのクルセイダーを盾にしつつ、全速! ファイアフライを狙いに行きます」

薫子、史、ケイリ「「「了解!」」」

 

chapter:聖應、戦車倉庫

薫子「あー、さすがに勝てなかったかぁ」

千早「まぁ、当然でしょうね。でも、いい経験をさせていただきました。皆さん、お付き合いいただき、有難うございます」

生徒たち『有難うございました』

春「センチュリオンチームの皆様、お疲れ様です。今日は如何でしたか?」

薫子「うちの姫君、ほんと、無茶させすぎだよ」

千早「これまでの練習で、皆さんの技量のおおよそは把握していました。あとは、どこまで出来るか知っておきだったのです。皆さんには無茶をさせてしまったと、思っています」

ケイリ「千早は、本当に戦車道、初めてなのかい?」

千早「はい、今年の高校生大会全試合と、大洗対大学選抜戦を見て、戦術書も幾つか読みましたが」

春「いつの間にそんなに……」

千早「映像は寝る前に。戦術書は学校の休み時間に」

春「それにしても、千早お姉さまの采配には舌を巻きます」

薫子「かなり、根を詰めてやってたからね、千早は」

史「史は、あまり根を詰めすぎないよう、きつく注意したのですが」

千早「皆様の足手まといにはなりたくないですから。それに、私も皆様から預けられたこの戦車に負けぬよう、強くありたいと思ったのです」

薫子「そう言い張ってね。図書館にも通い詰めて、西住流や島田流の戦術書も読む始末だよ」

春「千早お姉さま……お姉さまが戦車道を積極的に学んでいただけるのは大変喜ばしいのですが、そう無茶をされては、お体を壊しますし、他の生徒が真似をしかねないので」

千早「わかってはいるのですが、楽しいのです。ですが、私だけの問題ではないのですね」

春「はい、ご自重下さい、お姉さま」

千早「わかりました、春さん。では皆様、これで解散といたしましょう。整備の皆様、よろしくお願いいたします。お疲れ様でした」

生徒たち『はい! お疲れ様でした!』

 

chapter:大洗、生徒会会議室

杏「というわけでさー、聖應との練習試合決定したんだけど、試合会場、先方がどうしてもって言って聞かなくてさぁ。また大洗でやることになったんだよねぇ」

梓「またですか?」

桃「建物の修理費も協会とは別にそれなりの額をだすとまで言い出したんだ」

柚子「先方にここまで言われたら、大洗町議会や商工会議所もいやとはいえないらしくて」

みほ「じゃあ、試合会場は大洗町で決定なんですね?」

桃「ああ、そういうことになる」

カエサル「では、今度こそ勝たなくてはな」

典子「ホームチームなのに負けっぱなしですからね。根性見せて勝たないと、大洗の人たちにも申し訳ないです!」

杏「そうなんだよねぇ。だから、今回はみんな、頑張ってもらうよ」

ナカジマ「それなら、整備もいつも以上に気合入れないとねぇ」

ねこにゃー「ボクたちももっと体を鍛えて頑張るにゃ」

みどり子「聖應は風紀が整った学校と聞いてるわ。それに負けないよう、私たちもより一層風紀を取り締まらないと!」

杏「というわけだから、西住ちゃん、よろしく頼んだよ~」

みほ「はい、会長」

柚子「試合開始場所は、聖グロと同じ場所。車両数はこちらに合わせてくれるそうよ。ただし、試合に出す車輌は秘密とのことです」

みほ「わかりました。秋山さんが聖應の情報を入手してくれたので、それを元に作戦を考えようと思います」

杏「頼むよ~、西住ちゃん。勝ったら干し芋一週間分プレゼントするから!」

みほ「今度こそ、大洗町での勝利を目指して頑張ります! 皆さんも、一緒に頑張りましょう! パンツァー・フォー!」

みほを除く全員「おーっ!」

 

chapter:大洗町、曲松商店街

史「千早さま……史は、何を食べれば……」

千早「唐揚げ、串カツ、きゅうりの浅漬け、蜜団子……確かにこれは……」

薫子「噂には聞いてたけど、本当に凄いんだね、大洗曲松商店街。はむっ……んー、美味しい! なにこれ! すっごい美味しいよ、この串カツ!」

??1「ナイトの君、そのとても美味しそうな串カツはどちらで買われたのですか?」

薫子「うん、そこのウスヤ精肉店だよ」

??2「まぁ、それでは行きましょう」

??3「ええ、食べてみましょう。ありがとうございます、ナイトの君」

史「薫子さま……」

薫子「あ……」

史「千早さまが、みつだんごでやってしまったじゃないですか」

薫子「そうだった」

 

女生徒たち「ご主人、串カツをお願いします!」「「「私も!」」」

 

千早「薫子さん……」

薫子「千早だってやったじゃない」

千早「確かにそうですけど……」

雅楽乃「でも、このみつだんごは本当に美味しいです。お茶請けにもいいですね」

千早「ええ。本当に」

薫子「茉清(まきよ)と聖(きよら)にも早く食べさせてあげたいなぁ」

千早「仕方ありません。お二人の上陸は明日、戦車道の試合当日なのですから」

ケイリ「そのかわり、私たちが試合をしている間、二人は大洗を堪能できるんだ。うらやましくなるのはこちらかもしれないよ」

千早「ケイリ、どちらに行っていたのですか?」

ケイリ「私は、さっきまでブロンコで鉄板ナポリタンを食べていたよ」

薫子「どうだった?」

ケイリ「言葉がでなかったよ。あまりの美味しさにね」

雅楽乃「千早さま、あそこに干しいもが」

史「あちらにはアイスが」

千早「ふふ、史、雅楽乃、二人ともそんなに慌てなくても大丈夫ですよ。それに、晩には大洗ホテルさんで、特別に大洗学園艦の生簀からもってきたアンコウで鍋を出してもらえるのです。少し自重しましょう」

薫子「そういえばそうだった……うぅ……」

ケイリ「薫子、串カツを睨んで、どうしたんだ?」

薫子「ケイリ……だって、夜のアンコウ鍋も楽しみだけど、この串カツもたまらなくて……どうしよう、千早ぁ」

千早「そう言われましても……」

ケイリ「私が貰おうかな」

薫子「あーっ! ケイリー!」

ケイリ「うん、確かに衣がカリッとしていて、でも油っこくなくて食べやすい」

薫子「けいりぃ」

ケイリ「薫子、みんな見てるよ」

薫子「はっ! あ、ああ……」

史「うなだれないで下さい、薫子さま」

千早「エルダーの威厳も串カツの前にはかたなし、ですね」

?「お久しぶりです、哘さん」

雅楽乃「あ、五十鈴さん、お久しぶりです」

華「はい、楽しんでるようですね」

雅楽乃「はい! こんな楽しいのは久しぶりです!」

華「そうですか、よかった。もっと楽しんでいって下さいね?」

雅楽乃「はい。それから、夏に行われた展覧会、五十鈴さんの作品を見させていただきました。今までの五十鈴さんの花と違って、躍動感があって、花がとても楽しそうでした」

華「まぁ、ありがとうございます、哘さん」

雅楽乃「私にも活けられません。あれが、五十鈴さんがみつけた、五十鈴さんの華道なのですね」

華「はい。戦車道と出会ってみつけた、私だけの華の道です」

千早「雅楽乃、こちらの方は?」

雅楽乃「あ、千早お姉さま、こちらが五十鈴華さんです」

千早「ああ、そうでしたか。失礼致しました。私、聖應女学院戦車道副隊長を務めさせて頂いております、妃宮千早と申します」

華「こちらこそお願いします、妃宮さん」

薫子「本当に五十鈴華だ……」

千早「薫子さん……」

薫子「あ、ごめんなさい。私は七々原薫子、センチュリオンの装填手です」

華「ふふ、よろしくお願いします。それで、皆さんはこれからどちらに行かれるのですか?」

千早「どこ、とは決めていないのです。ただ、こうやって歩いてるだけで楽しくて……」

華「そうですか。では、あちらに休憩所がありますから、足を休めてはいかがですか?」

薫子「その方がいいかも」

華「それなら、うちの生徒会長が戦車道履修者用の休憩場所を用意しましたので、そちらでどうぞ、お休みになって下さい。場所は――」

 

chapter:大洗町、休憩所

華「こちらです。ゆっくり休んでいって下さいね」

千早「わざわざ案内していただき、ありがとうございます、五十鈴さん」

ケイリ「私もここまで人に揉まれたのも久しぶりだから疲れたね」

薫子「ほとんどうちの生徒とはいえ、小さな町に押し込んだからね」

千早「聖應らしい生徒たれ、といっても、無理でしょうね。この町だと」

薫子「久しぶりの上陸っていうのもあるけど、町全体が元気だからね。はしゃいじゃうよ」

ケイリ「二人は、どこを回ったんだい?」

薫子「私たちは、曲松を回った後足を伸ばそうかなって思ってたんだけど」

千早「回れませんでしたね」

薫子「っていうか、商店街を出られなかったよ」

千早「呼び止められては干し芋、煎餅、団子、漬物って、口の休まる暇がありませんでしたからね」

薫子「そうそう、あれで儲かってるのかこっちが心配になっちゃうくらい」

ケイリ「二人もそんな感じだったんだね」

薫子「ケイリも?」

ケイリ「買った以上のお土産がたくさんだよ」

千早「明日には、あの大洗と試合をするんですね」

薫子「今も、ふわっとしてて現実感がないよ。そうか、明日なんだね。やれるかな、私たち」

ケイリ「やれると思うよ、私たちは。それだけの練習はしてきたから」

優花里「西住殿ー、これからどうしますか」

みほ「月の井さんにいって、お父さんとお母さんに梅酒とか地酒のお土産かなぁ」

優花里「お酒、いける口なんてすか?」

みほ「うん。特にお父さんは目新しいのに目がないの」

優花里「そうなんで……す……?」

千早、薫子、ケイリ「「「!!」」」

みほ「どうしたの? 秋山さん」

優花里「聖應の方ですぅ」

みほ「?」

千早「初めして、西住みほさん」

みほ「はい……えぇと……確か、ちはやさん?」

千早「はい、聖應女学院戦車道チームの副隊長を務めさせていただいております。妃宮千早と申します」

薫子「ちょ……千早……」

千早「薫子さん、こうして試合前にお会いできる機会ができたのだから、挨拶だけでもするべきです」

みほ「初めまして、西住みほです」

千早「すこしお話を伺いたいのですけど、よろしいですか?」

みほ「はい。なんでしょう」

千早「なぜ、貴女はああまで戦えたのですか」

みほ「それは……」

千早「大洗の大会での試合は全部見させていただきました。大学選抜戦も拝見致しましし、インタビュー記事も可能な限り読みました。大洗が勝たなければならない理由もわかります。ですが、それと戦えるかは別です。私は、転校生である貴女がどうしてあそこまで戦えたのか、その理由が知りたいのです」

みほ「……えと、友達がいたから、です」

千早「友達、ですか」

みほ「私は、黒森峰から逃げ出して、戦車道のない大洗に転校しました。元々友達作るの下手で、ひとりぼっちだったところに、砲手の華さんと通信手の沙織さんが声をかけてくれたんです。それから、どんどん友達ができて……」

千早「確かにそういう理由なら、私も同じように頑張ったかもしれません。西住さんのように戦えるかは別ですけど」

みほ「妃宮さんも?」

千早「ええ。私も聖應に転校してから友達がたくさん出来て、聖應のことが大切になりました。ですから、西住さんのその思いには共感できます」

優花里「妃宮さんも、自分の学校が好きなんですね」

千早「はい、私をエルダーに選んでくれた人たちの思い、希望を無碍にできませんから。それから、優花里さん、今度、聖應女学院より、正式に戦車道の講座を依頼する事になると思いますので、その時はお願いします」

優花里「は、はい。私でよろしければ、不肖、秋山優花里、頑張りたく存じます!」

千早「ふふ、お願いしますね」

みほ「今日は、皆さんと会えてよかったと思います。明日はよろしくお願いします」

千早「聖應はこれまで対外試合は殆ど行われていない弱小です。でも、気持ちだけは負けるつもりはありません」

みほ「私たちも、これ以上大洗で負けるわけにはいきません」

千早、みほ「「では、明日、会場で」」

 

chapter:大洗ホテル、大宴会場

桃「というわけで、明日、大洗女子と聖應女学院の練習試合を行う事になった。本日は、懇親会として会長の許可の元我が大洗女子学園が養殖したあんこうで、特別にあんこう鍋を用意した。聖應女学院の方々には、夏の鍋を楽しんでいただきたい。因みに、このよ」

杏「かーしまー」

桃「はい」

杏「長い」

桃「では、会長から一言」

杏「じゃー、かんぱーい!」

全員「かんぱーい!」

 

春「夏にあんこう鍋を食べれるなんて、贅沢ですね」

千早「あんこう鍋は食べた事があるのですか?」

春「家族旅行で一度だけ。でも、養殖のあんこうは初めてです」

史「なんでも、あんこうの養殖は困難を極めたらしく、大洗女子で初めて成功するまでは、技術的に困難でコスト的に割りに合わないため、養殖をしなかったそうです」

千早「そうなのですか?」

史「気になって調べたのですが、どうやらそのようです」

杏「やーやー、千早ちゃん、気に入ってくれた?」

千早「ああ、大洗の生徒会長さん。初めまして」

杏「確か、エルダーシスター、なんだって?」

千早「はい、私一人では担いきれない大役なので、こちらの七々原薫子さんと、二人で」

薫子「美味しい……はむ、ふむ……ん?」

千早「薫子さん……」

薫子「らって、こんな美味しい鍋初めてで」

千早「わかりますけど、もう少し行儀よく」

杏「いいっていいって。それだけ気に入ってくれたなら、こっちとしてもご馳走した甲斐があるってもんだよ」

千早「お恥ずかしい限りです。それにしても、あんこうの養殖ものなんて、一度も食べた事なかったのですが、天然モノよりも濃厚で美味しいですね」

杏「でしょ? これはね、我が校の生徒たちが全員一丸となって成功したモノなんだよ。商業的に成功したのも、世界で唯一と言っていい。我が校の自慢の一つなんだよ」

千早「そうでしたか。本当に美味しい……こんないいものを含めて全部、文部省は廃校にしてしまおうとしたんですね」

杏「西住ちゃんがいなかったら、唯々諾々と廃校命令に従わざるをえなかったんだけどね」

薫子「とてもそんな感じには見えないけど……」

杏「あれでね、試合になったら顔つきが一変するんだよ。西住流とはそりが合わなくて、出奔したようなものだけど」

春「生徒会長さ」

杏「角谷でいいよ」

春「では、角谷さん。噂によると、みほさんは西住流の分派を認められたようですが……」

杏「ああ、その事ね。まだ、迷ってるみたいだねぇ。流派の立ち上げは、その迷いが吹っ切れてからみたいだけど」

春「そうでしたか。西住流が分派を認めるなんて、よほどの事だと思ったのですが」

杏「それだけの事をしたからねぇ、西住ちゃんは。まぁ、春ちゃんも明日のために、たっぷり食べて英気を養っておきなよ」

春「昼も、商店街で食べ過ぎましたけどね。しばらくダイエットに苦労しそうです」

杏「戦車に乗ってたらあっという間だよ。それじゃ、楽しんでねぇ」

薫子「不思議な人だったね、大洗の生徒会長さん」

史「千早様だけじゃなく、美作様の事もご存知でした」

千早「多分、あの生徒会長さんは、聖應戦車道の生徒全員の顔と名前を覚えていると思いますよ」

薫子「ええっ!」

千早「たまにいるのです。ああいう傑物というのが」

薫子「いやいや、さすがにそれは。だって五十人以上、整備の人も含めると百人超えるよ?」

千早「身近にそういう人がいるから、わかるんですよ、薫子さん」

史「瑞穂さんの事ですね?」

千早「ええ。まぁ、こんな話ばかりしても仕方ないですね。今は生徒会長の厚意に甘えましょう」

 

chapter:大洗町、戦車道試合場

春「皆さん、私達が戦車道を受講してから、教会に審判団を要請した初めての対外試合です。昨夜は大洗女子の生徒会長の計らいで、リラックスして眠れることができたと思います。今はその気持ちを維持して試合に臨みましょう。薫子お姉さま、千早お姉さまからも、一言を」

薫子「えーと、なんて言えばいいのかな。私は中学生の頃、親の勧めで剣道と戦車道を学んだんだけど、まさか高校の三年になって戦車道をまたやることになるとは思ってもみなかった。中学の頃はいやいややっていた戦車道だけど、みんなとこうして戦車道を学んでいることが、今は凄く楽しいって思ってる。

 今日の相手は大洗の奇跡を起こしたあの西住みほの率いる大洗女子だ。大洗女子は、私達と同じ無名校ながら初出場で全国優勝を成し遂げた。あの人たちにできて私達にできないはずがないと、私は思ってる。みんな、今日は勝とう」

選手『はいっ』

春「千早お姉さま、お願いします」

千早「かしこまりました。皆様ご存知の通り、私は三年になって聖應に転校して参りました。それから少しして、私は薫子さんとともにエルダーに選ばれました。そして、皆さんの思いを感じ、生活していくうちに私はこの聖應を、まるで初等部から通っているかのような思いで愛するようになっていました。それは、奇しくも本日対戦します、大洗女子の隊長、西住みほさんと同じ境遇でした。

私は、彼女に親近感を覚え、同時に彼女の思いも理解できました。ですが、私は西住さんのように強くはありません。戦車を活かせないかもしれません。そこで、私は皆さんにお願いしたいのです。どうか皆さんの力で、大洗女子から勝利を勝ち取りましょう」

選手『はいっ』

春「お姉さま、ありがとう御座います。それでは皆様、開始場所に向かいましょう」

 

chapter:同試合場、大洗女子待機場所

桃「お前達も知っての通り、我々はホームであるこの大洗町の試合で、二連敗を喫している。一度目は聖グロリアーナ、二度目は夏休みに行われた、聖グロ、プラウダの合同チームにだ。そして本日、聖應女学院との練習試合を行う。

我々はこの試合、大洗町の皆さんのためにも何としても勝たねばならん。そのために全員不退転の覚悟で臨んでもらう。頼んだぞ、お前達」

カメさんチームを除く全員「はいっ!」

桃「西住、お前も何か言え」

みほ「あ、はい。今日の相手は戦車道では無名の聖應女学院です。私達も無名校でしたけど優勝できました。同じように、聖應が無名だからといって弱いとは言えません。ですが、たとえ聖應のみなさんが強敵でも、私達が私達の戦いをできれば勝てない相手ではないと思います。皆さん、気を引き締めていきましょう。

Panzer vor!」

全員『おーっ!』

 

chapter:同会場、開始場所

春「聖應女学院、戦車道隊長、美作春です。本日の練習試合、引き受けていただき感謝します」

みほ「大洗女子学園、戦車道隊長、西住みほです。本日はよろしくお願いします」

春「西住さん、全国大会決勝を見て、私達のような弱小校でもやればできる、という勇気を頂きました。本日はその勇気を、お見せしたいと存じます」

みほ「こちらこそ、よろしくお願いします」

春「……」

みほ「あの、何か……」

春「いえ、千早お姉さま……副隊長が、西住さんと自分の境遇が似ている、とおっしゃっていたものですから、どんな人だろうとつい。失礼致しました」

みほ「いえ……」

亜美「全員揃ったわね。本日は、八対八のフラッグ戦で行います。主審は私、蝶野亜美、副審は高島レミ、稲富ひびきか勤めます。一堂、礼!」

全員『よろしくお願いします!』

 

chapter:隊長車、コメット1車内

春「では、予定通りファイアフライ二輌はA-5地点より、D-5地点で待ち伏せていると思われる大洗チームに砲撃を行ってください。撃破する必要はありません。威嚇し、相手に砲撃をさせないようにするだけで構いません」

FF1、2車長『了解です』

千早『聖グロがやったように、全車両で進軍、行進間射撃で威嚇したほうがいいのでは?』

春「練度の低い大洗が相手ならそれでもよかったのですが、今はそうではありません。浸透強襲戦術では、私たちに少なくない犠牲が出てしまいます。それではポルシェティーガーを相手にするときの戦力がたりません」

千早『でも、よかったのですか? センチュリオン、ファイアフライ2、コメット3、クルセイダー2の思い切った布陣で』

春「大洗に相対するには、機動力と連携が必須です。足の遅いタートルは、逆にアキレス腱になります」

千早『ふふ、わかりました。厚い皮膚より早い足、ですね?』

春「その通りです、白銀の姫君。私たちは王者大洗に立ち向かう挑戦者。冒険なしで勝てる戦術を選択しては、そこが油断という穴になります」

千早『勇気のある決断です。では、センチュリオンを先頭に楔形陣形で回廊を進むのですね』

春「ええ、お姉さま。フラッグ車を先導車にするのは危険ですが、センチュリオンはトータスを除けば我が校で一番の装甲厚を誇る車両です。大変だとは思いますが、よろしくお願いします」

千早『全車、大洗の喉元まで送り届けます』

春「では、戦車前進!」

全員『了解!!』

 

chapter:回廊、中間地点

優花里「西住殿、聖應、随分思い切った編成ですね。トータスがいません」

みほ「うん。私も、トータスを使ってくると思ってた」

優花里「どうしてでしょう、西住殿」

みほ「機動戦術で撹乱、乱戦を狙ってるのかな」

優花里「陣形を乱さず進軍できてるあたり、練度も十分です」

みほ「秋山さん、急いで戻ろう」

優花里「はい、西住殿!」

みほ「麻子さん、急いでみんなのところへ。華さん、当たらなくても構いません。榴弾で砲撃を。相手の足を遅くしてください」

麻子「わかった」

華「はい、西住さん」

みほ「みなさん、聖應は速攻で攻めてきます。迎撃の準備を」

車長全員『はいっ』

みほ「沙織さん、各車の位置の把握、いつも以上にお願いします」

沙織「まかせて! みぽりん」

みほ「Panzer vor!」

 

chapter:センチュリオン車内

史「千早さま、射撃はしないでいいんですか?」

千早「制圧射撃は私たちの仕事ではありません。ファイアフライチームの仕事です」

薫子「やった方がいいんじゃないの?」

千早「榴弾なら行進間射撃でも制圧射撃は可能ですが、今ここで残弾を減らすわけにはいきません」

ケイリ「千早はまぐれ当たりでⅣ号を撃破したくないんだよ」

千早「ケイリにはお見通しですね」

薫子「千早、4号に白旗立てさせるつもりなんだ」

千早「西住姉妹相手とはいえ島田流でも勝てなかった相手をタイマンで倒すって、素敵だと思いませんか?」

薫子「怖いもの知らずだね、千早は」

千早「目標が高いだけです。それに、Ⅳ号は私たちよりも悪い条件で、聖グロリアーナ撃破まであと一歩のところまで手をかけたのです。私たちにできないわけがありません」

ケイリ「本当、うちのお姫様は怖いお姫様だ」

千早「でも、それが生徒たちの規範となるものがやるべきことだと私は思うのです」

薫子「最後は一対一で、正々堂々と。勝っても負けても全生徒たちに自慢できるような試合をってこと?」

千早「ええ、その通りです。薫子さん。それに――」

薫子「それに?」

千早「あのあんこうチームに、私たちと戦ったことを忘れさせないためには、それぐらいしないと」

史「千早さま、とても悪い顔です」

薫子「口をVの字みたいにしている。悪魔のような顔っていうの?」

ケイリ「その顔、可愛い妹たちには見せられないね。記念に撮っておこう」

千早「えっ? そんなに悪い顔してましたか?」

薫子「それはもう。聖應の無垢な乙女なら泣きそうなぐらいに」

千早「では、そんな私の顔を見ても平気な顔をしていた貴女達も」

ケイリ「千早と同類ということかな」

千早「ふふ、では、参りましょう。王者に、爪痕を残すために」

 

chapter:カバさんチーム車内

おりょう「あちらはファイアフライで牽制、その隙に足の早い巡航戦車がパンツァーカイルで前進するつもりぜよ」

左衛門佐「わかってる。だが、隊長からはまだ射撃命令がでておらん」

カエサル「だが、なぜむこうの連中はファイアフライ以外撃たないのだ?」

エルヴィン「わからん。弾薬を無駄に使いたくないのかもしれないが、判断がつかん。どうするつもりなんだ、我が隊長殿は」

 

chapter:ウサギさんチーム車内

あや「ファイアフライからの砲撃が止まらないよぉ」

あゆみ「どうしよう、攻撃しちゃう?」

優季「やっちゃおやっちゃお」

あや「どかーん!」

優季、あゆみ「「どかーん!」」

桂利奈「西住隊長からはまだ命令きてないよ」

梓「聖グロのときみたいな失敗はできない。西住隊長の命令がくるまでは我慢だよ、みんな」

 

chapter:アリクイさんチーム車内

ねこにゃー「西住隊長、大丈夫かにゃ」

ぴよたん「心配だぴよ」

ももがー「心配だもも」

 

chapter:カモさんチーム車内

ソド子「なによこの砲撃! 全然顔出せないじゃない、校則違反よ!」

パゾ美「どうしようソド子」

ゴモヨ「これじゃあんこうチームの援護できないよソド子」

ソド子「まだ西住隊長からの命令がきてないわ。我慢よ、ゴモヨ、パゾ美」

 

 

chapter:レオポンさんチーム車内

ナカジマ「あちらさん、気合入ってるねぇ」

ホシノ「これだけ打ってたらファイアフライの弾薬、つきるんじゃない?」

スズキ「装填だけでもしとく?」

ツチヤ「それよりもこのまま突っ込んでEPS全開で相手の背後まわってドリフトきめてドカーンと」

ナカジマ「まぁまぁ、隊長からの命令があるまで待とうよ」

 

chapter:カメさんチーム車内

杏「おーおー、凄い攻撃だねぇ」

桃「大丈夫か、西住は」

杏子「大丈夫だよ、桃ちゃん」

みほ『カメさんチーム、カバさんチームにお願いがあります』

杏「お、きたね、西住ちゃん」

みほ『カメさんとカバさんは、相手に見られないよう出口の横について、フラッグ車が出たと同時に両側からフラッグ車を狙ってください。他のみんなは、ファイアフライの砲撃に注意しながら榴弾で他の戦車の前進を抑えて下さい』

 

chapter:コメット1車内

春「恐らく出口を出たあたりで、両側からセンチュリオンを狙ってきます。ですから、両翼のクルセイダーは全速で前進、センチュリオンの盾に。コメット2、3は全速で回り込みこれを撃破。ファイアフライ隊はセンチュリオンが出口を出たら砲撃停止。大洗町に先回りして下さい」

全員「了解!」

千早『その後は予定通り、隊長と私が丘陵地帯に登って』

春「はい。乱戦に持ち込みます。ここで、できればアヒルさんとレオポンさんを撃破しましょう」

千早『かしこまりました。では』

 

chapter:出口手前、あんこうチーム車内

みほ「もうすぐ、IV号が出口を抜けます。カメさん、カバさん、うさぎさんの合図と同時に射撃、センチュリオンを狙って下さい」

杏『了解ぃ!』

エルヴィン『Geht klar! 』

澤『あんこう抜けました。センチュリオン、出口まで10び――えっ』

桃『どうした澤!』

澤『クルセイダーがセンチュリオンの横に!』

エルヴィン『構わん! てーっ!』

杏『にひひ』

 

どごどごっ!

しゅばばっ!

 

澤『カバさん、カメさん! コメット二輌が全速で抜けて来ます!』

桃『な』エルヴィン『に?』

 

がぃん! ごんっ!

しゅばばっ!

 

chapter:観戦場

アナウンス『クルセイダー二輌、Ⅲ号、ヘッツァー撃破!』

観衆『おおーっ』

雅楽乃「お姉様……」

淡雪「御前、お姉様方は大丈夫なの?」

雅楽乃「はい。でも、二輌撃破されてしまいました」

陽向「大丈夫ですよ、淡雪お姉様! 千早お姉様の乗ってる戦車は白旗あがってませんから」

 

ペコ「ダージリン様、これは」

ダージリン「よく見ておきなさい、ペコ。英国戦車でも、機動戦術は可能なのよ」

ペコ「ですが、我が校にはあれをできる戦車がありません」

ダージリン「ペコ。先の準決勝で、私たちはクロムウェルを出せた。会派の意向を飲みつつも少しずつ、少しずつ変えていくのよ」

ペコ「私たちにできるでしょうか」

ダージリン「私たちが無理でも、その次、その次。少しずつでも、私たちは変わらなければない。

Rome wasn't built in a day.

ローマは一日にして成らず。

伝統を覆すには、ローマを作るように、長い時間が必要なのよ、ペコ」

ペコ「はい、ダージリン様」

 

アナウンス『ポルシェティーガー、M3リー、コメット1輌、撃破!』

 

ケイ「Wow! やるわね、聖應」

アリサ「大洗、あんな弱小校に負けたら承知しないんだから」

ケイ「アリサ、あれ、弱小校に見える?」

アリサ「……いえ。統制の取れた動きは、トップ4に負けないように見えます」

ナオミ「ファイアフライの砲手の腕もいい。全国大会に出ていたら、一回戦突破は確実だな」

ケイ「タンカスロンで知ったでしょ? 全国には、まだまだなの知られていない強豪校は存在する」

アリサ「聖應がそうだと?」

ケイ「聖應がそうだとは言わない。けど、あの動きは一朝一夕にはできない。よく見ておきなさい、アリサ。次の全国大会にでてくるかもしれないから」

アリサ「Yes、ma'am」

 

chapter:センチュリオン車内

史「このままだと、大洗に勝てそうです」

千早「史、大洗が本領を発揮するのはここからです。不正規戦闘になってからが恐ろしいのです」

史「はい、千早さま」

薫子「どうにかして、市街戦に入る前にフラッグ車のⅣ号を撃破しないと」

千早「そのために、春さんはファイアフライ二輌を先回りさせて鳥居前に移動させたのですが……」

 

アナウンス『ファイアフライ二輌、撃破!』

 

ケイリ「そう簡単にはいかないね」

千早「やはり、市街戦ですか。手強い相手です。ファイアフライの人たちも、生半な練度ではないはずなのですが」

薫子「大洗の車長は、全員他校なら下士官クラスの技量と判断力があるからね。そう簡単には倒せないよ」

千早「本当、手強い相手です。あわよくば勝とうというのは、欲目が強すぎたでしょうか」

ケイリ「それぐらいじゃないと、ここまで大洗を追い詰められないんじゃないかな」

薫子「四強もここまではくるんだよ。問題はここからなんだ」

千早「西住さんの機先を制してここ一番で反撃の出鼻をくじく、ですか。聖グロのダージリンも、傑物としか言いようがありませんね。惜しむらくは、車輛があの方の思想に追いつけないというところでしょうか」

ケイリ「千早、他校(よそ)の心配をしてる暇は無いんじゃないかな」

千早「そうでした。ありがとうございます、ケイリ。今は少しでも、大洗の戦力を削ることに注力しましょう」

 

chapter:Ⅳ号車内

優花里「聖應もやりますね。どうします? 西住殿」

みほ「相手は残り三輌、こちらは五輌。ですが、まだ隊長車とフラッグ車のセンチュリオンが残っています。まだ勝負は決まったわけではーー」

梓『隊長! 追撃してくる車輛が二輌でコメットが――きゃあっ!」

みほ「澤さん!」

 

chapter:コメット1車内

夏子「やりました! M3リー撃破です!」

春「夏子さん、よくやりました。このままB1bis、三式も撃破します。千秋さん、直ぐに反転、八九式にぶつけて下さい。美冬さんは装填を急いで」

千秋「かしこまりました、春様」

美冬「了解! 春ちゃん!」

 

《夏子:砲手、三年。千秋:操縦手、三年。美冬:装填手、二年。コメット1に機関銃手は居らず、通信は春が兼任している》

 

千秋「美冬さん、貴女また……」

美冬「そんな硬いこと言わない言わない。ね、春ちゃ」

春「軽口を叩いてる暇はありません!」

美冬「ひゃいっ! 装填終わりました!」

千秋「八九式にぶつけます。皆様、衝撃にご注意を」

夏子、美冬「「はいっ」」

 

がぃん!

 

春「くっ! てーっ!」

夏子「はいっ!」

 

どがん!

しゅばっ!

 

千早『こちら、三式撃破!』

コメット2車長『すみません、B1にやられました!』

春「このままIVご」

 

chapter:観戦場

アナウンス『コメット一号車、撃破』

カチューシャ「ふん、あんなのに手こずるなんて、ミホーシャも大したことないわね。ね、ノンナ」

ノンナ「みほさんは、不正規戦を仕掛けたことはあっても、やられたことはありません。虚をつかれたのでしょう」

ニーナ「あの、カチューシャ様」

カチューシャ「なに? ニーナ」

ニーナ「カチューシャ様は、奇襲を受けたらどうするんですか?」

カチューシャ「奇襲をさせないに決まってるじゃない」

ニーナ「はい?」

ノンナ「カチューシャ様はこうおっしゃっているのです。自分の望む所に奇襲させると」

ニーナ「望む所に……」

カチューシャ「そうよ、ニーナ。一箇所だけわざと隙を作って、そこに攻撃せざるを得なくさせる。私達はそこを包囲、殲滅するの」

ニーナ「そうなんですか」

ノンナ「あなたは、カチューシャ様や私が卒業した後の、偉大なるプラウダを引き継ぐのです。浮ついてはいられませんよ、ニーナ」

ニーナ「は、はいぃい! わかってますう、ノンナ様あ!」

カチューシャ「この偉大なるカチューシャを乗り越える覚悟を忘れないようにしなさい」

ニーナ「……は、はい! わかりましたカチューシャ様!」

 

エリカ「みほ……」

まほ「エリカ、心配か?」

エリカ「……いえ。そんなことは」

まほ「ふ……そういうことにしておこう」

エリカ「隊長!」

まほ「大洗の戦力では、いくら戦車を上手く使おうと、どうしても越えられない壁がある。聖應程度の練度で、簡単に詰め寄られる力しかないのが実情だ」

エリカ「はい……」

まほ「だから、どんな学校と試合しても圧勝するのは難しい、というより不可能だ。そして、勝つためには全ての戦車をすり潰してでも使い切らないとならない。アンツィオとの試合でも、薄氷の上での勝利だったし、我々黒森峰と戦った時もそうだっただろう」

エリカ「ですが、あのままでは……センチュリオンが相手では」

まほ「大学選抜の愛里寿が乗っていたのと同じセンチュリオンだと言いたいのか?」

エリカ「はい。勝ち目はないと」

まほ「普通なら、エリカの思っている通り、勝ち目はないだろう。だが、センチュリオンの車長は愛里寿ではない」

エリカ「勝てるでしょうか」

まほ「勝てるさ。なにしろ、自慢の妹だからな」

 

chapter:センチュリオン車内

千早「やはり、こうなりましたか」

史「千早さまはわかっていたのですか?」

千早「はい。どうあがいても、フラッグ車対フラッグ車の構図になることは、予想していました」

ケイリ「大洗の戦力的には、そうならざるを得ないからね。それで、千早はどうするつもりだい?」

千早「このまま、大洗町役場の前で戦うのは不利です。海岸線まで付き合って頂きましょう。勝負はそこでつけます。薫子さん、榴弾を。史、当てなくて構いません。町役場を吹き飛ばしてください。目くらまし代わりです」

薫子「了解!」

史「かしこまりました」

千早「ケイリさん。海岸線に向かうのがわかるよう、誘うように退却して下さい」

ケイリ「相変わらず難しい注文をつける姫様だね」

千早「できると信じていますから」

ケイリ「やれやれ」

 

chapter:IV号車内

華「っつ……センチュリオン、見失いました」

みほ「大丈夫。麻子さん、このまま海岸線まで向かって下さい」

麻子「そこでいいのか?」

みほ「はい。センチュリオンがここを去る時、明らかにそちらへ向かう挙動をしていました。たぶん、誘っているんだと思います」

麻子「わかった」

優花里「でも、どうやって撃破するんですか? 大学選抜のときほどじゃないですけど、センチュリオンの操縦手、上手いですよ」

みほ「砂浜だからできることをします。麻子さん、華さん」

麻子「なんだ」

華「はい」

 

chapter:大洗シーサイドホテル、屋上

アンチョビ「やっぱりここに来たか」

ペパロニ「姐さん、どうしてわかったんですか?」

アンチョビ「センチュリオンの運動性能を生かすには、大洗の街中はせまいからな。ここに来るしかないんだ。そして、大洗はフラッグ戦である以上、こうならざるを得ない」

ペパロニ「へぇ~、そうなんスかぁ。さすが姐さん、賢いっすねぇ」

カルパッチョ「あんこうチームはこれからどうするつもりなんでしょう。IV号の砲力と機動力では、センチュリオンには……」

アンチョビ「まぁ、ひっきょう、接近戦になるのは確実だ。それならピンポイントの弱点を狙うだろう」

カルパッチョ「我々と同じですね」

アンチョビ「ああ。弱兵で勝つにはそれしかないんだ。最後の一人まですり減らすように戦い、使い潰し、喉元に牙を突き立てる。そら、やってきたぞ。見ておけよ、大洗の戦いを」

ペパロニ、カルパッチョ「「はい」」

 

chapter:IV号車内

優花里「なんか、OK牧場の決闘みたいですね」

みほ「麻子さん、優花里さん、華さん。準備は出来てますか?」

麻子「うん」

優花里「初弾装填完了です!」

華「任せてください」

みほ「Panzer vor!」

華「発射……」

 

どごん!

 

麻子「発進する」

みほ「優花里さん、装填! 麻子さんはすれ違った瞬間に停止と同時に反転! 華さんはターレットリングを!」

優花里、麻子、華「「「了解!」」」

 

chapter:センチュリオン車内

千早「くるっ! 史!」

史「はいっ!」

 

ぎぃん!

どごっ!

 

千早「ケイリ! 薫子!」

ケイリ「旋回、間に合わないっ!」

史「千早さま!」

 

亜美『センチュリオン、フラッグ確認。大洗学園の、勝利!』

 

chapter:大洗海岸

千早「西住さん、本日は有難うございます」

みほ「こちらこそ、有難うございます」

千早「さすが、全日本優勝校ですね。勝てると思ったのですが」

みほ「大洗では、これ以上負けられませんから」

千早「ああ……言われてみれば、これで負けたら大洗で三連敗でしたね」

みほ「はい。大洗の人たちにも顔向けできませんから」

千早「私たちも、エルダーシスターとして負けるわけにはいかなかったのですか、そう簡単にはいかないものです」

みほ「それから、あ、あの………えっと……」

千早「はい?」

みほ「その……」

千早「なにかありましたか?」

みほ「どうして男の人か、女子校に通ってるんですか?」

千早「! どうしてわかったのですか?」

みほ「戦車に乗ったりする時、女性の力の掛け方じゃなかったので……」

千早「そ、それについては色々事情があるので、後日メールか何かで説明いたしますけど、この事はどうかここだけの話で」

みほ「でも、今日はいい経験をさせていただきました」

千早「こちらも、いい経験をさせていただきました。勝負事がこんなに楽しいと思えたのは初めてです。よければ、いつか聖應に遊びに来てください」

みほ「はいっ!」

 

 

優花里「西住殿、妃宮さんと何を話してたんですか?」

みほ「内緒です」

優花里「えー? どんなこと話したんですかぁ、西住殿~」

 

 

史「千早さま、落ち込まれてるようですけど、どうしたのですか?」

千早「西住さんに、男だと知られていました」

orz

 

fin

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