異世界の忍者は大変です。 作:OXYGEN
家を出てから6時間経った今、俺は王都の周りを囲むようにそびえ立つ、コルネ山脈の山頂にいる。コルネ山脈は、この世界の中でも五本の指に入る程の高さの山だ。ただ、パルクールしながら上がれば4時間で登れる。その途中で、まぁ、狼とか、熊とかイノシシとか、たまに山賊とかに会うことになるけど。言うて、強く無いから小さい時、暇な時は、捕まえて憲兵に突き出したり、ペットにしたりしてたっけ。夜通し走っていくのも良いけど、ここから王都に入るには検問所通らないと入れない。急ぎの用事、例えば、知り合いに何かあるとか、軍の機密連絡とか、非常時じゃないと基本通ることは許されてない。けど、轟家の人とか隠密部隊とかの人は王都の周りを囲む山と川と、所々にある監視塔を越えて、王都に入ってく。もちろん、見つかったら、目的吐かせたあと、射殺だ、どんな理由でも。今回やろうかと思ったけど時間に余裕があったし、射殺やだ。警備に見つかんないけどね。今回やめた一番の理由は、空だ。なんか、山頂から観る夜空がめっちゃ綺麗だから、このまま寝たいと思った。だから、止めた。明日の朝イチで検問所通って、父さんに会いに行く予定だから、もう寝よ。今日の寝床は、蔓で作ったハンモックデース。
10時。10時。何度見ても、時計は10時。ん?おかしい。6時に起きる予定だったのに。これじゃあ、父さんとの約束に間に合わない。10時に、家で待ってるって伝書鳩来たから、10時に家行かないと行けないのに。うわー、まじか
「っざけんなー!」
叫んじゃった。そんな事より早く行かないと。
蓮はものすごいスピードで、荷物をまとめ、小川に行き、顔を洗って、検問所に向かった。もちろん、今までで最も速いスピードで。
「…王都に来た目的は?」
「この牛達を売るためです。」
「よし、次!」
検問所っていつも混んでる。さっきからこんな感じのやり取りが1時間続いてる。まだ前に五人いる。いや、最初に比べればまだいいか。すぐに質問に答えられるように、チートアイテム出しとこ。
「次!」
やっと来た。前のおやっさん、耳が遠いのか、何回も聞き直してたな。30分もかかってたぞ。
「名前は、轟蓮、目的はこれを見てください。轟家の証拠もどうぞ。」
あれ?審問官が固まってる。こんなチビがおうによばれるなんてっ!って顔だな。あ、轟家の証のロケット出したら、青ざめた。まあ、それもそうか。軍内では結構有名だからな。未成年だけど偶に、戦闘に参加してるし。ここは、個室だから見知らぬ人に未成年の俺が身バレする心配はない。まぁ、なんとなく、小声で最後の言ちゃったけど。んま、いっか。しかし、じいちゃんが渡してきた王からの《召喚状》って凄いんだね。まだ、固まってる。いやでもなんか、固まりすぎじゃない?
「あのー、早く行かないと行けないんですけど。」
「……も、申し訳ありません。こちらの書類にサインしていただけますか?」
あらら、大幅カットだ。王都に入るなら、もっと沢山質問しないと行けないのに。誓約書だけでいいのか。もっと轟家の力に頼るべきだったな。街での買い物とか、いろいろ出来そう。悪いことはダメだけど。名前書いてっと。
「それじゃあ、失礼します。」
そう言って、席を立とうとしたら、審問官が
「あ、少々お待ちください、護衛の方を付けさせていただきます。」
「あ、大丈夫ですよ。王都は治安いいんだし。」
そう言って、断ったのに、審問官は引き下がらない。困ったもんだ。せめて、身軽で早く移動できるやつにして欲しいな。
「恐らく、素早く移動できる者が適任だと思いますので、2人だけですが規則ですのでよろしいですか?」
「…はい。」
一瞬、ビビった。この人エスパーだ。北の国にいる魔法士か?それとも、悟りでも開いた東の僧侶か?にしてもすごい。そう考えていると、外に案内された。そこには……び、美少女が!なんてことはありません。30歳くらいの男と、20歳くらいの男が立っていた。確かに動けそう。
「左のが、ビロン・レッカー二等兵。右のがイラン・ロンバルド四等兵です。この2名が護衛を務めさせていただきます。」
三十路がビロンで、新米がイランか、よし。
「分かりました。」
そうビジネススマイルで返事をすると、挨拶もせずにそそくさと建物に入っていった。あれは、妖しいな。そっち系か?やだな。もうここの検問所使いたくない。
「自分は、ビロン・レッカー二等兵です!轟様の護衛を務めることが出来ることになり、大変光栄です!宜しくお願いします。」
唐突の自己紹介タイムが始まった。そんな時間ないけど、父さんとの約束完全に忘れてたから、それに乗った。
住宅街を抜けて、本格的な街に入ろうとした時に新米くんが口を開いた。
「あの、今日は何でこんなに早く王都へ?6時に城ですよね?」
さっき、堅苦しいのはやめて欲しいって言ったから、少し柔らかくなった。いい感じだ。なんで早く来たんだっけ?……思い出した。
「ちょ、えっと、約束があるの忘れてたので、走りますね。」
「「はい!」」
あー、この2人速いな意外と、自分の60%の力に平然とついてきてる。もう少しスピードあげるか。父さんの家ってどこだっけ。ちょっと聞こ。
「あの、士官用宿舎ってどこですか?」
ビロンが答えてくれた。さすが、年長者。
「通り過ぎました。さっき、公園でっかいねー、と仰っていたところの、奥です。」
少し戻るだけか。
「ありがとうございます。そこに用があるので行きましょう。」
ちょっと、昨日の疲れが出てきたかも。
士官用宿舎に着いた。公園の風っていいよねって話をしながら、来たけど、本当に気持ちいよね。
「あ、轟駿大将に会うんですよね?だったら、ここを右です。」
轟 駿
看板に書いてある文字を二度見してしまった。だって、なんかやばい家に住んでる。宿舎っていうより、もう一軒家。でかい。流石に本家よりは、小さいけど、一人で住むにはデカすぎる。ドアノックしよ。
コンコン
反応なし。
コンコン
反応なし。
「…いないのか。すいません、なんかいなかったみたいです。」
「私達は大丈夫です。」
「街巡りでも行きますか?」
イラン、ナイス暇つぶし案!
「いいですね!行きましょう!」
午後6時の鐘が鳴った。10分前から門の前に立ってたけど、やっと開いた。あ、2人にお礼言わないと。
「あ、ありがとうございました。美味しいものとかいろいろ。」
「いえ、またいらしてください。」
その言葉に返事をする前に、門内から声が響いた。
「轟 蓮 中に入れ!」