SAO・・・ソードアート・オンラインのデスゲームが始まった時ボクは何も出来なかった。
ただただ建物の影で泣くことしか。
戦って死ねば現実世界でも死ぬ。
なんでかボクは死にたくなかった。
意味もなく過ごしていたボクが何でか死にたくないと思った。
それは・・・ある一人の男の子に会うまでは。
そのプレイヤーに最初ボクは話しかけた。
SAOでの戦い方を教えてもらおうと思って話しかけた。
だけどその子も初心者だと言い断られたから他の人に聞こうと思った。
優しい人が多いからか戦い方を教えてくれたからこのままなら問題ないと思った。
鐘の音が鳴るとボクは最初居た街に戻されてゲームマスターが現れた。
その人物が言ったことは『この世界からの帰還方法はゲームクリアをするまで出来ず、死ねば現実世界でも死ぬ』という物だった。
気軽にはじめたゲームがまさかデスゲームだと思わなかったボクは何が何が分からず、建物の影に移動した。
一人で泣いてるとあの男の子がやってきた。
泣いているところを見られた事が恥ずかしかったけど男の子は気の済むまで泣いていいって言ってくれた。
そこからなのかな・・・。
ボクがこの男の子に対して特別な感情を持ちはじめたのは。
ボクはヒビキが居れば何でも出来るような気がした。
どんなに辛くても悲しくてもヒビキが居れば頑張れる気がした。
だけどあの時ヒビキは右胸にナイフを立てられて死んじゃった。
ボクを一人にしないって言ってくれたのに。
絶対に守ってやるって言ってくれたのに。
そこからボクはヒビキが居ない世界なんてもう意味ないと思った。
殺される状況でもヒビキが居ないのなら生きる意味なんてない。
だからボクは目をつぶって殺されるのを待った。
それはいつまでも来なくて目を開けたらヒビキが居た。
それが幻でもボクは嬉しかった。
またヒビキに会えたから。
そこからはボクは覚えていない。
ユウキが目を開けるとヒビキの家に居た。
「何で・・・?」
「おはよう、ユウキ」
声がして振り向くとユウキを見ているカグラがいた。
「カグラ・・・ちゃん?」
「ん、そう」
「ヒビキ・・・は?」
ユウキはカグラにヒビキがどこにいるか聞くと椅子を指した。
そこには椅子に座って寝ているヒビキの姿があった。
「ヒビキ・・・生きてるんだよね・・・?」
「うん、生きてるよ。幻覚じゃない」
「そう・・・なんだぁ・・・良かったぁ・・・」
もう会えないと思っていたヒビキがちゃんと居てくれた事にユウキは泣き出しそうになる。
すると会話で起きたのかヒビキが起きる。
カグラはこっそりと部屋から出て二人きりにする。
「んぁ・・・ふわぁ~・・・ねむ・・・」
「ヒビキぃー!」
「どわぁー!?」
起きはじめたヒビキにユウキは飛びついた。
寝起きで反応が遅くなっているためヒビキは受け止め切れずそのまま後ろに倒れる。
「いってて・・・ユウキ、あぶねぇっての」
「だってあの時ヒビキが死んじゃったと思って・・・!こうして居られてるのが嬉しいだもん・・・」
「人を勝手に殺すなっての・・・」
「ぶぅ~」
「はいはい・・・」
猫みたいにすりすりしてくるユウキに負けてヒビキはされるがまま弄ばれていた。
すると満足したのか離れていった。
「よしっ!成分確保~」
「なんだそりゃ・・・」
「えへへ~、だって一週間も会えなかったから寂しかったもん・・・」
そうユウキが言うと少ししょんぼりする。
そんな姿にヒビキは申し訳ないように言う。
「・・・ごめん、あの時助けれなくて」
「良いよ、こうして会えた事で嬉しいから」
「それに・・・怖かったろ?」
「うん・・・でも絶対に助けに来るって思ってたから頑張ったよ」
「ユウキは強いな。俺なんかより強い」
「えぇ!?ヒビキのが強いじゃんかぁ!」
「・・・そういうことにしとくか。さて今日も忙しいぞ!」
「うん!」
「それと、ユウキ。おかえり」
「ただいま、ヒビキ!」
二人はそう言うと寝室から出てご飯を食べはじめる。
カグラがひっそりと作っていたため二人はびっくりするがカグラなりに元気づけようとしているのを分かり、三人で料理を食べた。
ご飯を食べ終えるとカグラは店に戻ると言ったため二人だけになった。
「さて・・・ユウキ、実は今日75層の攻略会議が行われるんだが・・・来るか?」
「もちろん、行くよ」
「なら今から行くぞ、もうすぐ始まるからな」
「はーい!」
そうして準備を済ませ家を出ると攻略会議がある55層に向かった。
55層《血盟騎士団》の本部に着いた二人は中に入り会議室に向かった。
すると会議は始まっており中には100人近い人数が集まっていた。
「今回75層の攻略ですが、3つ目のクォーターポイントです。25層・50層のボスは苦戦を強いられ激戦を繰り広げました。なので今回も今までの強さとは違うと思われます」
会議の作戦を立てているのは血盟騎士団の副団長アスナだった。
そしてヒビキはアスナにある情報を伝えた。
「アスナ、少し情報がある」
「何ですか?」
「《メテオクレスト》の偵察部隊が辛うじて持ってきた情報何だが・・・転移結晶が使えなかったらしい」
ヒビキの一言でその場に居る者は驚く。
これまでのボス部屋では保険に転移結晶による離脱が出来るようにしていたのだが、75層のボス部屋では使えないとなっていた。
それはつまり《クリスタル無効化エリア》と呼ばれる物であらゆるクリスタル・・・回復結晶や解毒結晶、転移結晶などが封じられる。
大きな回復手段である回復結晶は使えば瀕死でもHPを全回復し、さらにクールタイムがない。
基本的な回復はポーションなどが挙げられるがこれらはクールタイムという言わば連続使用を防ぐ策があるため一気に回復は難しい。
「では回復手段の一つである回復結晶が封じられますね・・・それに転移結晶も使えないとなると・・・」
「タンク隊が攻略の要になると俺は思う。逃げの一手が封じられるのならばタンクがかなり重要になるだろう」
「なるほど・・・では攻撃二人にタンク一人の割合で組みましょう。それでレイドを組んでとにかく生存を第一に考えましょう」
「「「了解!」」」
アスナの作戦に賛同し、これで作戦会議は解散する。
75層攻略は明後日に行うとの事なのでそれまでに準備をすることにしようとしたヒビキ。
しかしあるプレイヤーに呼び止められる。
「ヒビキ君・・・だったかな?」
「ヒースクリフさんか・・・ユウキ先行っててくれ」
「うん、わかった」
ユウキはヒビキに言われ先に進んだ。
そしてヒビキはヒースクリフに向き合う。
「君とは初めて会うと思ってね」
「そうですか・・・ヒースクリフさん、一度デュエルをしてくれませんか?」
「ほう・・・?それは何故か聞かせてもらって良いかな?」
「個人的に戦いたいだけですよ、攻防の《神聖剣》スキルがどんなのかみたいですから」
「良いだろう、明日の75層の主街区にて君を待とう」
「負けたから入団・・・なんて事はしませんからね」
「はは、ばれていたか・・・だがそんなことはしないよ」
「・・・では」
ヒビキはヒースクリフにデュエルの申し込みを入れた後、門前に居るユウキを連れて家に戻った。
「ヒビキ、あの人と何話してたの?」
「あぁ・・・まぁちょっとな」
「ちょっとってなんだぁ~!教えろぉ~!」
「誰が教えるか!教えたらお前止めるだろうが!」
「そ、そんなことないもん!だから教えろー!」
何か隠すヒビキにユウキは追いかけて聞きだそうとしていた。
そんなのを続けていたら22層の家に着いており、さすがにヒビキは観念しユウキに教えた。
「ヒビキの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
「・・・はい、返すお言葉もございません」
「なんで勝手にそういうの決めちゃうかなあ!?」
「・・・はい」
「まったく・・・!いつやるのさ!」
「・・・明日です」
「そんなに自信満々にデュエル申し込んだなら絶対に勝ってよね!負けたらご飯抜きだから!」
「・・・はい、勝ちます」
「もうっ・・・」
珍しく怒るユウキの勢いにヒビキはただただ怒られているだけだった。
それだけユウキが怒っている事なので何か反論すると火に油を注ぐだけと分かっていたためヒビキは怒られていた。
「明日勝たないとダメなんだからね!」
「・・・あったりまえだ、俺から吹っかけたデュエルで負けたくねぇし」
「どこからそういう自信は来るんだか・・・」
ヒビキの謎の勝ち気な様子にユウキは呆れる。
そしてデュエル当日、決闘闘技場には大勢のプレイヤーが来ていた。
「ユウキ・・・帰りたい」
「あはは・・・でも、あんだけ自信あったんだから勝ってよね!」
「だよなぁ・・・でも人が多過ぎだぞ・・・」
あのあとヒースクリフはうっかりそれを経理係に話してしまい、それを利用して見学料金を集めるという物だった。
最強ギルドの創設者であり生ける伝説ヒースクリフと対人最強とも言われる幻剣ヒビキのデュエルは人をかなり呼んだ。
「さて・・・行きますかね・・・」
「ヒビキ君、すまないね」
「何がですか・・・そんな毛頭無いでしょう」
「はは、しかしこれほどの人数はキリト君以来だね」
「キリトとともしたんですか」
「ああ、二刀流の彼を何とか負かせれたがね」
(・・・勝てるのか怪しくなってきた)
二刀流のキリトを負かせた事にヒビキは負ける気しかしなくなっていたがユウキのご飯抜きを思い出す。
(今日ってユウキのご飯当番・・・いや負けたらユウキの料理が食べれなくなる!それは駄目だ)
ユウキの料理を食べるためにヒビキは意味の分からないやる気を引き出す。
「やる気だね、ヒビキ君」
「ええ、ある物のために勝たないと駄目何ですよ」
「ほう・・・何かのために戦う力は強いものを生み出す。さあ、私にそれをぶつけてみたまえ!」
ヒースクリフはヒビキにデュエルを申請する。
《初撃決着モード》を選択し、両者は60秒のカウントダウンが始まる。
ヒビキはあるものを事前に発動させておく。
そして60秒が経過すると両者は互いに動いた。
ヒビキの一撃はヒースクリフの盾に防がれさらに盾によって攻撃される。
(なっ、盾にも攻撃判定あんのかよ)
盾に攻撃判定がある事が予想外だったヒビキはその一撃をもらってしまう。
しかしすぐに体勢を立て直しもう一度攻撃を仕掛ける。
「何度やっても結果は変わらんぞ、ヒビキ君!」
「へっ、言ってろ」
今度は盾に攻撃をあえて当てる。
するとヒースクリフの盾があるところががら空きになりそこにヒビキは蹴りを入れた。
「ぐっ・・・!」
「あれの反応は出来ない・・・と」
ヒースクリフの対応を少しずつ観察していくヒビキ。
するとヒースクリフの雰囲気が変わる。
「なるほど、それが本気ってわけか」
「プレイヤー相手には使いたくは無かったが、私としても簡単には負けるわけにはいかないからね」
ヒースクリフの持つ武器と盾が白く光る。
それを見てヒビキは警戒を高める。
「ふっ・・・!」
(・・・!?いつの間に!)
ヒースクリフが向かった瞬間、すぐさま移動しヒビキの目の前に来た。
それに反射的に反応したヒビキはヒースクリフに足払いをかける。
しかしヒースクリフはそれを察知し後ろに引く。
「なっ・・・!」
「タンクかぁ?早すぎだろ・・・」
「君こそ先ほどの足払いは早すぎる思うがね」
「仕方ねぇな、こっちも本気で行くぞ!」
「ああ、来たまえ!」
盾を構え防御の体勢を取るヒースクリフを突破するため、ヒビキはある案を考え実行する。
弾丸の如くヒースクリフに一直線に向かい、まずヒースクリフの盾をまた狙う。
ヒビキのソードスキルはヒースクリフの盾に当たり、また腹が空くがそれを無視し、またしても盾に攻撃する。
「ぐっ・・・」
盾を何度も攻撃され退けるヒースクリフには見向きもせず重しになる盾から今度は右手に握られた武器を狙う。
だがヒースクリフも対抗し、同じくソードスキルを発動させる。
相殺仕切れなかったヒビキは武器が飛んでいき、何も武器が無くなる。
「ちっ」
「これでおしまいだろう、楽しかったよ」
武器がなくなりソードスキルが使えないヒビキに攻撃を当てる。
するとヒビキはポリゴン状となり消える。
「なっ・・・!?」
自分の手でヒビキを貫いた事に驚くヒースクリフ。
それが隙となり首元にはヒビキの幻影剣が向けられていた。
「驚いたろ?この作戦中々相手をヒヤッとさせるがな」
「ああ、驚いたよ」
「・・・その状況から抜け出せるか?」
「無理だろう、動けばこの半透明の剣が恐らく私の首を飛ばすだろう」
そういってヒースクリフはリザインと言い、敗北した。
その瞬間喝采が飛び交い、神聖剣ヒースクリフと幻剣ヒビキの決闘はヒビキの勝利で終わった。
決闘が終わると控え室に戻るヒビキ。
すると一目散に飛びついて来るユウキがいた。
「ヒビキー!」
飛びついて来るユウキをしっかり受け止めたヒビキはユウキの頭を撫でた。
「勝ったぞ、ヒースクリフに」
「ホントに!?」
「おう、お前の料理を何としてでも食べるために頑張った」
「もうっ・・・でも、お疲れ様!」
決闘場を出ると一気に観戦プレイヤーがやってきて感想などを求められたが早くユウキの料理を食べたいヒビキはユウキを抱えて猛ダッシュした。
その後、顔が赤くなったユウキに怒られるも料理を作ってもらったヒビキはそれを食べた。
そして明日の75層攻略に備えて寝付いたが、ヒビキはすぐに起きて軽く風に当たりに行った。
(あの時のヒースクリフの動き・・・一回だけ異常な程早過ぎた。限界的な早さを超えていたよな・・・)
ヒビキは今日の決闘のヒースクリフとの戦いを振り返っていた。
(それにキリトから聞いたが一度もイエローゾーンに入ったことを誰も見たことが無い・・・か、まさか・・・)
ヒビキはある一つの考えを出すと明日、攻略した後やってみようと思った後、ベッドに入ってユウキの隣に行った。
ユウキは幸せそうに寝ており、見ているこちらも移りそうなぐらいだった。
そんな無防備なユウキの唇と自分のを重ねた後、ヒビキは寝付いた。