定期的に診断を受けに行っていた響夜。
その時、倉橋からある結果を聞くことになる。
「響夜君、君には言わなければならないとこがありまぢ」
「なんですか?」
「率直に言うとだね、君からは病気が見つかりました」
「・・・何のですか」
そして倉橋は診断結果を響夜に渡す。
「CML・・・慢性骨髄性白血病です」
「白血病・・・ですか」
「治療は出来ます。また君のは慢性期ですが時間は限られていると言って良いでしょう」
「・・・そうですか」
「治療をするかは君が決めてください。僕たちには強制する事は出来ません。充分ご家族と話し合ってからにしてください」
「わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ」
響夜は診断結果をバッグにいれると部屋を出る。
だがその表情はどこか暗かった。
響夜は診断結果を机に仕舞うとご飯を作りに行った。
少しすると木綿季と神楽も下りてきていたためご飯をすぐに作ると洗濯物などを回しに行く。
「主婦だね、やってること」
「仕方ないだろ、洗濯回さないと溜まってるんだから」
「ボクにも何かやらせてよー」
「なら洗濯物をお前と神楽の分干しとけ」
「わかったー」
皿洗いと洗濯物を終えた響夜はベッドでぐったりとしていた。
「あー・・・疲れた」
「お疲れ様、響夜」
「おう・・・」
疲れ果てた響夜はベッドにいると木綿季がお疲れ様という。
一応時間はまだ余っており集合時間にも早かったが響夜はアミュスフィアを手に取る。
「もうやるの?」
「ああ、暇だしな」
「ボクもやるー」
木綿季もやると言ったため木綿季の分のアミュスフィアを渡す。
二人は顔につけるとベッドに横たわり、仮装世界へと入り込んだ。
ALOにきたヒビキとユウキ。
それと同時にリーファとキリトもやってきた。
「ん、そっちも来たのか」
「うん、ご飯食べ終わって暇だからね」
「さて・・・まずあそこ目指すか」
「どこを目指してるの?」
リーファが聞くとヒビキはあるところを言う。
「世界樹だよ、俺とキリトとユウキはそこを目指してるんだ」
「そうなの?」
「ああ」
「そーだよ」
ヒビキ達に確認するリーファ。
それを聞き、何かを決心した様な表情を見せる。
「なら私も着いていく!何か目的があるんでしょ?」
自分も着いていくと言い出すリーファに3人は驚く。
だがここまでしてもらって良いのかと思うキリト。
「世界樹に行きたいんでしょ?私ならこのゲーム結構古参だから場所とかも分かるし」
「・・・連れていっても良いか?」
「俺はキリトに任せる」
「ボクも任せるよ、人数多い方が楽しいし」
肯定的な返答にキリトはリーファをパーティーに入れることにした。
「ありがとう、リーファ」
「こちらこそ、よろしくねみんな」
「よろしくリーファ!」
そうしてリーファも連れていくことになり、世界樹へ向かうべくまずは中央街のアルンを目指すことになった。
宿屋を出た4人。
まずキリトの武器選びのため、武器屋に向かう事になり武器を選ぶのだが。
「・・・軽いな、もっと重いの」
「・・・軽いな、もっと重いの」
これが延々と続き、キリトが納得する重みの剣まで何回も変えていた。
さすがにそれだけの重い武器になると大きいのか地面つきそうなぐらいだった。
「キリト君・・・それでいいの?」
「ああ、この重さでいいよ、リーファこそ払ってもらって良いのか?」
「良いよ、初めての餞別ってことで」
そういうとリーファはキリトの武器を買うとキリトに渡した。
「次はヒビキ君とユウキちゃんの分だね」
「ん・・・あぁ俺とユウキは持ってるから良いよ」
「どんなの?」
そういうとヒビキとユウキはクイック装備に登録していた装備に変更する。
「それってどこで買えたの?私昔からしてるけどそんなの見たことないよ」
「あぁ、これ作ってもらったんだ、オーダーメイドの」
ヒビキが説明しリーファも分かると奥から大柄なプレイヤーがリーファに話し掛ける。
「リーファ、パーティーはどうした?」
「シグルド・・・しばらくこの人達と組むことにしたから、パーティーは抜けたわ」
そういうとシグルドはキリトを見る。
「ふん、こんなプレイヤーと組むとはお前も落ちたな」
「元々パーティに参加するのは都合のつくときだけでいつでも抜けていいってことだったでしょ!」
「だがお前は、俺のパーティーの一員として既に名が通っている。理由もなく抜けられてはこちらのメンツにかかわる」
シグルドもリーファに言うとヒビキが見ていられないのか口を出す。
「パーティーってことに文句は言わねぇけど仲間を自分のファッションみたいに扱ってんなら止めとけ」
「貴様・・・小虫が這い回るぐらいは捨て置こうと思ったが、泥棒の真似事とは調子に乗りすぎたな!のこのこと多種族の領地まで入ってくるからには、斬られても文句は言わんのだろうな!」
と言うとシグルドは武器に手をかけ抜刀する。
だがヒビキはそんな物を気にかけずに言う。
「ここ一応領地だぞ?いくらお前でも無抵抗の相手を殺せば何かしら言われるとは思うけどな」
「そうだよ、そんな方法じゃないと相手を見下せないなんて馬鹿みたい」
ヒビキとユウキによってシグルドは忌ま忌ましく見つめた後、剣を納める。
「せいぜい外では逃げ隠れることだな、リーファ。いま俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ」
そういうとシグルドはどこかに去って行った。
リーファは3人に向かうと頭を下げる。
「ごめんね、3人とも・・・」
「いや気にしてねーし良いよ」
「俺も気にしてないからいいよ」
「ボクも気にしないからさ、頭上げて?」
ユウキに言われリーファは下げていた頭をあげる。
「申し訳ないと思ってんならさっさと連れていけ」
「わ、わかったわ。んじゃあ一度この塔の上に行きましょう」
ヒビキに言われリーファは3人を連れていくべくシルフ領の1番高い塔に昇る。
「なんで上に行くの?」
「普通に考えても飛距離を稼ぐなら高いところからのが少しでも飛べるからだろ?」
「うん、ヒビキ君の言うとおり高いところからなら遠くに飛べるからだね」
リーファが塔に行こうとするとまたリーファに声をかける物が居た。
「リーファちゃーん!」
「うげ・・・レコン・・・」
その人物に声をかけられあからさまに嫌そうな顔をするリーファ。
「リーファちゃん、あのあと大丈夫だ・・・った・・・?」
レコンはキリト達を見るや否や武器を抜いてリーファの前に出る。
「な、なんでスプリガンとインプが・・・?」
「ちょレコン!この人達は私を助けてくれたの!危害加えたら承知しないんだからね!」
「へっ・・・?この人達が?」
そういうとレコンはキリトとヒビキを見る。
キリトは普通にしていたが、見られるのが苦手なヒビキは少しいらっとしている。
するとレコンは武器を納めるとキリト達に向かって謝った。
「ご、ごめんなさい!疑ってしまって!」
「別にいいよ、リーファの事考えてだろ?」
「は、はい・・・」
「ちょレコン!?キリト君違うからね?全然そんなことないからー!」
レコンの発言でキリトとユウキはニヤニヤとリーファを見る。
それを全力で否定するリーファだが反応で大体察したのであった。
塔から飛んでいる4人。
リーファの飛行速度に当然の如く追いつく3人にリーファは驚くも限界の早さまでで飛んでいた。
「一旦あそこの森に着陸しよう!」
「あいよ」
リーファが下に降下するとそれに続いて3人も下りる。
「時間的には・・・夜か」
「うん、だから一度ローテしようかなって」
「ローテ?」
リーファから初めて聞く単語に2人は困惑する。
「キリト・・・お前一応廃人ゲーマーだろうが、なんで知らねぇんだよ・・・」
「ヒビキは分かるの?」
「そりゃあな。俺がやってたゲームじゃ一人が戦って一人が回復みたいな事をしてたし。ALOでは中立マップは完全にログアウト出来ないんだろ?」
「ヒビキ君の考えで大体あってるよ。ここじゃログアウトすると中身が抜けてアバターが残っちゃうからそれを守るためにログアウトローテをするの」
「へぇ・・・んじゃ先にリーファがしてきたらどうだ?」
「じゃあお先に失礼するね」
そういうとリーファはログアウトし、抜け殻のアバターが残された。
「俺も飯作るから一旦出るわ」
「ああ、わかった」
その後ヒビキもログアウトし、キリトとユウキが残された。
「ねー、キリト」
「ん?どうしたんだ?」
「ヒビキの目って見た?」
「目?黒色じゃないのか?」
「んー、見てみたら分かるよ、ALOでも一緒みたいだから」
「そうか、今度見てみるよ」
そんな他愛もない話を二人が帰ってくるまでしていた。
「んあ・・・ねっむ」
響夜が戻ると時間は8時だった。
「・・・やば」
急いで台所に下りると机にご飯が置かれていた。
そして置き手紙があり、そこには。
『あんまりやり過ぎたら駄目だよ。あと私はしばらくソロでのんびりしてるからユウキと二人で頑張ってね』
と神楽が書き残していた。
「・・・またお礼言っとこう」
そういうと作ってくれていたご飯に手をかけ、食べる。
しばらく神楽のご飯を食べていなかった響夜は意外にも美味しかったからかすぐに食べ終わると食器を片付けてまたアミュスフィアを付ける。
「はー・・・、リンクスタート!」
ユウキとキリトが話しているとリーファが戻ってきたようだった。
「ただいま」
「おかえりー!」
「おかえり。んじゃ俺も食べて来る」
リーファと入れ代わりで今度はキリトがログアウトする。
そしてヒビキも返ってきていた。
「ういー」
「おかえり、早かったね」
「ん、妹が作ってたからな。ユウキも食べてこいよ」
「んじゃボクも食べて来るねー」
そういうとユウキがログアウトし、アバターが倒れそうになるのをヒビキが受け止めた。
「ねぇ、ヒビキ君」
「ん?」
「ユウキちゃんとは・・・どういう関係なの?他人から見ても普通・・・って感じじゃないし・・・」
「ん~、ユウキとねぇ・・・」
リーファに言われヒビキは思い返していた。
初めてユウキと会ったのはあのデスゲームの初日。
死ねば現実世界でも死ぬと言われた時、ユウキは影で泣いていた。
思えばあの時に話しかけなかったら今の関係は無かったのだろうと思っている。
「少なくとも言えるのは大事な人・・・だな、誰にも変えられない存在・・・って感じだ」
ヒビキからの話をリーファは興味深そうに聞いていた。
「そ、そうなんだ・・・じゃあユウキちゃんの事って・・・」
「好きだぞ?」
ストレートに言ったヒビキにリーファは顔が赤くなるのを感じた。
自分に言われているわけでもないのにも関わらず。
「す、すごいね・・・そんなに直球で言えるのって」
「それだけユウキには感謝もしてるんだ」
「感謝・・・かぁ・・・」
「そういうリーファはどうなんだ?」
「へっ?」
ヒビキにいきなり聞かれ変な声を出すリーファ。
「リーファは居ないのか?そういう人は」
「うーん・・・」
「何を話しているのですか?」
リーファが言い悩んでいるとキリトのポケットから小さな妖精が出てきた。
ナビゲーションピクシーのユイだった。
「ああ、好きな人はいるのかって聞いてた」
「なるほどです、ヒビキさんは居るんですか?」
「ん、居るぞ?」
隠しもせず素直に言うヒビキを羨ましがるリーファ。
そしてユイはあることを聞く。
「ヒビキさん、好きっていうのってどういう感じなのですか?」
「んあ・・・好きっていうのかぁ」
まさかそんなことを聞かれるとは思わなかったヒビキ。
それを察してリーファが言う。
「好きって言うのはね。いつでも一緒にいたい、一緒にいるとドキドキしたり、ワクワクする、そんな感じかな?」
「うーん・・・ユイには難しいのです・・・」
リーファの答えにユイは良く分からなかった。
だがある行動で示した。
もぬけの殻になっているキリトの頬にキスをした。
「好きという感情は良くわかりませんでしたが、一緒に居たいやドキドキワクワクは何となくですが分かります。でも私は単純かつ簡単な方法で伝えれば良いのです」
ユイの突然の行動にリーファは顔を赤くする。
ヒビキもそんなものを見ていると目を閉じたユウキの頭を少し撫でた。
そうして話しているとキリトのアバターが動いた。
どうやら帰ってきたようだった。
「キリト早いな」
「ああ、家族が作ってくれてたんだ」
「たっだいまー!」
「あがっ・・・」
ユウキが戻って体を起こすとヒビキの顎にクリーンヒットした。
一応ユウキはヒビキに受け止められていたため、体を起こせばヒビキに当たるような感じだったのだ。
それを知らないユウキはヒビキに当たってしまった。
「ヒ、ヒビキ!?ごめん・・・」
「だ、大丈夫・・・大丈夫だから・・・」
何とかユウキを静めたヒビキ。
その後の行動をリーファに聞いた。
「リーファ、次はどうするんだ?」
「次はこの洞窟を抜けるんだけど・・・」
「飛んじゃダメなの?」
「この山が飛行の限界高度以上にあるから飛んでは行けないかな・・・」
「じゃ、入れば良いか」
リーファが飛んでいけない事を言うとヒビキは全速力で洞窟の中へと入る。
「ちょ、ヒビキ君!?」
「ヒビキ、待ってー!」
「はぁ・・・」
自由なヒビキに3人はヒビキを追い掛けるべく洞窟の中へと入って行った。
だが先に進んだヒビキの表情はどこか暗い表情をしていた。