ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車
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絶望の淵の未来

昨日ばったりと疲れて寝ていた直人。

普段と比べてぐっすりと寝れたためか時間帯はお昼の1時だった。

 

「あ~・・・休むか」

 

今から行っても対して寛げないと思い、そのまま学校を休むことにした直人は携帯を取るとある人物に電話をかけた。

 

『はい、雪宮です』

 

「神菜さんすか」

 

『あら直人君、どうしたの?』

 

「少し・・・話がしたいんです、時間ありますか?」

 

『ええ、今からそっちに行くわ』

 

「わかりました」

 

電話を切ると、直人は机の引き出しからファイルを出して一階に降りた。

 

少しすると玄関が開いて神菜が入ってくる。

 

「来たわよ直人君。何の用だった?」

 

「・・・これです」

 

そういって直人は引き出しから出したファイルを見せる。

それは養子縁組の書類で、養子先は雪宮家となっていた。

 

「・・・もう良いの?」

 

「まだ署名はしないですけど、近々に言おうと思っていたので・・・」

 

「ふぅん・・・神楽ちゃんが退院したらかな?」

 

「そうですね」

 

「分かったわ、この書類は私が持っておく。神楽ちゃんには貴方から言わないとダメよ」

 

「わかりました・・・」

 

少し暗い雰囲気を纏う直人を優しく抱きしめた。

神菜にとっては直人は小さい頃から見ていたからか、本当の親のように接していた。

 

「神菜さん・・・」

 

「神楽ちゃんが退院したらいつでも家に来なさい。まだ養子じゃないからって壁を作る必要は無いわ」

 

「そう・・・っすね」

 

「確かに本当の両親ではないけれど、それでも私は貴方を本当の子供のように思ってる」

 

「・・・はい」

 

「神楽ちゃんもうすぐ退院でしょ?ならいつでも行けるように準備はしておきなさい。お迎えに行ってあげる」

 

「はい・・・」

 

直人から離れると、神菜は書類に署名をする。

事前に養子先の経済力調査は終わっており、後は直人と神楽が署名して市役所に出すだけで家族になれるようにしてあった。

 

「それじゃ私は仕事もあるから行くけど・・・ちゃんと体に良いご飯を食べなさいね」

 

「はい・・・」

 

「んじゃあね、直人君」

 

そういい神菜は家を出る。

直人はもうすぐ退院する神楽に何と言おうか悩んでいた。

率直に言うべきなのか濁して言うべきなのか。

その決断は神楽の退院日である2日後までに決め悩む事となる。

 

「まずは・・・学校にしばらく休むの言わねぇとだな、一回学校行くか」

 

直人は学生服を着ると家を出て鍵をした後、バイクのエンジンをかけた。

 

 

3分ほどで学校に着くと時間帯は3時でもうすぐ授業が終わる頃だった。

駐輪場にバイクを止めると、鞄を持って校舎の2階にある職員室へと向かった。

向かう途中、授業が終わるチャイムが鳴り響き、教室から生徒がちらほらと見えていた。

 

「あー・・・まぁ良いや、さっさと行こ」

 

 

 

職員室に着くと、ノックを3回した。

 

「失礼しまーす、2年A組の時崎です。桜先生居ますか」

 

普段であれば来ることがない直人に職員室からは驚きの声がする。

そして担任の先生である桜先生が来る。

 

「え、えっと時崎君ですよね。今日はどうしたんですか?」

 

「しばらく学校休むんで、ついでで寄りました」

 

「えっ?休むってなんでですか?」

 

「家庭事情っすよ、落ち着いたら改めて来るんで」

 

「な、なるほど・・・わかりました。休学届を出しておきますね」

 

「わかりました、では失礼します」

 

用件を伝え終わり、今度は自教室へと向かう。

帰りのHRも終わっている頃なのでお咎めを食らうことはない。

教室に入ると一番に一部の人以外は驚愕する顔をする。

今まで入ってこなかった直人にびっくりしていた。

 

「・・・居心地わりぃなぁ、やっぱ」

 

騒動ばかり起こしていた直人に全員が少し距離を取って、こそこそと話していた。

ほとんどの話が悪口ではなく、直人への憧れ的な物だったが。

そして放って置かれていた教科書等を回収するとふとある席が気になった。

そこは木綿季の席だった。

 

「・・・なんで鞄だけ?しかもちょっと荒れてんな」

 

椅子の場所、机や机の中などの荒れ具合から普通の立ち方ではないと思い、近くの女子に聞いた。

 

「なぁ、ここの席の子ってどこ居るか分かる?」

 

「え、えっと!上級生の女子に呼ばれて行きました!」

 

「場所は?」

 

「わかりません・・・」

 

「ん、そうか。ありがとう」

 

女子生徒に礼を言うと、申し訳ないと思いつつ木綿季の鞄と教科書や筆箱を仕舞って持っていく。

すると電話がかかり、それに出る。

 

「はい、時崎っすけど」

 

「・・・」

 

「あのー?もしもし?」

 

かかってきて何も反応がない事にイラッとして切ろうとする。

 

「ドタドタドタ・・・ドサッ!」

 

謎の音がしたのが気になり、かかってきた番号を見た。

それは非通知でかけられており誰か分からなかったが、足音的にタイルのような音がした。

 

「・・・まさかっ!?」

 

一つの予想を立てた直人は急いで教室を出ると使われていない旧校舎へと走った。

すると本来開いていないはずの旧校舎の扉が開いており、埃が消えたように足跡があった。

 

「くそったれが!」

 

その足跡を追っていくと段々と音が聞こえて来る。

音の場所を探すとある場所に着く。

 

「第一科学実験室・・・」

 

そこの扉は開いており、中に入ると真っ暗で何も見えなかった。

 

「・・・くれぇな、携帯で照らすか」

 

携帯で照らすと足がぶつかった衝撃があった。

その場所を見失わないように足元を照らしながらしゃがみこむ。

そしてそれを照らしていく。

 

「・・・木綿季」

 

「・・・」

 

木綿季だと分かると声をかけるが反応がなかった。

念のため首元に手を当てると脈があり、息もしていた。

だが、足と手は縛られて口には布が押し込まれていた。

 

「ちっ、待ってろよ。解いてやるから」

 

すぐに手足を解き、口の布を取ると血がついていた。

姿を一度全体で見てみると、殴られたような後が服に付いており、それが原因と見ていた。

自分の学生服を木綿季に被せて、気を失っている木綿季を背負うと第一科学実験室から出る。

すると誰かの声がしたため、第二科学実験室姿を隠した。

 

「それでさー?直人君に纏わり付くゴミ排除してたらあの長い黒髪の女子いるっしょ?」

 

「なんだっけ、紺野木綿季とかいう下級生?」

 

「そうそう!それ捕まえたから色々しようと思ってんのー」

 

声色から女子生徒、下級生という言葉から上級生女子だと判断した直人はいますぐにでも蹴り飛ばしたくなるが、木綿季を巻き込んでしまうため上級生から出来るだけ離れ、本校舎へと急いだ。

すると居なくなった木綿季に気付いたのか上級生二人が出てくる。

 

「あんのくそあま!どこ行きやがった!」

 

「うち右探してみる!」

 

二手に別れた二人の内、左の上級生に見つかる。

 

「おい!その女子をこっちに返してくんない?」

 

「やーだね!お断りだ!」

 

幸い木綿季に被せていた学生服で直人だとばれていなかったため、出来るだけ早く走った。

しかし相手の早さが絶望的だったためか背負っている直人にすら追いつけていなかった。

 

「待てよ!」

 

「やーだよ」

 

そのまま逃げるように本校舎に戻ると急いで生徒玄関へと向かい、木綿季の靴を変える。

自分の靴も変えた直人は駐輪場に止めてあるバイクに乗ると、木綿季も乗せてヘルメットを被せた。

すると非常口の扉が開き上級生二人が出てきた。

 

「まちやがれ!」

 

「そーだよ!待ってってば!」

 

「すまんがお断りだっての」

 

エンジンがかかったバイクは一気に加速し、学校を出た。

そのまま木綿季の家に法定速度ぎりぎりで走らせ、着くと止めた。

そして家のインターホンを押すと木綿季の母親が出てくる。

 

「はいはい、今出ますよ」

 

「木綿季のお母さん!」

 

「あら・・・君は」

 

「直人です!それより部屋貸してくれませんか!?」

 

かなり慌てる直人に木綿季の母親は家にいれると、居間に案内した。

そして学生服を取ると怪我をした木綿季に母親は目を疑った。

 

「こ、これって・・・!」

 

「・・・俺の・・・せいです」

 

「直人君が・・・したの?」

 

「そうです・・・」

 

「本当なのね?」

 

「はい・・・俺がやりました」

 

「・・・なら、何故連れてきたの?」

 

「それは・・・」

 

「君がやったのなら連れて来ないでしょう?」

 

「・・・もう帰ります、痣は氷を当てれば引いてくると思いますけど一応・・・病院行ったのが良いです」

 

「直人君・・・!」

 

母親が呼び止めようとするも直人はそれを無視し、家を出た。

そしてバイクに乗ると家に帰った。

 

 

 

 

木綿季が襲われた日から二日経った。

あの後、学校には休学届を出したため行っていない。

木綿季の家にもあの日から行っていなかった。

そして、今日は神楽の退院する日だった。

 

「・・・はぁ、行くか」

 

いつものように鍵をしめてバイクに乗るとアクセルを押し込むとそのまま病院へと向かった。

 

 

退院の手続きを済ませ、帰る用意が出来ていた神楽はそのまま直人の着いていく。

 

「・・・」

 

「荷物・・・貸しな」

 

神楽は荷物を直人に渡すとバイクに乗せられヘルメットを被る。

直人もバイクに跨がるとそのまま走らせようとしたとき。

 

「直人君?」

 

「・・・」

 

木綿季の母親と木綿季が居た。

だが直人は顔を伏せる。

 

「直人・・・君だよね・・・?」

 

「だったらなんだ」

 

「学校・・・来ないの?」

 

「・・・もういかねぇよ」

 

「・・・ぇ?」

 

「もう良いか、家帰らねぇとなんだ」

 

直人は何も言わなかった事を肯定と受け取るとバイクを走らせようとする。

 

「直人君!なんで・・・あんなこと言ったの!」

 

「そりゃあ・・・自分のせいですから」

 

木綿季の母親にニッコリと返すと、加速させ病院から、木綿季達から離れて行った。

 

 

それを母親は見ていることしか出来なかった。

 

「・・・なおと・・・」

 

「・・・木綿季。もう諦めなさい」

 

「ひっぐ・・・」

 

走り去った直人の方向を見つめながら泣く木綿季の姿に何も言えなかった母親はただ己の無力さを呪った。

 

 

 

家に到着した直人は神楽を降ろすとバイクを止めて家に入った。

家に入るといつものように物静かな空間があった。

 

「神楽、後で俺の部屋来てくれ」

 

神楽にそう伝えると直人は自室に向かう。

少しすると神楽も入ってきた。

 

「・・・来たか」

 

「・・・」

 

「良いか、これは・・・事実だ、もう変えようのない事実」

 

「・・・」

 

「あの糞親父が・・・母さんを捨ててどっか行った。母さんも・・・そのショックで体調崩して去年・・・死んだ」

 

「・・・ぇ・・・」

 

声を失った神楽から小さいものだったが声が漏れた。

それだけ衝撃的な物だったのだろう。

そして神楽は力が抜けたのか床にペタンと座る。

 

「糞親父は交通事故で死んだ。遺産は全て俺と神楽に宛てられるらしい」

 

「・・・」

 

「俺はどうにかして金を稼ぐ。遺産には極力頼らないようにしないと絶対に生きていけない」

 

「・・・」

 

「神楽、俺は絶対にお前を一人にしない。お前みたいな子を放ってなんかおけない」

 

泣いていた神楽を直人は優しく抱きしめた。

いつかの直人がやってもらったように。

するとタガが外れたのか神楽は寝てしまうまで泣いていた。

 

 

神楽が寝た次の日、直人は電話で神菜にかけた。

 

『直人君、おはよう』

 

「おはようございます、今・・・来れますか?出来ればお父さんも」

 

『ええ、分かったわ』

 

電話の旨を伝えて切ると、神楽を起こした。

 

「神楽、起きろよ」

 

「・・・」

 

目を擦りながらも起きた神楽は直人を見る。

 

「どうした?・・・もうすぐ大事な話があるから顔洗ってきな」

 

「・・・」

 

寝ぼけながらも頷いた神楽は洗面所へと向かう。

するとインターホンが鳴り、玄関を開ける。

 

「おはようございます、神菜さん、拓也さん」

 

玄関に居たのは養子先の親となる神菜と拓也だった。

 

「おはよう、直人君」

 

「朝早くからすみません・・・」

 

「良いんだよ、もう言ったのだろう?」

 

「はい、もうすぐ降りてきます」

 

二人を中にいれると神楽が降りて来るまで待った。

 

 

 

「神楽、大事な話っていうのはな」

 

「・・・」

 

「俺達には親が居ない。金銭的には問題無いんだけど神楽の将来を考えると俺だけじゃ絶対に難しくなる。神楽が入院している間ずっと考え抜いた末の結果なんだけど・・・神菜さんと拓也さんの養子になろうと思ってる」

 

「・・・」

 

「でも神楽が嫌って言うならこの話は無くなるし、良いならこのまま市役所に出せば神菜さん達が俺らの親になる・・・神楽としてどう思うか聞きたいんだ、紙でも良い、書いてくれないかな?」

 

神楽に今までの事を言った直人は顔を伏せながら神楽の話を待った。

すると書く動作を示したため、紙とペンを渡した。

そして紙にどんどん文字が書かれていく。

それを神菜と拓也に見せた。

 

【私は大丈夫です。本当の親じゃなくても神菜さんと拓也さんの子供なら嫌じゃないです】

 

「・・・神菜ちゃん、良いんだな?」

 

【じゃあ・・・逆に私達の両親になってください】

 

「あらあら・・・こんな頼まれ方されたら断れないわね」

 

「なら、話は早い。証人に祖父母夫妻になってもらおう。今から行くかい?」

 

「俺は大丈夫ですけど、神楽は着替えないとですね」

 

「なら着替えてきなさい、神楽ちゃん。市役所までは車で行きますからね」

 

神楽は2階に行くと直人はあることを頼んだ。

 

「・・・市役所の時、名前も変えれますかね」

 

「どうしてだい?」

 

「もう今の名前で居るとまだ両親との繋がりがあってならないんです。自分的に区切りを付けるために名前を変えたいんです」

 

「・・・分かったわ。でも名前は自分で考えなさい」

 

「ありがとうございます!」

 

まさか良いと言ってくれると思わなかった直人は二人に感謝する。

そして前々から考えていた名前にしようと決めようと思っていた。

 

 

 

 

 

市役所に着くと、二人は早速書類を出し、手続きを進めた。

事前に話は済んでいたため最終の確認と祖父母の証人、そして直人と神楽の自筆で書類は受理された。

 

その後、直人は名前の変更手続きをした。

保護者として神菜と拓也が出て、変更手続きを済ませていく。

 

「では、変更後の名前をご記入ください」

 

役人に名前を書けと言われた直人は迷いなく、名前を書く。

そこには『雪宮 響夜』と書かれていた。

 

「雪宮 響夜・・・ですね、分かりました。もうしばらくお待ちください」

 

少しまつと数枚の書類を響夜に渡す。

それは変更した証明書と、住民票などがあった。

 

「ありがとうございます」

 

 

 

その日から響夜と神楽は雪宮家の養子となった。

拓也は二人の部屋がなかったため、大急ぎで増築工事をして一人で過ごすには少し大きい8畳の部屋を二つ用意し、家具なども買い揃えていた。

その行動力に響夜は苦笑いしていたが、内心喜んでいた。

 

 

「さて・・・神楽、もう行くぞ」

 

「・・・」

 

「ちと名残惜しいけど、新しい家族が待ってる。いつまでも過去に縋ってたら前には進めねぇよ」

 

「・・・ぅ・・・ん・・・」

 

久しく神楽の声を聞いていなかった響夜は久々に聞く声に少し嬉しくなった。

家は売り払って、通帳に保管した。

 

 

そして新しい家に着いた二人。

神楽は何ともなさそうだが響夜は緊張したのか深呼吸をしてから玄関を開けた。

 

「ただいま、母さん、父さん」

 

「た・・・だ・・・ぃま」

 

「おかえりなさい、響夜、神楽」

 

「おかえり。二人とも」

 

 



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