ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車
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《手に入れた日常生活》
新たな日常の始まり


久々に昔の夢をみた。

あん時の俺は・・・『時崎直人』の頃だ。

まだ高校に入る前。

木綿季以外にも好きになった女子はいた。

その女子は幼なじみで小さい頃からよく遊んでいた。

 

「おーい、置いてくぞ~」

 

「ま、待って・・・早い・・・」

 

「ったく・・・おぶっていくから乗りな」

 

俺はあくまで親切心で言った。

その日から、その女子とは段々関わらなくなった。

 

「直人君?」

 

「・・・」

 

「無視しないでよ・・・」

 

「頭痛いから・・・帰るわ」

 

「あっ・・・」

 

一緒に居ると迷惑がかかる。

そんなのは俺でも分かってた。

だから俺は突き放した。

初めて会った時から好きだった子を。

 

「あーあ、幼なじみとかってめんどくせー」

 

俺の独り言は空に吸い込まれるように消えた。

幼なじみだからって何なのだろう。

家が近いから?仲が良いから?

それは確かにあったのだろう。

 

「直人君、授業は?」

 

「・・・いかねーよ、どうせ浮くだけだ」

 

「行こうよ・・・」

 

「いかねぇよ、お前こそ行けよ」

 

「直人君が行くまで私も行かない」

 

「はぁ?お前馬鹿なの?」

 

「そうでもしないと授業追いつけないよ・・・?」

 

「・・・機嫌わりぃんだ、どっか行っててくれ」

 

俺は関わらせたくなかった。

もしこの子を巻き込んで何かあれば責任は俺に来る。

そんな責任をまだ背負えない以上、巻き込むわけには行かなかった。

さすがに機嫌が悪いと分かったのかトボトボと帰っていく。

 

「もう・・・あの時みたいには居られねぇんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高校出る前にあの時、確かに俺の顔を見ていた。

だがばれていたとは限らない。

例え聞かれても人違いで通せば良い。

だってそれは『時崎直人』の幼なじみであって『雪宮響夜』の幼なじみではないのだから。

 

「懐かしいな、あんなのを見たのは久々だ」

 

久々に見た夢を思い出していた。

昔は好きだった。

だが今の俺には木綿季がいる。

それだけで・・・十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響夜が時間を見ると朝の7時だった。

この日からSAO被害者の為に作られた学校に転校することになっている。

勿論和人や木綿季達は知らない。

 

「えーと、制服着て、鞄持って、バイクの鍵持って・・・っと、こんなもんで良いでしょう」

 

木綿季は既に学校に行っており、家には居なかった。

神楽も同じく学校に一緒に入ることになっている。

 

「神楽ー!準備できたかー?」

 

「出来た」

 

「よし、んじゃ行くぞ」

 

「うん」

 

一通りの家事は終わらせてあるため、帰って疲れて寝ても問題ないようにしていた。

響夜は神楽が出た後、鍵を閉めるとバイクに乗せる。

 

「ほれ、ヘルメットは被れ」

 

「ん」

 

神楽にヘルメットを渡すと響夜はバイクに鍵をかける。

 

「掴まれよ?すぐに速度だすからな」

 

「わかった」

 

一応神楽に忠告すると、響夜はアクセルを捻ってバイクを走らせる。

事前に学校の場所はロケ済みだったため迷うことはなかった。

さすがに道中に見知った顔が居たような気がしなくもない響夜だったが。

 

 

10分程走らせると目的の学校に到着した響夜は駐輪場にバイクを止めに行った。

基本的に自転車で通学する生徒が多かったからかバイクで来ていた響夜は一部の生徒に注目されていた。

 

「まぁ分かってたけどさぁ・・・」

 

「仕方、ないよ」

 

「職員室に行くぞ、担任は・・・知り合いだからな」

 

「信用、出来るの?」

 

「今までの担任とかよりは確実に信頼出来る」

 

「ん、そっか」

 

「おう」

 

職員室にそそくさと足早に向かう。

その道中に和人達に会わなかったことに響夜は安堵し、職員室に着くと担任になる先生がやってくる。

 

「おはようございます、響夜君・・・その子が?」

 

「おはようっす、桜先生。こいつが妹の神楽です」

 

「おはよう、ございます」

 

「・・・?」

 

「学校じゃ声が出せないって方向にします。声が出るようになったのは結構最近なんで」

 

「そ、そうなんですね・・・えっと神楽さん。私は響夜君の前の高校の担任だった淡咲桜です、お二人のクラスの担任教師なので困ったことがあれば言ってくださいね」

 

「桜先生は他の人より全然信用出来る人だからな。基本桜先生に頼りな」

 

「うん」

 

響夜の補足もあって神楽はとりあえず桜を信用することにし、校内地図と教科とその教室などを教えてもらっていた。

そして入るタイミングは朝のSHRが始まる時に紹介するとのこと。

 

 

「はーい、みなさーん!朝のHRを始めますー!」

 

桜が教室に入るとそれまで騒がしかったのが嘘のように静かになった。

 

「まず、最初に転校生がこの学校に来ることになりました!」

 

「ホントか!?」

 

「誰?誰?」

 

「女子か!?男子か!?」

 

転校生というワードに生徒たちはざわめく。

そして桜がそれを静める。

 

「皆さん落ち着いてください・・・とりあえず、まずは入ってもらいましょう!・・・良いですよー!」

 

桜が響夜達に合図すると教室の扉をスライドさせようとするが何故か開かなかった。

 

「あぁ・・・?なんであかねぇの!?」

 

「後ろ、空いてるよ」

 

「仕方ねぇなぁ・・・後ろから行くか」

 

前の扉が開かなかったため、渋々後ろの扉から行くことにした。

そして中に入ると見知った顔が響夜達を見ていた。

 

「このお二人が転校生です」

 

「転校してきた雪宮響夜です。このちっこいのが妹の神楽っす」

 

前の扉から出てこなかったため、驚くがそれよりも二人に注目していた。

響夜はルックスが良い方で本人は気付かないがかなりモテる。

前の高校でも誰もが言わなかっただけで女子生徒が見に来るぐらいだった。

神楽は身長が低く、また危なっかしい感じを出すため庇護欲をかきたてられる。

それに信用している相手の前ではまた違った一面を出すため、それが男子に出されると一撃で堕とされるだろう。

 

現に周りからは格好良いや可愛いなど聞こえている。

神楽は何とも思わないが響夜はそういうことを言われるのは嫌う質があった。

 

「転校生が来て嬉しいのは分かりますがSHRが終わってからにしてください!」

 

桜もさすがに我慢できなくなり無理矢理止めると響夜と神楽に席を教えた。

その場所は明日奈の席近くだった。

 

「よっ、明日奈」

 

「響夜君と神楽ちゃんも入ってきたんだね」

 

「前の高校よりここのが居心地良さそうだしな、それに神楽を学校に行かせたかった」

 

「ふふ、良いお兄ちゃんなこと」

 

「うっせ」

 

SHRが程なくして終わると一気に響夜と神楽に人がたかる。

神楽を守るように明日奈が前に出てくれたため、パニック状態にはならなかったようだが。

 

「あの神楽ちゃん・・・?」

 

「・・・」

 

「転校してきたのは良いが・・・すげぇねむい」

 

「ねぇねぇ、雪宮君って何かゲームとかしてるの?」

 

「んあ、してるぞ。SAOとかALOとか」

 

「嘘だろ?!SAOやってたのかよ!」

 

「幻剣って言われてたのが懐かしいけど」

 

「雪宮さんってあの攻略組の筆頭・・・!?」

 

響夜の事を根掘り葉掘り聞いてくるため受け答えしていった。

解放されたのはお昼休みになってからで、ぐったりと疲れ果てている。

 

「・・・」

 

「ん、どうした?」

 

【大丈夫?】

 

「大丈夫だっての。さて、木綿季はどこかなっと」

 

「木綿季なら今日休みだぞ」

 

響夜が愛しの木綿季を探すも見つからず、和人が休みだという。

しかし木綿季は響夜の家に泊まっており家には居なかった。

 

「休みだぁ?家居なかったぞ」

 

「なんだと?」

 

「ちと待ってろ、電話してみる」

 

響夜は心配になり木綿季に電話をかける。

程なくして繋がったためどこにいるか聞いていた。

 

「木綿季、今どこにいる?」

 

『今ね、姉ちゃんと居るんだ~』

 

「そういやお姉さんが居るんだっけ」

 

『うん~、言うの忘れてて・・・ごめんね?』

 

「いやいい、邪魔したな」

 

『ううん~、それじゃあね~』

 

響夜は木綿季との電話を切るとお昼を食べるべく弁当を取り出す。

それを見ていた女子生徒が興味津々に見つめる。

 

「・・・近いんすけど」

 

「わわっ、ごめん!・・・男子がお弁当持ってくるなんて・・・親が作ったの?」

 

「んいや、自分で作った」

 

「どんなのか見ても良い?」

 

「良いけど・・・」

 

響夜が弁当の風呂敷を取ると2段弁当だった。

そして二つとも開けると響夜の席近くには料理の良い匂いがしていた。

 

「わぁぁ・・・!美味しそう!」

 

「全部即興で作ったからなぁ・・・」

 

「一個ちょうだい!」

 

「やらん、俺の飯が減る!」

 

「良いじゃんー!雪宮君!」

 

「おい、めっちゃ良い匂いすんぞ!・・・雪宮の弁当からだ!」

 

「なんだと!?奪え奪えー!」

 

響夜の弁当はそれだけ美味しい物で出来ており、それを食べてみたい生徒は響夜の弁当を狙う。

神楽も響夜に作ってもらった弁当を食べているが、それは外の木の下でひっそりと弁当を食べていたからだった。

 

「ん・・・おいしい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響夜はようやく追っ手を振り切って弁当を食べ終わり、教室に戻っていた。

神楽も弁当が美味しかったのか機嫌がすこぶる良い。

 

「美味しかったか?」

 

「・・・」コクコク

 

「なら良かった、弁当は家に帰ったら流しに出しといてくれ」

 

「・・・」コク

 

 

響夜は久々にこんなやり取りをしていた。

今まではぶられ、クラスで浮いていた響夜はこんなやり取りをするのがとても楽しかった。

クラスの奴とわいわいと騒ぎまくるのが響夜は好きだった。

 

「この学校来て良かったな」

 

「・・・そう、だね」

 

「少し寝るわ、時間なったら起こしてくれ」

 

「ん」

 

久々に心地好い感覚を覚えた響夜はそれに浸るように居眠りをした。

授業内容は神楽からにでも聞けるため響夜はそれに甘えることにしたのだ。

 

 

SAOでの響夜は誰にも頼ろうとは思わなかったのに、今ではその好意に甘えている。

和人や木綿季などの周りの人が響夜を変えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校時刻になり、響夜は神楽と和人に起こされる。

 

「響夜、起きろー」

 

「ぐぇ・・・もう終わったのか」

 

「よく寝ていられるな・・・」

 

「まぁこれでも成績トップだったしな」

 

「・・・」グイ

 

「っと、そろそろ帰るわ。木綿季待たせてるし」

 

「甘々だなー」

 

「おめぇもだろうが、昼休みいちゃつきやがって」

 

「なぁっ!?」

 

響夜に見られていた事に和人は赤面する。

それを見ていた響夜は良い弄りネタを見つけたようにニヤニヤしていた。

 

「良いネタ・・・発見だな」

 

「ちくしょぉ・・・」

 

「まっ、帰るわ。また明日な」

 

「ああ、明日な」

 

響夜は和人と別れると神楽と一緒に下校する。

靴を履き変えて駐輪場に止めてあるバイクのところへ向かった。

 

「ヘルメット被ったな?なら帰るぞ」

 

「うん」

 

バイクの後ろに乗った神楽は響夜にしがみつき、響夜もバイクを走らせた。

10分ほどで家に着くと玄関が開いていた。

 

「ただいまー」

 

「おかえり~!」

 

「うぉわぁ!?」

 

響夜が玄関を開けて中に入ると木綿季が響夜に抱き着く。

神楽も微笑ましそうにその光景を見ていたため響夜は恥ずかしくなる。

 

「学校行ってきたんだ?」

 

「おう、神楽も一緒だしな」

 

「一緒の学校が良かったな~・・・」

 

「仕方ねーだろ、特にお前はまず家に帰ったのか?」

 

「帰ったよ、ついでにまた泊まりに来た!」

 

「はいはい・・・母さんも確信したように許可してるのが怖いわ」

 

「早く16にならないかな・・・」

 

木綿季がボソッと呟いた声は響夜には届かなかったが、響夜自身早く木綿季と一緒に暮らしたいと思っている。

泊まるとかではなく本当に家族として暮らしたいと思っているのだ。

 

「お前が16なったらな、嫁にでも貰ってやらぁ」

 

「ふぇっ?!」

 

「裕子さんは結構乗り気だからな、母さんと父さんも早く孫の顔が見たいとか言い出すし」

 

「ふぇぇ・・・」

 

響夜の口からどんどん木綿季からすると恥ずかしい以外何物でもない言葉が出てきたからかどんどん赤くなっていく。

最終的には木綿季の頭が処理を超えてパンクするのだが。

 

「ぷしゅー・・・」

 

「ゆ、木綿季!?」

 

「恥ずかしい、から頭が、パンクしただけ」

 

「・・・部屋に寝かせて来るわ、ついでに俺も寝る」

 

響夜は木綿季をお姫様抱っこすると自分の部屋に運び込んだ。

ベッドに寝かせて響夜も制服が皺くちゃにならないよう普段着に着替えると木綿季と一緒にベッドに入る。

 

「きょ・・・や・・・らい・・・しゅき・・・」

 

「何だこの可愛い生き物」

 

木綿季の頭の中がどんな感じなのか一瞬で分かってしまったが、響夜もそれを嬉しく思う。

人の夢というのはその人の深層心理を映すという。

本当に好きな人を想っていると夢にまで現れるのかもしれないと響夜は思った。

 

「こやつめ」

 

スヤスヤと寝ている木綿季の頬を突くと唸り声を出して響夜に抱き着く。

 

「うぅ~ん・・・」

 

「えっ、ちょっ」

 

響夜のすぐ目の前には木綿季の寝顔と無防備な姿だった。

響夜とて好きな人にこんな状態にされて内心心臓がバクバクだった。

 

(やべえ、恥ずかしいを通り越して木綿季を襲いそうだ・・・しかし、木綿季も満更でもないしな・・・)

 

響夜の頭の中では煩悩と理性が渦巻いていたが木綿季の漏らす声で吹っ飛ぶ事となる。

 

「もっと・・・シて・・・」

 

(このお転婆娘は夢ん中で何してんだ・・・)

 

木綿季の夢の中が本気で心配になる響夜だが、それほどまでに響夜を好いている事にもなった。

 

「ったく・・・無防備で可愛すぎるお前が駄目何だからな」

 

寝ている木綿季の唇と自分のと重ねると口の中にまで絡ませる。

木綿季も段々声が変わってきていた。

 

「んっ・・・」

 

「はふ・・・きょ、響夜・・・?」

 

「・・・木綿季、今日は覚悟しろよ」

 

「ふぇ・・・?」

 

状況が飲み込めていない木綿季を置いて響夜はどんどん木綿季を弄ぶ。

夢の中で連想していた事が現実で起きていた木綿季からすると混乱しそうだが、それよりもずっと想っていた事が叶ったのか嬉しそうにしていた。

 

「ボクの事、貰って?」

 

「元からそのつもりだっての」

 

 

 

その夜、二人はお互いに重ね合った。

絶対に今日の事を忘れないよう、刻み付けるように。

 

神楽はそれをこっそり聞いており、顔は嬉しそうにしていた。

 

「木綿季お姉ちゃん、なら・・・良いかな・・・」

 

響夜の事を木綿季に任せた神楽はこれ以上盗み聞きは邪魔になりそうと思い部屋に入って寝付いた。

 

 

 




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