あの夜からの翌日。
俺は学校が終わった後に神楽と一緒にGGOをすることにした。
「あー・・・眠い」
「まだ、お家だよ」
「それは分かってんだけどさ、家から出たくねぇ」
「む、なら私一人で行くよ?」
「駄目だ駄目だ、連れていくからもう少し待ってろ」
響夜はここま止めるのは理由があった。
神楽は一人にするとろくなことがない。
過去に一人で登校させて事件を引き起こすというミラクルを起こしていた。
「よし、用意できたし行くぞー」
「うん」
用意が出来た響夜は神楽をバイクに乗せると昨日も行った学校に向かって行った。
学校に到着すると周りが騒がしくなっていた。
「なんか・・・騒がしいな」
「なん、だろ?」
「とりあえず教室行くか」
「うん」
響夜達が教室に入ろうと扉に手をかけると中から自分の同級生の声ではない声がした。
「ねぇねぇ、一緒に俺らとどっかいかねー?」
「ボクは遠慮しとくよ」
「ボクだってさ!ちょー可愛いんだけど!」
「めんどくせぇ、無理矢理連れてくか」
響夜は誰が被害者か見当がついていた。
同級生でボクなんていう一人称は木綿季以外ありえなかった。
「まーた何か絡まれてるのかよ・・・」
「和人、と同じ、ぐらい?」
「ホントそれぐらいだろ」
教室の扉が開くと同時に上級生である男子生徒が木綿季を無理矢理引っ張っていた。
響夜は目の前に堂々と現れた男子生徒の一人の顔に蹴りを入れる。
「おら」
「ふっぐぁぁぁ!?」
「え、あれ止めれないのかよ、だっせぇ」
「て、てめぇ!」
男子生徒の二人がリーダーを蹴られ逆上したのか響夜に殴り掛かろうとする。
喧嘩が苦手ではある物の軌道が丸分かりだったため、響夜はそれをかわしたのち、首元を掴んで互いの顔をぶつけえる。
「弱い、遅い、とろい」
「なっ?!」
「くそが!」
「てめぇらが大人しくくたばってろ!」
「「あぐぁああ!!」」
「・・・こんな程度で木綿季に触れるとか良い度胸だわ」
「・・・やりすぎ」
「知らん、木綿季を泣かせた罰だ、生きてるだけマシだろ」
木綿季はゲーム内では無類の強さを誇るが現実ではか弱い女子だ。
自分の身を守ろうにもその腕がない木綿季にとって先程の男子生徒は怖かったようだ。
「大丈夫か?木綿季」
「響夜・・・?」
「そーだぞ?響夜さんだ」
「きょうやあぁぁぁぁあ!!」
響夜に泣きながら抱き着いた木綿季はわんわんと泣きつづけていた。
さすがに周りの目も気になった響夜だが今は何言っても無駄だと思い、泣き止むまで木綿季の頭を優しく撫でつづけた。
1~2分ほどで怖く無くなったのか顔を上げた。
しかし木綿季の目は腫れており、少しでもまた刺激すれば泣きそうな表情だった。
「よしよし、もう大丈夫だからな」
「うん・・・うん・・・」
程なくして騒動にかけつけた桜が事態を収拾つけた。
なんでも先程の男子生徒三人組は木綿季に纏わり付いていたらしく、何度もアプローチしていたという。
木綿季からすれば響夜が居るためそんなのを無視していたが今日になって強攻策を実施、今に至った。
「・・・とりあえず絞めて来る」
「響夜君!?冷静になってください!」
「離せー!俺はあの三人組の顔をもう一度蹴り飛ばすんだぁー!」
「響夜もう大丈夫だから・・・あんなのよりボクに構ってよ・・・」
「ぐっ・・・仕方ないな、分かったよ」
さすがの響夜も泣きそうな表情に上目遣いで頼まれたら自制するしかなかったようだ。
そして響夜は気付いていなかったが、木綿季と響夜が付き合っていることを一部を除いて殆どが知らない。
そして先程の木綿季の行動や響夜の慣れた手付きで男子生徒と女子生徒が二人に駆け寄る。
「雪宮君!木綿季ちゃんとどんな関係!?」
「そうだぞ!紺野さんとどんな関係なんだよ!」
「い、いやー・・・あはは」
「ごまかしても意味ねーっての・・・木綿季は俺の嫁。家公認。以上」
響夜はそれを言った後教室を出ようとするが同級生に首元を掴まれ更なる情報を引き出された。
「・・・疲れた」
「あはは、ごめんね?ボクがあんなことしちゃって」
「ん、別に構わんけどな、ついでに良いお灸にもなったろあいつらにも」
「・・・?どういうこと?」
「もう一回木綿季に同じ事をすればお前らを縛り上げた後に下をもぎ取る・・・って言ったから大丈夫」
「・・・?」
響夜のお灸がよく分からなかった木綿季だが、分からないほうのが良いことだと感じ、その話は終わった。
そんなことをしているとお昼休みになり、弁当を出した。
「でかっ!?」
「雪宮の弁当でかくね?!」
響夜の弁当は大きい箱が4つ出されており、一体どこから用意したのかというぐらいでかかった。
そして持ってきた意味はすぐに明かされる。
「和人、明日奈ー!」
「ん、どうしたんだ?」
「どうしたの?響夜君」
「珪子と里香達に弁当持ってきたって言ってきてくれ。俺教室しらねぇし」
「俺が呼んで来るよ。場所は何処にするんだ?」
「神楽が良く食べてる場所にする。場所は木の下だから回っとけば見つかる」
「分かった」
和人は教室を出ると響夜は木綿季の手を引っ張って和人とは違う方向に向かった。
程なくして到着したのはよく神楽が過ごしている大きな木の下だった。
またそこは猫達のたまり場のようで神楽の周りには猫が3匹いた。
「神楽ー!」
「ん」
響夜の声に反応した神楽は抱いていた猫をゆっくり降ろすと響夜に近付いた。
「へー、猫のたまり場なのな」
「うん、猫可愛い」
「そうかそうか・・・木綿季、レジャーシート敷いてもらって良いか?」
「まっかせて~」
木綿季にレジャーシートを渡すと手際よく広げて持ってきた巨大弁当を置く。
それにあわせて和人達も来たようでこちらに来ていた。
「響夜ー、呼んできたぞー」
「さんきゅ、お前らの弁当分もあるから食っていけー」
「ありがとう!響夜」
「ありがとうございます、響夜さん!」
「んじゃ風呂敷きを解いてっと・・・」
響夜が弁当を包んでいた風呂敷きを外すと3段の弁当が出てきた。
それを一つずつに降ろしていくと蓋を開ける。
「わぁぁぁ・・・!」
「凄いな・・・響夜一人でよく作れるよ」
「お前は明日奈の手料理食えるからだろうが・・・」
「えっ、これ全部響夜さん一人で作ったんですか!?」
「おう、食材は近所付き合いで毎朝おすそ分けしてもらってるから食費全然かかんないんだよ。しかも使いきれなかったら余って腐らせるしな。だからこういう感じで有効活用したんだ」
料理が出来ることを初めて知った里香と珪子は愕然とした。
響夜は料理出来なさそうなイメージしかないからだろう。
「とりあえず食え食え、まだまだ一杯あんだ」
「うん!じゃあ・・・」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
「え、と・・・い、いただきます」
「美味しい・・・!」
「ああ、いくらでも食えそうだ!」
「神楽ももっと食べて良いからな。遠慮してると好きな物が盗られるぞ」
「!?それは嫌!」
響夜のご飯が好きな神楽はたきつけられるとご飯を一杯食べる。
明日奈は今後の料理研究のためにか味などをしっかりと味わっていた。
木綿季に至っては木綿季専用の別弁当を用意させてある。
それだけ食い意地があり、食べきれるとわかっているのだ。
「木綿季、あんたそれ一人で食べるの!?」
「うん、そうだよ?」
「木綿季ちゃんは良く食べるもんね・・・」
「えへへ~、響夜のご飯なら一杯食べれるよ!」
「飲み物は水筒に全て入れてあるから好きに飲んでな」
「響夜は食べないの?」
「俺はお前と同じ弁当別だ」
響夜はそういうと裏から風呂敷きに包まれた弁当を取り出した。
蓋を開けると中にはみんなが食べている弁当よりもおかずとご飯がぎっしりと詰まっていた。
「んじゃ、俺もいただきます」
響夜が食べるご飯を木綿季が奪い、和人と明日奈はお互いに食べさせあったり、神楽と珪子と里香は女子トークをしたり。
その光景は良い光景だったのだろう。
みんなが笑いあい、楽しくご飯を食べている風景は他のよりも大切な思い出になった。