テストの教科は主要教科と副教科で出される。
テスト期間は二日間で、一日目は主要教科、二日目は副教科。
何事もなく三人は席に座ると響夜は携帯をいじる。
「結婚かぁ・・・場所考えねぇとなぁ」
「頑張れ、にぃに」
「お前のお姉ちゃんのためにも頑張るよ」
そんなことを話していると担任の桜が教室に入ってくる。
「はい、皆さんー!待ちに待ったテストですよー!」
「全然待ってねぇ」
「ホントだよー」
テストどころか勉強嫌いな木綿季は当然、響夜もテスト如きで学校に行くことが面倒なのかぐったりとしている。
「それでは問題用紙を配りますー、最初は数学からですよー」
桜は封筒から問題用紙を取り出し、配りだす。
響夜も携帯をしまい、筆箱から必要な物を取り出すと神楽のかばんに入れた。
「ん」
「悪い、持ってきてねぇから入れておいてくれ」
「だいじょぶ、良いよ」
「ありがとな」
問題用紙が行き渡ると今度は回答用紙が配られる。
響夜はその間に問題をある程度見て暗算をしていた。
解答用紙も配られると時間が9時になりチャイムが鳴ったと同時にテストが始まった。
(・・・やべえ、簡単すぎて笑いそう)
数学の問題は普通であれば難しい類だったが、スパルタとも言える響夜の前日の模試テストに比べるとあまりにも簡単だった。
どういう差なのかというと、学校テストの問題数が50で響夜のは120。
しかも響夜のは両方正解で点数など意地悪問題が多かった。
(こんなのをあと4時間もやんのか・・・飽きそう)
響夜の考えは合っており、響夜と神楽は恐ろしい速度で問題を解いていく。
ある意味二人は異端児と言えるぐらい頭が良いためお互いにどっちが先に終わらせれるかの勝負となっていた。
時間帯は15時20分。
1時間目【数学Ⅰ】
2時間目【現代社会】
3時間目【化学・地学】
4時間目【国語基礎】
5時間目【英語Ⅰ】
の時間割で響夜と神楽は何事もなく全ての回答欄を埋めきった。
明日奈や和人は余裕そうな表情だったが里香と珪子は疲れきっていた。
木綿季に至っては余裕でも疲れでもない表情。
「よし帰るか」
「ん、そだね」
「木綿季ー、帰るぞー」
「ん・・・わかったー」
ぼーっとしている木綿季の手を神楽が引っ張っていく。
木綿季と遊びたいのか神楽は早く帰りたそうにしていた。
「神楽、まだテスト終わってねぇからな?明日からならいっぱい遊んでいいから」
「ん、わかった」
「木綿季も今日は勉強せずに寝たのが良い。ぼーっとしてるぞ」
「うん・・・頭使いすぎて疲れちゃった」
「はぁ・・・」
無理して笑っている事が響夜にばれたのか木綿季の近くに寄る。
そして木綿季の背中に手を当てて、足に手をかけると一気に持ち上げた。
所謂お姫様抱っこの状態。
「ん・・・っと。神楽、木綿季のかばん持ってやれ」
「はーい」
「響夜?!恥ずかしいってば!」
「ぼーっとされてしかも足元覚束ない奴が言うと説得力ねぇなぁ」
「あう・・・」
「バイクまではこうされてろ。木綿季お嬢様」
「うぅー・・・」
お嬢様と言われ木綿季は顔を一気に赤くする。
それどころか湯気が出ているような気がするぐらいだった。
響夜も少しのイチャイチャを堪能したかったためにしたのだがここまで赤くすると思わず、もっといじってみたいという気持ちが出てくる。
だが今の状態の木綿季は身体的に疲れが出ていたため抑えてさっさと駐輪場へと向かった。
「よし、バイクに乗るから後ろに座りな。神楽も定位置いけ」
「分かった」
「あーうー」
「・・・まだパンクしてんのか・・・」
「まだまだ、うぶだね」
「木綿季ってそういうことに弱そうだしな、仕方ないだろ」
まだパンクしている木綿季のよそに響夜はバイクを吹かす。
目的地は木綿季の家。
ある程度走らせて木綿季の家に着くと木綿季を降ろした。
その頃には戻っていたがどことなくまだ顔は赤い。
「さて、明日も迎えに来るからな。時間帯は今日と一緒」
「うん・・・ありがとう響夜」
「なーに、木綿季の為にしてんだから良いよ」
「えへへ・・・それじゃあね、響夜、神楽」
「おう、じゃあな」
「またね、木綿季おねーちゃん」
響夜と神楽が見えなくなるまで木綿季は手を振ると家に入る。
裕子の靴がなかったため、どこかに出かけたと思い部屋着へと着替えた。
すると玄関が開いた音がしたので迎えに行った。
「おかえりー。お母さん」
「ただいま木綿季」
「どこか行ってたの?」
「ええ、少しね」
「ふーん・・・ま、いいや」
「ご飯用意するわね、木綿季」
「わーい!」
食べることが好きな木綿季は裕子の手伝いをよくする。
手伝えばその分早く食べれるし、響夜に手料理を奮えるからだ。
いつも響夜が作るだけじゃなく木綿季とて作って食べてもらいたい。
そのためにもこうして料理の練習も兼ねている。
「木綿季は野菜を切ってくれる?私は焼くから」
「うん~」
そんなこともあり料理が出来たためすぐに食べる。
明日は二日目、副教科のテスト。
それを乗り切れば明後日の結果次第で木綿季は響夜に沢山甘えようと思っていた。
「ふへへ~」
「・・・木綿季。いくら響夜君の事だからって口には出さないようにね?」
「うぇっ!?出てた・・・?」
「ええ、だらし無い声だったけれど」
「うー・・・」
自分の母親に聞かれたことが恥ずかしいのか料理を食べるスピードが上がっていく。
全て食べ終えると自室へと足早に入った。
「恥ずかしい・・・」
ベッドで包まっていると携帯を探す。
時間はもう7時だった。
いつのまにか早く経っていた事に驚いたが響夜に言われたため今日は早く寝ることにしようにしていた。
「・・・迷惑かな・・・でも・・・」
携帯の画面には響夜にかける電話が表示される。
もう少し一緒にいたかったのだが仕方ないため別れると一気に寂しくなっていた。
勇気を出して響夜に電話をかける。
するとすぐに繋がった。
「ん、どうした?」
「あ、えと・・・」
「寝る前に囁けと言いたいんすか」
「う・・・」
「ったく・・・もう少しいたかったなら言えば居たよ。それで、何を言えば良い?」
「明日・・・お家行っても・・・良いかな?」
「明日か・・・良いよ。どうせ泊まりに来そうだけどさ。裕子さんには俺から言うから気にせず来たら良い」
「うん、ありがと・・・」
「・・・もう寝ろよ」
「わかった・・・」
「おやすみ木綿季」
「おやすみ・・・」
「愛してるぞ」
「ふぇっ?!」
耳元で電話ごしとしとはいえ響夜の甘い声で言われた木綿季は変な声を出した。
電話は既に切れていたため響夜に聞かれることはなかったが。
「・・・ずるいよ・・・」
いつもと違う響夜に木綿季はどこかずるいと思った。
いつもならあんなことをしないと。
だが、それがとても心地良いと感じてしまう事に喜びがあった。
「・・・響夜に会いたいな・・・」
早く明日にならないかと思い木綿季は毛布を被ると眠りについた。
響夜さんの最後の言葉。
木綿季さんからしたら嬉しいが突然すぎてびっくりしたのでしょうね。
さて、もうすぐテスト編が終わるのですが日常編はまだまだ続きます。
そしてテストが終わると響夜には親しい人物が入学してきますね。
・・・続きどうしましょう。