第一層攻略した後、キリトはパーティーから離脱しどこかに去った。
これはそのあとの光景。
「アスナ、お前はどうする?」
「どうするって何を?」
「このまま一緒に過ごすのか、抜けるのか」
ヒビキはアスナに問い、アスナは少し悩んだ後答えを出した。
「私はしばらくソロでやってみるわ、いつまでもパーティー頼りには出来ないもの」
「そうか・・・じゃあ、一つだけ言わせてくれ」
「なに?」
「もし信頼出来る人からの誘いは断るなよ」
「・・・分かったわ、それじゃあ」
「ああ、じゃあな」
「アスナ、またどっかでねー!」
こうしてアスナはパーティーから離脱してヒビキとユウキだけになった。
「アスナも行っちゃったね」
「俺も抜けるんだが」
「えっ!?なんで!?」
ヒビキが抜けることを言うとユウキは何故か焦っていた。
ユウキ自身は何故か分からなかったが抜けてほしくないと思った。
「んー、ある程度は一人でも出来るだろ?それに俺は第一層クリアしたら解散するつもりだったしな」
「で、でも・・・」
「でもじゃない、パーティー頼りになりすぎるのも良くないんだ、時にはソロでの経験が活きるときがある。それも兼ねて俺はしばらくソロで居るつもりだしな」
「分かったよ・・・」
ユウキはしょんぼりとして、パーティーから抜けた。
「んじゃあな、生きろよユウキ」
「うん、ヒビキも死んじゃ駄目だよ!」
ヒビキはユウキと別れて、キリトにメッセージを送った。
『キリト、居るか?』
すぐに返信がきて『ああ』と返ってきた。
『パーティー解散した。第二層の《クルガの宿》で落ち合おう』
『分かった、すぐに向かう』
キリトから返信が来て大丈夫そうなのでヒビキは指定した宿に向かった。
ヒビキと別れたユウキはとりあえず近くで休んだ。
何するにしてもヒビキと一緒だったユウキは何をしたら良いのか分からない。
だが何時もしていたのは自分の強化。
フィールドで狩りをしてレベルを上げたり、武器を新調や強化したりなど、とにかく生存を重点に置いていた。
「何したら・・・良いんだろ、ボクは・・・」
しかしそれはヒビキと二人でやっていたからこそある程度は出来ていた。
ユウキがもしミスればヒビキがフォローしてくれた。
ヒビキがミスればユウキがカバーしていた。
しかし、それももう出来ない。
だからこそ一人ではどうすれば良いのか分からなくなっていた。
「・・・ユウキさん」
そんな状態のユウキに話しかけたのはヒビキの妹でもあるカグラ。
カグラはヒビキに『ユウキを頼む』と言われていたため、心配になり来ていた。
「カグラちゃんか・・・ボク何したら良いんだろうね」
「ヒビキと別れたんですか?」
「そうだよ・・・何するにしても一緒過ぎてソロだと何すれば良いか分からないんだ・・・」
「キリトさんもヒビキも元々ソロでしたよ、私だってソロの時があります。ユウキさんにはそれが無いんでしょうね・・・」
「そうなんだろうね・・・」
ユウキは一緒過ぎた。
何処に行くにしてもヒビキに付いていって居たから。
だからこそ自分での判断が出来ていない。
ソロなんてほぼしていないユウキにはヒビキの言葉が絶望にしか聞こえていなかった。
「なら、目標を出して見てはどうですか?」
「目標・・・?」
「はい、私はヒビキのサポートが出来れば良いんです、ユウキさんは何か目標はありますか?」
ユウキは目標と言えるものが無かった。
キリトやヒビキ、アスナは早くSAOから帰還すること。
カグラはヒビキのサポート。
ユウキはただ引っ付いていただけ。
そしてユウキは今の状態から脱するべく、一つの目標を出した。
「ボクは・・・ヒビキと一緒の並べれるぐらい強くなる!」
「良い・・・目標ですね、ユウキさん」
「えへへ~、そうかな?」
「はい、立派な目標だと思いますよ」
「じゃあさっそく頑張ってみる!ありがとう、カグラ!」
「いえいえ・・・では、またね、です」
ユウキは目標のためにすぐに走り出した。
カグラはフィールドに出たユウキに手を振った。
カグラのおかげで目標を打ち出せた事に感謝しつつ、フィールドで剣を振るう。
(絶対にボクは並んでやる!待ってて、ヒビキ!)
ユウキは相対したモンスターをばんばんと倒して行き、ドンドンとモンスターをポリゴン片へと変えていった。
ヒビキはキリトが来るまで待ち、来た後宿で話をした。
「なあ、キリト」
「なんだ?」
「第一層のあれってさ、他のβテスターとかを守るために言ったんだろ?」
「・・・ああ、そうだよ」
「自分から必要悪に走らなくても良いとは思うけどな」
「でも、それじゃあβテスター達が迫害される。テスターだからって理由でのけ者にされて良いわけが無いんだ」
「確かにな・・・でも俺は嬉しかったぞ、キリトが言ってくれて」
「言いたかったから言っただけだよ、礼を言われるようなことじゃない」
「はは、そうだろうな・・・じゃ今日は寝るか」
「ああ、そうだな」
そうして《ビーター》と呼ばれるようになったキリトはその意味をヒビキに教えてくれた。
ヒビキも言ってくれたキリトに感謝して、その日を終えた。