ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車

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《オーディナル・スケール》
現実世界に映された物


初詣から数週間。

世界ではあるものが人気を博していた。

それは『オーグマー』と呼ばれるもの。

数年前、世界初のフルダイブ型ゲーム機を開発した日本は更なる改良を重ねた。

そしてとある教授による論理により構築され設計された新たなゲーム機がオーグマーだった。

 

オーグマーに搭載された機能。

それは拡張型現実機能【AmusementReality】という拡張現実だった。

 

拡張現実とは人々が暮らす現実世界を拡張したもの。

簡単にいえば情報量が目に見える量で増えたということだろう。

それだけではオーグマーは売れなかっただろう。

しかしそれを爆発的に売上を作り上げる原因とも言えるのが【VR】と【AR】との違い。

 

VRは専用の機器を装着し、神経伝達を延髄でカット。

それに対しARは同じく専用の機器を装着し起動する。

だが神経伝達の遮断は行われず、現実世界での稼動となる。

 

これによりVRは危険性が、ARは安全性が高かった。

そしてこれによりARの連携機能によって世界は少しずつ変わりはじめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響夜は先程配達便が来ており、それを受け取っていた。

何も頼んでいないはずなのに届いた品に響夜は疑問を抱く。

 

「・・・頼んだっけか?」

 

記憶を探っていると階段から音がした。

長い黒髪だが幼い体つきで、響夜の妹である神楽。

先程まで寝ていたのか目を擦りながら下りて来ていた。

 

「おはよう、神楽」

 

「おふぁよぉ・・・」

 

「顔洗って来な、飯は後で作る」

 

「ふぁ~い・・・」

 

まだ夢の中にいたいのか声も緩かった。

響夜は神楽を洗面所へ行くように言うと届いた謎の段ボールをテーブルに置いた。

段ボールは一つではなく三つ届いており、大きさはどれも同じだった。

響夜は宛先は誰からか見てみると『重村』と書かれていた。

 

「・・・あの教授・・・」

 

何故三つなのか理解できなかったが名前を見るとすぐに理解した。

この中には世界を轟かしている機器が入っていると。

 

「・・・仕方ないな・・・ま、頂くか」

 

過去に響夜は重村からとある依頼を受けていた。

それはかつてデスゲームの舞台となったSAOの自立型システム。

重村はそのシステムのプログラムを組んでほしいと響夜に依頼した。

報酬が中々の金額でちょうど資金に困っていた響夜はそれを受けた。

だが遠い未来であの機器を送って来るとは思わなかったのだ。

 

「今は・・・8時か。学校はしばらく休みだし、木綿季を起こしに行くか」

 

響夜達の学校は冬休みに入っており、寝坊しやすい木綿季には天国だった。

しかし響夜がそれを許さず、朝の時間には基本起こしていた。

まだ起きて来ていない木綿季を起こしに行くべく響夜は二階へと上がった。

神楽の部屋のドアは完全に開いており、中が丸見えだった。

響夜はドアを閉めると自室のドアを開けて中に入った。

 

「すぴ~・・・すぴ~・・・」

 

「こいつ・・・」

 

気持ち良さそうに寝ている木綿季に響夜はどうしたものかと考える。

結果としてカーテンを開けて布団を剥がした。

 

「んぁ・・・!」

 

「今から10秒以内に起きなかったら抱きしめてやらない」

 

「今起きました!」

 

「・・・おはよう」

 

「うん!おはよう、響夜」

 

響夜の甘い誘惑に木綿季はすぐさま飛び起きると響夜に抱き着いた。

言い方を変えれば早く起きたら抱きしめるという意味で響夜は言ったため、抱き着いてきた木綿季を優しく抱きしめた。

 

「ふへへぇ~・・・」

 

「だらしのない声をだすんじゃねぇの」

 

だらし無い声をあげた木綿季に響夜は縦に手を構えると木綿季の額に軽く当てた。

 

「あうっ!?」

 

「まったく・・・ほら、飯作るから俺は下に行くぞ」

 

「ボクが作っていい?」

 

「良いが・・・昨日の朝と被らない物にしてくれよ」

 

「はーい!」

 

珍しく木綿季が朝を作ると言い出したため響夜は任せてみた。

というのも響夜が先に作ってしまうため、木綿季は朝を殆ど作れない。

だが、木綿季の料理の腕は確かで響夜と並ぶ。

しかし朝起きれるのかといえば悲しい結果になる。

 

「たまには俺が待ってみるか」

 

先に下に下りていった木綿季はおそらく準備をしているのだろうと思い、響夜は一階に下りると椅子に座って待つことにした。

神楽も顔を洗い終わり、椅子で木綿季の料理姿を眺めていた。

 

「ん・・・以外と様になってる」

 

「ほぇ?」

 

「・・・お嫁さんみたい」

 

「そ、そう?」

 

「だな。木綿季が料理してるとこあんま見れないし」

 

「それは響夜が先に作っちゃうからだよー!」

 

「ははは、悪い悪い」

 

「・・・悪びれてない」

 

「当たり前だろ、朝早くから起きれん奴に朝飯任せたら何時食えるんだ」

 

「うぐ・・・」

 

いつも響夜か神楽のどちらかに起こしてもらっている木綿季はぐうの音も出なかった。

響夜もしっかり木綿季が朝早く起きれるなら任せるつもりなのだが、朝が弱い木綿季には厳しい物だった。

 

「が、頑張って朝早く起きれるようにするもん!」

 

「そうか。ならせめて神楽より早く起きれるようにな」

 

「頑張って、ねぇね」

 

「むぅ~」

 

響夜と神楽に弄られようとも木綿季は朝ご飯をしっかり作ろうという気持ちがある辺り、やる気もあるのだろう。

そして木綿季は密かに朝早く起きれるように頑張る事にしたのだった。

 

「はい、できたよ~」

 

「たまには寛げるのは良いねぇ」

 

「おっさんくさいよ?響夜」

 

「まだ俺は20にもなってねぇよ」

 

「私は・・・いくつ?」

 

「神楽はまだ15だろ?」

 

「ボクは早く16にならないかなぁ・・・」

 

「16なったら色々あんだからな?・・・とりあえず食べるか」

 

「そうだね!」

 

あらかじめ神楽がお皿などを準備していたため、木綿季は盛りつけると少し片付けた後、神楽の隣に座った。

 

「それじゃ」

 

「いただきます!」

「いただきまーす」

「・・・ます」

 

あまりの小声の神楽は最後しか聞こえなかったがしっかりと三人合掌して食べはじめる。

 

「ど、どお?」

 

「ん・・・美味い。木綿季の料理はどれも美味いぞ」

 

「えへへ・・・」

 

「・・・おいしぃ♪」

 

神楽も抑揚をつけて言う辺り本当に美味しいと分かると木綿季も嬉しくなった。

普段神楽はあまり声に抑揚がなく、ほとんど喋る事が一部を除いてない。

響夜や木綿季、和人などSAOの知り合いぐらいとしか会話をしたがらない。

 

「うし、食べ終わったからあれを開けるか・・・」

 

「はやっ!?というかあの段ボール箱なんなの?」

 

「多分・・・あれだろうなぁ」

 

ずっと気になっていた段ボールを木綿季は不思議に思う。

配達などを頼んでいないため、内容が気になっていた。

響夜は段ボールの封を開けると発泡スチロールや緩衝材などを取り除くと中からヘッドセットのようなものが出てきた。

 

「響夜・・・それって」

 

「ああ。AR機器のオーグマー。恐らくあん時の追加報酬だろうな」

 

ご丁寧に3つあったのが響夜は気に食わなかったが、貰ったため素直に使うことにした。

 

「神楽と木綿季のもあるから、設定は自分でしてくれ。俺は自分ので精一杯」

 

「う、うん」

 

「ん・・・わかた」

 

響夜は段ボールを二階へと持って行くと一つを神楽の部屋に置いて二つを自室に置いた。

そしてオーグマーを取り出すと響夜はそれを装着した。

 

「はぁ・・・オーディナルスケール起動」

 

まるでそれを知っているかのようにオーグマーの設定を行っていく。

 

「まったく、変な計らいをする教授なこと」

 

オーグマーの論理を作り上げた重村を思い浮かべるも響夜はすぐに考えやめるとオーグマーの設定を細かく行っていくことにした。

 

 

オーグマーに秘められた機能を知ることになるのはまた後日。

 

 


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