ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車

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ユウキの目標

ユウキから逃げるように25層の迷宮区に来たヒビキ。

しかしここは最前線であるためもしかしたらユウキも来る可能性があるが仕方ないと思い、ヒビキは新たな武器である『ファンタジア』を振るって試し切りをしていた。

 

「ふー、案外使いやすいな・・・」

 

ヒビキはファンタジアを何度も振るって使い勝手を確認していた。

最前線25層モンスターを何体も相手にしているからかヒビキのレベルは安全マージンである35以上を超え、レベル49となっていた。

そして少し休憩を取っているとヒビキの《索敵》スキルにプレイヤーが引っ掛かった。

一応ヒビキは剣に手を掛けて警戒していたが杞憂に終わる。

 

「ヒビキ・・・?」

 

正体はキリトだった。

かなりの人数が他にも居た所からヒビキはキリトに問うた。

 

「ボス攻略・・・か」

 

「ああ、・・・ヒビキも参加するか?」

 

「いや、おれはしばらく攻略はやりたくねぇし任せるわ」

 

「そうか・・・なぁ、ヒビキ」

 

「んあ?」

 

「良い腕の鍛冶屋を知らないか?」

 

「何でまた」

 

「新しい武器を新調したいんだ」

 

キリトの頼みなら・・・と思い返すが自分が知る限り腕の立つ鍛冶屋は居なかった。カグラはなんでか他のプレイヤーの発注を断るためキリトも同じく返されると思った。

 

「・・・すまん、一応居るんだが俺以外のプレイヤーの武具発注を断ってる奴でな・・・悪いんだが紹介は出来なさそうだ」

 

「そうか・・・、悪かったな、手間取らせて」

 

「なーに、キリトの頼みだ、無下には出来んしな」

 

ヒビキはキリトに「頑張れよ」とエールを送った後、移動してモンスターを狩っていた。

 

 

 

そんなこともあり激戦の末、キリト達は25層のボスを突破し、未知なる第26層が解放された。

すぐにヒビキも26層に移動した。

だが一度カグラに会うべく22層に戻って来ていた。

しかし、そこでヒビキは会いたくない人物を見つけてしまう。

SAO初期に共に戦ったユウキが。

 

「ん・・・?ヒビキー!」

 

ヒビキはユウキを無視した。

ヒビキは個人的に会いたくない一番の相手に見つかったためどうしようか悩んでいた。

 

「ヒビキ、久しぶり!」

 

「・・・だな」

 

「どうしたの?なんか元気ないよ?」

 

「別に何でもねぇけど」

 

「でも・・・」

 

ユウキが何度も聞くためヒビキも苛立ち遂に我慢していた物が出てしまった。

 

「何でもねぇって言ってんだろうが!そういうのうぜぇんだよ!」

 

「ご、ごめん・・・」

 

「・・・謝んなら最初から言うんじゃねぇよ、うぜぇな」

 

「・・・」

 

「もう二度と俺のとこに来んな、目障り」

 

ヒビキはユウキに言いたいことを言うとすぐに立ち去った。

しかし後に後悔していた。

言いたかった事はあんなことではないとヒビキは後悔するもユウキとはもう無関係になったと考え、カグラの所に向かった。

 

 

一方ユウキは、さっきヒビキに言われた事がショックだった。

自分なりに心配して掛けた言葉がヒビキを怒らせた。

それのせいでヒビキと二度と会えなくなるのがユウキには何よりも嫌になっていた。

 

「ヒビキと離れたくない・・・ヒビキと一緒に戦う為に頑張ったのに・・・嫌だよぉ・・・」

 

ヒビキと並べれるぐらい強くなって一緒に戦うのがユウキの目標だった。

しかしヒビキはもう来るなと言った。

 

「もう・・・ボクはもう何も目指すもの・・・無いや・・・」

 

ユウキは足元が覚束ない足取りで宿屋で宿泊をした。

しかしユウキの目は何も捉えていない。

 

「ヒビキ・・・ごめん・・・」

 

ユウキはただただヒビキに謝ることしか出来なくなっていた。

そしてそれを見て述べるヒビキがいた。

 

「何してんだお前」

 

「・・・ぇ?」

 

「たかが俺に怒られた程度でそんな凹むか?」

 

「だ、だって・・・ボクはヒビキを目指して頑張って強くなったんだよ?」

 

「だからなんだ、それで終わりか?」

 

「・・・終わり・・・って?」

 

「俺を目指すのは構わん、だがそれで終わりなのかってことだ。例え強くなったとしてそのあとは?どうしていくのか決まってんのか」

 

「そ、それは・・・」

 

ユウキはヒビキの厳しい言葉に何も言えなかった。

ユウキはひたすら強くなるために戦った。

ヒビキの隣に立てるぐらいに強くなるため。

しかしヒビキはそのあとを聞いた。

例え強くなってヒビキと共に戦った後どうするのか。

ユウキにはそのあとが無かった。

ヒビキはゲームクリアという大きな目標があるからこそ頑張れる。

その後も帰還し、日常生活をする。

これがヒビキが抱く目標。

それに対してユウキはどうだろう?

ヒビキの隣に立てたとして、その後がない。

中途半端な目標しかユウキは持っていなかった。

 

「中途半端な思想しか持たん奴に前線は到底無理だ、俺の隣に立てたとしてその次をお前は持っていない。そこが俺やキリト達との違いだ」

 

「うっ・・・」

 

「聞いてやる、ユウキ。お前はもしゲームがクリアされた後どうするつもりだ?」

 

「今まで通りの生活・・・に戻る」

 

「そうだな、みんなそれを望んでいる。だがここは茅場が言った通りクリアまでは俺達のもう一つの現実世界とも言える。ならばまずこの世界でどう生きていくか・・・じゃないか?」

 

「そう・・・だね・・・」

 

「生きていく目標は自分で見つけろ、俺らが言える事ではない」

 

「えへへ・・・ありがとう、ヒビキ」

 

「別に、お前を放って置くと自殺してそうだったから止めに来ただけだ」

 

「それでも、嬉しいよ」

 

「んじゃ、俺はもう戻るぞ、用事終わってねぇし」

 

ヒビキはユウキに言うだけ言うと部屋を出ようとしたが、服を摘まれ止められた。

 

「・・・ボクも一緒じゃあ・・・駄目・・・かな?」

 

「ただの武具点検だぞ?それ終われば俺は寝るし」

 

「ううん、それでも行きたい」

 

「勝手にしろ」

 

ヒビキもさすがに自分で泣かせたからか強く断れず諦めた。

そして二人が向かうのは元々ヒビキの用事だったカグラの元に行くこととなった。

 

「ういー、カグラ」

 

「ん、いらっしゃい・・・お客さん?」

 

「ん・・・あぁ、ユウキだよ、連れだ連れ」

 

「ふーん・・・で用件は?」

 

「いつも通り武具点検で」

 

「はーい」

 

ヒビキはカグラに武具を渡し、点検をしてもらっている間、ユウキが話した。

 

「ねぇ、ヒビキのその武器って・・・」

 

「あーこれな、錆びた剣の当たり武器らしい」

 

「そっかぁ・・・良いなー・・・」

 

とユウキは自分の武器を見て羨ましそうにしていた。

それを見ていたカグラはあることを提案する。

 

「武器・・・作りましょうか?」

 

「えっ、良いの?」

 

「素材くれたら・・・仕上がりの質によってコルを貰う・・・けど」

 

「素材・・・あはは、嬉しいけど素材無いや・・・」

 

ユウキは作ってくれる人に申し訳なさを出して諦めたが・・・。

ヒビキはカグラにユウキにばれないようメッセージを送る。

 

【カグラ、これ使って武器作ってくれ】

 

【うん、分かった】

 

カグラはヒビキから素材を受け取り、裏に移動して武器を叩いた。

普通の武器作成では1~2分ほどなのが10分ほどして帰ってきた。

 

「ユウキさん、これどうぞ」

 

「へっ?」

 

カグラがユウキに渡したのは片手用直剣『マクアフィテル』と呼ばれる物。

生産限定武器で少なくとも現在のプレイヤーでは生産不可能な武器だった。

 

「ほわぁぁぁ・・・凄い・・・良いの?貰っても」

 

「お礼ならヒビキに言ってくださいね」

 

「ちょっ!?言うなよ、せっかくメッセージで言った意味ねーじゃん・・・」

 

「ヒビキー!ありがとう!」

 

「あー、まぁ喜んでくれてるなら良いや」

 

ユウキはヒビキとカグラのおかげもありユウキの新たな武器『マクアフィテル』が手に入った。

その後、カグラの元を後にした二人は宿屋に戻って来ていた。

 

「ふー・・・今日は良いことあったな~」

 

「左様で・・・まぁあんだけ喜んでくれるなら鍛冶屋としても本望だろ」

 

「えへへー・・・ねぇヒビキ」

 

「んあ?」

 

「また・・・一緒にパーティー組んでも良い?」

 

「そうだな・・・別にユウキが組むのは自由だぞ?」

 

「そ、それなら!」

 

「ただ俺とは組むのは止めな」

 

「なんで・・・?」

 

ユウキはヒビキに自由にしたらいいと言われヒビキと組もうとしたがヒビキは自分以外でと念を入れた。

 

「言ったろうが、俺はパーティーは好かん。ソロのがやりやすいし、いざって時動きやすい」

 

「でもソロだと危ないってことぐらいボクには分かるよ!」

 

自分は以前と違うんだーとユウキはヒビキにアピールするも元々の根っこの部分から違うためヒビキは困っていた。

 

「あのなぁ・・・はぁー今はまだ無理だ」

 

「今は?」

 

「そういうことだ、自分的にもパーティーを組みたいと思いはじめるのは40層ぐれーじゃねぇかな・・・それ以降からなら別に構わん、その時には色々整理がついてるだろ」

 

「そっかぁ・・・じゃあ、絶対にまた組もうね!」

 

「はいはい・・・お前は元気だな・・・」

 

とヒビキは元気なユウキを見て少し心が軽くなった気がした。

頭もついでに撫でるとされるがままにユウキは嬉しそうにしている。

 

「えへへ~」

 

「さて、もう寝るぞ、俺は眠い」

 

と寝はじめたヒビキに撫でていた手が離れて名残惜しそうにするものの、ヒビキが寝かけているのでそのまま二人は寝た。

 

ヒビキは珍しく良い夢を見れてユウキに感謝しつつ、ユウキを起こさないように宿屋から出た。

 

 


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