ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~   作:紅風車

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階層は一気に50層にまで飛ばします。
またタイトルを【ソードアート・オンライン ~幻剣と絶剣~ 】に変更することにしました。


《幻剣》と《絶剣》

ユウキを置いて宿屋を出たヒビキは迷宮攻略に参加し、階層を解放していった。

そして自分で言った40層を超えて50層にまで攻略が進んでいた。

攻略スピードの早さはやはり25層での激戦に比べていくと辛くはなく、ボス攻略での死亡者は居なかった。

 

 

 

ヒビキはほとんどの迷宮攻略に参加しており、大体の前線攻略メンバーにはその顔を覚えられていた。

 

「・・・カグラ、眠い」

 

「そんな事言わない、私だってずっと引きこもりたい」

 

「ただの願望じゃねぇか・・・」

 

ヒビキはやることがなくカグラの元にいた。

50層というクォーターポイントで前線メンバーは準備を万端にするため攻略が止まっていた。

ヒビキもレベル上げに飽きたのかカグラの店がある22層で寛いで半分寝かけていた。

カグラも同じで暇を持て余していた。

 

「あー・・・そういえばエギルが50層の《アルゲート》に店構えたんだっけか・・・」

 

ヒビキが譫言のように言うとカグラが飛び起きた。

 

「ヒビキ!行ってみたい!」

 

「お、おう・・・んじゃ店じまいにして行くか」

 

「うん!」

 

カグラはすぐに店を閉めて転移門に向かった。

何故ここまでカグラはエギルの店に行きたがるかと言うと、カグラは一緒に居るだけで色々呼び込む謎の力がある。

現実世界でも同様、幸運を呼んだと思えば生命の危機に瀕する不運を呼んだり・・・と最早呪いなのじゃないかというぐらい色々とやってくる。

さらに恐ろしいのがそれを本人が自覚しておらずまた能力的な物では無いので制御も出来ないという。

キリトも同じく様々な出来事を呼び込むがカグラは最早別格だ。

そのため、カグラを知るものはこう言う《歩く天変地異》と。

 

 

それの切っ掛けがエギルとパーティーを組んだ時だ。

エギルがいきなりヒビキを呼んで来た。

 

「ヒビキ!カグラをどうにかしてくれ!」

 

「ど、どうなされたエギルよ」

 

「あの子が居ると不運しか来ねぇ!頼む引き取ってくれ!」

 

とあのエギルを困らせたあの出来事があってからはエギルはカグラを危険人物として見ているらしい。

カグラはそれを何故か理解し、エギルにちょっかいを掛けにいこうとしている。

 

 

 

そして場所は前線である50層《アルゲート》に到着した。

カグラは「早く早く行こーよ」とヒビキを急かしてエギルの店に向かった。

 

「ういー、エギル開店祝いに来てやったぞ」

 

そうしてカウンターには肌が黒く長身で印象に良く残る友人のエギルが居た。

 

「へい、らっしゃ・・・い・・・!?」

 

「エギルさん、こんにちは~」

 

「ヒビキ!何故連れてきた!?店が壊れる!」

 

エギルはカグラを破壊人物とでも思っているのだろうかとヒビキは思いつつ、エギルにニヤニヤと返した。

 

「だってカグラが来たいっていうしさぁ~、連れていこうかなぁ~と?」

 

「おめぇは鬼か!?」

 

「はいはい、鬼で結構・・・カグラこれぐらいにしてやれ」

 

「はーい、エギルさんまたね~」

 

とカグラはエギルに手を振って店を出た。

エギルは心底ほっとした感じでいつもの顔に戻った。

 

「次からまけてやるから連れてこないでくれ・・・」

 

「っしゃ、言質取ったぞ、まぁ加減はしてやる」

 

「ああ、で本当に開店祝いに来ただけなんだな」

 

「そりゃあな、友人が店持ったって言うしどんな感じか見に来るだろ」

 

「一応リアルじゃ店経営してんだ、こっちでもやりたくてな」

 

「納得。んでエギル早速良いもん売ってやる」

 

ヒビキはエギルにあるものを見せた。

第45層のレアモンスターから更に低確率ドロップの『リーパー・ザ・サイス』と呼ばれる鎌状の武器だった。

 

「お、おいおい・・・こりゃあレア武器じゃないか、良いのか?売っても」

 

「別に俺はこの武器あるしなぁ」

 

とヒビキは25層から使っている『ファンタジア』を見やった。

 

「その武器・・・記憶が正しけりゃ20層辺りから使っているだろ?性能不足なんじゃないのか?」

 

「なら鑑定してみりゃいいだろ」

 

エギルに言われヒビキはファンタジアをエギルに渡して性能を見せた。

すると鑑定が終わったエギルが凄い顔をしていた。

 

「な、なあ・・・これこうやって手に入れた?」

 

「錆びた剣の当たりだぞ、素材がきつかったが」

 

「素材?石ころ99個だったはずだぞ」

 

「・・・宝石各種5個消し飛んだ、必要素材は知らなかったから使っちまったけど」

 

「マジか・・・しかもこれまだまだ強くできるってのが恐ろしいな」

 

「んでだ、買い取るのか?鎌武器」

 

「そうだな・・・これぐらいでどうだ?」

 

とエギルが提示したのは5万コル。

しかしヒビキはもっと引き上げれると思い交渉タイムとなった。

 

 

最終的に12万コルでエギルに買い取らせてヒビキは店を後にした。

ヒビキは一度カグラの所に戻ろうと思い転移門に向かっていると広場で男女が言い合っていた。

男の方は見たことが無いが女は良く知るユウキだった。

ちなみにユウキはこれまでも同様な事があり、デュエルで何度も勝利をしていた。

他のプレイヤーはそんなユウキを《絶剣》と呼んでいた。

男プレイヤーはそんなユウキが欲しいのかパーティー勧誘をしており、ユウキはそれを断っていると見た。

ヒビキはそれに巻き込まれないよう近くのベンチで見物していた。

ヒビキもヒビキで攻略メンバー最強などと呼ばれていた時期もあり《幻剣》と持て囃されていた。

それを他プレイヤーに知られると何か言われるためフードを被って姿が見えないようにしていた。

 

 

「なあ、絶剣さん、一緒にパーティー入らない?」

 

「ごめんね、ボクそういうの断ってるんだ」

 

「良いじゃん?俺ら全然弱くないからさ!」

 

「ならデュエルで勝ったら好きにしたら良いよ」

 

「良いぜ!乗ってやる!」

 

ユウキは男3人にデュエルを申し込んだ。

男達はそれを承諾し、デュエル開始を待っていた。

 

(いくら何でも3人はきついんじゃねぇか?って言ってもあいつの戦闘どんなものか知らんしな)

 

とヒビキはユウキの戦いがどんなものか見物していた。

 

しかしそれはすぐに決着が付く。

デュエル開始した瞬間、ユウキが神速の如く動き、男3人の後ろに回り背中を斬って勝利を収めた。

 

「なっ・・・は、早すぎる」

 

「負けたからパーティーは無しだよ」

 

「・・・分かったよ、悪かったな」

 

というと男3人は転移門で転移していった。

ヒビキもそれを見てユウキを素直に褒めていた。

 

(へぇ・・・すげぇな、あんな強くなってたとはな・・・一戦ぐらいやってくんねーかな)

 

と思いヒビキはユウキにデュエルを申し込んだ。

 

「ん?君もやるの?」

 

「ああ、大丈夫か?」

 

「良いよー、ボクはユウキ!」

 

「俺はヒビキだ、よろしく」

 

と二人はデュエルを相互承諾した。

《半減決着モード》でヒビキは武器を抜刀した。

 

ユウキは先程と同じ用に後ろに回り斬ろうとしたが途中で手が止まった。

ヒビキはそれを見破ってユウキの剣を手で止めていた。

 

「えっ!?」

 

「同じ動き見せられて何もしないとでも思ってんのか」

 

ヒビキは剣を握ってユウキを引き寄せてソードスキルを発動させた。

片手剣スキル《シャープネイル》を発動させ、ユウキを3回切り付けたのち、足で蹴り飛ばした。

 

「えぐっ・・・」

 

「何だ絶剣もこんな程度か」

 

「ぐっ・・・舐めるなぁぁ!!」

 

ユウキは《レイジスパイク》を発動させて間合いを詰めるがそれがヒビキの狙った罠で《ソニックリープ》を発動、ユウキのソードスキルを弾いた。

しかしユウキはめげずに違うスキル《ホリゾンタル・スクエア》でヒビキを斬った。

その時フードにも当たり耐久の低いフードは消えてヒビキの姿があらわになった。

 

「えっ・・・ヒ、ヒビキ!?」

 

「結構やるけど・・・詰めが甘い」

 

「えっ・・・?」

 

ユウキの首元にはファンタジアが向けられており、事実上のユウキの敗北となった。

最後にユウキに放ったのはダミーの店売り武器を事前に出して一番の隙にそれで攻撃をする。

しかし相手は当然それを止めるため弾くためにダミーを攻撃する。

ヒビキはダミーが弾かれた後、本命であるファンタジアを自分のスピードを活かして回り込む。

これがヒビキが《幻剣》と呼ばれる由縁ともなった。

ダミー剣が幻で本命を2撃目にするヒビキの戦い方は対人でしか使えないがそれでも強力な攻撃手段と言える。

 

「ユウキの負け、んじゃあの」

 

「えっ、ま、待って!」

 

「・・・何?」

 

「え、えっと・・・」

 

「用あるんなら22層のカグラの店来い」

 

とユウキに伝えるとヒビキは転移門で22層に向かった。

その日、ニュースには『絶剣、幻剣とデュエルをし敗北か?』という見出しが出ていた。

 

 

 

ユウキはヒビキに言われた通りカグラの店に来ていた。

ユウキはずっとヒビキに言いたかった事をこの日に言おうと決め、カグラの店に来ていた。

 

「ん、来たのか」

 

「うん、来たよ」

 

「で、何の用だ?」

 

「22層の宿屋で言ったこと覚えてる?」

 

「さあな、知らん」

 

「ボクね、あんなこと言われて嬉しかったんだ、ボクのために真剣に怒ってくれて」

 

「別にほっとけないから言ったまでだ、俺以外でも言える事だろう?」

 

「それでもヒビキが言ってくれて嬉しかった・・・」

 

「そうか・・・」

 

ヒビキは泣いているユウキを見て、少し胸が痛くなった。

さすがに鈍感じゃないヒビキはそれを内に表に出さず隠していた。

しかしそれもここまで。

ヒビキはずっとユウキに言わなかった事を言おうと決めた。

 

「ユウキ、ちょっといいか?」

 

「あぅ・・・どうしたの?」

 

「ユウキと会ってもう結構月日経ったよな」

 

「うん・・・そうだね」

 

「結構感謝してる、一人じゃ何も出来なかったと思う」

 

「そんな・・・ボクだって同じだよ。何も分からなかったこのSAOの世界で生き残れたのはヒビキが教えてくれたからだよ」

 

「・・・ずっと言いたいことがあった」

 

「ボクも・・・ヒビキから言って?」

 

「あ、ああ・・・」

 

ヒビキは一度深呼吸をしてかた言った。

 

「ユウキ、好きだ!」

 

ヒビキが顔を真っ赤にしてユウキにずっと秘めてた想いを言った。

ユウキはそれを聞いてもっと泣き出してヒビキが焦った。

 

「大丈夫・・・嬉しいだけ・・・ボクだってヒビキの事大好き!」

 

「ほ、ほんと・・・?嘘・・・じゃないよな?」

 

「嘘じゃないもん!ヒビキの事大好きだよ!」

 

とユウキはヒビキにずっと言いたかった事をとうとう言った。

ヒビキも何度も好きと言われ恥ずかしいのかユウキに顔を見られないよう抱き寄せた。

 

「ふぇっ?・・・はわわわ・・・」

 

「こんな俺で良ければ付き合ってください」

 

「はい!喜んで!」

 

ヒビキとユウキはようやく言いたかった事を互いに言って恋人となった。

裏で聞いていたカグラも「ガンバレー」と密かに応援していたのは二人には気づかれる事はなかった。

 

「ユウキ、宿屋いこっか、何時までも此処にいれねぇし」

 

「うん!」

 

ユウキはヒビキの腕に引っ付いて離れなかった。

ヒビキは恥ずかしそうにするも嬉しいのか何も言わず宿屋に向かった。

 

 

それを見たプレイヤーは男はヒビキに嫉妬と恨みを向けて。

女は羨ましそうに見るのだった。

 

 


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