トントントン
気持ちのいいリズムと音で自然と目が覚める。空いている窓から爽やかな風が通り抜ける。今日もいい日になりそうだ。そう感じた俺が真っ先に取った行動は、
二度寝だった。
昨日遅かったし、今日も別に今起きなくても大学間に合うし、何なら1限すっぽかしても問題ないし・・・
そんな適当な理由と一緒に最高に気持ちのいい二度寝に入ろうとした瞬間、俺は宙を舞いそして落ちた。
「朝よ、起きなさい」
俺を床に叩き落とした張本人は、冷酷にもそう言い放ち俺を現実に戻した。
「痛い、毎回言うけど痛い。頼むからもう少し優しい起こし方は出来ませんか」
「いやよ。だってそんな事してたら起きないまま遅刻するでしょ、アナタ」
流石よくわかってらっしゃる。伊達に一年も同棲生活していない。しかし、
「奏さんや、たまには1限ブッチくらいさせてくれてもいいじゃない?こんな規則正しく大学行ってんの俺くらいじゃないか?」
「とりあえずアナタは世の中の真面目に通ってる大学生に謝りなさい。それに授業に遅れて、万が一単位出なかったりして留年したら困るのは私なのよ」
「は、はぁ。よく意味が分からんのですが」
「分からないの?社会に出るのが遅れたら、それだけ私との結婚が遅れるって事よ」
「・・・朝から恥ずい事言ってくれるねお姉さん。それに結婚云々はまだちょっと想像できないというかなんというか」
「あら?そうかしら。少なくとも私はアナタとこの生活を始める前からずっと、その事だけを考えてたけど」
「・・・分かった、分かったから朝飯にしましょう」
朝から恥ずかしい、傍目から見たらただのバカップルに思われそう、というか間違いなく思われるやりとりをした俺たちは小さい頃からの幼馴染。奏は俺の三歳年上で今年で社会人二年目。未だ大学生の俺は、下宿が有るものの専ら彼女の家で生活している。・・・ダメだマジでヒモだこの状況。一応生活費と家賃を折半で負担してはいるが、どうにも最近その一部が使われていないらしい事に気がついた。家事も
「私がやりたいの。花嫁修業?」
とか柄にもない乙女チックな事言い出してやらせてくれない。自分も一人暮らししてたおかげで出来ない訳ではないし、寧ろ既に働いている奏の負担を考えたらやってあげたいのだが・・・
「奏、無理してないか?」
「口に物入れて喋らないの。大丈夫よ、私は。それより幸一こそ。最近私より帰りが遅いじゃない。バイトは平気なのかしら」
「そこで浮気とか考えない辺り流石ですね」
「まあ今更疑う気もないし、それにアナタがホントに浮気してたとして」
「してたとして・・・?」
「私、一生独り身で過ごすだけだから。問題ないわ」
「気持ちが重い!?いや、大丈夫だからその通り心配しなくていいけども。なんかこっちは今更ながらその愛の重さに驚いてるわ」
「・・・この気持ち、初めて会った時から変わってないって言ったらどうする?」
「流石に引く。奏さん、ドン引きです」
「冗談よ。初めて会うどころか、一目見た時から変わってないわ」
「初耳だァ!?」
「好きよ、幸一。愛してる」
「な、誤魔化し方が卑怯だぞ。ウチの彼女が今時珍しい超夢見がちな乙女とかなんか信じられん」
「今の状況を見ても?」
「・・・甘やかされてんなぁ俺。なぁ奏」
「なぁに幸一。お茶ならここよ」
「あ、スマン。じゃなくてさ。本当に俺で良かったのか?」
「さっきはあんな事言ったけど、本気でそうしようと思えたのはアナタだからよ。そんな簡単で浅い女だと思ったのなら少し不満なのだけど」
「寧ろ重くて深い・・・いやなんでもない」
「この程度まだまだよ。私はもっとアナタに私の事好きになって欲しいしその為なら何だってするわ」
「もう十分好きだと思うけどなぁ。俺は奏が側にいてくれるだけで幸せだし」
「・・・」
「ん?どうした?」
「・・・ぅ」
「あの、奏さん?俺、何かしたか?」
「そんな事言われたら、我慢、出来なくなっちゃう」
「え゛」
「今日は私、遅く出ても平気なの。だから・・・」
「待て待て待て待て!!お前が遅刻するとマズイって起こしたんだろ!?本末転倒だし!ホント全部急だな!え、ちょ、待ってホントこんな朝からァ!」
「大好き、幸一。一生離さない」
その日は二人仲良く遅刻しました。
クールなようで実は攻めっ気しかない、それでいて攻められると弱い超絶乙女思考のお姉さん。最初がこれな時点で自分の嗜好はモロバレ。
そして次は隣のお姉さん。ピュアッピュアな(死語)年上彼女はリードしたい。ラノベにするならこんなタイトル