仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
一時間前、ガード下
「Obiパラドクス、君に消えてもらいたい」
「…ハッ、こりゃまたずいぶんと大きく出たな?」
挑戦を受ける思いで俺はゲーマベルトを取り出し………懐にしまった。
「…なるほど、鍛錬の成果だな。君がどう逆立ちしても私に勝てないことが分かったようだね」
変身しようとした時に感じた、妙な気配。悪寒でもない………何か、「手を出してはいけない存在」を感じた。
「………で、さっきの言葉の意図は?」
「意図も何も………言葉の通りだ。君が生きている意味はもうこの地球のどこにも存在しない。それだけさ。そして、それは君が一番よくわかっていることなのではないかい?」
目を閉じて、視界を闇で満たす。
………ああ、そうだ。俺がこの世界で生きる理由は、もうない。
守りたかった奴も、
守ろうとした友も、
皆、もうこの世にはいない。
「Obiパラドクス………君一人が生きて、何になるというのだ?」
「………そうだな。もう、俺の中には何もない」
「たとえこの先に生きたとて、何になるというのだ? 一体、その生の先に何があるというのだ? 君の中には、もう友を失った虚無感しかない。
生きた先で新たな生きる理由を見つけたとて、自分一人生き残った負い目はより濃く、深く君自身を抉る。さらに、生きる意味を見出せず、生涯もがき苦しみ続ける可能性だってあるのだ」
はっきりと、核心を突かれた。例え俺が生きていても、もう何にもならない。
俺が人間をどれだけ殺そうと、仮面ライダーを倒そうと、もう誰もいない。
仇を討とうとも、もうすべて全くの無意味だ。
「君が生きる義務はあっても、生きる義理はもうない」
「………………そうだな。もう…………もう疲れた………………」
一気に力が抜け、その場にへたり込んだ。今までの自分の無茶が来たんだろう。
「君はもう十二分に友のために生きた。これ以上君は戦う必要はないのだ」
「そう………だな。あんたの言う通りだ………さあ、俺を殺してくれ」
立ち上がって両腕を広げる。死ぬのは別に怖くない。ただ………これまでの努力が無駄だったと、気づくだけ。
「ふむ………君は何か勘違いしているようだね。確かに私は君に「消えてもらいたい」と言ったが、「死んでくれ」とは言っていない。君には消えてもらう」
「………なに?」
「君は消え、引き継がせるんだ。君の力を。もう一人のパラドクスに」
俺がかつて望んだ、「究極のパラドクス」それを………あいつが?
「君はもうこれ以上強くなる理由はない。だが、彼には、パラドクスにはある。
永夢を救うという理由が。そのためには君が必要不可欠だ」
「敵に塩を送れってか?」
「その通りだ。彼は望んだ力が手に入り、君は命の呪いから解放される。 これは君にとって決して悪い話ではないはずだ。違うかね?」
「一日時間をあげよう」それだけ言って錆ゲンムはどこかへ行こうとした。
「まて………その話、乗った」
「…! いいだろう。では、私とともに来い。私の正体は言えないが、蛮野天十郎のラボへ君を連れて行こう。大丈夫さ。奴は今第二ラボにいる。こちらには来ない」
それだけ言って、錆ゲンムは振り向きもせずに走っていく。
俺はただそのあとを懸命に追いかけ続けた。
ただ哀しみに、ただありふれて、
それでもまだ、生きて………?