仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
「おぎゃあ! おぎゃあ!!」
病室の中で、1つの生命がこの世に生まれた。
まだ名前のない赤子は、両親にとても祝福された。
「元気な男の子だね」
「そうね………」
「頑張ったな。ありがとう。エリ」
現夢はエリの額にキスをした。これまで何十回と繰り返してきた。愛の動作。
二人の笑顔がより深くなった。
「………それで、この子の名前、決めたの?」
前々から話し合ってはいたが、結局決まらなかった名前。まさか考え付かなかったとかないだろうなとエリは取り越し苦労なことを考えた。
「ああ………私の名前の意味と同じにしたよ。「厳しい現実世界の中でも、無邪気な子供の夢を永遠に失わない子」………この子の名前は、永夢。宝生永夢」
「永夢………いいかもね」
赤子の名前は永夢。この物語の主人公。彼はこれから仮面ライダーとなり、戦いに身を投じることになるが、両親はまだそのことを知る由もない。
「最近は仕事が立て込んでたけど、一日中そばにいたわよね、仕事は大丈夫?」
「平気さ。日ごろから真面目にやってる分、こう言うところでわがままを言わせてもらったよ」
すなわち今日が過ぎればまた仕事行きということで、エリは少し表情が曇った。
「安心して。何かあれば飛んでくるから」
「うん………ごめんね」
「良いんだよ。どんどん頼ってくれなくちゃ」
それから二人は赤子の将来について話し合った。どんな性格か。職業は?
まだ見ぬ我が子の未来に、二人の胸が躍る。
「疲れただろう。少し寝たら?」
「うん。じゃあ………すこし……だけ………」
出産後の疲れか、すぐにエリは寝息を立て始めた。その寝顔を現夢は微笑ましそうに見つめていた。
そして、7年の歳月がたった………
「ただいま」
「「お帰りさない」」
現夢が家に帰ると、いつも通りに妻と息子が迎えてくれる。
何気ない日常の幸せをかみしめ、現夢の頬が緩んだ。
「パパ! ゲームしよ! ゲーム!」
「はは、いつもそうだな、永夢は」
「あなた、永夢ったらいつもゲームしてるのよ」
確かに永夢はたいていゲームをやってはいるが、それでも学校の成績は上位。特に大きな問題があるわけではないので、現夢は特に問題視していなかった。
「まあいいじゃないか、結構教育にいゲームっていうのもあるらしいし、そうでなくとも私生活に問題がないなら構わないよ」
永夢は器量良く、何でもこなした。勉強でも運動でも、ゲームでも。
ゲームは初めは友人とよくやっていたが、あまりにも永夢が強すぎるので誰も永夢を満足させることができないのだ。………父を除いて。
「永夢、台所に来て手伝って。にんじんの皮むきくらいできるでしょ?」
「え~? でもぉ………」
「はは、永夢、ゴメンな。パパもこれから着替えなくちゃいけないんだ。ママのお手伝いが終わって、ご飯を食べた後に一緒にゲームをしよう」
「………うん!」
永夢は頷きながら台所へと言った。現夢は自室に入り、着替えて自分も台所へと向かう。
「手伝うよ。何すればいい?」
現夢も二人に混ざろうとするが、エリは無言で現夢をリビングへと送った。
「今日もお仕事疲れたでしょ? いいからリビングでゆっくりしてて」
「………ああ、ありがとう」
そこまで言われれば断る理由はない。言葉に甘え、現夢はリビングの椅子に腰かけた。
しばらくテレビのニュースを見ていると、彼の愛しき息子と妻が夕食を運んできた。
「じゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
「………うん、今日は昆布だしかい? これもおいしいな」
「あら、じゃあしばらくそれで行こうかしら」
「ハンバーグおいしい!」
「はは、永夢、パパのハンバーグ半分食べるか?」
「平気よ。そう言うと思ってあなたの分は小さく、永夢の分は大きくしてあるから」
おいしい夕食に舌鼓を打ち、現夢は永夢とゲームを始めた。
「パパ、きょうはかつからね!」
永夢は、対戦相手が手を抜くのを嫌うたちだったため、当然現夢も本気を出す。
………そして、その腕は後に天才ゲーマーの異名を冠する息子以上の腕だった。
「えい! えい!………あぁ」
「まだまだだな。永夢」
「ん~~~~~~! いいもん! つぎはレースゲーム!」
その後も格闘、リズム、シューティング、パズルゲームと永夢は現夢に挑むが、ことごとく返り討ちにされてしまう。いつも永夢は現夢に勝てないのだ。
「………んう……パパ………つぎはね………ううん………」
やがて永夢は眠たそうにし始めた。現夢が帰る前にお風呂には入っているし、後は寝るだけだ。
「さ、永夢、歯を磨いて寝よう。今日もパパの勝ちだね」
「うん………パパ、あしたは………かつから………」
眠たそうにする永夢を洗面所へ連れて行き、歯を磨かせているうちに永夢は寝てしまった。現夢は眠った永夢を抱きかかえ、エリの待つ寝室へと向かう。
「永夢は寝てしまったよ。すまないなエリ、今日はあまり君を構えなかった」
「バカ、結婚してからもう10年もたつのよ? 別にそんな………」
「君がよくても、私がよくないのさ」
ベッドに寝かせた永夢をまたぎ、現夢の手がエリの頬を撫でる。
「愛してるよ。エリ………」
「知ってる」
「ハハ、ドライだな」
「愛してるわ、あなた………」
「ゴメン、知ってる」
二人は微笑み、手を同時に動かした。
右手は互いの手を、
左手は息子の肩に。
こうしてまた、朝が来る。
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