仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
気にせず行きましょう。
現夢は帰り道の途中、柄にもなくゲームショップへと足を進めた。
目的は一つ。ついに今日となる、彼の息子、永夢の8歳の誕生日だ。
「なんのゲームがいいかな………」
現夢はゲームの腕ならば今も、そして未来も世界最強級の腕を持つが、彼自身はゲームにそこまでの興味は持ち合わせてはいなかった。彼が興味があるのは、息子が興味を持つゲーム、それだけ。
「うーん、しかし増えたな………」
棚どころかお店そのものが電子ゲーム専門という、ゲームの進化を物語るような空間の中で彼は嘆息した。当然原因は何を買えばいいのか見当がつかないという点だ。
「何にすれば………………ん?」
ふと目に入ったゲームソフト。いや、正確にはゲームソフトの会社名。
「これは………「幻夢」コーポレーション? 新参のゲーム会社か?」
自分の名前と同じ「ゲンム」と言う名。現夢は何の気なしにそのソフトを手に取った。
「これにしてみるか」
現夢は使い慣れたもののブランドを愛用するが、開拓精神も持っている。それに、よっぽどでなければ永夢はどんなゲームでも楽しめるタイプであることも知っている。まあ何とかなるだろう。と彼は自分の中で結論づけた。
ちなみに、その結果は………
「パパ! これさいこう! すごいよ! ほらほら!」
結果は大うけ。永夢はそのゲームのとりこになった。
「はは、賭けに出てみたけど、よかった」
「………でもこのゲーム、1りようだね………」
そうなのだ。現夢は買った時によく確認しなかっが、これは一人用のゲーム。
永夢がいつものように父と競争することはできないのだ。
「ああ、よく確認すればよかったな………すまない」
「ううん! いいよ!」
その日は結局エリの手作りケーキなどで大いに盛り上がり、素晴らしい時間だった。
そして、そこから一週間後。
「ただい………うわ!?」
「パパ! みてみて!!」
家に入ると同時に、永夢が現夢のもとへ突撃してきた。
見ると両手に何か紙のようなものを大量に持っている。
「なんだい? ………これは」
それは、永夢自身が考えたゲームのアイディアだった。
微笑ましいと感じ、微苦笑だった現夢の表情が、しばらくすると驚きに変わった。
「これ………すさまじく面白いな!」
ゲームをまともに遊ばない彼にでもわかる。これは面白い。
「でしょでしょ!!」
「すごいな、永夢は………でも、どうして急にこれを?」
「うん………げんむこーぽれーしょんのえらいひとにみてもらおうとおもって。」
もしつくってもらえたら、パパとあそべるでしょ!」
そこまで聞いて、彼はなるほどと納得した。彼が先日買ったゲームは一人用だった。自分と遊ぶのを一番と考えてくれる息子に、思わず胸が熱くなる。
「うん………よし! じゃあ幻夢コーポレーションに送ってみよう!」
この時、彼は軽い気持ちだった。出すだけ出す。と言う風に。そして………
「あなた、これ…永夢に郵便みたい」
「うん?………! 永夢! これこれ!」
差出人を見た瞬間、彼は驚愕した。差出人の名前は「檀黎斗」幻夢コーポレーションの社長の息子であり、あのゲーム会社のほとんどのゲームを自分で考えた少年の名だったからだ。
「わああ! すごいすごい!!!」
便箋の中には手紙とゲームが入っており、手紙には「将来僕と一緒に究極のゲームを作ろう」ということが書いてあり、現夢は自分の息子が評価されたことを何よりも喜んだ。
「永夢? 寝てるのかい」
永夢の部屋に現夢が入ると、永夢は送られてきたゲームを起動したまま眠っていた。
表情は苦悶の気配があり、現夢は不安になった。
「永夢!? 大丈夫か!?」
「う、う~ん、パパ?」
起きた永夢に苦し気な気配は一切なく、念のため額に手を当てても熱はなかった。
悪い夢でも見たのだろう。と現夢は結論づけた。
「さ、夕ご飯にしよう」
「うん…あ! そうだ、パパ! にちようびのゆうえんち、たのしみだね!」
現夢は今度の日曜日に家族で遊園地に遊びに行く予定だった。………そして
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「………もしもし、宝生現夢です。いつもお世話になっております」
その日、彼の研究所ではあるトラブルがあり、大型の機械の一つが破損してしまっていた。
「ああ、お久しぶりですね、宝生さん。今日はどうしましたか?」
「はい。急で申し訳ないのですが、こちらで使用させていただいていた試作装置が一つ破損してしまいまして………」
「………! そうですか。それは困りましたね………」
お互いにあまりいい会話ではなく、暗い雰囲気になる。
「では、申し訳ありませんが機械の製造費は………」
「はい。申し訳ありません。もちろんこちらで負担させていただきます。それで、出来ればもう一台を発注していただければと………」
電話の相手は考えるように低くうなった。現夢は祈るように目をつむった。
「分かりました。スペア用のサイドを動かせるようにしましょう」
「! 可能ですか!?ぜひお願いします!」
「よろしいんですよ。こちらとしても宝生さんにはお世話になっていますしね。では、それについてのお話と輸送について、明後日の日曜日はどうでしょう?」
「はい、分かりました。明後日ですね。………あ………!」
何の運命の悪戯だろうか、現夢が開いたスケジュール表には、「家族で遊園地」と書かれていた。
「………どうかしましたか?」
「ああ、いえ、何でもありません。はい、明後日の2時。ありがとうございます。失礼します」
こっちのミスで機械を破損させたうえに、「都合をこっちに合わせてくれ」と言うのは流石に図々しすぎる。仕方なく現夢は「家族で遊園地」の文字に斜線を引いた。
「………………すまない、永夢………」
そしてそこから数時間が立ち、彼のもとに電話が入った。
「私だ。どうかしたのかい?」
「あなた………! あの子が………! 永夢が事故に………!」
「!? 本当か!? 永夢は今どこに!?」
一瞬で彼は平常心を失った。急すぎることに、頭が真っ白になる。
「ぐす………たしか、家のすぐそこの病院だったはず………」
「…分かった! すぐに行く!!」
彼はすぐに走り出し、仕事用のコンパクトカーに飛び込み、アクセルを思い切り踏んだ。
「永夢………頼む…死なないでくれ………!」
大雨の中、彼は車を飛ばした。
研究所は小山の上にあるため、大急ぎで速度を吊り上げていく。
「……! トラック!?」
不意に下り坂の角から大型トラックが飛び込んできた。
何とかよけようとするが………
「な!? ブレーキが…! うわああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
土砂降りの雨の中、滑らないはずがない。
車はスリップしたままトラックと接触し、彼は車ごと吹き飛ばされた。
………と思われたが、彼は壊れたドアから投げ出され、近くの雑木林に落下。
車は崖下にあるガソリンスタンドに落ち、大爆発を起こした。
車やガソリンスタンドそのものが跡形もなくなるほど吹き飛んだため、現夢は、彼は警察に探されることなく死んだ人として処理されてしまった。
(………頭が………痛い………
行かなくては………あの子のもとへ………
………?
あの子………?
誰のことだ………?
私は、
誰だ………?)
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「………………う………」
「………! 永夢! よかった………!」
エリは永夢を優しく抱き留め、嗚咽を漏らし始めた。
「ママ………どうしたの?」
「永夢、よく聞いて………パパが………!」
「………? ママ」
「どうしたの、永夢?」
「パパってだれ?」
彼は、永夢は父との思い出をすべて失っていた。
………だが、これは永夢にとって幸せなことだろう。
なぜなら、幼少期の子供ほど人が死んだときのショックは大きい。
バグスターウイルスに感染している永夢がもしも記憶を残しながらその事実を突きつけられていたら、彼は大きなショックで死んでいただろう。最悪であり、最高の奇跡が起こった。
「………お前が求めるものはなんだ?」
「………だれ?」
不意に、誰かが永夢に問うた。
それは、彼の中にいる、あの………………
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