仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
「堕ちたものだな。現夢」
自分の名前を呼ばれた現夢は周囲を見回すと、確認するように自分の体に指を向け、つぶやいた。
「ゲンム………それが、私の、名前………?」
「己すら見失ったか。いいざまだ。君は私の目の上のたん瘤だったからな」
かつての聖都大学科学科に、蛮野は先輩として、現夢は後輩として属していた。
初めは蛮野は現夢を駒のように使ってやろうと考えていたが、その目論見は大きく外れた。現夢は本物の天才だった。 蛮野やクリムが丸一か月使って考えぬいてようやく思いつくような革新的なアイディアを現夢はものの数分で考え付いてしまった。
現夢は若くして地位も名誉も約束され、研究費用の融資の話を何とかこぎつけるために実業家たちに頭を下げる自分と、その自分をを足蹴にした実業家がこぞって頭を下げ、是非ともうちに出資させてくれ。いやいやぜひうちに、と口々に現夢を担ぎ上げた。それほど恵まれているにもかかわらず、現夢はこういうのだ。
「大学と私個人で持っている研究所。それと親しい友人間の業者で今は十分です」
なぜ求める自分の許には来ないのに、求めてもいない方にすべての話がいくのか。
自分が10のことを覚えようとして5番目で止まっている間に、現夢は1000の事のすべてを理解し、あまつさえそれまで存在しなかった新たな1001のことまで考えている。
自分がこの世界で一番偉いというのに。
なぜあんな平々凡々とした奴が担がれるのか、蛮野は全く理解できなかった。
やがて蛮野は、自分の持つべきはずだったものを現夢に奪われたなどと言う訳の分からないことを考え始めた。現夢は現夢なりに、彼なりの努力の果てに得たものだというのに………
やがて時が経ち、クリムやその他のかつての研究者の仲間達から素晴らしい知らせが入った。
それは、憎き現夢の急死。
蛮野は狂喜した。ようやく自分の時代が来た。と。
だがそれも長くは続かなかった。あまりの蛮野の身勝手さにクリムは徐々に愛想をつかし、最終的にはすべての計画は破綻。蛮野自身も彼の息子に破壊された………
だが、彼は最後の切り札をまだ切ってはいなかった。
自身のラボに自分のバックアップのデータを用意しており、彼はまた蘇った。
しばらくの間蛮野は生きた心地のない日々を過ごしていた。
敵に見つかり、倒されること。それを彼は恐れていた。その時の蛮野はゴルドドライブの力を得ていたが、もうシグマサーキュラーもない。戦ったところで負けることは目に見えていた。
町中の監視カメラをチェックし、自分のアジトに警察が乗り込まないことを願いながら震える日々。蛮野のプライドは完全に踏みにじられていた。
だがある日、彼はカメラの映像の一部で妙なものを見つけた。
町の裏路地をさまよったり、森の中をふらついたりする妙な男。
そして何より、その顔。忘れもしない。まさにあれは死んだはずの現夢。
蛮野は現夢に会うことを決めた。もしかすると、と言う期待もあった。
そして、その期待が裏切られることはなかった。
蛮野が予想したとおり、現夢はすべての記憶を失っていた。
「私とともにきたまえ。寝床と食事を与えてやろう。代わりに君の頭脳をよこせ」
「う………あ……あり………がとう………ありが…とう………ございます………」
無様に蛮野の傍により、頭を下げる現夢。彼の歪んだ嫉妬心が満たされていく。
「………ウヒ、ヒャハハハハハハハハ!!!!!!」
蛮野の後ろを歩くのは、かつて彼が決して超えられなかった者。
だが、今の現夢は空っぽ。
記憶も、地位もすべて失い、社会の常識も忘れたまさに蛮野の理想の駒であり、ロボット。
この後、現夢は蛮野の許で大いに働き、
やがて世界を滅ぼしかねない超兵器を作るに至る………
お読みいただきありがとうございました。
これからのストーリーを考えてみると面白いかもしれません。