仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
スカイツリーの天辺で座っていると、不意に何かが昇ってくる気配を感じた。
下を見て見ると、学生服のようなものを着崩した少年がタワーを駆け上がって………
「………って………アイツ………!」
その少年は、俺の中にいる、Obiパラドクスのの記憶と、俺の記憶にいた奴だ。
ゲーム、ドレミファビート、ラスボス。ステップ・キッズ・キング・キッド。
元バグスター連合の副リーダーで、確かポッピーピポパポに恋してるんだった。
俺の中のObiパラドクスとは友人関係。
今俺の方に向かっている理由………不明。
敵か味方か、
殺す気か脅す気か、
ただの挨拶か、
自分の友を殺した奴への呪詛か。
思考の整理の中、結論を出すよりも先に目の前にキッドが迫ってくる。
目の前に着地したキッドは、一言だけ、「話は現夢から聞いてる」とだけ言った。
「……………お前もか」
内心、ほっとした。確かに俺はキッドの敵方の勢力だったし、あの時味方になりかけていたとは言ってもその後にObiパラドクスを殺したのはほぼ俺だ。
恨まれていないか、襲ってくるのら、俺には反撃する権利がない。理由も。
第一、俺の中にいるObiパラドクスがキッドへの攻撃を許さない。
俺も、仲間の仲間を傷つけることは看破できない。
「………いや待て、何でお前が生きてる?」
そこまで考えて、俺は致命的なことを忘れていたことに気が付いた。こいつ、死んでんじゃん。
バグスター連合と永夢達が初めて戦った頃、初めて永夢を倒したのは、このキッドだった。力こそないものの、俊敏さとダンスのセンスは天賦の者があり、永夢を下した。ハイパー無敵が破れることを誰も想定していなくて、当時はどうなるかと思ったのを覚えてる。
同じ時、別の場所でObiパラドクスは見ていた。キッドの大立ち回りを。「流石キッドだ」とたたえるとともに、彼は理解していた。多分、キッドは自分たちを裏切るだろうと。キッドはポッピーピポパポを愛してる。ポッピーピポパポが人間を愛すなら、キッドもそれを受け入れるはずだ。
こうして記憶をたどると、同時に二か所から見ることができ、別々の悲劇の存在を改めて理解した。………………で、
「お前が生き返ったのは、現夢の力か?」
「いや………ベイオウルフだ。あいつ、何の願掛けか、自分がプロトゲムデウスに変身するときに俺の「ドレミファビートガシャット」を自分の体じゃなくてヴァグヴァイザーⅡに差しちまったからデータが読み込まれて、復活したんだ。驚いたぜ………誰も、いなくなってるとは思わなかった………」
そこまで話されて、俺はようやく自分の記憶と今のキッドの違いに気づいた。目、だ。
あれほど爛々と輝き、優しげに、無邪気だった目は暗く、黒色に濁り、動かない。
まだ丸焼きになった魚の方が生き生きした目をしている。
「お前は………生きたいか?」
「………俺は………そうだな、何処に行く気力もない。生きる気も、たいして、無い………」
キッドが話した言葉は、そのまま、過去のObiパラドクスと同じ言葉だった。
「………でも、お前は生きてる。今、生きてる」
俺にとっちゃ、それがすべて。それがあれば、人間でも、ウイルスでも生きていける。生きているから生きていく。当り前を当たり前にやってほしい。
「お前は今生きてる。………だから、生きてくれ。死にたいんなら、それは死んだときに存分にやってくれ。眠りたいのなら、死んだ時に思いっきり寝ればいい」
「えっと……?」
自分の中の激情に任せすぎた要領を得ない言葉。自分が見てきた悲劇の死が多すぎて、盲目的に誰かの死が恐ろしくなってるのは、俺の悪いところだ。
「悪い………お前は今、生きてる。死んだ仲間も、皆きっとお前に生きててほしいと願ってる………と思う。俺もそう思う。俺の中のObiパラドクスもそう思ってる。………………それに、ポッピーピポパポも、きっと………」
死んだ人間は生き返れない。どれだけ望もうとも、それは変わらない。皆、それを知ってた。ある人は泣き、ある人は笑い、ある人は苦悶していた。
あの人たちが皆、満足していても、心の奥底で思った言葉は、俺の中にある。「死にたくない………死にたくないよ」
あの人たちの声が、聞こえる気がする。あの人たちを、俺は一生忘れない。彼らの無念は、俺が継ぐ。生きる者たち、全員の義務。それが生きることだ。
「キッド、俺と来い。俺の、仲間になってくれ」
「………俺が現夢のオヤジから言われたことは、俺が生き返った理由と、仲間たちの最期。そして、どうして俺たちが戦う羽目になったか………蛮野の野望………生に絶望して死ぬよりも、噛み千切るべき敵がいる………パラド、俺に協力しろ」
互い手を合わせ、固く握りあう。
たった二人だが、戦力は十分だ。
構成は二人、リーダーと、副リーダー。
新・バグスター連合の発足だ。
労働組合も最低二人の人間が必要です。
グラセフの「ヴァイスシティーストーリーズ」でも、主人公のヴィックと弟のランスがヴァンス=ファミリーを立ち上げていたのを覚えています。