仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE   作:桐生 勇太

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29話:失われて「いない」Bonds

 しばらく時間を置いた後、俺はキッドと別れ、CRへ向かった。

 

多分、永夢は俺を怒ってるだろう。目の前で、自分の親が殺されたんだ。恨まないはずがない。俺に親はいないけど、俺だってたぶん恨むだろう。

 

だけど、あのときのあの状態じゃ、現夢を助ける方法はなかった。せめて、俺が引き継ぐことしか………

 

 このことは、永夢には言えない。

 

永夢のために現夢が死んだことを知れば、永夢は自分を責める。

 

飽くまで、飽くまでだ。現夢は「世界を救うため」に行動し、死んだことにしなくちゃならない。

 

そして、俺に殺されたことにする。

 

相すれば永夢には、親を殺された哀しみよりも殺意と怒りが生まれるはずだ。その憤怒を糧に永夢が奮起できるなら、それでいい。

 

永夢と一緒にいられるのは終わりだけど、それで永夢が生きられるならそれがいい。

 

 永夢。俺を殺すために生きろ。それを、お前の生きる意味にするんだ。

 

蛮野も、サーキュラーも、俺が「壊す」人の心を失った悪しき人工知能『蛮野』を、俺が終わらせる。

 

「よう皆! 悪いな帰るのが遅れて!」

 

 CRの扉を開け、声を張る。場にいる全員が硬直し、それぞれの感情を込めて俺を見た。

 

なぜ、あんなことをして平気な顔でここに来たのか?

 

今までどこで何をしていたのか?

 

人を殺して、どうしてそんなに朗らかに笑えるのか?

 

自分の行いを自覚してないのか?

 

それぞれの目がそう言っている。

 

 その中で、一人、その疑問のすべてを抱えた男が俺の目の前まで来た。

 

「………パラド………どうして………」

 

「何が………「どうして」なんだ………? 永夢」

 

 やめてくれ、それを、聞かないでくれ。

 

「どうして………父さんを殺したんだ?」

 

「どうしてって言われてもな………別に大した理由でもないし………」

 

 違うんだ、永夢、聞いてくれ。お前のお父さんに、現夢に言われたんだ。託されたんだ。

永夢、君のためだ。皆、俺もお前の父さんも、お前のためにいるんだ。

 

そう言えたら、どれほど楽だろう?

 

「なんでだよ!パラド………! 僕は、お前が命の重大さを理解してくれたって、そう思ってたのに………! 何であんなことしたんだ!?」

 

「………………あのなあ、永夢、お前がどれだけ人の命を重く見てるのかは知らないけど、俺はバグスターなんだよ。お前ら人間の道徳や価値観を俺に求められても困るぞ」

 

 何か事情があったのでは、最後にそう願う永夢を突き放し、俺は初めて無理やり笑顔を作った。

 

「パラド………僕は………一生お前を許さないぞ………! 僕の命が続く限り、お前を呪ってやる………!」

 

「黙れよ、宝生永夢。 結果的にお前の親見殺しにしたの、お前だろうが。自分が安全な場所から見学することしかできないんだったら、初めから黙ってろ。

お前はいつもそうだな、永夢。本当の強さなんか持ってないくせに………理想と口だけは達者で………お前のゲームの力量だって、もとをただせば俺の技術だろうが。

お前自身、本当は何も持ってないんだ。まともに戦えない奴が俺に指図するな」

 

 それでいい。永夢、そうして生きろ。その先にお前の幸せがあるのなら、俺は………

 

「パラドオォ!!!!!!」

 

「話は終わりだ。永夢。……………今更だが、お前とはもう一度一緒にやりたかった」

 

 永夢に背を向け、CRに背を向け、約束に背を向け、真実に背を向け、本心に背を向け

 

俺はCRから出ていった。

 

こうして俺は、人を殺した恐ろしい、世界意に害をもたらすウイルスになった。




お読みいただきありがとうございました。

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