仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
しばらく時間を置いた後、俺はキッドと別れ、CRへ向かった。
多分、永夢は俺を怒ってるだろう。目の前で、自分の親が殺されたんだ。恨まないはずがない。俺に親はいないけど、俺だってたぶん恨むだろう。
だけど、あのときのあの状態じゃ、現夢を助ける方法はなかった。せめて、俺が引き継ぐことしか………
このことは、永夢には言えない。
永夢のために現夢が死んだことを知れば、永夢は自分を責める。
飽くまで、飽くまでだ。現夢は「世界を救うため」に行動し、死んだことにしなくちゃならない。
そして、俺に殺されたことにする。
相すれば永夢には、親を殺された哀しみよりも殺意と怒りが生まれるはずだ。その憤怒を糧に永夢が奮起できるなら、それでいい。
永夢と一緒にいられるのは終わりだけど、それで永夢が生きられるならそれがいい。
永夢。俺を殺すために生きろ。それを、お前の生きる意味にするんだ。
蛮野も、サーキュラーも、俺が「壊す」人の心を失った悪しき人工知能『蛮野』を、俺が終わらせる。
「よう皆! 悪いな帰るのが遅れて!」
CRの扉を開け、声を張る。場にいる全員が硬直し、それぞれの感情を込めて俺を見た。
なぜ、あんなことをして平気な顔でここに来たのか?
今までどこで何をしていたのか?
人を殺して、どうしてそんなに朗らかに笑えるのか?
自分の行いを自覚してないのか?
それぞれの目がそう言っている。
その中で、一人、その疑問のすべてを抱えた男が俺の目の前まで来た。
「………パラド………どうして………」
「何が………「どうして」なんだ………? 永夢」
やめてくれ、それを、聞かないでくれ。
「どうして………父さんを殺したんだ?」
「どうしてって言われてもな………別に大した理由でもないし………」
違うんだ、永夢、聞いてくれ。お前のお父さんに、現夢に言われたんだ。託されたんだ。
永夢、君のためだ。皆、俺もお前の父さんも、お前のためにいるんだ。
そう言えたら、どれほど楽だろう?
「なんでだよ!パラド………! 僕は、お前が命の重大さを理解してくれたって、そう思ってたのに………! 何であんなことしたんだ!?」
「………………あのなあ、永夢、お前がどれだけ人の命を重く見てるのかは知らないけど、俺はバグスターなんだよ。お前ら人間の道徳や価値観を俺に求められても困るぞ」
何か事情があったのでは、最後にそう願う永夢を突き放し、俺は初めて無理やり笑顔を作った。
「パラド………僕は………一生お前を許さないぞ………! 僕の命が続く限り、お前を呪ってやる………!」
「黙れよ、宝生永夢。 結果的にお前の親見殺しにしたの、お前だろうが。自分が安全な場所から見学することしかできないんだったら、初めから黙ってろ。
お前はいつもそうだな、永夢。本当の強さなんか持ってないくせに………理想と口だけは達者で………お前のゲームの力量だって、もとをただせば俺の技術だろうが。
お前自身、本当は何も持ってないんだ。まともに戦えない奴が俺に指図するな」
それでいい。永夢、そうして生きろ。その先にお前の幸せがあるのなら、俺は………
「パラドオォ!!!!!!」
「話は終わりだ。永夢。……………今更だが、お前とはもう一度一緒にやりたかった」
永夢に背を向け、CRに背を向け、約束に背を向け、真実に背を向け、本心に背を向け
俺はCRから出ていった。
こうして俺は、人を殺した恐ろしい、世界意に害をもたらすウイルスになった。
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