仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE   作:桐生 勇太

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35話:弄ばれた命達

花家大我視点

 

 目の前の相手をなんと名状すれば…と俺は歯噛みした。

 

腐った卵のような異臭が立ち込める体。頭にはモーターのようなものが突き刺さっている。人間のような腕が4本。足も4本。機械と人間をかけ合わせたようなそれは、改造人間と言うには余りのおぞましさだ。何より………

 

「コロ……シ………テ……オレヲ……セ……」

 

 何度も繰り返す言葉。初めは何と言っているかわからなかったが、聞き続けるうちに代替の予想はつく。

 

『殺してくれ。俺を殺せ』

 

 記憶が残ってるんだろう。恐らくはバグスター連合の元メンバー。手に持っている3つ重火器とは別に、右上の腕にはグラファイトのグラファイトファングによく似た武器。確証はないが、恐らく【ドラゴナイトハンターZ】のラスボスバグスターだ。

 

「俺に殺されてえのか………仲間のところに行きたいのか?そうだよな………」

 

 ここ1年で、俺の考え方は変わってきたと思ってる。

初めはバグスターとくれば俺は怒りと憎しみを感じた。全て駆逐してやろうと思っていた。 それなのにどうだ?俺は今、バグスター達の命をいいように扱った人間をぶっ飛ばすためにこの場にいる。

敵に外道を働いた輩が許せない。それだけのためにここに来た。

 

「辛いか?自分の意志で動いてるってわけじゃねえんだろ?お前の心は、まだそこにあるんだよな………? どこまでできるかわからねえ。でも、分かった。俺がお前を、殺してやるよ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

蛮野天十郎のメモ

 

・被検体 ラオロンについて

 

実験開始1日目。私が作ったバグスター達が手はず通りに自衛隊の襲撃を受けた。人間と共存しようと考えていたようだがこれでその気もなくなったろう。騒ぎに乗じて【ドラゴナイトハンターZ】のラスボスバグスターであるラオロンと【タドルレガシー】のラスボスバグスタースレイヤを回収。Galactic=Nova・circularだけでは警備に手抜かりがある可能性を考えたため、この2匹を使って新しい兵を作るとしよう。

 

 

 

実験開始から10日、相変わらず奴は暴れ、隙あらば逃げ出そうとしている。奴に自分の仲間達の体の中に強力な爆弾が仕込まれていることを教えるとようやく大人しくなった。これでようやく体をいじくれる。手始めにロイミュードの義体と融合を試みたが、拒否反応が予想値を超えていたため、腕と足が4本という歪な状態になってしまった。

 

 

 

実験開始から50日、身体の改造はほぼ折り返し地点へと達したが、いまいち決め手に欠ける。精神状態の変化が必要と判断し、試しに奴の仲間が殺されていくシーンを動画にして見せたところ、発狂した。

怒りで暴れだし、何と拘束具を引きちぎった。どうやら怒りと絶望が新たな力を呼び起こしたようだ。再度拘束して改造を進める。

服従させるためにスレイヤの記憶は消してしまったが、残しておいても悪くなかったかもしれない。そのままではラオロンは私に服従しないため、頭に無理やり機械を差し込んだ。高圧の電流のせいか、それとも無理やり服従させたからの拒否反応か、頭部から刺激臭が出始めた。意識ははっきりしているようで、「殺してやる」と私ににらみを利かせ続けた。

 

 

 

実験開始から60日。更なる身体能力の向上を図り、全ての仲間が死んだことを奴に動画付きで伝えた。残念ながら気がふれてしまったようで強さは変わらず、代わりに「殺してくれ」とすすり泣くようになった。

まあ結果は上々と言ったところだ。レベルの最終値はスレイヤは200、ラオロンが450だ。ラオロンはうるさいので、近くの手ごろな倉庫にでも叩き込んでおこう。侵入者が来ればあの道を利用する可能性もあるはずだ。




本当につらいのは、死ななければならなくなるより、生きることに価値を見出せなくなった瞬間。死ねば先立たれた人に合えるし、苦しみも痛みもなくなるから。

それでも生きようとする人は、無謀か勇気。

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