仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
楽しく読んでいただけるように心がけているのに、お手を煩わせて申し訳ありません。
鏡飛彩視点
………何が起きた?
「………!お、おい!!」
何故。なぜ自分から死ぬような真似をしたのか。意味が分からなかった。あれほど恨んでいた俺に、なぜ勝ちを譲ったのか。
「………マッスル化で上昇する攻撃力はレベル換算で元のレベルの10倍。お前のレベルは一時的に1500。一撃だが、レベル200の俺を殺すには十分な威力だ」
「なぜ自分から俺に殺されに行った!どういうことだ………うっ?」
奴の所へ向かおうと足を踏み出したが、変身が解けて俺はその場に倒れこんだ。勝ったとはいえ限界だったのだ。立つ力が残っていないことに全く気付かなかった。
「俺は………お前が憎い………大嫌いだよ………」
奴は、スレイヤは立ち上がり、右手で腹を抑えながら小姫の元へ歩いていった。
まさか、間違った記憶を植え付けるつもりなのか、反射的にそう思った。
「ま、待て!」
「安心しろ。今更ずるはしねぇさ………」
スレイヤはしっかりと青い電極を掴み、小姫の腕に優しく、指輪でもはめるようにゆっくりと刺した。
「勇者ブレイブ………いや、鏡飛彩。俺はお前が大嫌いだ。お前はあの時、あの子と小姫を死なせた。だから、俺が小姫を幸せにしたかった」
「ちょ、ちょっと待て、あの子………とは、誰だ?」
スレイヤは少し怪訝そうな顔をした後、「お前は知らなかったか」と一人で勝手に納得した。
「小姫のお腹には………子供がいる。お前の子だ」
「な………に………?」
「このことは多分、小姫本人も、お前以外の人間たちも誰も知らない。小姫も子供もバグスターだが………それでも変わらず、ここにいる」
信じられないと、俺は首を振った。普通なら、あの時CRにいた時点で妊娠していると分かっているはずだ。
「妊娠1日目………それが子供の死んだ時だ。妊娠5週を過ぎないと、超音波ではまだ胎嚢が見えないから誰も気が付かなかった」
「………知らなかった………」
いったい自分はどれだけ小姫を見ていなかったのだろう。自分が嫌になる。
「何度も言うが、俺はお前が大嫌いだ………だが、小姫が求めてるのは………やっぱりお前だ。お前に任せる。お前が彼女を幸せにするんだ」
「………お前は、俺を殺す勢いで来ていただろう、どうしてそんなことを言う?」
スレイヤはしばらく俺をじっと見つめ、やがて口を開いた。
「お前と戦っているとき………いや、お前が立ち上がるたびに、小姫の顔が悲しげに歪んだ。分かってるんだな。記憶がなくても、自我がなくても、自分にとって一番大切な存在が小姫の中から消えていない。
それを見た時、俺の中から、お前と戦う意味が消えた。お前の勝ちだ」
スレイヤが掌を回すと、空中から二つの指輪が現れた。
「彼女にはめてやれ。お前の仕事だ」
咳き込んだスレイヤが、血のようなものを吐いた。体が透け始めていて、消滅するのは明白だ。
「………嫌なもんだな。世界で一番好きな女が、世界で一番嫌いな奴のものなんて………いや、これでいい」
………ここにも、いた。出会い方が違えば、仲間にもなれたかもしれない男が………
「見てろ?もし彼女を泣かせたら、地獄から蘇ってその首飛ばしてやる」
「………ああ。その時は………存分に俺を殺せ」
「………使え」
指輪と一緒に、「バッドレガシーガシャット」を渡された。
「………感謝する」
スレイヤがその時になって初めて…笑った。そして、完全に消滅した。
「………飛彩?」
………愛しい、声がした。
恋焦がれた、求め続けた声。
いつか、必ず取り戻すと誓った。
君の声が聞こえた。
「………小姫」
立ち上がって、走り出す。限界を超え、立っていられなかったはずなのに、走れる。
やっと、やっと追いついた。俺のこの手が、君に追いついた。
状況を把握できていない小姫を抱きしめる。
「飛彩………どうしたの? 怪我だらけ………」
どうなっているのか聞くよりも先に、先に俺なんかのことを気遣ってくれる彼女が愛おしくて、抱きしめる力が強くなる。
「小姫…渡したいものがあるんだ」
指輪を彼女に見えるように見せ、微笑みながらその言葉を告げる。
「小姫、愛してる。俺と、結婚してほしい」
小姫は驚いたように目を見開き、やがて破顔した。
「…はい…!」
ここまで、長く、苦しい道のりだった。
一度目は、失った。
二度目は、諦めた。
三度目に、追いついた。
ここまで、苦しく、辛い道のりだった。
たぶん、それはまだ続くと思う。
でも、未来に希望はある。
だから、願おう。
俺と小姫の未来が、幸せと希望に満ちているように…
願おう。
二人の、これから――辿る世界に願いを込めて――――
久々にいい話………と思いたい。
文句があれば指摘をお願いします。参考にします。