仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE   作:桐生 勇太

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41話:純愛ラプソディ

「よーしよし…いくらでも撃ってこい…」

 

 機材の山に転がり込むと、案の定大量の弾がこっちに飛んできた。

 

「頼む………うまくいけよ………!」

 

【BANG BANG CRITICAL FIRE!】

 

 床の少し剥がれかけているタイルに目星をつけ、足元に思いきり発射した。

 

「………よし!」

 

 予想道理に大きな穴が開き、その中に飛び込む。敵の位置は覚えている。その方向にもう一度決め技を放つ。

 

【BANG BANG CRITICAL FIRE!】

 

 即席のトンネルを作り、自分の勘を信じて外へ飛び出した。

 

「もらったぜ!」

 

 俺が飛び出した場所は、まさにラオロンの真後ろだった。この一撃に、全てをかけて………!

 

【BANG BANG CRITICAL FIRE!】

 

 それは、まさに発射の直前だった。俺は、大切なことを忘れていた。相手はドラゴナイトハンターZのラスボスバグスター。竜なら当然、尻尾がある。 不可視の速度で振るわれたその尾が、俺の脇腹に深くめり込んだ。

 

「ぐはっ…」

 

 吹っ飛ばされて俺は転がった。優に2~3mは転がった。回転が止まった俺の体に、ラオロンの大量の重火器の弾が俺のもとに殺到した。

 

「あ”ぁ---!!!」

 

 変身が解けた。燃え始めている白衣を急いで脱ぎ、通路の角に逃げ込んだ。

………畜生、痛え。………地割れのような大きな足音がこっちに近づいてくる………

立つ力もない。………死ぬのか。俺は。

 

………音が、聞こえる。足音だ。

 

軽快な音。それが素早く近づいてくるのが分かった。

 

瞼が重く、開けない。

 

華の柔らかい香りが、俺を包んでいる………ような、気がする。

 

………引きずられているのか、俺は?

 

……………………………………………………………………………………

 

……………………………………………………………

 

…………………………………………

 

………………………

 

………動きが止まった………

 

 じんわりとした温もりを持った手が、俺の額に触れた。濡れた布を、頬に充てられている気がする。一体………誰だ………?

 

「お…ま………え………エリーゼ………?」

 

 美しいドレスを着た令嬢が、そこにいた。

 

「おまっ!何でここにいる!?」

 

 意識がはっきりし始めて初めて、そのことの重大さに遅れながら気づいた。

 

「申し訳ありません。来ちゃいました」

 

 てへっと言いながらも、エリーゼの表情は硬いままだ。

 

「それよりも…………大我様、お体の具合はいかがです?」

 

「ああ………良くねえな………死ぬかもしれねえ………お前は早く逃げろ」

 

 エリーゼは俺を見ていなかった。目をつむり、恐怖と戦っているように見えた。

 

「大我様………あなたが、勝てる方法があるといえば、どういたします?」

 

「は?………そりゃあお前、乗るしかねえな。そんな話」

 

 この状況を脱するためなら、何だってできる。何なら寿命を半分やってもいいくらいだ。

 

「どんなことが起きようとも、後悔しませんか?」

 

「………………………………ああ」

 

 こいつがここまで真剣に聞いてくるなら、よっぽどの事なんだろう。俺は理解した気になって、頷いた。

 

「………………分かりました。では、そのガシャットを私に貸してください」

 

「………何をする気だ?」

 

 俺は訝しみながらもガシャットを手渡したが、エリーゼは無視した。

そして、急に妙なことを言い出した。

 

「時に大我様、この世で一番強く成長させる感情、何だかわかります?」

 

「………あ?」

 

「私が思うに………それは、「愛」です」

 

 そう言いながら、エリーゼはゆっくりと、強く、ガシャットギアデュアルβを胸に突き刺した。

 

「……………………え?」

 

 俺は、一瞬何が起きたのかわからなかった。そして、その重大性に気付いた時にはもう、手遅れだった。

 

「エリーゼ!!!」

 

 倒れた彼女を抱き上げた。苦しそうに、しかし薄く微笑んでいる。

 

「お前、どうして………」

 

「力が発動できなくなっても、私はラスボスバグスターです………私の力を貴方のガシャットに移せば、きっとお役に立てます………だから………」

 

 分からない。なぜここまで、こんなことができるのか。俺には理解できなかった。

 

「どうして………俺にここまでするんだ?」

 

「大我様、お慕いしております………」

 

 それは、理解せずとも、理解していたこと。だけど、俺は………

 

[マジむかつく!]

 

[あんたなら倒せるんでしょ?ゲーマーMを]

 

好きだといわれたその時、俺の頭に浮かんだのは別の少女だったから。

嘘は言わない。彼女の覚悟を、踏みにじれない。

 

「………………………俺は、お前を愛してない」

 

 それは、あまりにも残虐な言葉。だが、それを聞いた彼女は、優しく、美しく微笑んだ。

 

「もちろん、承知していますわ」

 

 そして、消えた。

 

それが、彼女の、リリム・シフォン=エリーゼの最期だった。

 

俺は、泣けばいいのだろうか?

 

泣く資格があるかどうかも、分からない。

 

ただ、一つ言えることがある。

 

俺の信念が、少し変わった。

 

「[全て]のバグスターをぶっ潰す」

 

その思いは、もう俺の中から消えていた。

 

「有難うな………もし俺が、バグスターを憎んでなかったら、ニコより先にお前に会ってたら、きっと俺は、お前のこと………」

 

 床に転がるガシャットが、光を放っていた。それはまるで、彼女の命の灯が()ったように見えた。

 

拾い上げて、固く握り締める。差し込む部分に、少し触れるか触れないか、キスをした。

 

【BANG BANG GENERATION!!!!】

 

 起動したガシャットの声は、よく聞いた女の声がした。




 急で驚いた方も多いかもしれませんが、前々から決めていたシーンの一つです。

大我のバグスターに対する嫌悪感を除くためにも、どうしても必要な回でした。
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