仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
「よーしよし…いくらでも撃ってこい…」
機材の山に転がり込むと、案の定大量の弾がこっちに飛んできた。
「頼む………うまくいけよ………!」
【BANG BANG CRITICAL FIRE!】
床の少し剥がれかけているタイルに目星をつけ、足元に思いきり発射した。
「………よし!」
予想道理に大きな穴が開き、その中に飛び込む。敵の位置は覚えている。その方向にもう一度決め技を放つ。
【BANG BANG CRITICAL FIRE!】
即席のトンネルを作り、自分の勘を信じて外へ飛び出した。
「もらったぜ!」
俺が飛び出した場所は、まさにラオロンの真後ろだった。この一撃に、全てをかけて………!
【BANG BANG CRITICAL FIRE!】
それは、まさに発射の直前だった。俺は、大切なことを忘れていた。相手はドラゴナイトハンターZのラスボスバグスター。竜なら当然、尻尾がある。 不可視の速度で振るわれたその尾が、俺の脇腹に深くめり込んだ。
「ぐはっ…」
吹っ飛ばされて俺は転がった。優に2~3mは転がった。回転が止まった俺の体に、ラオロンの大量の重火器の弾が俺のもとに殺到した。
「あ”ぁ---!!!」
変身が解けた。燃え始めている白衣を急いで脱ぎ、通路の角に逃げ込んだ。
………畜生、痛え。………地割れのような大きな足音がこっちに近づいてくる………
立つ力もない。………死ぬのか。俺は。
………音が、聞こえる。足音だ。
軽快な音。それが素早く近づいてくるのが分かった。
瞼が重く、開けない。
華の柔らかい香りが、俺を包んでいる………ような、気がする。
………引きずられているのか、俺は?
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………………………
………動きが止まった………
じんわりとした温もりを持った手が、俺の額に触れた。濡れた布を、頬に充てられている気がする。一体………誰だ………?
「お…ま………え………エリーゼ………?」
美しいドレスを着た令嬢が、そこにいた。
「おまっ!何でここにいる!?」
意識がはっきりし始めて初めて、そのことの重大さに遅れながら気づいた。
「申し訳ありません。来ちゃいました」
てへっと言いながらも、エリーゼの表情は硬いままだ。
「それよりも…………大我様、お体の具合はいかがです?」
「ああ………良くねえな………死ぬかもしれねえ………お前は早く逃げろ」
エリーゼは俺を見ていなかった。目をつむり、恐怖と戦っているように見えた。
「大我様………あなたが、勝てる方法があるといえば、どういたします?」
「は?………そりゃあお前、乗るしかねえな。そんな話」
この状況を脱するためなら、何だってできる。何なら寿命を半分やってもいいくらいだ。
「どんなことが起きようとも、後悔しませんか?」
「………………………………ああ」
こいつがここまで真剣に聞いてくるなら、よっぽどの事なんだろう。俺は理解した気になって、頷いた。
「………………分かりました。では、そのガシャットを私に貸してください」
「………何をする気だ?」
俺は訝しみながらもガシャットを手渡したが、エリーゼは無視した。
そして、急に妙なことを言い出した。
「時に大我様、この世で一番強く成長させる感情、何だかわかります?」
「………あ?」
「私が思うに………それは、「愛」です」
そう言いながら、エリーゼはゆっくりと、強く、ガシャットギアデュアルβを胸に突き刺した。
「……………………え?」
俺は、一瞬何が起きたのかわからなかった。そして、その重大性に気付いた時にはもう、手遅れだった。
「エリーゼ!!!」
倒れた彼女を抱き上げた。苦しそうに、しかし薄く微笑んでいる。
「お前、どうして………」
「力が発動できなくなっても、私はラスボスバグスターです………私の力を貴方のガシャットに移せば、きっとお役に立てます………だから………」
分からない。なぜここまで、こんなことができるのか。俺には理解できなかった。
「どうして………俺にここまでするんだ?」
「大我様、お慕いしております………」
それは、理解せずとも、理解していたこと。だけど、俺は………
[マジむかつく!]
[あんたなら倒せるんでしょ?ゲーマーMを]
好きだといわれたその時、俺の頭に浮かんだのは別の少女だったから。
嘘は言わない。彼女の覚悟を、踏みにじれない。
「………………………俺は、お前を愛してない」
それは、あまりにも残虐な言葉。だが、それを聞いた彼女は、優しく、美しく微笑んだ。
「もちろん、承知していますわ」
そして、消えた。
それが、彼女の、リリム・シフォン=エリーゼの最期だった。
俺は、泣けばいいのだろうか?
泣く資格があるかどうかも、分からない。
ただ、一つ言えることがある。
俺の信念が、少し変わった。
「[全て]のバグスターをぶっ潰す」
その思いは、もう俺の中から消えていた。
「有難うな………もし俺が、バグスターを憎んでなかったら、ニコより先にお前に会ってたら、きっと俺は、お前のこと………」
床に転がるガシャットが、光を放っていた。それはまるで、彼女の命の灯が
拾い上げて、固く握り締める。差し込む部分に、少し触れるか触れないか、キスをした。
【BANG BANG GENERATION!!!!】
起動したガシャットの声は、よく聞いた女の声がした。
急で驚いた方も多いかもしれませんが、前々から決めていたシーンの一つです。
大我のバグスターに対する嫌悪感を除くためにも、どうしても必要な回でした。