仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
詳細を知った俺は、初めて頭を抱えそうになった。
ゲムデウスに襲われ、エグゼイドはもう変身できるような状態ではない。
さらに、詳しくは分からんが「ズガイノウテイコッセツ」だとかいうものがあり、しかもそれが相当前の傷だというのだ。話を聞いてみたところ、エグゼイドはもういつ死んでもおかしくないらしい。と言うか、ブレイブの見立てでは今まで生きていたのが不思議だという。
時間稼ぎに残ったゲンムとレーザーは連絡が取れず、おそらく二人の生存は絶望的。
さらに研究所の崩壊の後、瓦礫を吹き飛ばしてゲムデウスが登場。やはり崩落程度で死ぬような奴ではなかったか………
[人類諸君!我が名はRe:ゲムデウス!お騒がせして申し訳ない!未だ仕留めきれずにいるプレイヤー、エグゼイドの居場所が知りたい!彼奴の居場所、知る者がいるならば疾く教えられたし!]
と叫んでいたことを、今まさにニュースの速報が騒いでいる。
「狙いは完全にCRだな………」
「それも、小児科医のみ………」
「キッド、あいつに接近してみて、どう思った?」
「………正直、俺とは別次元だな。この場にいる全員でもし相対することになったら、「どうやって一人でも多く生き残るか」を真っ先に考えたほうがよさそうだ。まあ全員死ぬと思うけど?」
全員が押し黙ってしまった。実際に戦ったことはないが、俺の中にはゲムデウスの力の片鱗がある。そのため、力はある程度分かっていたつもりだ。そして、その力は今のキッドと同等のはず。
ここまで力の差はなかったはずだ。
今存在しているゲムデウスは明らかにどこかがおかしい。
そもそもハイパー無敵にダメージを与えられるはずがないことや、ゲムデウスワクチンに抗体を得ているのも腑に落ちない。蛮野の改造と思えばそれまでだが、それではなぜ蛮野がゲムデウスの力を自分の一部にしなかったのかがわからない。
大前提である自分が死んでしまってはいくら強い兵器でも役に立たない。
これではまるで、制御できない力の暴走だ。
ならば、一体どこでゲムデウスはその暴走に足りる力を得たのか?
これは俺の想像でしかないが、多分本当は逆なんだ。
ゲムデウスの力を蛮野が生み出したのではない。きっと、ゲムデウスが蛮野の力を生み出したんだ。
恐らく、蛮野やハイパー無敵ソルティの力はゲムデウスの力のごく一部を利用したものだったのだ。蛮野は多分最初はゲムデウスを利用しようとし、その力の強大さを恐れたんだ。
だからバグスターウイルスの兵隊を作り、ゲムデウスを抑えられるだけの勢力を作ろうとしたんだ。
だが、それも途中段階で崩壊したんだろう。
蛮野や現夢が作ったハイパー無敵ソルティ、奴も相当の実力を持っていたが、大体エグゼイドと同等以上。残念だが10人、いや20人いてもあのゲムデウスには太刀打ちできないだろう。
エグゼイドの傷を見ればわかる。真横に一閃、通り抜け。
体のほかの部分に全く傷がないところを見るに、抵抗する間もなく切られたということだ。
それも背後ではない。切られた筋肉の歪みからして、恐らく真正面から。
正面から一撃、余計な攻撃は一切なし。たったの一撃で勝負を決めたのだろう。
海帝の時は自分を高めることもあって高揚していたが、ここまで相手の力が強大だと寒気を覚える。
いったいどうすれば………と思考をいろいろな方向に飛ばしていると、不意に声が割り込んできた。
「簡単だろ。永夢をゲムデウスに差し出せばゲムデウスも満足だ。それでいいんじゃね?」
何を無茶苦茶を言っているのか、何処の馬鹿が今の発言をしたのだと振り向くと、不敵に笑うパラドが立っていた。
「パラド………? 今のは………」
どんな冗談だ、と聞こうとしたが、それよりもパラドが先に言った。
「だからさぁ、こんな状態の
意識を失っているエグゼイドのベッドをバシンと叩きながらパラドが笑っている。
「ふざけるな!パラド!何を言ってる!?」
こらえきれなくなったブレイブがパラドの胸ぐらを掴み、掴まれたパラドは驚いていた。
「おいおいどうした!?こんな奴、もう役に立たねえだろ?こんなんじゃ戦えねえ。ただのお荷物だ。………………まさかお前、瓦礫の下からこいつの潰れた下持ってきて縫い付ける気か?
やめとけやめとけ。ぬいぐるみじゃねえんだから無理だろ」
俺は、ここまで急激に変化したパラドを、いまだに信じられずにいた。
「パラド………本当に、エグゼイドを、仲間を簡単に見捨てる気なのか………?
あの雨の日、俺に「お前は俺の仲間だろ」と言ったのは、嘘か………?」
俺には、とても信じられない。パラドが仲間を見捨てているこの状況が。
俺には、パラドがとてもまぶしく見えていた。仲間のために命を賭ける勇気を、俺に教えてくれた。
なのに………いったい、なぜ………
「待て待てグラファイト、お前勘違いしてるぞ?」
慌てた様子のパラドが俺の目の前に来て手を取った。
「元々永夢は俺を殺しかけたことがあるんだぜ?仲間と思ったことなんてねぇよ」
………!違う………!こいつは………俺の知っているパラドではない!
「手を放せ………俺は………お前には賛同できん!!」
掴まれている腕を払いのけ、俺は逆の手でパラドの左手を掴んだ。
――左手同士の握手にはあまりいい意味がない。
――敵意、決別――
「パラドクス、俺とお前が戦った時のことを忘れたのか?あの時のお前は、俺という仲間と、お前自身の仲間両方を助けるために動いていた。あの時のお前のために俺は今のお前の仲間にはなれない」
パラドは俺に言った。「人間のために戦う、「俺」の味方になれ」と。
だから俺はその約束を守る。変わってしまったパラドクスの味方ではなく、変わる前のパラドの味方を貫く。
「へぇ………どうせ、このままそこにいる奴を助けようとしても、皆死ぬぜ?もっと賢くなろうとは思わないのか?」
「生憎、俺の尊敬する師匠も無骨で容量はよくなくてな。馬鹿は俺の目標だ」
互いににらみ合う。じっっと………
「了解。分かったよグラファイト。お前がそこまで言うなら、好きにすればいい。俺はもちろん逃げさせてもらうぜ。無駄死には御免だからな………じゃあな」
この際、パラドクスがなぜ変わったかを考えている暇はない。これからどうするかを考えるべきだ。
「………………あばよ、皆……ん?」
出ていこうとしたパラドクスの腕を、誰かが掴んだ。
「………永夢?」
それは、未だ目覚めずにいるエグゼイドだった。無意識に掴んだのだろう。気を失ってさえも。
「………………パラド………………行かないで………………」
一筋の涙を流し、エグゼイドはうわ言を言った。
そして、その腕はパラドクスに強引に引きはがされた。
「放せよ。未練がましい奴だな………諦めな。永夢。こうしないと生きれないんだよ」
俺は、この時、心の底からパラドクスを侮蔑した。
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