仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
彼は炎のように戦い、
星のようにきらめき、
夢のように消えてゆく
「先ずは一つ目だな………」
そう言って、俺は変な構えを取り、ふにゃふにゃと指を動かした。
「………………?」
ゲムデウスは困惑している。明らかに隙だらけの子供の構えに、気色悪い触手指。「?」となるのは当然だろう。
「ところでさあ、ゲムデウス」
「………なんだ」
違和感を感じているのか、警戒は怠らずに緊張した声で返事が来た。
「この世界ってのはさ………パズルみたいだよね」
「………?何を…ッ!?」
後ろからの気配に気づいたゲムデウスがとっさに盾で受け止めた何か。
「こ、これは………ゴーレム!?」
大きな人型の土の塊。その拳。
「バカな!一体………」
「これは、俺の、パーフェクトパズルの新能力。「物体の移動」の能力だ」
この世界に存在する様々な物質。組み合わせ、移動させ、分離する。物質をパズルのピースに見立てて組み替える新能力。
土を人間の形になるように「移動」させてゴーレムにする。
さらに、手の平をこすり合わせて………
「今度は………上か!」
天空に向けて盾を構えたゲムデウスに、雷が落ちた。
空中で原子をこすり合わせ、電気を生み出して落とす。
まさに森羅万象そのもの。
「ぐああ~~!!?」
盾で電気は防げない。ゲムデウスに感電し、鈍い光が瞬いた。
「バ、バカな………このような能力………なぜ………?」
「なぜ使わなかったかって?この能力は乱用できねえんだよ。使えて五分だからだ」
本当は、その場から俺が動けなくなったり、めっちゃくちゃ体力使うし神経削るけど、教えない。
「まだ行くぜ………空気よ、回れ!」
今度は一転して大竜巻。時速150Kmの風がゲムデウスを飲み込み、空中へ放り投げた。
「なあ!?………くそ!おのれ!!!……!?」
空中で体勢を立て直そうともがくゲムデウスに氷でできた槍が殺到した。
「バカな!?どこに水が!?」
「空気中の酸素と水素をちょっと借りてね」
酸素と水素を混ぜると水になる。さらにその水の分子の振動を止め、氷にする。そこから氷の形状を変異させ、槍にする。
小難しい化学式は知ってるやつと融合してるから楽だ。
「くそ! なんという権能だ!」
槍を盾や剣で叩き落としながらゲムデウスが呻いた。俺も驚いてる。正直、まさかここまで無茶苦茶をやれるとは思ってなかった。ただ………限界が近い。
「おのれ!こうなれば………土の太刀!
地面が真っ二つに割れ、大きな揺れが起きる。さらに、上空から30mほどの巨大な水魚が口を開けて飛んできた。地割れに巻き込まれながら、俺は操作を続ける。
「馬鹿野郎!土も水も俺の管轄だ!」
「!しまっ」
すぐに地面の揺れは俺に止められ、水魚も逆転してゲムデウスに向かって飛んだ。「しまった」と言う暇もなく、ゲムデウスが水に飲み込まれる。
「ごぼあ!!」
濁流に飲まれ、体を水浸しにしながらゲムデウスが落下した。
「げほっ………どうやら………打ち止めのようだな………?」
「ああ。流石にそううまくは倒れねえか………次だ」
武器を持たない俺を見て、ゲムデウスは自分も武器をしまって見せた。
「相手が素手と言うのなら、こちらも無手が道理。行くぞ………」
「良い心がけだな………よし、俺の二つ目の力を見せてやる。
俺のとっておき。ただこれは相応の覚悟がいる。だが迷いはない。
「行くぜ!代償強化其の壱発動!」
代償強化とは、簡単に言えば「攻撃力アップ。ただし防御力ダウン」ということだ。
何かを引き換えに力を手に入れる。その代償は様々。
「ぐ………く、くそ………」
急にその場にひざまずいた俺を見て、ゲムデウスがどこか落胆したような顔を見せた。
「代償の結果、動けなくなっては意味もない………失敗だったな!」
のろのろと歩いてくる俺にとどめの一撃を入れようと、ゲムデウスが俺に走り寄って思いきり鳩尾を蹴った。
「な………何………?まるで、月を蹴ったような………」
俺は、怯むどころか少しもぐらついていなかった。吹き飛ばされもしない。防御もせずに受け止めた。
代償強化其の壱、高重力化。
発動した者にのみ重力変異。
重力が強まり、素早く動けなくなる。
ダッシュ不可。ジャンプ不可。飛翔不可。
ただし、重さが増すため、打撃攻撃威力倍加。怯み無効のスーパーアーマー。
「せい!!!」
鈍重に振りかぶった拳が動揺しているゲムデウスにめり込み、吹き飛ばした。
「ぐおぉぉぉ………」
要するに、強化版鋼鉄化のエナジーアイテム。ただ、攻撃にひるまなくなるだけでダメージは通っているため、やはり別物。
「次!代償強化其の弐発動!」
「ぬう………!速い!」
代償強化其の弐、最高速。
発動した者にのみ重力変異。
低重力になり、体がふわふわと浮く。地球の重力の6分の1。
最高速と加速力が倍加し、超高速を出せる。
ただし、防御力半減。打撃攻撃威力低下。
一瞬でゲムデウスの背後を取り、乱打を叩き込む。ゲムデウスが振り向いて攻撃するときには、もう俺は逆側に回ってる。
「ぬあああ!そんなひ弱な攻撃が効くか!」
いや、効いてる。どんなに小さくとも、徐々に鈍い痛みへと変わっていく。
「ぐおおお!………パラドクスゥ………!見切ったぁ!!!」
俺が動く方向をゲムデウスが読み、拳を振り上げた。
「代償強化其の参!発動!…今だ!カウンター!」
ゲムデウスの拳が俺に触れた途端、俺の体がぶれ、逆にゲムデウスが吹っ飛んだ。
「ぐふ………そ……そんな………バカな………」
代償強化其の参。刹那の見切り。
「見切り」もしくは「カウンター」と言った際、4秒間硬直状態になる。初めの1秒で相手から攻撃が入れられた場合、ダメージを無効化し、同一の攻撃を倍加して相手に返す。
ただし、失敗した場合は3秒間動けない。その間に攻撃を食らった場合、威力に関係なく即死。
「カウンター、成功………!」
危ない。もう少し早くても遅くてもやられてた。
「いい攻撃だったぜ、ゲムデウス。そのダメージがお前の威力だ。………さあ、これが………最後だ!代償強化!其の捌!発動!」
代償強化其の捌。PERFECT FIGHTER
1分間攻撃力、速度、防御力倍加。スーパーアーマー。時間経過するほど効力が増す。ただし、一度使ったら同じ相手には二度とこの代償強化は使えない。
体に赤と青のオーラを纏い、俺はゲムデウスを見据えた。
「さあ、真正面から殴り合いと行こうか」
「ぐぅ………オオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
真正面からお互いに衝突し、クロスカウンターの状態になった。
ゲムデウスが少し怯み、そこに畳み込む。
「行くぞこの野郎が!!」
もう一発頬にぶち込む。だが今度は向こうも耐えた。
「敗けん!!」
腹部を殴り返され、俺の足がぐらつく。
「くそがあァ!!!」
腰を落とし、ゲムデウスの腰あたりを掴んで近くのビルの壁に激突する。
「ハァ!!!」
壁に密着するゲムデウスに頭突きを入れ、さらに投げ飛ばそうと頭を掴む。
「パラドクスゥゥ!!!!」
伸ばした手を逆に掴まれ、俺が投げ飛ばされた。
「ダァァ!!!」
すぐに立ち上がってこっちに走ってくるゲムデウスに体当たりをした。
「グオオオ!!!セイ!!!」
ゲムデウスの蹴りが腹にめり込む。俺も殴り返す。
「ハアアァァ!!!」
殴る。殴られる。蹴られる。蹴り返す。
「もっと来いよ!!!!」
ゲムデウスに上段から拳を振り下ろすが、躱され、逆に殴られる。
「クソがァ!!!!」
「はぐ……ゥ…」
すぐさま殴り返す。今度はモロに入り、ゲムデウスが悲痛に呻いた。
何とか向こうも拳を出すが、威力が弱い。
「なんだそのパンチは!!!!!」
顔面のど真ん中。目と目の間に拳を滑り込ませたパンチが一際大きくゲムデウスを空中へ飛ばした。
「ぐあああぁぁ……………………」
「ハァ………ハァ………時間……切れか………」
体から力が抜けていく。痛みがひどい。
………やっぱり、仕留められなかった。
「ハァ………死を覚悟…したのは、ハァ………初めて…の……経験だ」
手をつき、ゲムデウスが立ち上がる。
俺も、立つ。
「じゃあ………………最後の【とっておき】だ」
最期の攻撃は、至ってシンプル。
しかも、超強力。
俺自身を巻き込むくらいに。
「行くぜ………」
ガシャコンバグブレイガンを俺は拾い上げ、ゲムデウスも自分の盾と剣を構えた。
「最強最期の一撃だ………」
【巨大化】【マッスル化】【伸縮】【鋼鉄化】
使うエナジーアイテムは4つ。
ガシャットをバグブレイガンに刺し、体にマッスル化をつけ、ブレイガンの持ち手を伸縮で伸ばし、そのまま鋼鉄化で固めて戦斧にする。あとは、この武器に巨大化をつける。
「!? な………何という大きさだ…………!」
雲にも届くほどの、天を貫く戦斧。
ゲムデウスがあまりの大きさに圧倒される。
「バ、バカな………!パラドクス、お前もただでは………!」
「すまねえだろうな。だから何だ?………行くぞ!」
斧がゆっくりと傾き、ゲムデウスに迫っていく。
「ぬおおお!全の太刀!
【PERFECT FIGHTER CRITICAL REVENGER!】
ゲムデウスの焔、土、水、氷、光、闇、全ての技がデウスラッシャーに集まり、虹色の輝きを出した。
………………両者の武器が激突する。
「な…!?くっくそ!!!」
一瞬拮抗し、ゲムデウスの刀が弾かれた。
とっさにゲムデウスは盾を前に出してガード。
やがて、大爆発が起きた。
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………………………
………
「見事………その一言に尽きる。………刀をはじかれたのは、初めてだ」
「………………やっぱ無理か」
仕留められなかった。もう俺は動けない。
向こうは、かろうじて動けてる。
………………敗けた………
「じゃあ、最後の時間稼ぎと行きますか………」
【鋼鉄化】【鋼鉄化】【鋼鉄化】【鋼鉄化】
俺はゲームエリアにある全ての鋼鉄化のエナジーアイテムを集め、立ち上がって両腕を広げる。大の字の形になった。
「へへ………」
「………………そうやって、一秒でも多く時間を稼ぐと?」
そうだ。ここで俺がコンマ一秒でも多く時間を稼げば、その間に永夢が目覚めるかもしれない。そして、ゲムデウスの攻略法を考えるかもしれない。
俺は永夢を信じてる。永夢がかつて、俺を信じてくれたから。
「………これで終わりだ……パラドクス。
ゲムデウスの口から光が溢れ、俺の体を飲み込んでいく。
指先から、俺の体が消滅していくのがわかる。
なあ、永夢。
俺、償えたかな?
一生懸命、やれたよな?
俺、まだみんなと一緒にいたかった。
永夢とゲームがやりたかった。
ありがとな、永夢。
お前が俺の手を取ってくれたから………俺は………
激しい光の中、俺はゆっくりと目を閉じた。
【GAME OVER】
機械的な音声が、俺の命の終わりを残酷に――――
しかし、いたわるようにやさしく、
その時を告げた。
――体が熱い。
妙に眠い。
だけど、
――胸にぽっかり穴が開いたみたいに、
孤独感だけが、くっきりと――
これが、――死――か――