仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE   作:桐生 勇太

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道を決める者

 土砂降りの雨の中、私は一人、傘を片手に道端に立ち尽くしている。

 

その場から一歩も動かず、ただひたすらにその場にとどまるその姿は、異様そのものだろう。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

 不意に、通りすがりの女子高校生が不思議そうに話しかけてきた。どうやら道に迷って立ち尽くしていると思われているようだ。

 

「お構いなく。人を待っているだけですから」

 

 目を合わせながら形だけでも優しく微笑めば、初対面の人間程度なら簡単に騙せる。

 

「そうですか…」

 

 不思議に思いつつも、一応は引き下がった女子高校生が足早に去っていく。

 

 

 

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 雨は、勢いを増し続けていくばかりだった。道路がうっすら水溜りを作り、その上を走る車が蹴散らした水が吹き飛んでさらに大きく水溜りが広がる。

 

「あの、何かお困りですか?」

 

 次に話しかけてきたのは、会社員風の男だった。どうやらまたしても道に迷った馬鹿だと誤解されたようだ。

 

「いいえ。ただ人を待っているだけですよ。お気遣いなく」

 

 一言だけ告げ、すぐに目を離した。

どうやらこの街にはおせっかいな人間が多いようだなと、くだらないことを考えてしまう。

 

 

 ………………それにしても、遅い。いい加減もう学校は終わっている時間のはずだが………。

 

 

 

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 もう、いっそのこと別の方法でもいいかと思い立った時、遂にその人物は現れた。

 

「…あの、どうか、したんですか………?」

 

 消え入りそうな声が、聞こえた。

視線を落とすと、目の前に黄色い傘をさした少年が立っている。

 

「いや………人を待っていた(・・)だけだよ。大丈夫」

 

 そう………君を、ね………

 

「君が事故にあえば、或いはあの男は隙を見せるかもな。まあ、妻でもよかったが………」

 

「え?」

 

 目の前に立つ少年の背に手を当て、思いきり強く突き飛ばした。

軽く吹っ飛ぶような状態で少年の小さな体が道路へ転がり込み、ちょうど通りがかったトラックが少年をはねた。

 主から手を離され、行き場を失った黄色い傘が宙を舞う。やがて吸い込まれるように地面へ落下し、小さな落下音が雨音の中に木魂した。

 

「あ、あんた!何てこと………!大丈夫かい坊や!?今救急車を呼ぶから…!」

 

 大きな声で不快に喚き散らしながら懐から携帯を取り出して救急車を呼ぼうとするトラックの運転手にむけ、私は手をかざし、必要な作業を行った。

 

「………!もしもし!?子供がトラックと接触して…!はい!私の前方不注意でした(・・・・・・・・・・)前から飛び出してきた(・・・・・・・・・・)子供に気付けなかったんです(・・・・・・・・・・・・)!!はい……はい………場所は……………すぐ来てください!!!!」

 

 ………これでいい………

さあ、本命の場所に行こうか。

 

 もうしばらくすれば、彼の耳にも届くはずだ。愛する息子が事故に合ったと。

いつもは冷静沈着な彼ならば、ほぼ確実に車に乗った瞬間ブレーキに細工がしてあることを見抜くだろう。知、技、剛、速、柔、心、全てを持つ彼は、ずっと目障りだった。だがそれ故に、どうしても真正面から命を奪うにはリスクがあった。だが息子の一大事とあらば、平静を失うだろう。

 ………彼が人を愛してくれてよかった………

自ら弱点を作ってくれるなんてね。

 

 

 

 

 

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 山の中で、大きなトラックを静かに発進させた。ライトを点灯していなければ、カーブで向こう側から車が来ていることにも気づくまい。

 無人のトラックが速度を吊り上げながら坂を駆け上がり、狙いすましたかのようなタイミングで現れた小型自動車と接触した。

 

 吹き飛ばされた小型自動車は真っ逆さまに眼下のガソリンスタンドへと落下し、大きな爆発が起こった。

 

「………あぁ………晴れやかな気分だ」

 

 土砂降りの雨の中で、私はそう独り言をつぶやいた。

たぶん、私は彼のことを恐れていたのだと思う。あまりに大きすぎる彼の才能に。いつか万が一にでもこの神である私に届くほどの事をしでかすのではないかと恐れていたのだ。

 

満足げに燃え上がる車を見ると、私は大きな問題が起きたことを悟った。

 

運転席には、誰も乗っていなかった。

 

ならば、まさか車同士が接触する直前に脱出したというのか。私は大急ぎであたりを探した。

 

「[サーチ]」

 

 呪文を唱えるのと同時に、鬱蒼とした雑木林の中に生命反応。

 

私は急いで走り出した。

 

 

 

 

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――

 

 

「………………う………す、すみません、どなたか存じませんが、手を貸してはもらえませんか……?息子が重体で、どうしても病院に行かなければならないのです………」

 

 彼の姿を見た私はほっと胸をなでおろした。強く頭を打ったのだろうか。意識は朦朧とし、立つことすらできずに這いずり回っている。

 

「今の君ならば、殺すことは簡単だろう………だが、よりいい案が思い浮かんだ」

 

「………?」

 

 私は彼の………宝生現夢の頭にを手で包み、一言だけつぶやいた。

 

「[オーバーライト(記憶の上書き)]」

 

「う…っ!?く、くそ………お、お前………何者だ………?」

 

「私は君の死だ。そして、あらゆる世界を滅ぼす者」

 

「頭が………痛い………

行かなくては………あの子のもとへ………

………?

あの子………?

誰のことだ………?

私は、

誰だ………?」

 

 これでいい。生かしておけば、或いはいつか使えるかもしれない。

 

「さようなら、現夢君。またいつか会おうじゃないか。ただ………それまでに死んでくれるなよ?」

 

 こうして、私の計画がまた一つ前へ進んだ。

 

ああ、それと最後に………

死んでも生きててもどうでもよかったが、現夢の子供の手術は、無事成功したようだ。

 

ただ、父親に関する記憶を失っていたようだったが………まあ、あれはあれで使えることもあるかもしれないし、しばらく様子を見て見てもいいだろう。

 

「黎斗………待っているぞ………未来で、俺を殺せ」

 

未来に想いを馳せ、私は頬を緩めた。

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