仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
終わりと言うものの裏側にはいつでも始まりがあって、最初の時点で「いつかの終わり」と言うものは決まっているらしい。
地球は今、泣いていた。
終わりが始まったことを気づいているからだろう。
雲にたまった水が涙として地に落ち、様々な音を奏でている。
男が一人、雨の中に立ち尽くしていた。
男は「時」を待っている。自分が世界に干渉するタイミングを見極めているのだ。
今か今かと待ち続け、待ち続けた末にとうとう待ち望んだ「時」が訪れる。
ごぅん、ごぅんと鐘が響き、時は原点へ戻る。
大時計が零時を指した。
訪れた時に安堵しながら、男は怯えたようにあたりを見回した。そして周りに誰も居ないことを確認すると震える手を天へと突き出し、光の粒子を空へと放った。
時は2000年、0時00分50秒
世界に悪意が放たれた瞬間であった。
光の粒子は蠢き、藻掻き、やがて惹かれるようにして一つの建物の中へと吸い込まれていった。
【幻夢コーポレーション】
男はこの後に起こることを考えたのか、不気味に頬を歪めた。どこか高貴な笑顔だったが、そこには隠しようのない下卑た感情と、隠しきれない恐怖、そして怒り。さらにその二つに覆い隠されて喜びの感情が燻っていた。
「復讐だ」
男は一つ呟いた。
「復讐だ」
男は一つ呟いた。
「もう少しで終わる。あと2~30年の辛抱だ。それまでに必ず私は最強を手に入れる。力の根源を見つけ出す。そして………世界を滅ぼして、儂の復讐は終わる」
記念すべき西暦2000年1月の1日深夜0時00分、悪意が世界に放たれた。
人々は知らない。
その男によって世界が危機に瀕していることを知らない。
人々は知らない。
その男が世界に復讐しようとしていることを知らない。
世界の終わりと言うものの裏側にはいつでも始まりがあって、最初の時点で「いつかの終わり」と言うものは決まっているらしい。
より正確に言うなら、男が望む復讐は個人に向けたものとはかけ離れており、もちろん人間と言う一つの種や大地と言う小さな枠組みにも収まらない。
ただひたすらに世界に向けての復讐。そしてその感情は世界への憎悪ではない。
どこまでも、誰よりも深く冷たい復讐心と言う名の焔を内に秘め、男は雨の中、闇に消えた。
闇に消える直前、男は幻夢コーポレーションのビルを見つめ、中にいるであろう一人の少年に思いをはせた。
「黎斗………待っているぞ………未来で、俺を殺せ」
世界にバグスターウイルスが放たれた。
ざあざあ ざあざあ ぱらぱら ぱらぱら ぽたぽた ぽたぽた ぴちゃぴちゃ ぴちゃぴちゃ ぽちゃぽちゃ ぽちゃぽちゃ しとしと しとしと