仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
ひとつ呟いた。
何故そんなことを呟いたのかと言うと、恐らくそれはこちらの望む未来が遠のいている確信があったからだ。
「………おかしいな」
ひとつ呟いた。
視線の先には、三人で仲良く手をつないで散歩している家族がいた。
笑顔の父親、笑顔の母親、笑顔の息子………
真ん中で、両親の愛を一身に受ける男の子、檀 黎斗を見ながら、不思議そうに首を傾げる。
「………あの子供が未来で自称神を名乗るほど傲慢になるとは思えない」
こちらの知る未来と、視線の先にある家族が噛み合わない。
大体、父親である檀 正宗と檀 黎斗は敵対していたはずではないか。これでは、どう考えても仲睦まじい親子になる未来しか浮かばない。
このままでは黎斗はただの天才ゲームクリエイターで終わってしまう。それだけは何としても避けねばならない。あのまま優しく思いやりのある大人になられては困るのだ。
「………どこかで、歪ませる必要がある………か………」
心に歪みが生まれそうにないのならば、直接歪めてしまえばいい。
「………また手を加えねばならないのか………あまり干渉して刺激したくはないのだが………」
しかし、望む未来を得るためには仕方なし。意を決して歩きだし、家族の目の前でポケットから携帯電話を取り出すし、わざとらしく一緒に財布も引っ張り出した。
携帯にばかり気を取られる道化を演じながら一緒にポケットから引っ張り出した財布を落とした。
道化を装い、そのままメモ片手に番号をかけるふりをしていると、ズボンのすそを引っ張られた。檀 黎斗だ。
「おや? 道に迷ったのかい? 坊や」
我ながら気持ち悪い作り笑顔だが、堂に入ったものだ。笑顔を向けると、黎斗はおずおずと財布を目の前に差し出し、「おじさん…これ…」と話す。
「それは………私の………?」
落としたことに気が付かないわけがないだろう。バカな奴め。
「ありがとう。君のおかげでおまわりさんに迷惑をかける未来が無くなったよ」
そう言いながら努めて優し気に財布を受け取り、その様子を少し離れた場所から微笑ましそうに見ていた両親…檀 正宗と檀 櫻子を見やる。
「この子のご両親ですか?」
「ええ。あなたが落とし物をしたことに息子が気付いてよかった」
「思いやりに溢れた素晴らしいお子さんですね」
吐き気を催すほどの言葉だが、言わねばなるまい。こんな程度の屈辱で未来が定まるのならば安いものだ。
「親ばかと笑われるかもしれませんが、私の会社でゲームの企画をどんどん出してくれる、自慢の息子です」
「本当にどうもありがとうございました………坊や、本当にありがとう…またね」
手を振って家族の横を抜ける。すぅっと………ごく自然に、母親とわずかだが肩が触れた。
一瞬触れられれば十分だ。
肩口を通して呪いを飛ばす。
愛する母を失い、黎斗の心は歪むだろうか。
「お母さん! どうしたの!?」
「櫻子、大丈夫か!?」
確かめるように振り向くと、案の定母親が倒れ込んでいる。
「なっ…!? た、大変だ! 救急車を!」
わざとらしく慌てて見せ、携帯で119に通報する。少しの間待っていると、救急車が駆けつけた。
………どうせ助からない女なのに、こいつらもご苦労なことだな。
「私も付き添わせて下さい。これも何かのご縁です」
「あ、有難うございます…さ、黎斗、お母さんは具合が悪いみたいだから病院に行くんだ。一緒に行くよ」
「う、うん………」
何が起きているのか分からないという顔だな………暢気なものだ。…いや、無知と言うのも、たまには救いになるのかもしれんな。子供のと言うのは面白い。
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「大変申し訳ありません…しかし、ここまで進行していては、現段階の医療では手の施しようが…」
「そ、そんな………」
母親に掛けた呪いは、笑えることに不治の病と判定されたらしい。元々手の施しようがない段階まで強力な呪いをかけたが、まさか誤解と言えどまともに病気と言う扱いに落とし込まれるとは思わなかった。
「あの………あの子は………黎斗君には………このことは………?」
医者が部屋から出て、正宗と二人きりになった時を見計らって声をかける。
「悲しませるでしょうが…すぐにでも伝えるつもりです。そして、残された時間を全て、家族で過ごそうと…」
「それは困るな」
「え? …ッ!?」
誰も居ない部屋の中、正宗の首を締めあげながら壁に叩きつける。
………そう、そうやって黎斗の心を大切に扱われては困る。「いい子」に育たれては不都合だ。
「あ、あんた…何を…がはっ」
「いいものをやろう、檀 正宗」
腕が光り、正宗の体の中に光が滑り込む。直後に正宗の身体がぼやけ、半透明になって点滅する。
バグスターウイルスに感染したのだ。
「おめでとう………君は世界最初のバグスターウイルス感染症の患者だ」
「バグスタ…ウイルス…?」
仕込みは完了だ。あとは最後の仕上げをするのみ。
「命令だ…【子を愛すな】」
「が、ぁ…!」
「【子を愛すな】」
「ぎぁ…ぐぅ…!」
「【子を愛すな】」
「ぐうぅぅ!」
これほど心に干渉しても、まだ息子への想いを断つことができない。本気で愛しているのだな。自分の息子、檀 黎斗を。
「重ねて命令する…【子を愛すな】」
だが、それこそが邪魔なのだ。正しく愛されれば、黎斗は善良な人間として育つだろう。それでは駄目なのだ。あの子にはやるべきことがある。そのためにも、早い段階で心を歪ませる必要がある。
最愛の母を失い、父からの愛も途絶えれば、黎斗は間違いなく歪むだろう。
「【檀 黎斗を愛すな】」
「私は…! わた、しは………!」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
「【檀 黎斗を愛すな】」
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「お父さん! お母さんは!? どうだったの?」
部屋から正宗を出すと、外で待っていたのか黎斗が正宗に飛びついた。しきりに母を心配する声をあげ、父に話しかける。
「………………ぃぃ」
「? ……お父さん?」
正宗はゆっくりと、己の息子を見下ろした。
「そんなもの、どうでもいい。母さんはもう助からん………お前は、ただゲームを作っていればいいんだ」
「おと、うさん………」
絶望的な表情を浮かべる黎斗。震える手で正宗の裾を掴むが、邪険に払われ、あろうことか父親に突き飛ばされる。
「新しいゲームの案を練れ。3日以内でだ」
それを言ったきり、振り返りもせずに檀 正宗は病院から出ていった。
「坊や、大丈夫かい?」
本当は、やるべきことを終えたのならもうここに居る意味はないのだが、黎斗の心が歪んだかどうかを確かめるのが最重要だ。助け起こして近くの椅子に座らせる。
「お父さん………」
檀 黎斗は泣いている。大粒の涙を流しながら。
だが、ただ泣いているだけでは駄目だ。悲しいだけで、その悲しみを下手に乗り越えられるのが一番困る。
愛してくれる母は早死にし、父親からは愛されない。
今まで芳醇に供給されていた幸せを突如すべて失ったなら、流石に絶望くらいはしてくれるだろう。
「お父さんは………お母さんの事が好きだったんだ………」
………………よもやこのガキ、母の助からない事実に父親が一時的に気が動転したとでも思っているのか? だとしたら、いくら何でも楽観的どころの騒ぎではないぞ。バカすぎる。
「お父さんは………ボクの事は好きじゃなかったんだ」
………おや、何だかいい方向に傾き始めたぞ?
「お父さんは………お母さんのために、ボクの事を好きな振りをしてたんだ………」
歓喜の感情が、体を満たす。
大成功のその先に辿り着いた気分だ。
確信を手に入れた。歪んだ、と言う程度ではない。
檀黎斗の心が、完全に壊れた。
恐らく気が付いていないのだろう。自分の心が壊れたことに。成功を確信し、すぐにその場から離れた。
「黎斗………待っているぞ………未来で、俺を殺せ」
あの様子なら、黎斗は必ず狂人として成長するだろう。
それを確信し、私は未来に想いを馳せた。