仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
あれから、30分以上たった。
なのに、決着は一向に付かない。
9対1と言う、完全に卑怯者と言われても文句が言えない状況なのに、Obiパラドクスは文句の一つも言わず、ただ黙々と俺たちを相手にしている。
俺を含め、全員息が上がっている。これが二回戦だからと言っても、いくら何でもヤバすぎる。
「おら…………どうした? 来いよ………!」
でも、向こうもかなり消耗してる。完全にとは言えないけど、いくつか攻撃も入った。
「………パラド、次で決めるぞ。これ以上消耗して、誰かが離脱したらそこから戦況の均衡が壊れかねん。一か八かだが、まだ俺たちが若干優勢な今が好機だ」
グラファイトの言葉にうなずく。これ以上続けると、誰かが死んでもおかしくない。
「相手の隙を作れ! そこで勝負だ!」
叫びながらグラファイトが走り出す。
グラファイトを抜かし、ブレイブがObiパラドクスに切りかかるが、逆に空中蹴りを叩き込まれてブレイブが転倒。グラファイトが切りかかる。日本刀の白刃がObiパラドクスの足をとらえ、ガシャコングローブを破壊した。
だが直後に持っていた斧に切り返され、グラファイトが倒れる。
エリーゼがガシャコンスパローで援護し、ポッピーもヴァグヴァイザーⅡで打つ。
が、当たらない。
新体操の選手もかくやと言う動きだ。
だが一発だけ、Obiパラドクスが持っていた斧に当たって斧を弾き飛ばした。
「………チッ………」
…………………限界………だ。 あいつもいっぱいいっぱいなんだ。
スナイプへと走り寄り、Obiパラドクスが拳を振り上げた。
「大我!!!」
ニコがエナジーアイテムの「鋼鉄化」をスナイプへ投げる。
ベストタイミングだ!
「させっかよォ!!!!!!」
…!?まさかっ!? こんなタイミングでチェンジを!
エナジーアイテムが空中で巡るましくその色を変化させる。
緑、赤、黄………そして、スナイプに当たった。
だが、俺は忘れていたことがある。
Obiパラドクスの能力は、飽くまで周りのエナジーアイテムとのチェンジということ。
でも、同じフィールドには同じアイテムも大抵あるわけで。
【鋼鉄化!!!】
「何!!!?」
それは、俺たちには最高で、あいつにとっては最悪の事態。
同じアイテムが戻ってきた!
Obiパラドクスは振りかぶった拳を止められない。
そのまま硬質化したスナイプを殴ってしまう。
「ぐっ……………!」
平べったい鉄の壁を殴ったことはあるだろうか? 当然拳はただでは済まない。
怪我は当たり前。悪くすれば骨折。
そして、Obiパラドクスの呪われた特性、被ダメージ倍化。
ノーダメージを保っていたあいつのライフゲージが半分まで落ちる。
「今だぁ!!! 畳み込め!!!!」
跳ね起きたグラファイトが走る。
ついに訪れた好機。ここを逃したが最後、敗けるのは100%俺らだ。
「紅蓮!爆竜剣!!!!」
グラファイトの剣を真剣白羽取りでObiパラドクスが受け止める。
なんて反射神経してやがる!
だが炎を纏った刀だ。Obiパラドクスの腕が燃え上がる。
「こんなもんか!?」
がら空きの腹部を蹴り飛ばされてグラファイトが吹き飛ぶ。
【キメ技! BANG BANG CRITICAL FIRE!】
【バグ技! 完全決着! 痛恨の一発!】
スナイプの弾幕を蹴散らし、Obiパラドクスがキックを見舞う。
スナイプが吹っ飛び、変身が解除される。
「全員で止めろ!!」
【キメ技! TADDLE CRITICAL FINISH!】
【【キメ技…RIDER CRITICAL FINISH!】】
【キメ技! MIGHTY CRITICAL FINISH!】
【キメ技…CRITICAL SACRIFICE!】
「紅蓮!!!爆竜剣!!!!!!!」
【ウラ技! KNOCKOUT! CRITICAL FINISH!】
全員が力を開放し、突っ込んでくるObiパラドクスを見据える。
「負けっかよおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
【バグ技! 決着! 痛恨の一発!】
俺を真ん中に全員が武器を一点に集中させたのと同時に、向こうの斧が激突した。
「わ!?」
「きゃあ!」
余波でまずニコとエリーゼが吹っ飛んだ。
「ぐわああ!!」
そこからさらにゲンムもやられた。
直後にポッピーも吹っ飛ぶ。
「ぐう………うおおおおお!!!!」
もうまともにせめぎ合ってるのは俺とグラファイト、レーザーに乗ったブレイブしかいない。
そのグラファイトとブレイブ達も徐々に後退し、ついに後ろへ飛ばされた。
後はもう俺だけ。
「おおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
「ああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
流石に向こうの技の切れもなくなってきてる。
ここで俺が負けたら全部終わる………!
直後に互いのブレイガンが鈍く光り、大爆発を起こした。
結果は引き分け。
俺の意識は、
遠のいて………
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昇っていく。
もしくは、
落ちていく。
不思議な、心地良い浮遊感。
直後に俺は何かにたたきつけられた。
直感で水の中に落ちたことを理解する。
………水は、嫌いだ。
死に繫がっているような気がする。
水面に上がろうと体を揺らすが、
無情にも俺の体はより深くへと潜っていく。
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ここは、何処だ?
俺は、誰だっただろう、
ぼうっとしてよく思い出せない。
見知らぬ場所に俺は立っていた。
目の前に仲のよさそうな三人の男女が寝転んでいる。
「夢っていやあ、俺もようやく夢が見つかった。世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに…みんなが、幸せになりますように…」
真ん中の一人は、そう言ってゆっくりと目を閉じた。
他人なのに、分かる。
この男の名前は、乾。乾巧。
戦いの果て、夢をようやく見つけ、叶えようとする間もなくこの世を去った。
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今度は、何処だ?
目の前には一人、男がいる。
場所は空中。
気絶しているのだろうか?
動かない。
現れたのは、赤い腕、
男をたたき起こし、
何かつぶやいた。
赤い腕は、割れたコインの半分になった。
この腕の名前は、アンク。なぜか、分かる………
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また変わった。
場所は、どこかの山だ。
銀色の仮面ライダーが、二人の子供に見守られて死んでいる。
「ねえ、どうしたの?」
「死んじゃったの?」
子供が声をかけるが、答えが返ってくるはずがない。
「大丈夫だよ。少し疲れて、眠っているだけだから………さ! パパのところにお帰り」
白い服の青年が、銀の仮面ライダーを抱き上げる。
「信彦………」
………そう、その男の名前は、シャドームーン。人間としての名は秋月信彦。
最後の最期で人間としての心を取り戻した、月影の王。
ナスカドーパント、ハートロイミュード、ホースオルフェノク……………数えきれないほどの、死の記憶。
沢山の死が、俺の中に現れては消えていく。皆人よりも、人らしく生きていた。
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そして、最後に俺が見たもの。
「守れなかった………ちくしょう………ちくしょう………!」
ひざを折り、涙で袖を濡らす、もう一人の俺。
消えた15の命。
Obiパラドクスの怒りと哀しみが俺の心に溶け込んでいく。
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そして、俺は目覚めた。
倒れている。
俺も、皆も。
そして、俺の真横で、
悔し涙を流し、
その場に倒れているObiパラドクスが目に入った。
「お前も………俺だったな」
そう一言だけつぶやいて、
俺は意識を手放した。
エグゼイドとハイパー無敵ソルティ以外は全員戦闘不能。
残るは両陣営のリーダーに託されました。
今夜7時、決着&第四部最終回!