仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGE 作:桐生 勇太
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ
第1話:さらばMUTEKIの騎士よ
永夢視点
ハイパー無敵ソルティが振ったキースラッシャーは僕の体を両断する直前で止まった。
………なんだ?
恐る恐る目を開けてみると、胸を押さえ、苦しむソルティの姿があった。
「ぐあッ………なんだ………これ!?」
目を凝らすと、何かソルティの胸が光ってる。なんだ………?
見たことがあるような気がする………
少し、二か月ほど前に………!
覚えが、ある………!
あれは………
あの塊は………!
「……………キッドの………胸の………爆弾………?」
思い出した。僕が初めてバグスター連合の副リーダー、キッドを倒した後に、見つかったもの。彼が死んだ後に活動を止めていた、あの、爆弾だ!
「なっ………!? なぜ…! そんなものが私の中に………!?
ぐッ………ぐああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
直後に彼の胸から光があふれる。稲妻がほとばしり、空気が焼け焦げた。
「いやぁ………素晴らしい! これまでご苦労だったよ!ハイパー無敵ソルティ!!」
聞きなれない声がした。声のした方向を見ると、いつかDrパックマンの事件の時に共に戦った、仮面ライダードライブが立って………………いや、色が違う。あれは………金色だ。
「やあ!エグゼイド!私の名は蛮野天十郎!ネットワーク世界の神だ!」
………何を言ってるんだ、こいつは。
「………ハイパー無敵ソルティが苦しんでるのは………あんたのせいか?」
「いかにも!
不測の事態に備え、自爆用の高威力爆弾が埋め込まれているのさ!」
!? な………に?
「初めはうまく人間への敵対心が埋め込めずに失敗したものと思っていたが………予想外に人間どもがクズを発揮してくれたおかげで大戦争にまで発展したよ! 想定通り………いや、想像以上の成果だ! 見事と言うほかないな!」
「どう………いう……こと…だ…!?」
「これは君たち仮面ライダーの戦闘データを採取するための実験だ。私が作ったバグスターを君たちが倒し、その戦闘データを得る。君たちのこれまでの戦闘は全て保存されているのだよ。ここまで実に充実した時間だった!あとは役目を終えた
なんて……………なんてことしやがる………!!!
じゃあ、ソルティ達がこれまで培ってきた努力は、命は………………
全部、
「その爆弾の中には大量の火薬と「死のデータ」が入っている! 楽に死ねるだろう………!
これで私の
さらば! 「被検体 D=13号.ハイパー無敵ソルティ」!君は実によく働いてくれた………! あの世があれば仲間たちとそこで今度こそ「平和で静かな毎日」を満喫するといい………!」
言いたいことだけ言って、黄金のドライブは消えた。
「くそっ………仲間たちの覚悟…………命を………!
畜生!!!!!!! 畜生ォ!!!!!!!!!!!!」
泣きじゃくりながらソルティが何度も地面をなぐりつける。
僕は手を伸ばそうとするが………
「お前に何ができる?」
いつの間にか僕の目の前には鏡があって、その中の僕が侮蔑の目を向けてくる。
「………野外にも出てくるんだな、俺の妄想は」
「お前はこいつの敵だ。お前の安い励ましや激励で何になる?」
「………………なにも」
「だろ? だったら放っとけ。この戦いはお前の勝ちだ。それでいいだろ?」
「………………でも、ダメだ」
「………は?」
「被るんだよ。何もできなくて、泣いてた僕自身と」
「お前なあ………いいか
「黙れ」
「………………」
「お前の指図は、受けない。僕はもう逃げない………そこを、どけ」
過去は過去。何より、あの子は僕に癒者になってと言った。あの約束に、願いに嘘はつかない。つけない。お前の指図は、僕は受けない………絶対に。
強引に鏡に手を突っ込む。水のように鏡に手が刺さり、向こう側のソルティに届いた。
「………何のつもりだよ、エグゼイド」
聞いたことのない、彼の口調。きっと僕と同じように自分がなりたい自分を演じてたんだろう。そんなところまで、僕と同じ。
「君を………助けたい」
それは、口をついて出た言葉。敗けた奴から、守られたいと言われる。
直前まで殺し合っていた相手に対し、ぬけぬけと。
自己満足一色の、偽善者のセリフ。
でもそれは、僕の本心で、
「………君の、笑顔を………取り戻したい」
………命は、救えない。
………でもせめて、笑ってほしいと思うのは、傲慢だろうか?
「エグ………ゼイド………」
僕の名を呼んだソルティは、泣いていた。
大粒の涙が、1つ、また1つと水晶のように落ちていく。
「友を………俺の帰りを待っているソシャゲバグスターの皆を………
頼む…………お願いします………!」
それは、かなうかどうかわからない願い。
もしかすると、もう蛮野が不必要とみなして殺された後かもしれない。
「………分かった」
僕がそう答えると、彼は最後に笑い、そしてゆっくり立ち上がった。
「ありがとう………ございます。さようなら。永夢さん」
直後に彼は大きく空中に飛び上がり、そのまま大爆発を起こした。
――――――――――――
――――――生きられなかった命があった。
初めは、もとからいた者たちと共存しようとして、
拒まれて、
諦めて、
戦う覚悟を決め、
正々堂々と、
戦う。
全ては、仲間たちの平和な未来のために。
――――――なにが、違う?
―――人と、どこが違う?
怪物にしては心が人間に近すぎる。
人間にしては強すぎる。
ただそれだけのことで、
彼らは平和に生きられなかった。
――――――どういうことだよ、それ?
戦いと言う名の、悲しみの果て、彼らは多くの仲間を失い、それでも勝利を信じ、
ついに勝ち、
――――――そして、すべて失った。
――――――初めから、死ぬべくして生まれた命。
そんなものが、この世にあっていいのか?
僕は認めない。
彼らが生きようと一生懸命に生きたこと。
世界中の人々が知らないとしても、僕が知っている。
僕が絶対に忘れない。
――――――僕は生きる。
生きて………必ずあいつを、
蛮野天十郎を………………倒す。
つまりは………こういうこと。
初めから彼らは何もこの世界には残せませんでした。
作られ、捨てられていく。
それが、彼らの生まれた理由。