くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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この小説はpixivに投稿していたものの再投稿になります。


くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 二の巻 その十一

「1000時、作戦行動を開始します」

 ウィーゼ少佐の一言で、《ぎっくり腰》作戦の戦端は開かれた。

 大川ともう一人いるフリーガーハマー持ちが一斉射撃の後、自分とウィーゼ少佐を除く一八名が一気に突っ込んでいき、同時に五号戦闘脚パンターを中心とした十人の陸戦ウィッチ達が、苛烈とも言える勢いでブラウシュテルマーに榴弾の雨を降らせる。

「少佐、それではこれからドーサとエミルの偵察に向かう」

 自分は、空中に停止して戦況を見ている少佐のそばについて、許可を求める。

「私は、貴女がこの作戦の成功のカギを握っていると考えてます。不本意なのはわかっていますが、どうか宜しくお願いします」

「距離が近いドーサとエミルを偵察後、いったん補給に戻り続いてバーサ、アントンの偵察を行うつもりだが、それで構わないか?」

「ええ。それで構いません」

「了解した。これよりドーサに向かう」

 そう告げると、木製疾風のエンジンを全開にして、ドーサへ向けて南下する。

 同時に固有魔法を発動。

 さて、ドーサ周辺はどうなっているか……

 

 二十分程度で、ドーサ上空に差し掛かるはずだった。が、十分程で自分たちの目論見が崩れ去ろうとしているのを理解した。眼下に広がるその状況は、一目見ただけでは認識できなかったし、したくもなかった。

 ネウロイ達が北上していたのだ。数は、大型ネウロイが十、小型多数。

 エンジンのケツを叩き、できる限り上昇し、固有魔法を解除した。

「こちら初美、緊急事態発生。繰り返す、緊急事態発生」

 自分は、努めて冷静に報告する。

『初美少尉、固有魔法……』

「現在、カエサルとドーサの中間地点、高度五千。高度三千にて大型ネウロイ十、小型多数発見。偵察時にもこんな数のネウロイは見たことがありません」

 少佐の言葉を遮って報告を続ける。

『そんな……本当なの?』

「事実です。私見ですがドーサとエミルのネウロイが合流、北上中と考えられます。アントンとバーサのネウロイも南下していると考えた方がいいでしょう」

『そう……そうね。ちょうど今、カエサルの破壊に成功したわ。陸戦ウィッチは撤退! B隊は北上し、ネウロイを迎撃。A隊は私と一緒に南下、北上中のネウロイを撃破します』

「スツーカ隊を半数に分け、アントンとエミルの爆撃にむかわせることを進言します」

『そうね。ハンナはアントン、ミンナはエミルのスツーカ隊の護衛について』

『『了解』』

『初美少尉は、そのまま南下。こちらの攻撃と同時に奴らの最後尾に食らいついて、挟撃をしてちょうだい』

 幾条ものビームが、こちらにむけて発射され出した。奴らの索敵距離外なのに何故!

「そうもいっていられなくなりました。ネウロイの攻撃を受けてます。通信、切ります」

 そう告げて、《迷彩》を発動する。攻撃対象を見失ったのだろう。自分に集中していたビームが、あちこちへの乱射に変化した。

 が、ビームが当たれば居場所は知られ、集中砲火で一巻の終わりだ。

「さてはて、これからどうするか。言われた通り、背後に回るか。それとも……」眼下のネウロイを見下ろして「ここから奇襲するか。どちらにしても、このままではいずれジリ貧か。A隊がくるまで早くて五分。どうする」

 幾筋もの赤い光が、青い空を切り裂く。この長距離だ。当たるはずもないが、警戒はしておいたほうがいいだろう。

 そうやって、念のため太陽の中に隠れようとした瞬間だった。

 多数の小型ネウロイが急上昇してきて、手当たり次第にビームを掃射し始めたのだ。

 これはまずいと、空中に作り出されるビームの網目を潜り抜け、空域を逃れようとする。

 下から切り上げるように伸びてくるビームをなんとか縦になって回避すれば、背後から数本のビーム。バレルロールでかわしつつおってくるネウロイを追い越させた。

これで安心している暇はなく、上空より急速で接近するネウロイが正面に出てきて、それをコブラでなんとかしのぐ。

 しかし、努力もそれまでだった。その矢先、直上から一閃のビームが直撃したからだ。

「くっ!」

 シールドを使ってはじくと、それでおしまいだった。完全に居場所はバレてしまった。

《迷彩》を使っていても、集中砲火を食らっては避けられるはずもない。

 背中の伝書鳩を全部解放し、ホ103機関銃を構えて《迷彩》を解除しながら近間のネウロイを撃破する。

「こちら初美! ネウロイに発見された! こちらでネウロイは引き受けるから、すぐにドーサ撃破に向かってくれ!」

 この状態で生き残れるほど、自分に技術はない。

 そして作戦の成功率を考えたら、このまま自分が囮となってネウロイを引き寄せ、本体がスツーカ隊と合同でブラウシュテルマーを破壊したほうがいいだろう。

 自分は冷静に決断を下し、ウィーゼ少佐に伝達した。

『ふざけるな! 回避に努めろ!』

 ウィーゼ少佐の怒声がイヤホンから鼓膜を貫く勢いで飛んでくる。どうやら、自分の意見具申は彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。

『A隊全ウィッチ、全速! 初美少尉、絶対に生き残れ! これは絶対命令だ!』

『了解!』

 無茶だ。作戦の成功を優先すべきだ。

「しかし少佐!」

『うるさい! 我々は兵士である前にウィッチだ! ウィッチとして生き残れ!』

 この状況で生き残れとは中々に無茶を言うが、これも命令だ。

「了解しました、隊長殿」

 急上昇しながら、自分を追いかける小型ネウロイに、ホ一〇三機関銃の一二.七ミリ弾を浴びせる。

 一団となって追いかけてきたネウロイの三分の一をそれで撃破するが、その返礼としてビームの矢衾が自分を焼き尽くさんと飛んでくる。

「くぅっ!」

 硬質な金属音が幾度も響き、ネウロイのビームを弾いていく。その度にぐんぐん押されて飛行姿勢を崩される。

「う、ああっ!」

 シールドで一連の斉射はなんとか防げたが、姿勢を完全に崩され、失速してしまった。

 逆らわずに落下速度を利用して速度を稼ぐと、そのまま引き起こして上昇する。瞬間、上空の小型ネウロイと下方の大型ネウロイから挟まれる格好になった。

「くっ!」

 まさしく万事休す、だ。

 すぐに撃たれるだろう上下からのビームから耐えようと、魔力配分を可能な限りシールドに全て回した。

 その刹那、青空に赤い灯火がゆっくり、ぽつぽつと浮かび始める。

 これはもうダメだな。

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