くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞   作:高嶋ぽんず

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この小説は、pixivに掲載したものの再投稿になります。


くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 三の巻 その十五

 ペリーヌから、ネウロイの巣破壊の顛末を聞いてから二週間の時が過ぎた。

 その間に、フレイアー作戦によってグリゴーリの破壊も成功しーー501の時とは違い、戦訓として情報共有され、これからのネウロイの巣の撃破に貢献することだろうーー、各国もネウロイの巣の破壊について具体的な作戦の構築に入っているだろう時期に差し掛かっている最中、自分はあいも変わらず、ぶどう畑だの狩猟だのと復興のための農作業や狩猟に汗を流していた。

 鹿、猪、兎など、とれるものはできる限りとって、燻製にしたりベーコンにしたりした。普段、リネットさんからは料理を教わっていたが、そんな彼女でもこうした保存食の作り方は知らなかったらしい。

 なので、自分はリネットさんに保存食の作り方を教えたのだが、教師に勉学を教えるようで、なにやら不思議なおこがましさがあったものだ。

 一応、解体のやり方も三人に教えようとは思ったのだが、あの三人が腹わたを見て食欲を保てるか疑問だったので取りやめることにした。

 そして、いつも通りの農作業をやっていたときのことである。

 エルマン氏が、自分にこう話しかけてきた。

「屋敷を修繕している職人さんから、初美さんがペリーヌお嬢様と仲がいいと聞いたので、ちょっとお願いというか、相談をさせてほしいんだが……」

 ふむ。まぁ、元々温厚で人のいいエルマン氏のことだから、悪いことではないだろう。どのような要件なのか聞くだけは聞いておこう。そう思い、

「ペリーヌのことですか? 自分にできることであればいいのですが」

 それを聞いたエルマン氏は、嬉々としてこう言った。

「初美さんならそう答えてくれるとおもってました。我々領民は、お嬢様には大変良くしていただいてるのはご存知かと思いますが、そのお礼をしたいのです。ですが我々にはそのすべがありません。どうかお知恵を拝借させていただけないでしょうか」

 あー、そういうことか。ペリーヌのことだから、気にしなくていい、これは貴族の義務だと突っぱねるだろうな。もちろん、言い方は選ぶだろうが、さりとて、善意を突っ返すのはいかがなものかとも思う。説他人の好意に弱い彼女のことだから、説得すれば案外簡単に折れるのだろうが、それでは少々面白くない。

 となると、一つペリーヌを騙さにゃならんわけか。

「なるほど。それなら、ひとついい案があります。そのための手はずは自分が整えておきますが、やってみますか?」

「ええ! 是非に!」

 ここは、昨日、ブリタニアから戻ってきたばかりで大変だろうが、執事のあの方ーージャンポールさんにも骨をおってもらうか。

 しかし、ジャンポールさんを説得か。案外、ペリーヌを説得するよりこちらの方が大変かもしれないな。あの人も、領民たちの人のよさはわかっているだろうが、なにせ階級社会でずっと生きてきた方だ。

 自分が考えているこんな無法に協力してくれる方があやしいが、まぁ、とりあえず説得してみるか。

 

「ジャンポールさん、夜分遅くまでお疲れ様です」

 その夜、自分は屋敷の廊下に置かれている調度品の破損状況をチェックしていた執事のジャンポールさんを見つけ、そう声をかけた。

「おや、初美さん。どうなさいました」

 自分の呼びかけに、ジャンポールさんは花瓶を手にしながら、こちらに向きながら柔らかな口調で言った。慇懃無礼とかそのようなことはなく、温かみのある優しい声だ。

「ジャンポールさんは、クロステルマン家に仕えて長いのですか?」

 持っていた花瓶を小テーブルへ静かに置いて、何かを思い出すように遠い目をしながら、

「はい。先先代の頃よりお仕えさせていただいております」

 そう答える。多分、彼はその当時のことを思い出しているのだろう。

「では、ペリー……クロステルマン侯爵のことも」

 侯爵を呼び捨てにしてもう半月も過ぎ、すっかり癖になってしまっていた。言い終わる前にぐっと飲み込んで言い直す。

「はっはっは、ペリーヌお嬢様のことは、お嬢様が許した呼び方で構いませんよ」

 慌てて言い直した自分を見ておかしそうに笑い、自分がペリーヌと呼ぶことを許してくれた。長い間、貴族社会に生きてきただろう人の割には、随分と庶民慣れした方だ。

「申し訳ありません」

 汗顔のいたりだった。

 穴があったら入りたい。

「ペリーヌお嬢様が赤子の頃からお世話させていただいております」

「では、今のペリーヌは、ジャンポールさんの目から見て、どう思いますか?」

「お嬢様はよく頑張っておられると思いますよ。ただ、ちょっと気を張り詰め過ぎているとお見受けしますが」

 自分はしたりと頷いた。

「では、その負担、心労を少しでも和らげる腹案があるとしたら、ジャンポールさんはどうしますか?」

 そう自分が切り出すと、それまで優しかったジャンポールさんの目が真剣なそれにかわった。

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