THEIDOLM@STER 同級生のアイドル   作:くろねこ7

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8話

「いってきます」

 

 誰もいない我が家に一人そう呟いて家を出る。時刻は6時30分。なぜこんな早く家を出ているのかというと部活の朝練があるからだ。うちの高校は県内では割と強豪校なこともあってこうやって朝早くからの部活には多くの部員が参加している。みんな少しでも早くレギュラーを取ろうと思ってか1年生からでもかなりの数が朝練に参加しており、我が校では一番の盛り上がりがあるのがサッカー部だ。俺はその中でも1年から試合に出す機会をもらっているので朝練に出ないわけにはいかない。朝にはあまり強くないがサッカーのこととなれば話は別だ。眠気を押し倒してでも朝練には参加している。

 

 もう夏寸前ということもあってか、早朝だというのに差す日差しは暖かい。運動するには最高の天気と気温ということもあり、学校へと進む足も軽く感じる。

 そんな風に感じながら歩いていると、いつの間にか凜の家の前に来ていた。いや、別にわざわざ何かしらの意図を持ってきたわけではない。ストーカーじゃあるまいし。ただ単に俺の通学路の途中に凜の家があるだけである。それ以上でもそれ以下の理由でもない。

 

 わけのわからない、誰に向けたかもわからない言い訳を一人頭の中でしていると、何の因果か後ろから聞き覚えのある声がする。間違えるわけでもない、この家に住んでいる俺の同級生の声である。

 

「あれ、惣介じゃん。うちの前で立ち止まって何してんの。朝から変態みたいだよ」

 

「ちげーよ!!」

 

「うわっ」

 

 思わず叫んでしまった。完全にとばっちりを食らった凜はそんな俺を見てドン引きしている。これに関しては謝るしかない。ってか朝からって何だ朝からって。俺が昼夜は変態みたいな言い方しやがって。

 

「俺はこれから朝練だよ。お前は…ってなんだその恰好は」

 

 変態といわれたことにあせって気づかなかったが、今の凜はランニングする恰好、いわゆるスポーツウェアを着ていた。若干汗をかき呼吸も乱れている。朝からなんかエロい、ということもなくずいぶん健康的な雰囲気である。

 

「私はランニングだよ。体力つけてかなきゃいけないからね」

 

 あぁ、アイドルのためにか。そんなにきついのか。いやまぁある程度想像はしてたけど。

 

 ずいぶんと熱心なものだ。何事もそつなくこなしていた凜が努力を惜しまず、あまつさえ早朝ランニングとは。

 

「で、どうなんだそっちのほうは。順調なのか?」

 

「うーんぼちぼちってとこかな。まだ始まったばっかだし、いくらスカウトとはいってもいきなりデビューってわけにはいかないからね。今は基礎を叩き込んでるって感じかな。まぁ覚悟はしてたし現状に文句はないよ」

 

 未央や卯月もいい人たちだしね、と凛。なんとまぁ達観してるというかなんというか。もし俺が同じ立場だったらもうちょい不安に思っているのだろう。このマイペースさはさすが凜といったところだろうか。

 

「惣介のほうこそ。レギュラー取りなよちゃんと」

 

 俺がそんな思案にふけっていると逆にエールを送られていた。肩にかけたタオルで汗を拭きながらも、目線はしっかりと俺の目をみていて、不意にそんな視線に思わずどきっとなる。

 

「…当たり前だ。1年といわずこの夏の間にレギュラーとってやんよ」

 

 つい見栄をはってしまうがそんなことはどうでもよかった。凜の努力に負けないためにもそれくらいの目標は必要だろうと自分の中で思い込む。凜は俺のそんな返事に満足したのか、笑顔でうなずいて

 

「期待してるよ。お互い、頑張ろう」

 

 とだけいってそそくさと家の中へ入っていった。

 

 予期しない遭遇だったが、心は知らない間に弾んでいて、今すぐにでもボールを蹴りたい気分だった。自分も案外単純なものだと一人苦笑して、引き続き通学路をあるく。いや、今日は少し走って行こう。この弾んだ心に体を合わせるにはそれくらいがちょうどいい。今日はいい一日になりそうだ。

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