苔を背負ってキノコ狩り 作:カーテンのシャー
多くの生命が存在する森の中には、飢えた肉食モンスターや草やキノコなどで腹を満たす草食モンスター、モンスターに分類されない動物などが、今日も一日を生き抜
くために弱肉強食の世界を闊歩している。
それはモスも例外ではなく、生きるためにキノコを食べ続け子孫を残さねばならない。
しかしあるモスはキノコも食べず、だらしなく四肢を投げ出して寝そべっていた。全ての生命が力強く生きている中、そんな余裕をひけらかすモスとは…。
そうだよ、私だよ!
いや、別に余裕をひけらかしてる訳じゃないからね?私だって全てのモス先輩に習い、キノコを食べて生きようとしてた訳ですよ、ええ。
…やっぱり訂正しよう。私はこの世界を甘く見ていた。
食料を目の前にして我を忘れて、ランポスの群れに突っ込んだのはどう考えても私が悪い。
この世界はゲームであってゲームじゃない。遊び感覚で生きていれば、簡単に私の命なんて無くなってしまう。
さっきのランポスたちからは何とか逃げ切れたけど、それは運が良かったからだ。ランポスの胃袋さんにお世話になる未来だって、きっと存在しただろう。
今はスタミナ使い切って地面にのびて息も絶え絶えだけど、私が生きているという現実に感謝だな、うん。
もう少し休憩したら、食べ損ねたキノコを探そう…。
スタミナが完全回復したところで、早速キノコ探しに出発!
いや~、モンスターの体のおかげか、人間の時よりも明らかにスタミナ回復が早い。今考えればランポスから逃げきったんだから、スタミナは相当ついてるんじゃないだろうか。
…私って以外とタフ?
しかし私も(前世は)乙女の端くれ。タフって言うのは乙女的には喜べないかな~。
ん?豚声で喚き散らす乙女が何処にいるんだって?
おっしゃる通りですね、はい。
そんなことを言いながらも、今回は警戒心を高めてキノコを散策する。
すると、前回は見えなかった景色や生物たちが視界に入ってきた。
すぐ横を水が流れる細い道を進むと、私が最初に目覚めて以来本拠地にしているあの場所とは比べ物にならない程、緑が生い茂る広大な空間に出た。
大きな池もあり、横を流れていた水はその池から流れ出ている。
だけどとにかく視界が悪い。モンスターの声は聞こえないけど、潜んでいるモンスターなら音を立てないなど当たり前だ。
息を殺して、ゆっくりと進んでいく。
キノコの匂いはする。確実に近くにある。
そしてついに、念願のキノコ(大量)が姿を現した!
…なんかデジャヴを感じるけど、前回と同じパターンにはさせない!
キノコの元へ向かう前に、全神経を使って辺りを警戒する。
…モンスターの気配はしない。いまなら…!
私はキノコの前にまで辿りつき、無我夢中でキノコに齧りついた。
旨すぎるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
キノコが私の中を踊っている。いや、私の脳内をキノコが舞っている!!
口の中に広がる優しき自然の味が私の体を包み込み、今までの疲労・苦悩を洗い流す!
あぁ…、このまま天に召されてしまいそうだ…。
いやいや、召されちゃダメだ死んじゃうよ私。しっかりしろ私。
でも本当に冗談抜きでおいしい。空腹だったこともあるが、努力した上で食べる物はきっとどんな物でも最高級並みの食事となるんだろう。
前世の私に食事出来ることのありがたさと、料理を作ってくれた全ての人の尊さを教えてやりたい。
やばい、ちょっと涙が…。
その後しばらく、腹が満たされるまで私はキノコを食べ続けた…。
さて、お腹も膨れて上機嫌に本拠地に戻ってきた私ことモス。あ、ちゃんと警戒は怠らなかったよ。ドヤッ
当分の食事場はあそこでいいだろう。この場所も今のところ危険は無さそうだし、今のうちにやれることをやっておかねばならない。
えっと、やりたいことはけっこうあるから、少しまとめてみよう。
一つ:意思疎通する方法を考える。
二つ:このエリアの情報収集と活動範囲の拡大。
三つ:私自身のステータス向上
…うん、まとめてみると少ないね。内容は凄く重そうだけれども。
一つ目の意思疎通の方法、これは私が今最もしたいことだ。会話できなきゃ情報は集めにくいし、ハンターとかに私の素性を話せれば敵対せずにすむかもしれない。
でも私は喋れないのだ。
皆さん、覚えてますか?私がランポスに襲われた時の叫び声を。
「ブウヒイィィィィイィィイ!!!??」
↑これですよこれ。
考えてみれば人間の構造とモスの構造は全く違うから、喋れないのは当然なのかもしれない。
…まずこの世界は日本語通じるのか?喋れたとしても通じなきゃ本末転倒だ。
やっぱり意思疎通の方法もこの世界の情報がないと厳しいかもね。
と言うことで次にいこう。
二つ目のこのエリアの情報収集も必要だ。
食事場を見つけたものの、いつまでもあの場所が使えるとは限らないし、この場所の安全性も不安だ。
どんなモンスターがいるか、その巣はどこかも把握しとかないと安心して眠れやしない。
目が覚めたら胃袋の中でした♪、なんて落ち冗談じゃないからね。
エリアの情報が集まれば、自然と私の行動範囲も広げることが出来る。
これに関しては慎重に、毎日行うしかないだろう。
そして最後の三つ目、私のステータス向上。
フッフッフ…、私は先程まで、モンスターハンターにはレベルの概念がないと思い込んでいた…。
しかし私は思い出したのだよ!オトモアイルーの存在を!
私がやっていた3rdのレベル上限は確か20だったが、それでもレベルは存在していた。
そしてオトモだけじゃなく、ハンターの防具にもレベルがあったはずだ。
つまり、私も強くなれる可能性はある!
それに加えて、モンスターハンターにはクエストの難易度に下位・上位・G級のレベル分けがあった。
あれは同じモンスターや同じクエスト内容だとしても、モンスターがより大きくより強靭な場合に分類することで狩らせるハンターを選別する…、って言う設定だったと思う。
同じモスでもG級レベルのモスがいるかもしれない。
そしてそしてぇ…!私には他のモンスターが持っていない素晴らしい力がある…!
それは、人間と同レベルの知能!!
私はモンスターハンターの世界に対する、少しばかりの知能がある。
これだけでも、私が強大なモンスターに遭遇した時の生き残る確率はあがるはずだ。
普通のモスがやらないことを、私ならすることができる。
今の私はモスの中でも、最強のモスなのだ…!
ふっ、私をただのモスと思ったら、痛い目みるぜ…?
あらやだ、格好いい風に言ってもあんま格好良くないね。
そんなこんなでしばらく、私は体を鍛えながらこのエリアの探索をすることにした。
鍛えると言っても池の中で泳ぐ練習をしたり、岩に突進して攻撃力・脚力を鍛えたり、瞬発力を上げるために真横へ跳ぶのを繰り返したり…。
効果があるのか正直不明だけど、疲れはするから鍛えられていると信じたい。
だけど運動すればお腹は減る。訓練開始から三日たった今日も、空腹を満たすためにあの食事場に向かう。
私はまだ、自分の本拠地とあの食事場がある地帯にしか足を踏み入れていない。
体力付けてから探索した方が安全かなって思ったんだよね。
おかげであの時のランポス以降、モンスターやハンターには遭遇していない。けっこうこのエリアって安全なんじゃね?
そう思いながら、いつも通りキノコの食事を始めようとした時。
私は後ろから何かに吹き飛ばされ、宙を舞った。
「ブウヒイィィィィイィィイ!!!??」
痛っっっってえええぇぇぇぇ!!!!
そのまま地面に叩きつけられて更に痛い!
ぎりぎり足の骨は折れてないらしく、何とか立ち上がる。
私の目の前には、私を吹き飛ばした張本人ならぬ張モンスターがいた。
特に目立つ大きな白い牙、濃い茶色の体毛はその牙を支える太い胴体を覆っており、短い前脚を何度も地面に擦りつけている。
…こいつにはゲームでも散々邪魔をされたもんだ…。
ブルファンゴ…。
ブルファンゴは私を吹き飛ばしてもなお、鼻息荒く私を睨みつけている。
確かブルファンゴもキノコとかを食べるんだっけ…。だから攻撃してきたのか?
…いや、そんなことは今どうでもいい。けっこうダメージ受けたし、こいつから逃げ切らないと…ん?
ー私は吹き飛ばされたことで、頭も強く打っていたのでしょう。あんな馬鹿なことを考えた私をぶん殴ってやりたいですー
こいつ猪だし、コミュニケーション取れんじゃね?
フゴフゴ言ってるし、試しに話しかけてみよう。
「フゴゴ、ブヒ。ブゴゴ、ブヒギブヒヒ?」
(わたし、モス。あなた、ことばわかる?)
「フゴゴオオオォォォ!!!!」
「ブウヒイィィィィイィィイ!!!??」(二回目♡)
通じませんでした。まる。
いや、まあ当たり前だよね。生物の種類が違うんだもんね。
甘い考えをした私が悪かったです。ついでに、地面に叩きつけられて痛いです。
「ブグゥ、フゴオ!」
ちょっと待って!さすがにこれ以上攻撃されたらしゃれにならない!
それに私まだご飯食べてないんだよ!?
ここで逃げ出してしまえば、ここの食事場は使えなくなる。それだけはなんとしても避けたい。
…体はめちゃくちゃ痛いし、近くで見ると以外にブルファンゴ恐いけど…。
やってやろうじゃないの!ただのモスと侮るなかれえぇぇぇ!!