この間皆さまに考えていただきました。
拙い文章ですが最後まで見ていただければ幸いです
「〜♪〜〜♪」
部屋になりひびくオルゴールの音。と、心地よい歌声がする。視界はぼんやりとしてしまって私にはシルエットしか見えない。だが、誰だかわかる。
母だ。
窓から入る光の中、この狭い私の部屋でイスに腰掛けている。私の部屋は狭い。貰った広い部屋が妙に落ち着かなくて変えてもらったのを思い出した。
母は聖母様と言わんばかりの笑顔でこちらを見ている。大好きな母だ。ずっとずっとずっと…大好きな…
だが。
その姿に私は妙な違和感を覚えた。…口が動いていない?なら、誰が歌っている?そのとき、違うシルエットが横からすっと入ってきて、ザザザザザザザザーーーーーーーとノイズが流れた。
「…はっ!」
私は勢いをつけてばっとはね起きた。いつもの私の地下室。
湿った空気にずっと付けっぱなしの豆電球。そして乱雑に置かれた薬品と書類。
(…またあの夢か。)
この夢を見て何を感想をつければいいのだろうか?
(もう16なのになぁ。母様のことがまだ恋しいのかな。私は)
母は病気がちで私が7歳の頃に亡くなった。母は
「人間は人間らしく生きるべきだと思うの。無理に寿命を伸ばしてもいいことなんてないもの。でも、痛くない程度に逝きたいわねぇ。フフッ。レイア、私の生き方がね、貴方に影響を与えるというのなら、私は残りの人生を正しく生きたいのよ。うん…自分勝手なお母さんを赦してね。」
そう言って逝ってしまった。
父はこの時から少し…いや、だいぶ。鬱っぽくなってしまった。
母様は偉大な存在であった。
こんな弱者なんて見下しまくったふざけた世界にとっては、権力が全ての世界にとっては、とてもおかしな母様だった。でも、大好きだった。だからこそ母様との約束は絶対に守らなければならない砦であった。この約束を破ったら…私は死ぬ気でいた。
「人を殺さないこと」
(この約束…絶対…絶対に守るわ母様。)
母様の約束はしかと胸に響いている。
ホンモノのバケモノへ変わらないように、私が私であるために。
そんな決意を胸に、最後の仕事に出かけよう。
「シスター!!!!」
1人のショートヘアの少し薄汚れたワンピースを着た10歳の女のコが俺を呼んでいる。そう、俺はシスターだ。なんでシスターなのかって?
…成り行きだ…聞かないでくれ。でも、まぁ…。…この見た目のせいだ。長い茶髪に童顔、あと、子供って男性より女性の方がなんか安心できるっていうし。俺はわけありの子供を引き取ってるからな。
「シスター!!!!見てみて、ビーズで作ったの!上手いでしょ!」
その子が、紐にビーズで通したキラキラしたブレスレットを持ってきてくれた。結び目がちょっと汚いけれど。
「咲ちゃんは器用なんだね。すっごく上手いよ!誰にあげるの?」
「それはもちろん…シスターじゃないよ!」
俺じゃないんかい。
「嘘でーす!シスターにいつもお世話になってるからお礼!」
「わぁ、ありがとう!めちゃめちゃ嬉しい。」
「出てるよシスター。素。」
「あっ、」
「大丈夫だよ!変なこと言って騙して裏切る大人なんかより、素で接してくれるシスターの方が好きだよ!」
と言って満面の笑を浮かべる咲ちゃん。訳ありの子と言ったが、そのことは本当で誰かしらここにいる子は闇を抱えている。咲ちゃんは…なにか大人に騙された事があったのだろう。
「うん…ありがとう。」
その言葉に笑顔がこぼれた。
この話が終わると、
「じゃあ、僕は、ちょっと用事があるからね〜、昼ごはんの時間には戻るね。」
「「「はーい!」」」
と子供たちは元気よく笑顔で返事をした。
この廃れた広い教会の中、約10人の幼い子供たちの面倒をみている。この子達は、親を失くしたり、訳ありで逃げてきた子、そんな子が流れてきている。俺はシスターコスチュームの黒い布をなびかせて、例の部屋へ向かう。
俺の名前はない。
あだ名はいっぱいある。シスターとか、マリンスノウとか。
俺の出身は…
いや、なんにもない。
俺の出身なんて聞いたってなんの面白みもない。
それと、俺の目標は誰もが幸せに生きることの出来る世界を築くこと。
具体的に言うと、ユートピア側もディストピア側も同じ境遇となって、互いに手を取り合っていきるということ。身寄りのなかったこの子供たちに優しい世界にすること。子供たちが未来を前に挫けないようなそんな世界を作りたい。
でも、俺にはそうするための力がない。ユートピア側にクーデターを、仕掛けてもあの科学力を前に普通の人は死んでしまうだろう。
だから、せめて、ここディストピアで身寄りのない子供たちを引き取ってお世話をする、そんな孤児院を開いている。
そして、俺の裏の顔は子供たちには知られてはいけない。みんな、俺に失望するから。
そんなことを思っていたらチリンチリンと玄関のベルがなった。
「はーい、どちら様ですか?」
例の部屋から出て、とあるスイッチを持ち、玄関へと足早に向かう。
何かあったらこのスイッチを押せば銃乱射のトラップが発動する。
何かとは…俺がヤツらに見つかってしまうことだ。
ドアを開けるとそこには…
「誘拐犯です、まだ未遂ですけど。」
聞きなれたあの電話ごしの声。
白銀の髪、金色の眼。そして、ラフなパーカーに、ショートパンツ。目の前に涼し気な顔で現れたのは、白百合の方。レイア・ホワイトリリーだった。
「はっ」
多分、その時の俺はとてもとても驚いた顔をしていただろう。
スイッチを躊躇わずに押した。横の壁のくぼみに埋め込まれた銃がダダダダと音を立てて乱射されるが、俺は彼女が今日の仕事で最後なこと、そしてなによりその力のことを知っている。そう、銃なんて透かされるだけだ。
スイッチを押しても意味がない!そして、音がやんだ。弾切れだ。
俺は状況の悪さにはんば絶望した。
「…誘拐犯ってどういう…!?」
「そういうこと。」
そう言って彼女は俺の顔にシュッとガスを吹き付けた。
「なっ、これは…」
「ただの睡眠ガス。あなたの家にはトラップがいっぱいあるって、依頼主は言ってたからね。だから私が来たのよ。恨まないでね。」
そういった彼女の顔が次第にボンヤリとしてきて、俺は倒れ意識を失った。
…
ぼんやりと。ぼんやりと。その光景が見えてきた。両手、両足に冷たい金属の感覚がある。俺は十字に磔にされている?
目の前で
「はい♡これ。報酬ね♡」
「ありがとうございます。」
というやり取りが聞こえる。1人はレイア・ホワイトリリー。で、もう1人は…?
「モナ様。お連れしました。」
ガチャっとドアが開く音とともにドスの効いた声。男だな。これ。
「いやぁあああ!!!!おじさん、離して!離してぇえええええええ!シスター!!!!助けて!!!!」
その悲鳴で俺の目が完全に覚めた。
咲ちゃんだ。俺の孤児院の。ということは俺だけが誘拐って事じゃなかったのか。
俺が磔にされているこの狭い部屋には多くの機材があって…なんか見覚えがある。
わかった、ここは…この場所は!!あの…忌まわしい…!
そして、レイア・ホワイトリリーと、もう1人の女の顔が見えた。それは…
「!?!?」
かつての、仲間であった女の子だった。髪はツインテールをグルグルにして金髪で、白い肌に黒い瞳、三日月のピアスをつけ、ピンク色のフリフリなロリータと呼ばれるワンピースを来ている。
「あーら♡目が覚めた?
「…お前…」
「アハハハハ!?私ィ?
実はね月くんがいなくなってから、すんごい頑張ったんだよ?あの奴隷工場で!だからね、頑張った御褒美としてね、貴族の名前、貰えちゃったんだぁ♡」
「…」
「名前?名前はねぇモナ・アルキメデスって名前なの♡可愛いよね♡」
「モナ…。いや、なんていうんだっけ…P63222…?」
「その名前で呼ばないでッ!!!!あんたなんか、私のこと見捨てたくせに!一人だけ逃げたくせに!私はあの頃になんて…奴隷になんて…戻りたくない!」
「…」
白百合の方は神妙な顔もちでこのやり取りを聞いている。白百合の方なんて本来ならば、こういう世界とは無縁のはずだ。恥ずかしくて恥ずかしくて仕方なかった。
咲ちゃんを連れてきた男は何とも思わない面持ちでそこにいる。その理由はモナと俺にはわかっている。
これが奴隷としての成功品だからだ。
俺達は欠陥品、それが奴隷として生まれた身の俺達の真実。
俺はこのディストピアの奴隷工場にて、奴隷として生まれた。
奴隷工場はユートピアの貴族が建てた奴隷商売の礎となる場所で、ここである程度育てられてから奴隷たちは売りに出される。
もちろん、ここにいるモナも同じで、一生奴隷のはずだった。成功品ならばそれに何の疑問も思わないただの人形となる。そういう風にプログラムされていた。ただ、俺とモナは欠陥品であった。そういう風に人形として生きるのができない、ただの人間だったのだ。
縛られてりゃ逃げたいと思うし自由になりたいと思うただの人間
そう思うのは幼い奴隷として育てられている俺達の中では反逆に値した。看守の目を見計らって仲間を探した。誰か、誰か、感情を持ってる人間はいないのか!?と。
そんな時にモナ…P63222と出会った。彼女はただの施設内の掃除係で、俺は…死体処理係であった。
その時のモナは黒髪のショートヘア。前髪が目にかかって、ちょっと不気味に見えて、擦り傷だらけの手でひたすら掃除をやっていた。俺に向ける笑顔は咲ちゃんと同じくらい純粋で、どこか辛いのを必死に隠しているような…
それから2人はほぼ毎日、奴隷としての仕事が終わると秘密の通路を通って、夜に月が見える屋上まで来た。俺らは看守たちに、蹴られて殴られて傷だらけで、痛いと嘆くことさえ許されない。
痛いと嘆いたら、欠陥品だとバレてすぐに殺されてしまうかもしれなかったからだ。隣の工場の欠陥品が殺されたとすぐに電報が回ってきたから。
お互いの傷を見て、
「大丈夫?」「大丈夫、痛くないよそっちは?」「ううん、痛くない、」「そっか。」
こんなやり取りをした。
「今日は月が綺麗だね、三日月だ~!」
「そうだね。そういや、月が綺麗ですねって、貴方が好きですって意味らしいよ?」
「えぇー、好きだよ?月くんのこと。」
「月くん?それって俺の事?」
「そうだよ!月くん!お月様を見せてくれたから月くん!」
「月くん…か」
ありがちな、にしては少しセンスのない初めてのニックネームだった。
俺はモナに名前をつけてあげたかったが、名前をつけてあげれなかった。センスないし…
「いいよ、でも、私を呼ぶときは最初にねぇって呼んでくれれば、すぐにわかるんだから!」
と、おとなしそうな彼女はそう言ったんだ。
そして、多分俺が9歳になったころ、モナが6歳のころ、奴隷工場からの脱出計画を建てた。秘密の通路(天井の上にある。人1人がほふく前進で通れるようなところ)を通っていって、上手く逃げようと。でも、普通の道も通らなきゃいけない。その時は走れと。
計画は秘密の通路を通るとこまで順調に進み、あとは看守も通る普通の道を…!
「急げ!」
「わかった!月くん!」
!?1人の看守に見つかった!?!?
いや、あれは、あの足枷は奴隷…、涙を流しながら、顔をクシャクシャにしてそいつは俺たちを指さしてこう言った。
「奴隷が脱走したぞ!逃がさないでくれ!打つな!大事な商品だ!」
!?!?なぜ…奴隷がそんなことを?いや、今はこんなこと考えてる場合じゃない!
「…まずい!急げ、」
看守たちが、ドドドドと後ろから走ってくる音が聞こえた。
「あっ」
ドサッ。
その音に俺の景色はスローモーションになった。
後ろを振り返るとモナが転んでいて、看守達はニヤッと悦びの表情を見せ、モナが顔を上げる時には看守たちは、モナの体をがっちりと固めて、モナは絶望に満ちた表情を…
この光景は異様で、絶望に満ちていて、思い出すと吐き気がする。
そんな中、俺は近くの外へつながる窓へ体当りして、窓を割り、外へ逃げた。3階くらいの高さから飛び降りた。下は海。ドボンと体が沈み、逃げきったのを確信した。モナのあの絶望しきった顔を思い出しながら。
(ごめん…ごめん…)
幼少期の事を思い出すと、うぇっと吐き気が漏れた。
嬉しそうにモナがこちらを見つめる。
「ねぇねぇ♡月くん、あの後どうなったか、知りたい?」
下を向いたまま、フルフルと首をふる。だって、もう嫌な予感しかしない。
「教えてあげるね♡このモナ様が♡
あの後はね、殺されるかと思ってたの。でもね、ホントは違うの。私は欠陥品じゃなくて、レアモノだったのよ!」
…どういうことだ?
「確かに奴隷は感情を無くすように設計されてる…、でもね、感情があった方が仕事は少し失敗するけど、向上心があるからいい仕事するのよ♡」
淡々と述べるモナ。その言葉に俺は確かにと少し同意していた。
「私は逃げようとした。感情があるのがバレてしまった♡だからね、あの人たちはね私を上手く使うことを考えたの♡」
「だぁいすきな月くん…♡その人たちが私をどのように使ったか教えてあげるね♡
私は看守達とかに仇なす者達の拷問係だったの♡
まずね、私は貴族の地位を貰えることを条件に私はこの役を嫌々ながら引き受けたの♡爪をはいだり、指を切り落としたまま放置したり、身体の部位に釘を打ったり…目玉をくり抜いたり…、そして、気づいたの♡これは楽しいことなんだって♡人が痛さのあまり絶対するときの悲鳴…恐怖に顔をクシャクシャにさせる…それは生きている中で1度経験できるかどうか♡私は仕事という体でいつでも見れたのよ♡とても、そう、とても、甘美だったわ…♡」
そう言って彼女は今迄見たこともない素晴らしい笑顔を見せた。
話を聞いて俺はこう思った。
狂ってる。ああ…
あの優しかったモナは狂ってしまった。
好きでもない拷問をすることによって。
もしかして、あの、逃げる時の足枷の奴隷もモナと同じ状況だったのか…?アイツも感情がありそうな感じだったからな…
横にいるレイアはふぅとため息をついた。
「仕事終わったんで帰ります。」
「あら、はぁい♡白百合の方♡また、よろしくね♡」
「…まぁ、その時はその時ですね、それじゃあ。」
と言って、ドアを開けて出ていった。
「シスターァァァ!!!!」
と、叫ぶ咲ちゃん。無表情で咲ちゃんの服の首根っこを掴む男。
「モナ…咲ちゃんをはなせ!」
俺は声を荒らげた。咲ちゃんが泣き叫んで、もうこの状況には耐えられない。
(くそっ…この、俺の体が自由だったら!)
体をゆすっても、十字にはられた俺の体は枷から外れない。
「月くん♡それ、外れないわよ♡私の持ってるこの鍵じゃなきゃね♡」
くっ…まじかよ…
「結局何が目的なんだ、こんなことして…」
え?とモナがキョトンとして、そして狂ったように笑い出した。
「アッハハハハ♡月くん面白い♡まだ、気づいてなかったの♡
モナね、月くんのこと大好きなんだよ♡」
答えになってない返答に俺は顔を歪ませる
「だから、なんだよ。俺だけ誘拐すれば良かっただろ?」
クスッと笑ってコツコツとヒールを鳴らして彼女は近づいてきた。
「私ね、色んな月くんが見たいの。喜ぶ顔も、笑った顔もなく顔も…、そして。苦しむ顔もね♡」
「…なんだと?」
くるっと彼女はピンクのワンピースをなびかせ後ろを向き、男にこう言い放った。とても、嫌な予感がする。まさか…
「さて、この煩い女の子を調理してあげなくちゃね♡これからよろしくね月くん♡はい、じゃあ…その子を拷問部屋に連れていきなさい。」
「待て、モナ!!!!やめろ!やめさせろ!」
「嫌よ♡いい顔してよね、月くんは♡」
「やめろぉおおおおおおお!!!!咲ちゃんから手を離せぇえええ!!!!やめろぉおおおお!!!!」
「うわぁぁぁあん!!!!シスターぁああああ!!!!助けてぇええええ!」
咲ちゃんの声が悲痛に鳴り響く。
ガチャガチャと体を揺らす、さっきよりももっと強く。だがこの枷は俺なんかの力じゃびくともしない。
(ホントに、ホントにどうにかなんないのかよ!?このままじゃ、ホントに…!)
男が咲ちゃんを拷問部屋に連れていこうとガチャと鉄のドアを開くと、そこには
「!?」
白百合の方、レイア・ホワイトリリーが鋭い眼光で立っていた。
「あら?どうして貴方が?」
と、キョトンと言うモナに対してレイアは睨みながら。
そして吐き捨てるようにこう言い放った。
「ちょっと忘れ物をしたんで」