超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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遅くなり申し訳ございません!
書く時間があまりできなかったのと、知らないうちに凄い量の文を打っていたせいになります。

今回でアニメ2話分が終わります。


16話 諦めなかった先に

ブランを個室で寝かせた後、残っている俺たちは再び中庭に戻ってきていた。

執務室でロムとラムの居場所を突き止めたので、今はブランが戻ってきたらすぐに行けるように待っている。

ちなみに場所はスーパー二テールランドだった。去ったと見せかけて立て籠もっていたみてえだ。

 

「ねぇラグナ・・・今回、『蒼炎の書』は使わない方がいいんじゃない?」

 

「気持ちは有り難いが・・・そうも行かねえよ。

蒼炎の書(こいつ)』は大事なものを護るための力なんだ・・・それを腐らせて、後悔をしたくはない」

 

ネプテューヌに心配されたが、俺はそれを断った。相手が相手なのもあって、今回は封印するわけにもいかなかった。

ここで『蒼炎の書』を使わないなら、それは俺が「あんな思いをしたくない」。「大事なものを護りたい」。その想いで『蒼炎の書(これ)』を手に取ったことに反する。

『黒き獣』への進行具合がどうなのか解んねえのが懸念材料だが、今は気にしていられない。『黒き獣』になる寸前まで来ていたら流石に使うわけには行かないが、そんな様子は感じられないので平気だ。例え寸前だろうと無理矢理抑え込む・・・『イデア機関』がどうなってるか解んねえのは辛いが、やるしかねえ。

 

「『蒼の魔導書』では無く、『蒼炎の書』か・・・。

『黒き者』よ。『蒼の魔導書(それ)』が真なる『蒼』へと至ったのはいつ頃だ?」

 

「・・・『蒼の境界線』でテルミと『蒼炎の書』を賭けて戦って・・・それに勝った時だ・・・」

 

あの時、『蒼』の中でテルミは俺に「『お前』か『俺』のどちらかが真なる『蒼』・・・『蒼炎の書(ブレイブルー)』を手に入れる」と言っていた。

そして、その戦いで勝ったは俺なので、『蒼の魔導書』が『蒼炎の書』になったのもそのタイミングだろう。いや、そうとしか考えられなかった。

 

『・・・・・・』

 

「ああ・・・そうだった。悪いな。話せてないことが多くて。後でしっかり話すから、今は待っててくれ」

 

皆が呆然としていることに気が付き、俺は一言謝罪を入れる。正直なところ申し訳なかった。本当なら、もっとゆっくりと話したかったが、今回はそうもいかなかった。

『蒼』・・・。『境界』の最奥にあって、創造と破壊を司る根源の力・・・。

俺たちの世界における、あらゆるものの根源であり、『全ての可能性を可能にする力』だ。

境界の力が回帰する根源・・・。人の意識、『記憶』の回帰する場所でもある。

また、使いこなせれば全ての事象干渉を退ける『外周因子』にもなるし、世界全部を変えられる程大規模な事象干渉も行える。

俺はその『蒼炎の書(真なる蒼)』の力を使って、『悪夢』もなければ、誰にも邪魔をさせることない『可能性』に満ち溢れた世界を、事象干渉であの世界に生きる人たちに与えた。

 

「・・・貴様がテルミに打ち勝ったか・・・。貴様の目的がどうであれ、テルミを打ったことには礼を言おう」

 

「・・・まさかテメェに礼を言われるなんて思っても見なかったぜ・・・」

 

「同感だ・・・よもや、貴様に礼を言う日が来るとはな・・・」

 

お面野郎が俺へ礼を言ったことに、俺とお面野郎はお互いに率直な感想を述べる。

俺とお面野郎は敵対してはいたが、『滅日』を止める、『テルミを倒す』と言った共通の目的があったため、『エンブリオ』の中では途中から共闘していた。

・・・正確には、一応暗黒大戦時代でも共闘はしている。ただし、その時は実際に対面しなかったため、ある意味ノーカンに等しい。

というか、初めて暗黒大戦時代でお面野郎を見た時はマジで死ぬかとすら思った。あの時のお面野郎の力は尋常じゃなかった。

セリカやお面野郎は暗黒大戦時代から俺の生きる現代だから「ビックリするくらい弱くなってしまった」なのだが、俺の場合、経緯がその真逆のため「いつもと比べてあり得ないくらいの・・・またはいつも以上威圧感などを感じる」に変わる。

現代のお面野郎の力量ならやり方次第でまだ勝てる望みはあるのだが、暗黒大戦時代は何をやっても勝てないだろう・・・。それだけは分かる。

後、今気づいたことだが、ここにいるお面野郎は現代よりも僅かに威圧感が強い。恐らくは何分か力が戻っているんだろう。

 

「・・・テルミ?それって一体誰なの?」

 

「あいつのことを詳しく話すと長くなるから、今は後回しにするけど・・・。一言で言えば、俺たちの共通する敵だった奴だ・・・。そして、『あの日』にシスターやサヤを・・・」

 

「あっ・・・ごめんなさい。私・・・それを知らずに・・・」

 

「いや・・・気にする必要はねえ。元々、細かく話して無かった訳だしな・・・」

 

俺が簡単に答えると、気をまずくしたノワールが謝る。そこまで細かく話してないのもそうだが、あいつはもういない訳だし、責める理由にはならない。

ユウキ=テルミ・・・。またの名を『建速須佐之男(タケハヤスサノオ)』。暗黒大戦時代に『黒き獣』を倒した『六英雄』の一人であり、俺の教会での暮らしを壊した元凶であり、俺たちの世界の裏側で様々な暗躍をし、己の自由を手に入れるためにマスターユニット『アマテラス』を破壊しようとした男だ。

他にも、『蒼の継承者(カラミティトリガー)』になったノエルを『クサナギ』を精錬したり、それの前準備としてノエルに付け入りやすくしたり、邪魔になるジンを排除するためにツバキ=ヤヨイを利用したりと・・・自分の目的のためには様々な手段を駆使したド外道だ。

更に、奴は自分に向けられる『憎しみ』の数が多い、もしくは強いとその分だけ自分が強くなる能力を有していた。実際にテルミを倒す時は、『スサノオ()』としてのテルミに向ける目を、憎しみから英雄を見る目に変えなくてはならない。そのため、俺という名の『悪』を、『スサノオユニット』で一時的に『スサノオ』になったジンに俺事斬ってもらった。

そうすると、『スサノオ(テルミ)』は俺という『黒き獣』を打ち、『『黒き獣』から世界を救った英雄』になるため、奴の能力での強化は得られない。そして、『エンブリオ』の影響で、『資格者』であるテルミのドライブ能力は弱体化。『資格者』じゃない俺は特に弱体化していないため、様々な有利になる条件が揃い、勝利することができたのだった。

あの世界の悪夢を消し去ったのだから、奴は向こうの世界で姿を表すことはないとは思うが・・・。どうしてもテルミの死に間際に言い放った『永遠に苦しめ』と言う言葉が引っかかる・・・。あの言葉の意味も、いずれ確かめる必要があるだろう。

 

「・・・・・・」

 

「・・・あれ?ハクメンさん、どうかしたの?なんだか、いつもと様子が違う感じがするけど・・・」

 

「・・・然したる事は無い・・・テルミは私が滅すべきと考えていただけだ」

 

セリカがお面野郎に訊くが、回答は割とそっけないものだった。

確かに、世界を救った『六英雄』の一人が「自分の自由のために世界を壊す」って言って暴れたら、自分たちの不始末として止めるのは当然だ。

 

「ところで・・・さっき、ネプギアちゃんがあそこまで取り乱したのは、一体何だったのかしら・・・?」

 

「・・・わかんない。何がきっかけだったのかなぁ・・・?」

 

ベールはどこか不安そうに訊いてくる。しかし、ネプテューヌはそれに答えられない。

無理もないことだった。『黒き獣』に関しては俺とお面野郎。セリカの三人しか知らない上、俺しか聞けなかった・・・もしくは俺すら聞いたことのない言葉まであったからだ。

 

「さっきの流れからしたら、その『黒き獣』ってやつが理由だと思うんですけど・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・ネプギア?どうしたの?」

 

ユニが一つの推測を立てていると、さっきから黙り込んでしまっているネプギアに気づいた。

まるで俺たちが何を話しているのかわからないと言ったような顔をしていたので、ユニはネプギアに訊いてみることにした。

 

「ううん・・・何でもない。ただ・・・」

 

「ただ・・・何?」

 

「・・・ごめんね。私も、なんて言えばいいかがわからないの・・・」

 

ユニに訊かれて答えるネプギアの表情は、戸惑いと悲しげな笑みが合わさって見える感じがした。

その二人の様子を見た俺とネプテューヌは、同じタイミングでお互いの方に顔を向けた。

 

「ラグナ・・・もしかしてこれ・・・」

 

「ああ・・・あん時と同じだな・・・」

 

この中で唯一、ネプギアが俺を『兄さま』と呼んだ瞬間に立ち会っている俺とネプテューヌは、ネプギアの状況を理解できた。

ネプギアが飯を作ってくれた時と同じで、ネプギアは一部の記憶がきれいさっぱり・・・まるでその部分だけ抜き取られているかのように記憶がないのだ。

 

「ネプギア・・・お前、どの辺りから記憶がないんだ?」

 

「・・・『黒き獣』って単語を聞いてから、あの三人組を止めるのを決めたところまで・・・何も覚えていないんです・・・。

ううん・・・記憶がないと言うよりはまるで・・・一時的に交代させられた(・・・・・・・)ような・・・そんな感じがするんです」

 

『交代させられた・・・!?』

 

俺が訊いてみると、ネプギアは沈んだ表情で答える。その回答に、俺たちは驚きを隠せなかった。

いや、例外として、お面野郎は疑問に思う程度で、言葉に出すほどではなかった。むしろ何か考えているような感じに近い。

 

「二人とも・・・ネプギアがあんなに取り乱した事って前にもあった?」

 

「いや・・・あんな風になったのは初めてだ・・・ただ・・・」

 

俺はノワールに訊かれて答えながら妙な感じになっていた。

『黒いバケモノ』と言う言い方。俺のことを『兄さま』と呼ぶ。自分を捨てるのかと言う責め苦。それはまるで、『第一接触体(サヤ)』のようだった。

 

「じゃあ・・・ラグナさんを『兄さま』と呼ぶようになったのはいつ頃ですか?」

 

「毎回ってわけじゃないけど・・・初めてそう呼んだのは、大体一週間前だね。

正直・・・私も不安だよ。なんだか、ネプギアが違う誰かになっちゃう感じがして・・・」

 

ユニの質問に答えるネプテューヌは段々と表情が暗くなっていく。

ネプギアが初めて俺を『兄さま』と呼んだ日、最初は安堵したようなものだったが、俺がそう呼ぶことを許したとき、とても良い笑顔を見せたことはよく覚えてる。

ただし、それはサヤの感じがしていて、ネプギアが本心からそう言ったとは思えなかった。

 

「ネプギア・・・ネプギアは大丈夫だよね・・・?ちゃんとネプギアのままでいてくれるよね・・・!?」

 

「うん・・・大丈夫だよお姉ちゃん・・・。私は私だもん」

 

ネプテューヌは不安のあまりにネプギアに訊く。ネプギアは優しめな笑顔で答えるが、その目は不安を宿していた。

俺はネプギアの感じた感覚というものが何かはわからないが、それが不安にさせるには十分すぎる理由だった。

 

「みんな・・・待たせたわね」

 

「お・・・お二人は・・・見つかりましたか・・・!?」

 

そして、ネプギアが答えてから少しして、ようやくブランがこっちに戻ってきた。

そこには戻ってきたばかりなのもあって、方で息をしているミナの姿もあった。多分、ブランがこっちに来る途中で合流したんだろう。

 

「大丈夫だ・・・。場所は分かってるし、今から助けに行ってくる」

 

二人が言ってた『変態紳士』って言葉がよくわかんなかったが、どうやら怪我させるとかいうタイプではなく、精神的にキツイことをするタイプらしい。

それなら尚更、早いとこ助けて安心させてやらねえとな。そう思いながら俺は席を立った。俺と同時に、皆も席を立つ。

 

「ラグナ・・・帰ってくるよね・・・?」

 

俺たちは助けに行くメンバーを考える時、お面野郎と俺がセリカを無理させたくないと言ったことが通り、セリカは今回待機することになっている。

俺が『黒き獣』になる危険性を知ったが故に不安になっていたのが良く分かる。多分、無理にでも付いていきたいんだろうな。だが、やっぱり行かせることはできない。

 

「ああ・・・ちゃんと帰ってくるさ・・・。ただ、どうしても心配なら・・・」

 

俺は自身が着ていた赤いコートを脱ぎ、そして・・・

 

「これ、持っといてくれ・・・。取りに戻るから。大丈夫・・・今度はすぐに戻ってくる」

 

「ラグナ・・・」

 

それをセリカに差し出した。俺は暗黒大戦時代で停止時間を作ったときと同じく、セリカを納得させるためにコートを渡した。

あの時は結局取りに行けなかったが、今回はあの時と違って時間軸のずれとかによる心配は一切ない。俺が『黒き獣』にならずにロムとラムを助けて帰ってくるだけ・・・。あの時と比べりゃ圧倒的に簡単だ。

もちろん、セリカが戸惑わないことは無かった。再開こそできたものの、結局受け取りには行けなかったからだ。

 

「・・・分かった。信じる・・・。今度こそちゃんと取りに来てよね?」

 

「ああ。約束する」

 

セリカは少し間を置いて納得し、俺からコートを受け取る。そして、俺とセリカは短く約束を済ませた。

 

「悪い。待たせたな・・・そろそろ行こう」

 

「ええ。・・・ところで、貴方は?」

 

「我が名は『ハクメン』・・・『悪』を滅する者なり。我が使命に従い、手を貸そう」

 

俺の促しに同意したブランは、お面野郎の存在に気づいて訊く。それに対してお面野郎は体を動かさずに答えた。

 

「・・・ハクメンね。私はブラン。協力に感謝するわ。時間も惜しいし、すぐに行きましょう」

 

ブランはお面野郎に名乗りながら礼を言った。そして、ブランに従って俺たちは移動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

移動を始める際、『ハクメン』の脳裏にはラグナの言う『あの日』の光景が思い起こされ、その後に、自身の大切な人を死なせてしまった時の光景が思い起こされた。

ハクメンが見る二つの光景による共通点は、今自身が持ってる『斬魔・鳴神』とは違い、事象兵器(アークエネミー)氷剣(ひょうけん)・ユキアネサ』を手にしていることだ。

『あの日』の光景は自身はまだ幼く整った金髪をした少年の姿で、『ユキアネサ』に支配された状態でそれをを振るい、ラグナに危害を加えたり、教会にある結界を壊してサヤが連れ去られ、シスターが死に、ラグナはブレイブルーを手にする・・・自身は十二宗家の一つ、キサラギ家に入るきっかけを作り、あの幸せな生活が壊れた日だった。

もう一つの光景は、『あの日』から幾分か年月が経ち、自身は青少年と呼べる時期になった年が開ける少し前のことだった。自身の妹であるサヤと同じ気配を漂わせる存在と戦い、窮地に陥ったところに、キサラギ家に来てから、自身のことを兄と慕ってくれていた少女が割って入り、自信を庇う形で死んでしまったのだ。

その直後、ラグナとサヤと似た存在は融合をしながら『窯』に落ちていく。自身はそれを追って『窯』を渡るが、身体は右腕以外動かなくなる。

そして、『動かぬ体で余命を過ごすか。人であることをやめ、戦う道を選ぶか』を訊かれ、戦う道を選んだ。その時に自身の身体は自身の魂を宿したこの『スサノオユニット』となり、本来の名を捨てて『ハクメン』として生きることを決めた。

 

そこまでの思考を終えたハクメンは、再び自身の大切な人を失った日のことを思い出した。

ラグナの言う、『苦しみ』や『悲しみ』の大半は、ハクメンにとってはここにあった。それは、自身がこの姿となる『原罪』であり、最大の過ちだったからだ。

 

「(ツバキ=ヤヨイ・・・御前のような者を、増やしはせぬ・・・!)」

 

ハクメンは無意識のうちに両手をきつく握りしめて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「んっ・・・んん・・・」

 

「レ~ロレロ~・・・」

 

うす暗い部屋でロムは目を覚ました。自身の身体はロープで縛られていた。隣にいるラムも例外ではなかった。

目を覚ますと、ロムの視界には長い舌をなめずりしている、黄色い体をした巨大なモンスター・・・トリックが入った。

 

「ひぅ・・・いや・・・!」

 

「ロムちゃん・・・どうしたの?・・・あっ・・・!」

 

ロムはそれを見て怯える。ラムはその怯えた声を聞いて目を覚ますと、視界にトリックの姿が入り、ハッとした顔になる。

 

「アックックック・・・寝起きの幼女キターッ!舐めまわしちゃってもいいかな?」

 

トリックは興奮を押さえきれず、ロムに向けて舌を伸ばし、その体を舐め回し始めた。

突然であることもそうだが、トリックにされた行為自体にロムは悲鳴を上げずにはいられなかった。

 

「ちょっと・・・!ロムちゃんに何するのよっ!離れなさいっ!」

 

ラムは勇気を出してトリックを避難するが、トリックはならばお前だと言わんばかりに、にやけた笑みをラムに向ける。

そして、ロムを一度自分の左手に抱えてから今度はラムに向けて舌を伸ばし、舐め回し始めた。

 

「やっ・・・いや・・・!やめてーっ!」

 

トリックにとって、ロムとラムの悲鳴はご馳走でしかなく、興奮に従って二人を舐めまわすペースを上げた。

部屋の中にロムとラム、二人の悲鳴が響き渡る。

 

「トリック様ー。身代金の電話してきましたー・・・って、何やってるんすか!?」

 

その部屋に入ってきたガラの悪い女性は目の前で起きている光景を見て驚いた。

ただ身動きさせないようにするでは収まらなかったようである。

 

「癒しているのだッ!俺様のぺろぺろには治癒効果があるからなっ!」

 

「そ・・・そうっすか・・・」

 

トリックは自信満々で言うが、ガラの悪い女性はそれを見ても呆然としながら返事をするだけで精一杯だった。

 

「ああ・・・そうそう。『仕込み』の準備も終わりましたよ。

しっかし・・・信じて良かったんですか?あの魔女みたいな奴・・・」

 

「女神を打倒するための準備がしたいというのと、俺様が幼女をぺろぺろしたい。そしてお前のお金が欲しいの三つが見事に一致した結果だ。

それ以上も以下も無かろうよ」

 

トリックたちはとある人物と一時的な協力を結んでいた。内容としては「協力の証として『仕込み』を渡すので、女神たちのシェアを落とすような行動をして欲しい」だった。シェアを落とすこととして、今回はロムとラムを連れ去り、身代金を獲得することを選んだ。

そして、ロムとラムは女神候補生の中でも特に幼く、一般人の感性なら遊び盛りの時期なので、開いたばかりのスーパー二テールランドに来ない筈がないと踏んで網を張ったら案の定捕まえることができたのである。

協力した人物に渡されていた『仕込み』の準備も済んだため、後は盤石な体制で身代金が来るのを待つだけである。

『仕込み』以外何もないのが少々不明瞭ではあったが、数少ないチャンスだと踏んだトリックたちはこの協力を呑んだのだった。

 

「じゃあ・・・俺様はもう少しぺろぺろしてるから、先に脱出の準備でもしたらどうだ?」

 

「そうします。それじゃあまた後で・・・」

 

トリックは二人を舐めまわすのを再開する。その光景ををこれ以上見ないようにしようとガラの悪い女性は足早に部屋を出た。

部屋を出てある程度以上離れないと二人の悲鳴は消えなかったため、ガラの悪い女性は移動しながら頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「建設中のアトラクションの中に隠れてるだなんてね・・・」

 

二人を連れ去った奴らの隠れている場所を見てノワールは呟いた。

ロムとラムは、建設中のアトラクションの中にいることが分かっていた俺たちは、その建物の前にいた。

まだ新しいこともあり、一つだけ間に合わなかったみたいだ。建設中のアトラクションの中なら盲点になりやすい。

俺は術式の『迷彩』を使ってバレねえように移動していたから、こういうことに失念しかけていた。

 

「ラグナさん、大丈夫ですか?」

 

「ああ。これくらいはなんてことねえよ」

 

さっきセリカにコートを預けてきたので、俺は中に着ていた黒い格好のみでここまで来ていた。

少し寒さを感じるが、問題になるほどの寒さじゃなかった。ユニに心配されたが、動きの支障はなかった。

分担としてはノワールとユニ、ブランとお面野郎のペアが分かれて二つある抜け道に先回り。残った俺たちが正面から行くことになる。

こうなったのは、逃げられたら正面から行く俺たちは絶対に追いつけないと踏んだからだ。また、抜け道の一つは距離が遠いため、ブランとお面野郎は既に別行動を始めている。

ブラン達が正面じゃないのはなぜかと言うと、最後まで諦めて欲しくなかったからだ。正面から入って逃げられて諦めるよりは、行った先にこいつが来るから絶対に助けるという気兼ねで行く方がプラスだろうと言う意見が出たからだ。

 

「よーし・・・早速殴り込みに行こうっ!」

 

「待ってください。こういう場合は人質の救出が最優先ですわ。そこで・・・」

 

「・・・行くなら早く行った方がいいぞ・・・」

 

ネプテューヌが連れ去った奴を倒す気満々だったので、ベールが一度止める。

ベールが自分の提案を説明しようとしたが、後ろから不穏な気配を感じ取った俺がそっちに振り向きながら遮る。

そこには、体が大きな狼の姿をしたモンスター・・・フェンリルがいた。それも二体だ。

 

「フェンリル・・・!?なんでこんなところに!?」

 

真っ先に驚いた反応を示したのはユニだった。確かにこの状況は異常だった。

通常、モンスターは国の中に入ってきたとしても小型のモンスターで、プラネテューヌ以外は確実に処理される。

それなのに、目の前の状況はどうだ?現に大型の危険種が二体も国内にいるという緊急事態だった。

 

「考えるのは後だ・・・!俺がどうにかするから、お前らは行ってくれ!」

 

ただし、例え危険種が目の前にいようとも、俺たちの目的はロムとラムを助けることに変わりない。

俺だけ残れば他の全員でロムとラムを助けに行けるし、俺は時間をかければこの二体を倒すことができる。

不安な点を上げれば、俺が時間を掛け過ぎてしまい、『黒き獣』になる可能性だ。『イデア機関』がわからない以上、押さえつけることは期待できない。

セリカの近くにいても右上半身が平気な以上、大丈夫だとは思うが・・・。

一度考えることをやめて、俺は腰に下げてある剣を右手に取った。

 

「そんな・・・!一人でなんて無茶ですよっ!」

 

「無茶でもやるしかねえ・・・!最悪は時間稼ぎに徹するから、早く行くんだ!」

 

「ううん、そうは行かないよ!万が一ラグナに何かがあった時のために私も残るっ!

みんなは予定通りでお願いっ!ベール・・・悪いけどネプギアを頼んだよ!」

 

ネプギアからの声を振り切るが、今度はネプテューヌに俺の無茶を咎められた。

なんだかんだいって、皆俺のことが心配みたいだ。

 

「・・・分かりました。時間もありません。皆さん、行きましょう!」

 

「ええ・・・そうしましょう。ユニ、行くわよ!」

 

「うんっ!」

 

「お姉ちゃん、ラグナさん・・・気をつけて!」

 

ネプテューヌの意を理解した皆はすぐに行動を始める。皆が建物の中に入っていき、足音が消えていった。

 

「悪いな・・・。わざわざ俺の為に残ってくれて・・・」

 

「気にしないでいいよ・・・今までのお礼みたいなものだから」

 

「だが・・・ネプギアを任せてちまって良かったのか?お前の妹だろ?」

 

正直なところ、ネプテューヌが残ってくれたのは嬉しい。これなら俺が変に気を使う必要が減るからだ。

それはそうとして、ネプギアをベールに託してしまって良かったのかが気がかりだったので、俺は訊いてみた。

 

「・・・大丈夫。ベールならネプギアを悪いようにはしないよ。

それに・・・ラグナが戻って来なかったらみんなが悲しむし、私は一人で行かせたことを後悔すると思う・・・」

 

「お前・・・」

 

ネプテューヌの口から紡がれる言葉に、俺は返す言葉を無くす。その言葉には強い意志が現れていた。

 

「ラグナ、これだけは覚えておいて・・・。本来いた世界で、ラグナがみんなからなんて言われようとも・・・。

ゲイムギョウ界(ここ)でラグナと出会ったみんながいるから、ラグナは一人じゃない・・・。

ノワールにいつでも話し相手になるって言ったように、私たちだってそうだよ。だらか・・・何か辛いことがあるなら、いつでも話してみて。聞いてあげるくらいなら、私にもできるから・・・」

 

「・・・ありがとう。ネプテューヌ・・・」

 

ネプテューヌの表情はどこか慈愛に満ちたものになっていた。それを見て、ネプテューヌの話を聞いて、俺は感謝しかなかった。

本当はこんな当たり前に近い言葉だけなのが申し訳なくなるが、今は何か言わないと気が済まなかった。

とは言え、今はそんな風にお話をしている場合じゃないので、俺たちはフェンリルの方に向き直る。

俺たちの逃げ道を防ぐためにいるのか、さっきから変に動いたりせず。その場で待機をしていた。

 

「さて・・・色々と話したいことは残ってるけど、先ずは目の前のこいつらをどうにかしなきゃね!」

 

「ああ・・・さっさと終わらせちまおう・・・!」

 

俺たちは短く会話を済ませると、ネプテューヌは変身を始め、俺は剣を左手に持ち替え、右腕を自分の腕の高さまで持ってくる。

 

「第666拘束機関開放・・・次元干渉虚数方陣展開・・・!」

 

ネプテューヌの身体は光に包まれ、『蒼炎の書』のロックを外した俺の右腕からは蒼い螺旋が出始める。

ただし、いつもと違う点として、足元から黒い炎のようなものが僅かに出ていた。

それは、忘れていた『黒き獣』の魔の手が迫っているかのようだった。心なしか、妙に右腕が重く感じる。

 

「俺は・・・俺は『黒き獣(バケモン)』になったりはしねえ・・・!約束は果たすし、『あいつ』を置いていく事もしねえッ!」

 

俺は自身が人でない何かになる可能性を全力で振り払うように吼える。すると、足元から出ていた黒い炎のようなものは治まった。

 

「『蒼炎の書(ブレイブルー)』・・・起動!」

 

「変身完了よ・・・!」

 

そして、目の前に方陣が現れることで、俺は『蒼炎の書』の起動を終える。それとほぼ同じタイミングで、ネプテューヌも変身を終えていた。

 

「行きましょう、ラグナ!」

 

「ああ・・・!さっさと終わりにしてやるッ!」

 

俺たちはそれぞれの武器を構えて一泊置いて、同時に二体のフェンリルに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでですわ!」

 

「・・・ん?また幼女かぁ・・・?」

 

ロムとラムがいる部屋を勢い良く開け放ちながらベールは声を張り上げる。

ネプギアはロムとラムを連れて帰るために、部屋の外で待っていた。

トリックは自分好みの存在が来たかと期待したてそっちを見やった。

 

「お姉ちゃん・・・!」

 

「・・・ベールお姉ちゃん・・・っ!」

 

ロムとラムにとって、助けが来たことは非常に嬉しいことであり、思わず姉呼びをした。

 

「その子達を開放なさい・・・私が身代わりになりますわ!」

 

「・・・・・・は?」

 

ベールの考えた案として、優れていると誇っている自身の体を使って身代りになり、二人を助けることだった。

だが、この案は、今回の相手には致命的な問題点があった。その証拠としてか、トリックはベールの言葉が意味わからんと言いたげな声を発した。

 

「俺、紳士だし。守備範囲幼女だけだし。デカい胸とか興味ないし・・・」

 

「な・・・大きな胸の何がいけないと言うんですの!?」

 

そう。トリックの好みの体格と、ベールの体格は真逆にあった。

通常の相手であれば効いたかも知れないが、案の定トリックには逆効果となってしまい、更には自分の体格を否定されたベールが思わず訊き返すことになってしまった。

 

「垂れる未来しか見えない」

 

「・・・・・・っ!」

 

トリックは完全否定をベールに告げる。トリックの言葉はベールの琴線に振れており、カチンときたベールが体を震わせる。

 

「あなた・・・私を怒らせてしまったようですわね・・・!」

 

ベールは怒りに満ちた顔で変身を始める。光が消えると、ベールの姿は緑色の髪を一つに纏め、白いレオタードを身につけた女性・・・グリーンハートに変身を完了していた。

 

「何・・・!?貴様、女神だったのか!?」

 

「グリーンハート、変身完了・・・」

 

目の前の光景を見て、トリックは驚きを隠せなかった。目の前にいたのが女神だったというのは、流石に想定できなかったようだ。

 

「ぬぅ・・・女神が相手なら逃げるが勝ちだな!というわけで頼むぞ『仕込み』よ!」

 

「・・・!?これは・・・!?」

 

トリックの言葉に呼応するかのように、ベールの背後に突如小型のモンスターが20体ほど現れた。

それも非常に近い距離に現れており、ベールがすぐにトリックの元へ行こうとすればモンスターはベールに攻撃を加えられる準備が整っていた。

 

「よし・・・それじゃあ、俺は早速・・・」

 

逃げよう。そう決めたトリックが身を翻そうとした時、モンスターの内、二体が何者かに切り裂かれ、光となって霧散した。

それを見たトリックは思わず足を止めてしまう。

 

「ベールさん!ここは私に任せて下さいっ!」

 

モンスターを切り裂いた正体は、さっきまで部屋の外で待機していたネプギアだった。異変を感じて真っ先に駆け付けたのである。

ネプギアは強気な言葉を言いながら、右手に持っていたビームソードを右から水平に振り、モンスターを斬りつける。斬りつけられたモンスターは光となって霧散する。

 

「ネプギアちゃん!?大丈夫なのですか!?」

 

「はい・・・!これくらいならなんてことありませんっ!」

 

ベールはネプギアを気遣うが、ネプギアは一体のモンスターが突き出してきた爪をビームソードで受け止めながら強気に出て、言い切ると同時にモンスターを押し返した。

 

「それに・・・私も大事なもののためにできることをしたいんです・・・!」

 

ネプギアの表情は強い意思で満ち溢れていた。ラグナの戦いの方針を見て、ネプギアも自分なりに前に進もうとしていたのだ。

 

「・・・分かりました。なら、そちらは任せましたわ!」

 

「はい・・・!」

 

ネプギアの意志を汲み取ったベールはネプギアにモンスターの群れの相手を託し、トリックに向き直る。

 

「行きます・・・!」

 

ベールは一瞬溜めてから、一気にトリックへと肉薄する。

 

「はぁっ!」

 

十分に近づいたところで、右手に持っている槍をトリックの顔へ向けて突き出す。

その一撃はトリックに届く寸前で見えない障壁に当たり、それを割るに留まった。

 

「・・・?」

 

ベールは一瞬、自分の攻撃の仕方が悪かったのかと考えるが、すぐにその考えをやめ、反撃を受けないように距離を取った。

 

「はっ!たあぁっ!」

 

ネプギアはビームソードを左から水平に振り、モンスターの一体を斬り伏せる。

斬られたモンスターが光となって霧散するが、それには目をくれず、後ろから迫ってきていたモンスターに反応し、振り向きざまにビームソードを上から縦に振り下ろして、爪を付きつけようとしていたモンスターを斬る。

モンスターは光となって霧散した。僅かに肩で息をしている最中、ネプギアは確かな手ごたえを感じていた。

 

「(本当はロムちゃんとラムちゃんのところに行きたいけど・・・今は私にできることをして、二人を助けるためにバトンを繋ぐんだ・・・!)」

 

ネプギアは自分に言い聞かせるように心で呟き、ビームソードを構え直す。

今の自分でトリックに勝てる保証はない・・・。それは確かに悔しい事ではあるが、今は確実に勝てるであろうベールがトリックの相手をしてくれていて、ベールを邪魔しようとしていたモンスターは自分が相手することでベールがトリックに集中できる。幸いにもこの程度の数であれば対応はできる。

変身はまだできない・・・。だがそれでも、自分にできることはある。それがネプギアの活力になっていた。

 

「(ロムちゃん、ラムちゃん・・・絶対助けるから待っててね!)」

 

ネプギアは意を決して再びモンスターの群れへと向かっていった。

 

「俺にその程度の攻撃は効かんっ!」

 

「・・・どうかしら?」

 

トリックは自信満々に言うが、ベールは不敵な笑みを見せてから、もう一度トリックに急接近する。

 

「狂瀾怒涛の一撃・・・受けてみなさいっ!レイニーナトラピュラッ!」

 

一撃でダメならばと、ベールは高速で何度も槍で突きを入れていく。

トリックの盾となる見えない障壁が張り直される速度を上回る速度で突きを入れていくため、トリックは徐々にダメージを蓄積させていく。

 

「あぁ・・・!?」

 

目の前で起きている事態にトリックは混乱する。鉄壁を誇っていた自身の守りは、今対峙している女神があっさりと破っているからだ。

 

「もらいましたわっ!」

 

「いやぁ~ッ!」

 

そして、何度目かの障壁が割れたところを逃さなかったベールによる渾身の突きがトリックの腹に当たる。

その威力に耐えられなかったトリックは、情けない声を上げながら吹っ飛ばされていった。

 

「楽勝でしたわね・・・さて、ネプギアちゃんは・・・」

 

「せぇいっ!」

 

ネプギアのことが気になったベールがそちらを見やると、ネプギアはビームソードを右から斜めに振り上げ、最後の一体を切り裂いた。

そのモンスターが光となって霧散したことで、周囲にモンスターはいなくなった。

 

「ベールさん、こっちは終わりましたよ」

 

「ご苦労様。私も丁度終わったところですわ」

 

ネプギアとベールはお互いの状況を伝える。トリックは追い払い、『仕込み』と言っていたモンスターも倒したので、自分たちにできることは・・・

 

「後はロムちゃんとラムちゃんを・・・アレ?」

 

ネプギアの言う通り、ロムとラムを助けることができることなのだが、ここでネプギアは今置かれている状況にハッとした。

 

「・・・どうかしましたの?」

 

「ベールさん・・・ロムちゃんとラムちゃんがここにいないです・・・!」

 

「まぁ・・・!」

 

ネプギアに言われて、ベールはハッとした。トリックに自分の誇りを全否定された怒りのあまりに、本来の目的を忘れてしまったのである。

トリックが吹っ飛んだことでできた壁の大きな穴を見て、ベールは「私としたことが・・・」とその場で顔に手を当て、頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

二体のフェンリルと戦っていて少し時間が経った所、俺とネプテューヌは勝負に出ることにした。

右側にいるフェンリルが右前脚の爪を右から水平に振ってきたので、俺は上に飛んで避けながら、剣を普通の持ち方に替え、牙突に近い構えを取る。

 

「ベリアルエッジッ!」

 

そのまま剣に黒い炎のようなものを纏わせながらフェンリル目掛けて突っこんでいく。

その一撃は俺の動きを追って顔を上に向けていたフェンリルの無防備になっていた胴に当たり、フェンリルが絶叫する。

俺の一撃を受けて怒り狂った方のフェンリルは俺以外が視界に入らなくなり、怒りのままに自身の持つ鋭い牙で俺を噛み砕こうとする。

 

「悪ぃなァッ!」

 

「これで決めるわッ!」

 

俺はフェンリルの動きを見るや、持っていた剣を全力で上から振り下ろす。

その攻撃がフェンリルの鼻先に当たり、そのまま剣でフェンリルを地面に叩きつける形になった。フェンリルは自分が叩きつけられたことに困惑した。

一方、ネプテューヌは左腕を天高くへと掲げる。すると、俺と対峙していない、もう一体のフェンリルの頭上に巨大な剣が現れた。それは俺の持っている片刃の剣とは違い、両刃で騎士の剣を思わせる形をしていた。

 

「32式、エクスブレイドッ!」

 

「容赦しねぇぞッ!シードオブタルタロスッ!」

 

ネプテューヌが左腕を前へ振り下ろすと、その巨大な剣はまっすぐにフェンリルへと向かって行き、奴の背中から思いっきり突き刺さった。

その一撃であっさりと致命傷に陥ったフェンリルの一体が光となって爆発を起こす。

周囲が大丈夫かと不安になるが、エンシェントドラゴンの時と同じで、周囲には何も爆発の被害は無かった。あくまで普通のモンスターと消え方が少し違うのだろう。

その一方で、俺は体を右に一回転させながら剣を鎌に変形させ、赤いエネルギー状の刃を発生させる。この時、いつもより出力を上げている。

そして、一回転しきるところで、俺は鎌になった剣を左から水平に思いっきり振るう。

この時、フェンリルには鎌に発生していたエネルギー状の刃と、そこから出てきた、血のような色をした、複数の三日月状の刃に胴を切り裂かれる。

この一撃が決定打となり、フェンリルは絶叫を上げながら光となって爆発を起こした。

 

「・・・終わったか・・・」

 

俺は剣を元に戻し、地面に剣を突き立てながら一息着いた。

どうやら『黒き獣』になるほど侵食は進まなかったらしい。ちゃんと帰れること、セリカに預けたコートを受け取りに行けること。それからこうして人の姿を保てたことに俺は安堵していた。

 

「ラグナ、大丈夫?」

 

「ああ・・・どうにかな」

 

ネプテューヌの問いに俺は脱力気味に返答する。正直なところ、『黒き獣』にならず戻って来れただけでも上出来だと思ってる。

皆は上手くやってるだろうか?そんな考えが出た矢先に俺は体がふらつき、ネプテューヌに支えられる。

 

「だ・・・大丈夫!?まさか・・・『黒き獣』に・・・」

 

「いや、それは平気だ・・・多分、ちょっと疲れただけだ」

 

ネプテューヌの危惧を俺は否定する。思えば、十分に休息できたりする場所に長居した影響なのかもしれない。

だが、今更復讐の旅のような生活に戻るつもりもない。今の生活は気に入ってるし、何よりも皆と過ごせるのが楽しかった。

 

「悪い・・・ブランが大丈夫か見てくるわ・・・。無理はしねえから」

 

「待って。それなら私も行くわ・・・。さっきみたいなことがあったら一人だとどうしようも無いでしょ?」

 

ロムとラムを助けられたかが不安で、ブランの方を見に行くためにネプテューヌの支えを終えてもらって移動しようとしたが、今度はネプテューヌに提案を受けた。

 

「・・・分かった。悪いけど頼むわ」

 

「気にしないで。それなら早いところ行きましょう」

 

自分の身勝手に近い行動なので、俺は一瞬躊躇ったが、自分の体の事も考えてその提案を受け入れることにした。

そして、俺とネプテューヌはブランのいる方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「やっべ・・・女神が来るとか、身代金どころじゃねえ・・・!」

 

ベールが変身したタイミングで、部屋に入る寸前で女神が来ていたことで、このままではすぐにやられると感じたガラの悪い女性はすぐに脱出を始めた。

 

「あぁ・・・!?」

 

しかし、脱出する道の先には、変身を済ませているノワールとユニが待ち構えていた。

つまりは、回り込まれていたのである。ノワールたちがこれを可能にしたのは、『お寺ビュー』で周囲の状況を把握済みだったからだ。

 

「お姉ちゃん、こいつも一味よっ!」

 

「オッケー・・・随分と舐めた真似してくれるじゃない・・・」

 

ユニはびしっと言わんばかりの勢いで目の前にいる女性を指さす。ノワールはそれを聞いてにじり寄っていく。

 

「い、いや・・・。舐めてたのトリック様だけだし・・・今回の誘拐も利害の一致とは言え、オバサン(・・・・)にそそのかされただけだし・・・」

 

「ふーん・・・いかにも下っ端(・・・)が言いそうなセリフね」

 

ガラの悪い女性・・・もとい、下っ端は必死に言い訳をするが、ノワールは煽り混じりに一蹴する。

 

「そ、そうなんす・・・。自分、ただの下っ端なんです・・・」

 

もしも一般人であれば食ってかかったが、この下っ端・・・一応はリンダと言う名はあるが、ここは下っ端と記させて頂く。

女神が相手では流石に勝ち目がない。更には『仕込み』の残量は無いからモンスターによる時間稼ぎもできないので、下っ端はひきつった笑みをどうにか維持しながら答える。

 

「じゃあ、自分はこれで・・・」

 

「ええ・・・次はもうしないように・・・。って、帰すわけないでしょッ!レイシーズダンスッ!」

 

下っ端はそう言ってダメもとでもそそくさと逃げようとしたが、ノワールがノリツッコミをしながらすぐに追いつく。

ノワールはそこからオーバーヘッドキック、回し蹴りを二回、最後に体を右に一回転させながら剣を左から水平に振るう。

 

「やっぱダメか~ッ!」

 

その猛攻を受けた下っ端はあっさりと吹っ飛ばされて行った。彼女の逃げようとした行動は、無情にも打ち砕かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

ベールに吹き飛ばされた先・・・幸か不幸か、事前に用意していた抜け道の出口の近くにトリックはいた。

 

「幼女だけは命に代えても守るッ!それが紳士の正義(ジャスティス)ッ!・・・アレ?幼女はいずこ・・・?」

 

その頑丈さが幸いしてトリックにケガは少なく、ロムとラムを守ろうとしてもさほどケガは大きくならなかった。

そうして自信満々に豪語するが、それぞれの手に抱えていたロムとラムがいないため、トリックは慌てて二人を探し出す。

そして、フェンスを登って逃げようとする二人を見つけた。

 

「あの活きの良さ・・・全く幼女は最高だぜ!」

 

トリックは逃げようとする二人の姿を見て、両手の指を高速で動かしてながら興奮を露わにする発言をする。

我慢ができなくなったトリックは再び長い舌を伸ばし、ロムとラムを捕まえようとするが、それは何者かが投げたハンマーによって遮られ、ハンマーの重みによって舌を地面とハンマーに挟まれてしまう。

 

「・・・いてててて・・・」

 

トリックが痛がっていると、大小二つの白い影が迫ってきていた。

その内小の影を見て、ロムとラムは喜びの顔を見せる。

 

「私の大切な妹に何してくれてんだ・・・この変態野郎・・・!」

 

「変態・・・?それは誉め言葉だッ!」

 

小の影・・・ブランは怒りを露わにしてトリックを罵倒する。自分の妹たちに行った行為が許せない故に当然である。

しかし、トリックにはあまり効果の無い言葉だったらしく、トリックは寧ろ喜んだ。

 

「そうかよ・・・。なら、褒め殺しにしてやるぜ・・・!」

 

ブランは怒気の籠った声で宣言してから、自身の身体を光に包む。

そして、光が消えると水色の髪に、白いレオタードを身につけた少女。ホワイトハートへと変身を完了させる。

 

「ぬぅ・・・!女神が何人も集まっているとは・・・!仕方ない!最後の『仕込み』だぁッ!」

 

そう言って、トリックはどこからともなく取り出したディスクを天高くに掲げる。

すると、ディスクが激しく光り、光が消えると、トリックの右隣にエンシェントドラゴンが一体現れていた。

これは緊急時の最後の保険であり、これ以上はもう残りが無かった。

 

「エンシェントドラゴン・・・!?面倒になるな・・・」

 

「・・・ブランよ。向こうの竜は私に任せて貰おうか」

 

突如として現れた厄介な存在にブランは歯嚙みするが、そこに先程まで沈黙を保っていた大の影・・・ハクメンが提案を出した。

 

「・・・いいのか?」

 

「任せろと言った・・・。御前はその間に妹を苦しめた元凶を叩くがいい・・・」

 

ブランの問いに、ハクメンは自身の背に掛けている野太刀・・・『斬魔・鳴神』を鞘から抜き放ちながら答える。

 

「・・・ああ。ならそうさせてもらうぜ・・・」

 

ブランは素直に感謝の言葉を述べながら前を見る。エンシェントドラゴンは視界に入れないようにし、トリックを倒すことを決めた。

 

「・・・んん?何だお前は?俺の紳士的な正義(ジャスティス)を邪魔しに来たのか?」

 

「・・・貴様のような輩が正義を語るなど・・・見苦しいにも程があるぞ・・・」

 

トリックの言葉を聞いたハクメンは怒気が混ざりながら吐き捨てる。ハクメンにとって、トリックは幼き少女二人を苦しめた紛れもない『悪』だったからだ。

 

「あのお侍さん・・・お姉ちゃんの知り合いかな?」

 

「お侍さん・・・名前はなんて言うの・・・?」

 

「名前か・・・良いだろう。その胸に刻むがいい・・・」

 

ロムとラムに訊かれたハクメンは、『斬魔・鳴神』を右手に持って、腰の高さまで持ってくる。左手は添えるようにしている。

 

「我は『空』・・・」

 

ずしんと、ハクメンを中心に大地が小さく揺れる。それに気づいたブランはハクメンの方を思わず見やった。

 

「我は『鋼』・・・」

 

再びハクメンを中心に大地が揺れる。先ほどよりも少し揺れが大きかった。

 

「我は『刃』!」

 

再三に渡り、ハクメンを中心に大地が揺れた。更に大きい揺れだった。

その揺れを感じ取ったブランは頼もしい味方が来てくれたと思わず笑みをこぼし、トリックとエンシェントドラゴンは焦り出す。

 

「我は一振りの剣にて、全ての『罪』を刈り取り・・・」

 

ハクメンを中心に揺れる間隔が急激に短くなっていき、地震かと錯覚する速度で大地が揺れている。

その様子を、ロムとラムは呆然と、エンシェントドラゴンとトリックは動揺しながら見ていた。ブランは自分もすぐに動けるように、体制を整えた。

 

「『悪』を滅する!」

 

揺れが止み、ハクメンの後頭部から伸びている髪が、一瞬だけ扇状に広がる。

 

「我が名は『ハクメン』・・・推して参るッ!」

 

そして、ハクメンは『斬魔・鳴神』を自身の右側に腰を引きながら構え、一気にエンシェントドラゴンへと肉薄する。

ブランもそれについていく形でトリックへと向かって行く。

 

「紅蓮!」

 

ハクメンはエンシェントドラゴンに近づきながら、『斬魔・鳴神』の柄を勢い良くぶつける。

それによってエンシェントドラゴンは思わず後ろに一歩後退してしまう。

 

「斬鉄!」

 

ハクメンはその隙を逃さず、『斬魔・鳴神』を上から縦に振り下ろし、右から水平に低く振るうの二連撃を行う。

一撃目はエンシェントドラゴンの腹部、二撃目はエンシェントドラゴンの足首辺りを斬り、エンシェントドラゴンは絶叫を上げる。

エンシェントドラゴンは怒りのままに炎を吐き出した。ハクメンはそれを見るや、『斬魔・鳴神』を左から水平に振るい、炎を切った。

すると、ハクメンの目の前には、「封」と言う字が書かれている方陣が現れており、それが炎の行く手を阻んでいた。

これはハクメンの持つ『斬魔・鳴神』は刻を殺す能力が備わっており、それによって炎の刻を殺し、その先にいけないようにしていたのだ。

 

「それで終わりか?」

 

ハクメンが挑発してみると、エンシェントドラゴンは怒り狂ってハクメンの元に近づいていった。

一方、ブランはトリックが迎撃として出してくる舌をかいくぐっていた。

 

「この超絶変態ッ!」

 

そして、ついにトリックに近づき切ったブランは斧を上から縦に振り下ろす。

その一撃はトリックの障壁を破って、トリックの頭に届く。

 

「激甚変態ッ!」

 

ブランは更にもう一度斧を上から縦に振り下ろす。同じ位置に当たり、トリックは思わずよろめく。

 

「テンツェリントロンペッ!」

 

そして、ブランは最後のダメ出しに、斧をハンマースイングの如く回転しながら振り回し、最後に斧を上から縦に勢い良く振り下ろす。

 

「幼女バンザ~イッ!」

 

その攻撃に耐えられなくなったトリックは、最後まで己の欲望に素直な断末魔を上げて夜空の向こうに消えていった。

 

「虚空陣奥義・・・」

 

エンシェントドラゴンが自分を目掛けて右腕で殴りかかって来るのを読んでいたハクメンは、『斬魔・鳴神』を寝かせるようにして、両腕を前に突き出す。

すると、ハクメンの目の前には紅い方陣が現れていた。そんなもの知るかと言わんばかりにエンシェントドラゴンは殴るが、それは方陣を前にして止まる。

エンシェントドラゴンが困惑しているところで、ハクメンは動き出した。

 

「『悪滅』!」

 

ハクメンは一瞬の溜めの後、エンシェントドラゴンの腹部に『斬魔・鳴神』を突き立てる。

暫しの制止が続くが、その間にエンシェントドラゴンは筆で強く一書きされていくように連続で斬られている感覚に陥る。

否、ハクメンの一突きは、その後の連撃も仕込まれていたもので、それが今筆で強く一書きするようにエンシェントドラゴンを切り裂いていた。

そして、ハクメンが『斬魔・鳴神』を引き抜いて後ろを向くと、エンシェントドラゴンは絶叫を上げながら光となって大爆発を起こした。

爆発が止んだのが解ったハクメンはもう終わりだと言わんばかりに『斬魔・鳴神』を鞘に収め、ブランもそれを見て変身を解いた。

 

「ロム・・・ラム・・・ごめんなさい。こんなに怖い思いをさせて・・・傍にいてあげられなくて・・・」

 

戦いの様子を呆然と見ていた二人の方を見て、ブランは謝罪する。その言葉を聞いて、二人はようやく自分たちが助かったと理解する。

 

「姉失格ね・・・」

 

―ラグナと約束したのに情けない・・・。口には出さなかったが、その罪悪感からブランは顔をそらした。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「・・・?」

 

ロムの呼ぶ声を聞いて、ブランはすぐに振り向いた。ロムとラムの両手には、同じ柄のコインが握られていた。

 

「お土産・・・♪」

 

「デッテリュー♪」

 

「二人とも・・・ありがとう。それとお帰り・・・」

 

ロムとラムはあの状況下に置かれて置きながらも、ブランのためにとデッテリュー模様のコインを大切に持っていたのだ。

―こんな自分のために、なんていい妹を持ったのだろうと思ったブランは嬉しくなり、二人を優しく抱きしめた。

その様子を見たハクメンは静かに去ろうとした。

 

「あっ、待ってハクメンさん!」

 

ラムの声を聞き、ハクメンは一度足を止めてそっちを振り向いた。

 

「その・・・お姉ちゃんと一緒に来てくれてありがとうっ!」

 

「ありがとう・・・♪」

 

ラムが笑顔でお礼を言うと、ロムも笑顔でお礼を言った。

 

「・・・礼には及ばん・・・。家族を大切にするといい・・・」

 

ハクメンはそれだけ告げて、その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・良かった・・・助けられたみてえだな・・・」

 

「ええ・・・本当に良かった・・・」

 

ブランの様子を見に来たが、俺たちが来る頃には既に二人を抱きしめるブランの姿があった。

 

「どうにか・・・俺の二の舞は防げたか・・・」

 

俺は結局ほとんど何もできなかったが、それでも二人が無事なだけでも儲けものだった。

これでブランは俺のような道を歩まないで済む・・・俺と同じ苦しみを味わう必要がなくなったと、俺は安堵した。

 

「不安になって此処まで来ていたか・・・『黒き者』よ・・・」

 

「・・・お面野郎か・・・。悪いな・・・わざわざ付き合ってもらってよ」

 

「ブランにも言ったが、礼には及ばん・・・」

 

こっちに来ていた俺は礼を言うが、お面野郎は相変わらずな口調で答えた。

 

「『黒き者』よ・・・決着の件だが、今から三度日が登った刻、貴様の元に行く・・・それまでは預けるぞ」

 

お面野郎は用件だけを一方的に告げて去っていった。

 

「『三度日が登った刻』・・・大体二日と半分ね・・・。ラグナ、大丈夫なの?」

 

「ああ・・・少なくとも今すぐ戦うよりは全然いい・・・」

 

「・・・ラグナ?」

 

後二日ある・・・。それだけでも準備する時間があるのは有り難い。

そう思った俺は気を許したのか、そのまま眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、ルウィーにいた女性職員はルウィーのはずれで変装を解いた。

その正体はマジェコンヌだった。

 

「危ねえ危ねえ・・・危うく『ハクメン』ちゃんにぶっ殺される所だったぜ・・・」

 

「そんなに危険な奴なのか・・・?その『ハクメン』というのは」

 

「ああ・・・とんでもなくヤバいやつだよ・・・」

 

マジェコンヌが持ち歩いていたアンチクリスタルからテルミは率直な感想を述べた。

マジェコンヌの質問にも簡単に答えるが、今はあまり考えたく無かった。まともに戦えない今の状態では間違いなくマジェコンヌの計画に支障が出てしまうからだ。

 

「んで?後なん個いるんだ?それ?」

 

「後二つだ・・・」

 

マジェコンヌの右手には新たなアンチクリスタルが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺はあの後セリカからコートを受け取っていつもの格好に戻った。

お面野郎との決闘まで後二日。やれることは残さずやっておきたい。

ちなみに、俺のことを聞いた教祖たちは急遽ルウィーの教会に集まった。もちろん俺の扱いについてだ。

そして、話した結果、ルウィーはロムとラムを助けてくれた恩義もあって、普段通りに接する。ラステイションは監視付きであれば普段通りでも構わない。リーンボックスもラステイションと同じで監視付きなら普段通りでいい。

そして、プラネテューヌは今までの善行、各国への貢献を踏まえていつも通りにすると言う意見が出た。

また、各国の女神は全員いつも通りに接する。監視がいるなら自分たちでやるとまで言い出した。

その結果、いつも通り6、監視付き2で、俺はいつも通りで構わないが、何かあったときは、すぐに対応するとの結果になった。

 

「あんまり酷くなんなくて良かったね・・・」

 

「ああ・・・これもお前らのおかげだ・・・本当にありがとう」

 

俺は素直に頭を下げた。正直なところ、もっと酷くなるんじゃないかと思ってたので、かなり良い結果になってよかった。

 

「いいのよ・・・私たち仲間なんだから、助け合わないとね」

 

「お礼を言わなきゃいけないのは私の方よ・・・ロムとラムを助けてくれて・・・あの時、私に喝してくれて・・・本当にありがとう」

 

「お前ら・・・」

 

ノワールからはフォローが、ブランからはお礼が来た。俺はそれが嬉しかった。

一人でいることを別に悪いとは思ったりしない俺だが、やっぱり皆とこうしていた時間もあって、一人だと寂しいだろうと感じるようになった。

 

「さて、私たちはこれでいいとしても、後はハクメンさんですわね・・・」

 

「ああ・・・何としても生き残んねえとな・・・」

 

正直なところ、お面野郎は強い。『エンブリオ』の中じゃない以上、あいつの弱体化は望めないのが更に拍車をかけている。

 

「ねえラグナ、ハクメンさんと戦わなくてもいいんじゃないの?暗黒大戦の時は顔を合わせなかったとは言っても、一応手を取り合ったじゃない」

 

「その気持ちは分かる・・・。だけど、あいつは引かないだろうから・・・やるしかねえな・・・」

 

セリカとしては、一緒に戦った人が敵対することはないって言いたいのが良く分かる。その言い分も分かるが、お面野郎にとって俺は『盟友・ブラッドエッジ』ではなく、『滅すべき悪の黒き者』だから今回はどうしようもない。

それでも俺は諦めるわけには行かねえ・・・。昨日夢の中にいたあの女の子を見つけてやんないといけないし、『ネプギア』を置いていくわけにも行かねえからな・・・。

今現在、ネプギアはいつも通りで、俺のことは『ラグナさん』と呼んでいる。サヤのようになるきっかけは何なのかはまだわからないので、こっちもイストワールに頼むべきだろうか?俺は少し考え込む。

 

「見て・・・お姉ちゃん・・・♪」

 

そこへ、ロムが本を持って来て自分の描いた絵を見せる。それはブランの笑顔を描いたものだった。

 

「よく描けてる・・・。・・・!」

 

ブランは最初こそ笑顔で褒めたが、その本の表紙を注視してハッとし、慌てて席を立ち上がってそっちへ行く。

その向かう先には『特急便』と書かれているダンボールが大量にあった。

 

「ラム・・・!落書き止めて!」

 

「こんなに同じ本一杯あるんだし、いいでしょー?」

 

ブランはラムに一言言うが、ラムは別に良いだろうと落書きを続ける。ちなみに、ユニとネプギアはダンボールに背を預けてその本を読んでいた。

そういや、なんでか知らねえがダンボール見た時から『ダンボールは温かい』だの、『ダンボールは困った時に役に立つ』だの囁かれてる感じがするのは気のせいか?

 

「だ、ダメッ!」

 

「どうして?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

ラムがいつもと変わらない調子で訊くが、ブランは段々と顔を赤くしていく。

 

「・・・私が徹夜で書いた小説だからだッ!」

 

『・・・えっ?』

 

ブランが声を荒げながら言った言葉を聞いた俺たちは思わず聞き返した。

 

「ええっと・・・じゃあ、あの時倒れたのはシェアの低下じゃなくて・・・」

 

「寝不足なの・・・?」

 

「・・・うん。安心したのもあったけど、やっぱりそっちのほうが大きくて・・・」

 

ネプテューヌ、ノワールの順に聞かれ、ブランは力なく頷いた。

俺は思わずブランに拳骨をかましていた。

 

「・・・痛ッ!」

 

「テメェ、馬鹿かッ!

趣味に走るのはいいけど、妹のことを疎かにしていい訳ねぇだろッ!」

 

「ご・・・ごめんなさい・・・」

 

俺が怒鳴ると、ブランは涙目になって謝る。

 

「(・・・まあ、素直に謝る分、ネプテューヌよりはマシか・・・)」

 

これを実際に言うと、ネプテューヌが後で色々と言ってくるので、俺は心の中で呟いた。

 

「ところでユニ・・・その小説ってどんな話なの?」

 

「空から降ってきた少女と、生まれつき特殊能力を持った主人公が世界を救うお話・・・」

 

「ほうほう・・・『蒼い右腕』と書いて、『ブレイブルー』と読む・・・!」

 

ノワールに訊かれたユニが内容を簡単に答え、気になったネプテューヌがその本を手にとって文章の一部を音読した。

・・・ん?ちょっと待て・・・『ブレイブルー』ってさ・・・。

 

「ええっと・・・ブラン?」

 

「やめて・・・聞かないで・・・!」

 

「ああ・・・やっぱりそういうことでしたのね」

 

「凄い・・・!主人公が新しい力に目覚めた!」

 

俺が聞こうとしたら、ブランは顔を赤くしながら耳を塞いだ。

それをみたベールはお察ししたかのような笑みを見せた。また、夢中になって読んでいたネプギアは思わず感想を声に出した。

 

「お前ら・・・読むなぁぁッ!」

 

そして、恥ずかしさが限界に達したブランの絶叫がルウィーの教会に響くのだった。




アニメ2話分終了と、ハクメンのテンプレ発言が完了しました。

今回、ネプテューヌ側のキャラ(今回の話では特にブラン)の活躍を食わないように戦闘シーンを考えていたらこんなに長くなってしまいました。
「文長すぎる。分けて」という方ございましたら、一言言ってくだされば以後気をつけたいと思います。

また、最後のシーンにあるブランの同人誌ですが、アニメ版そのままの場合、「『蒼い右腕』と書いて、『ブレイブルー』と読む」の部分は「『邪気眼』と書いて、『デスティニー』と読む」になっています。

次回からは2、3話程使ってラグナとハクメンの決着を書く予定です。
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