超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回でラグナとハクメンの戦いが終わります。

追記

通算UAが10,000突破。お気に入り登録が140を超えました。この場で感謝の言葉を述べさせていただきます。これから頑張って行こうと思います。


18話 足掻き続ける意志

「『黒き者』よ・・・貴様・・・!何故(なぜ)だッ!?」

 

俺に正体を見抜かれたのに動揺しているのか、怒りを見せているのか。その声音はハクメン(お面野郎)とは思えないくらいに荒げていた。

あいつに向かって『ジン』って呼んだ後も、声の出し方とかを聞くとやっぱりジンで合ってたと再認識できる。カグラの場合、平時はいくらか遊びある声音になるのに対して、ジンは遊び等がほとんど無いからだ。

 

「・・・俺が確信を持ったのは、お前が雪風を使った時だ・・・。

あの時の動きは・・・『スサノオユニット』を使ったジンが、『刻殺しの刀(ヒヒイロカネ)』で俺ごとテルミを斬る時と全く持って同じだったからだ・・・。

・・・もしかしたらカグラかもしれねえって考えはあったが・・・ツバキ=ヤヨイを気にかけて、普段から真面目で秩序を大切にするってんなら・・・ジンしかいねえからな」

 

「・・・・・・」

 

俺の答えを聞いて、『お面野郎(ジン=キサラギ)』は体が固まった。

どうやらそこまでハッキリと見抜かれるとは思ってもみなかったらしい。

 

「さて・・・答えんのはもうこの辺でいいだろ・・・。そろそろ第二ラウンドの時間だぜ・・・」

 

俺は剣を握り直し、『お面野郎』を見据える。

ったく・・・。別の事象のジン(あいつ)お面野郎(こんな姿)になってまで『黒き獣(俺とニュー)』を斃して、更に俺を斃そうとしてたのか・・・。

こういうところだけは変に頑固な奴だぜ・・・全く・・・。俺は思わず口元が緩んだ。

 

「オラ、どうした?俺をぶっ殺すんじゃねえのかよ?そのためにわざわざ『スサノオユニット(それ)』を使ってまで戦うのを選んだんだろ?

・・・それとも何か?俺を目の前に躊躇いでも生じたか?『月が落ちる』だの言って泣くか?そんなんだからいつまでも『泣き虫小僧』なんだよテメェは・・・」

 

「ッ・・・!『黒き者』よ・・・!貴様ァァ・・・ッ!」

 

俺が試しに煽って見ると、『お面野郎』は怒りが限界に達し、姿勢を低くして姿を消す。つまりは鬼蹴(きしゅう)だ。

冷静さを欠いたやつの動きは信じられないくらい単調になるか、それとも滅茶苦茶故に読みづらくなるのどちらかだが、技をまともに使えなくなるお面野郎に限って後者はあり得ない。

だからこそ、前者でくると読んだ俺は剣に黒い炎のようなものを纏わせ、左足を強く踏み込んだ。

 

「・・・ゼアッ!」

 

「甘いぜッ!」

 

『お面野郎』は姿を現すと同時に『斬魔・鳴神』を上から下に振り下ろす。間違いなく普通の奴だったら対応できない速度だ。

ただし、俺の読み通り『お面野郎』らしく無い、相当に単調な動きだったので、既に返しの準備は終わっていたのでそれをするだけだった。

俺は体を左へ捻るようにジャンプしながら、黒い炎のようなものを纏わせた剣を右下から振り上げた。やったことはインフェルノディバイダーだ。

 

「何ッ!?」

 

インフェルノディバイダーは『お面野郎』が振っていた『斬魔・鳴神』を弾き、お面野郎ごと上に打ち上げる。

その状況にお面野郎は面食らったような声を上げる。俺はそれを気に止めないようにして、自分の体が回りきるより前に剣をしまい、そこから術式と同じ要領で空中制御をしてお面野郎の顎先を左手で殴る。

 

「吹っ飛べっ!」

 

「グ・・・ッ!」

 

俺は今回、踵落としはせず、右腕によるストレートを『お面野郎』にかましてやった。

流石にお面野郎の反応は早く、左腕を使ってガードをしていた。ただそれでも、空中にいる以上咄嗟に術式の要領で力を入れることは無理だったみたいで、お面野郎はそのまま奥の方へと落ちていく。

俺は無理に追うことはせず、そのまま地面に着地することを選んだ。俺が着地する頃にはお面野郎も体制を立て直し切っていた。

 

「(前よりもずっと動きやすい感じがする・・・マジで何があった?)」

 

俺は急激に良くなった体の動きに疑問を持つ。もし足掻く意思を取り戻したことによる褒美であるならありがたく使わせてもらおう。

・・・俺は諦めねえ。絶対に生きて戻って・・・『あいつ』を見つけ出してやる・・・!決意を固めた俺は剣を引き抜き、再び体を右側に引く。

 

「行くぞおッ!」

 

「良いだろう・・・来い、『黒き者』よ!」

 

俺たちは同時に距離を詰めるべく走り出す。

片方だけだったらそれなりに時間のかかる距離だが、二人共走ってるから距離はすぐに詰まっていく。

 

「うぉりゃあッ!」

 

「ズェアッ!」

 

俺は剣を右から斜めに振り下ろす。それに対して『お面野郎』は『斬魔・鳴神』を左から水平に振ることで受け流す。

そこからすかさず、『お面野郎』は『斬魔・鳴神』を上段に構え直す。それは斬鉄の構えだった。

 

「貰ったぞ・・・!」

 

『お面野郎』は勢い良く『斬魔・鳴神』を振り下ろす。

対する俺は、流された時の勢いを利用して体を左に一度回し、少しだけ距離を取るように体制を立て直す。距離は二歩程度だが、それだけあれば十分だ。

 

「上等だぁ・・・」

 

そして、剣を持ったままだが右腕に黒い炎のようなものを纏わせ、左に一回転するようにジャンプしながら『斬魔・鳴神』を受け流すように右腕で殴りつける。

 

クソガキ(・・・・)がぁッ!」

 

「何・・・!ぐおぉ・・・ッ!」

 

『お面野郎』の二撃目は本来、俺の足元を狙うものだったために修正が効かず、いつも通りの振りになる。

そのおかげで足が地面から離れていた俺には当たらず、その代わりに黒い炎のようなものを纏わせた俺の左足による蹴り上げが『お面野郎』の胴に当たる。

左足の蹴りを食らった『お面野郎』は宙に浮く。そして、『お面野郎』の蹴り付けられた所から紅い球が三つ程出てきて、それが俺の右手の甲に吸収された。

俺は一度着地を済ませてすぐに『お面野郎』の頭上にくるようにジャンプする。

 

「落ちろッ!」

 

「うおぉ・・・!」

 

そして、そこから黒い炎のようなものを纏わせた剣を、左手に普通の持ち方に持ち替えながら振りかぶって一気に振り下ろす。

対する『お面野郎』は咄嗟に体制を立て直し、『斬魔・鳴神』で受け止めるが、俺は構わずに術式の要領で急降下していく。当然のことだが、空中で『鳴神』に剣を押し付けられてる以上お面野郎を逃がすことはなく、地に足がついたと同時に俺は剣を振り抜く。

『お面野郎』の背を地面にぶつけることはできなかったが、それでも『お面野郎』から攻勢をもぎ取ることには成功していた。

 

「貰ったァッ!」

 

「当たらぬぞ・・・!」

 

俺は黒い炎のようなものを纏わせた剣を、右手で逆手に持ち替えながら上から下に振り下ろす。

それを『お面野郎』は後ろへ飛びのいて避けることを選択した。その結果、攻撃は外れて距離が開いたため、俺たちはもう一度距離を詰める。

 

「・・・どうだ!」

 

「・・・チィッ!」

 

この時、俺は剣を振ろうとしたが、『お面野郎』が左手で俺の腹辺りに掌底打ちをしようとしているのが見えた。

 

「食らうかよっ!」

 

「・・・!」

 

反応が間に合った俺は剣を振ることから、咄嗟に左足による回し蹴りに変えた。

『お面野郎』は掌底をしようとしてた左腕でそのまま防ぐことで攻撃をやり過ごす。

 

「マジかよ・・・!?」

 

「油断はいかんぞ・・・」

 

「うおぉ・・・ッ!」

 

俺が回し蹴りから姿勢を戻すと、『お面野郎』は既に右足でミドルキックをし始めていた。

俺は両腕で防ぐが、『スサノオユニット』による蹴りの威力はバカになんねえのもあって、俺は足を引きずるように数歩分後ろに下がる。

 

「・・・やるな・・・『黒き者』よ・・・」

 

「・・・全盛期じゃなくてもやっぱり(つえ)え・・・向こうで全盛期のテメェと戦わなくて良かったわ・・・」

 

暗黒大戦時代に行った時に一瞬だけ見た・・・全盛期のお面野郎は本当にヤバかった。

もし隠れていなかったら瞬殺される未来しかなく、運よく生き残っても瀕死だったはずだ。今と全盛期の二つを知ってるからこそ、敵対してる俺は今の方で良かったと安堵していた。

暗黒大戦時代(あのとき)の俺であった場合は何のために力を使うかが決まりきってない故に、『お面野郎』にあっさり殺されてもおかしくはない。

そもそも今の状態だとしても、全盛期のお面野郎に勝てる気はしない。

だが今は違う。『お面野郎』は全盛期じゃないし、何のために力を使うかが決まっている。

そうであれば後は抗う・・・。絶望を目の前に足掻き続けてそれを払いのけるだけだった。

 

「だが、此の戦いもここまでだ・・・。『黒き者』よ。この(えにし)に幕を引くとしよう」

 

「ああ・・・いい加減これで終わりにしようぜ・・・お面野郎ッ!」

 

俺たちはお互いに数歩ずつ前に出る。それによってお互いの武器が届く距離まで近づいた。今はお面野郎相手に生き残る・・・!

そして、お面野郎は体を右に向けて『斬魔・鳴神』を頭上に掲げる。対する俺は剣を下側に構えた。

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「あっ!二人共気がついたっ!・・・よかったぁ・・・急に倒れるから何かあったかと思ったよ・・・」

 

ラグナが『蒼炎の書(ブレイブルー)』を起動してからしばらくして二人は目を覚ました。

それに気がついたセリカの声を聞いて、アイエフとコンパがそちらを振り向いた。

 

「二人とも大丈夫ですか?どこか痛むところとかは無いですか?」

 

「何か欲しいものとかはある?あるならすぐに取りに行くけど」

 

「えっと・・・私は大丈夫です。心配かけてすみません」

 

「私も今はいいかな・・・それよりも、ラグナはどうなってるの?」

 

振り向くやすぐにアイエフとコンパは二人を気遣う。

二人の回答は遠慮だった。それと同時にネプギアは謝罪をし、ネプテューヌはラグナのことを訊く。

 

「あの様子なら・・・そろそろ決着になるわね」

 

アイエフが答えながらラグナたちの方を見やるのにつられるように、四人もそちらを見やる。

 

「我が宿命に従い・・・貴様を滅する!」

 

「ブラックオンスロートッ!」

 

ハクメンの『斬魔・鳴神』には今まで以上の気が乗っていて、その影響で蒼い風が刃に集まっていた。

それを真っ直ぐに振り下ろすハクメンに対し、ラグナは『蒼炎の書』で自らの身体を瞬間強化した状態で剣を振り上げた。

二つの攻撃が衝突した瞬間、お互いの武器の軌道が僅かに横側へそれ、ハクメンの『斬魔・鳴神』の刃から走った風はラグナの左側を通り過ぎていった。

いよいよこの戦いに決着が付く。それを肌で感じたこの場にいる全員は硬い表情で見守る。

 

「(兄さま・・・私、信じてる。兄さまがもう一度、私を見つけてくれることを・・・)」

 

ただ一人、少女だけは違い、自分の胸の辺りに両手を当て、ラグナがもう一度自分に会いに来ることを信じて目を閉じ、穏やかな顔で祈った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ブラックザガムッ!」

 

「虚空陣奥義・夢幻(むげん)!」

 

俺は剣を持ち替えながら鎌に変形させ、刃の根元辺りから鎌状の刃を作る。

この時手の甲から蒼い螺旋が出ているが、この螺旋は前回よりも大きくなっていて、更には足元からも蒼い螺旋が発生していた。

対するお面野郎はあの前口上と同じ構えをして、体から溢れ出る気を発した。それと同時に、奴の髪が一瞬扇状に広がる。

これによって、お面野郎の攻撃はしばらくの間、普通の攻撃にも気を乗せられて、本来の気を使う攻撃には気をすぐに乗せられるようになる。更には気の乗る量が増える状態となった。

 

「俺は諦めねえッ!」

 

「消えよ悪夢よッ!」

 

俺は以前と同じように鎌になった剣を右から斜めに振り下ろし、右から斜めに振り上げと最初の二撃を行う。

対するお面野郎は気を乗せて『斬魔・鳴神』を右から水平に、上から下に振り下ろしと二撃を行う。

互いの攻撃がぶつかり合うと、非常に重々しくて大きな音が鳴り、周囲の空気を震えさせる。

 

「絶対に生きて帰るッ!」

 

「終わりにする・・・!」

 

俺は鎌を上から下に振り下ろし、右から斜めに振り下ろしの二撃を行い、お面野郎は『斬魔・鳴神』を下から上に振り上げ、左から水平にと二撃する。

再び同じように攻撃がぶつかった瞬間に重々しく大きな音が鳴り、空気が震える。

 

「『あいつ』を見つける為にもッ!」

 

「我が宿命をッ!」

 

―絶対に諦めねえ・・・!最後まで足掻き続けてやるッ!

更に俺は鎌を右から斜めに振り上げ、上から下に振り下ろしの順で振るう。一方でお面野郎はいつもより威力のある斬鉄を放った。

この時、斬鉄の二撃目は修正を効かせていて、普段通り足元に振るってはおらず、鎌の攻撃を逸らす為に俺の頭近くを狙っていた。

今回も例外なく重々しく大きな音が鳴り、空気が震える。今回だけの相違点としては、俺たちの足元に軽く亀裂が走ったことだ。

 

「ナイトメアレイジ・・・ッ!」

 

「来るか・・・『黒き者』よ・・・!」

 

俺は右腕を引きながら剣を元に戻し、『ソウルイーター』で力を削ごうとしてみる。

お面野郎は紅い方陣を展開した左腕を前に出してタイミングを図りながら、剣を引いたときに使う『ソウルイーター』の力で生命力を吸われないように防御する。

 

「デストラクションッ!」

 

「これで終いにする・・・」

 

お面野郎は『斬魔・鳴神』を寝かせるようにして、両腕を前に突き出す。

それと同時に大型の紅い方陣が目の前に出され、俺の剣による攻撃は方陣に阻まれた。

それは、ブラックオンスロートが結果として無力化されたことを物語っていた。

 

「虚空陣奥義・・・」

 

「・・・まだ終わりじゃねえぞ・・・」

 

お面野郎が動き出す前に、俺は剣を素早く持ち替えながら上から下に振り下ろす。

お面野郎の展開していた方陣をもう一度叩く形になったが、これでも技を知らなきゃ絶対にできなかった。

本来ならば止められたことに困惑しているうちに悪滅を受けて終わっていたからだ。

 

「何・・・!?」

 

「・・・喰われろッ!」

 

咄嗟に動けたことが功を奏し、今度はお面野郎の動きが固まる。

ここまで来れば、後は奴の展開している方陣を打ち破るだけだった。

俺は体を左に一回転させながら剣を右から斜めに振り上げ、普段より巨大な鋏状の刃を飛ばす。

その一撃がお面野郎が展開していた方陣の耐久を削りきり、お面野郎の方陣はバラバラになって崩れ落ちた。

 

「方陣が・・・!?」

 

「貰ったぜッ!」

 

お面野郎は方陣が崩壊したことによって、反動で体制を崩す。

俺はその隙を逃さず、インフェルノディバイダーをお面野郎の胴体に叩き込む。

 

「ぐおぉ・・・ッ!」

 

それによってお面野郎の体は宙へと浮かび上がる。俺は自分の体が正面に向くより早く剣をしまう。

 

「お面野郎・・・これで・・・!」

 

「・・・ッ!」

 

俺は左手でアッパー。右足で踵落としの順で素早く二撃を行う。今回の踵落としに『ソウルイーター』の効果は付けてないため、紅い球は出てこない。

ただそれでも、反応が遅れたお面野郎は二撃ともまともにくらい、踵落としによって地面に急降下していく。

俺は踵落としの後、素早く剣を普通の持ち方で引き抜き、それを両手で持って頭上で振りかぶる。

地面に落ちていくお面野郎は咄嗟の判断で受け身を取って、どうにか頭からの直撃をやり過ごしていた。

しかし、お面野郎はまだ俺の方に目が来ていない。その隙を逃さず、俺は勝負に出るべく急降下する。

 

「俺の勝ちだァッ!」

 

「しまった・・・!うおおおぉぉ・・・ッ!」

 

俺はその急降下している勢いを重ね、お面野郎に向けて剣を上から下に全力で振り下ろす。

気がついたお面野郎は咄嗟に『斬魔・鳴神』で防ぐが、剣の威力に耐えきれず、そのまま一気に吹っ飛ばされていく。

そして、お面野郎は結構な距離を吹っ飛んでから、地面に背を滑らせるもひっくり返り、最終的に前のめりになる形で倒れ込んだ。

俺はそれを見てからお面野郎の方へと歩み寄っていき、起き上がっている途中のお面野郎の眼前に剣を突きつける。

 

「・・・見事だ。『黒き者』よ・・・此度の戦いは貴様の勝ちだ・・・」

 

「・・・・・・」

 

お面野郎は片膝をついた状態で俺に敗北を宣言してきた。俺は何も答えず、そこから少しの間沈黙が走る。

 

「どうした?止めを刺さぬのか・・・?『黒き者』よ、情けは要らぬぞ」

 

「情けも何も・・・俺は『蒼炎の書(この力)』を殺すためには使わねえ。そう決めてるんだ・・・。それに・・・」

 

お面野郎の問いかけに答えながら剣を突きつけるのをやめて、剣をしまいながらみんながいる方を見る。

 

「向こうにいるあいつらはこれ以上・・・俺たちが戦うことを望んでねえ」

 

「・・・・・・」

 

俺の見る方には、お面野郎がいなくなると思ってか、今にも泣き出しそうなロムとラム。俺の言葉を聞いて安心するネプテューヌとセリカ。

死者が出ないことと俺が『黒き獣』にならなかったことが分かって脱力する皆。そして、俺が帰ってきたことに安堵して涙を流すネプギアがいた。

それを見たお面野郎は言葉を失った。

 

「お前ら。もう終わったぞ」

 

『・・・・・・っ!』

 

俺が答えると、ロムとラム。セリカとネプギアがはじかれるようにその場から移動を始めた。

それを見た皆が遅れて移動を始める。後数分せずこっちに来るだろう。

 

「俺とお前が向こうで敵対してたとしても・・・こっちではそんなこと関係ねえ。

俺たちは共にロムとラムをあの時助けるために戦った・・・それだけでも十分なんだよ・・・。特にブランとロムとラム(あの三人)はな・・・」

 

「・・・そうだったか・・・」

 

俺たちはお互いを見据え直す。それに合わせてお面野郎も立ち上がる。

お面野郎は自分が助けた二人を・・・その二人を助けたことによって心を救われた一人を思い出した。

俺が次は何を言おうか迷っていると、いくつかの足音が聞こえたので俺たちはそっちを振り向いた。

そこには皆より一足先早くこっちに来ていたロムとラム。ネプギアとセリカがいた。まだ幼いのもあってか、ロムとラムが幾分か遅れていた。

 

「兄さまぁ・・・っ!」

 

『ネプギア』は俺の胸に飛び込むように抱きついた。俺はそれを優しく抱きしめてやる。

 

「良かった・・・兄さまが帰ってきてくれて・・・良かったよぉ・・・っ」

 

「・・・悪い。心配かけたな・・・。大丈夫。これからもちゃんと帰ってくる。約束だ」

 

「っ・・・兄さま・・・!」

 

俺は『ネプギア』の前で確かに約束をした。どういうことか解んねえが、俺は約束をするとそれを結果的に果たしてるみたいだ。

それがセリカとの約束であれ。ナインとの約束であれ。変わることは無かった。俺のその宣言を聞いた『ネプギア』は俺の胸ですすり泣く。

 

「ラグナが戻ってきて良かった・・・。えっと・・・もうハクメンさんとは戦わないよね・・・?」

 

「ああ・・・もうそんなことはない・・・済まねえなセリカ。心配掛けちまって」

 

「ううん・・・大丈夫。二人がちゃんと帰ってきたから・・・私はそれで十分」

 

セリカにとって、俺とお面野郎はお互いに『黒き獣』から世界を護った存在であり、セリカが大切だと思う人たちだ。

だからこそ、セリカは俺たちがお互いに生きて戦いを終えたことに安堵した。

 

「・・・ハクメンさぁーん・・・っ!」

 

「・・・ハクメンさん・・・っ!」

 

お面野郎の方にはロムとラムが左右からお面野郎に抱きついていた。

二人が小柄だったことと、『スサノオユニット』がかなり重いことが幸いし、お面野郎がボロボロであっても倒れ込むことは無かった。

 

「嫌だよぉ・・・っ!もう戦わないで・・・っ!どっちかしかいられないなんて嫌だぁ・・・っ!」

 

「うん・・・っ!私も嫌だ・・・っ!」

 

「・・・御前たち・・・。私は失念していたようだな・・・。

此の戦いは終わった・・・。私と『黒き者』が死合うことはもう無い」

 

お面野郎は二人の頭を撫でながら俺と戦わないことを誓った。

それを聞いて安心した二人は大粒の涙を流して大泣きする。お面野郎は二人の頭を撫でてやる。

 

「ところでラグナ。あの腕輪・・・いつネプギアちゃんに預けてたの?」

 

「こっちに来る前に、「取りに行くから持っててくれ」って頼んだんだ・・・。なんか、そうでもやらないと帰ってこれない気がしてな・・・」

 

セリカの質問に、俺は自嘲気味に答える。

俺は多分、これから何が起きるか解んねえのに、やり残したことがあると不安になるタイプなんだろうな。

 

「でも・・・例えどんなことがあってもラグナは約束を守る・・・。そうでしょ?」

 

「・・・違いねえな。なんでか知らねえけど、いつの間にか約束を守ってる」

 

多分、セリカ(シスター)に「約束を守らないと女の子に嫌われる」っていうのが効いてるんだろうな。

そのおかげで約束をちゃんと守れるなら、それでいい・・・。それだけはハッキリとそう思えた。

 

「ああ、そうだ・・・。ネプギア、もしよかったらもう少し預かっていてくれないか?」

 

「・・・えっ?ら・・・ラグナさん、大丈夫なんですか!?こんな大事なものを預けっぱなしにして・・・」

 

俺が提案すると案の定ネプギアが慌てながら俺に訊いてきた。ちなみにセリカも目を丸くしていた。

 

「ああ・・・大丈夫。その代わりこれからもちゃんと帰ってくる・・・それでいいか?」

 

「・・・わかりました。でも、その代わりちゃんと帰って来てくださいね?」

 

「ああ・・・約束するよ」

 

「なら・・・ラグナさんを信じて、もう少し預かってますね」

 

俺の提示した条件を聞いてネプギアが訊き返して来たので、俺はそれを肯定した。

すると、ネプギアは笑顔で受け入れてくれた。俺のわがままだってのに、信じるって言ってくれたことは正直に嬉しかった。

 

「お疲れ様。大変だったわね・・・」

 

「ああ・・・。これでどうにかひと段落だ・・・。全く、もうお面野郎とやるのはこりごりだぜ・・・」

 

いつの間にかこっちに来ていたアイエフに労いの言葉をもらい、俺はそれに一言返しながら正直な気持ちを吐露する。どうやら、全員がこっちに降りてきたみてえだ。

こっちの世界に来てまでお面野郎と戦うのはもう勘弁だ・・・。皆に迷惑掛けちまうし、俺たちの事情をこっちまで持ってくんのはどうかと思うしな・・・。

もしテルミとかが来たりしたら止めなきゃいけない。俺が打ったとはいえど、死んだはずのセリカがこっちにいるんだから、いつ来たっておかしくはねえ。

 

「『黒き者』よ・・・其の者は『道化』か?」

 

「・・・『道化』?誰それ?」

 

「ああ・・・前に言ってたお前と声が似てるやつのことだよ・・・。

お面野郎。こいつはアイエフっつって、レイチェルじゃねえよ」

 

「そうか・・・。どうやら、私は勘違いをしていたようだな・・・」

 

お面野郎の言葉にアイエフはもちろん反応した。俺が否定すると、お面野郎は自分の間違いを認めた。

一応、セリカも皆で飯を食ってる時にアイエフをレイチェルだと一瞬間違えたので、今後もこうなる確率は高いだろうな。

 

「・・・ラグナ。もしかしてだけど・・・私もかしら?」

 

「その可能性は否定できねえ・・・むしろ肯定しかない」

 

「・・・!?」

 

ノワールの問いにはマジで肯定しかできなかった。

お面野郎はツバキ=ヤヨイを大分気にかけていたからな。あいつと同じ声をしているノワールに反応しないはずがない。

現にお面野郎は今、ノワールの声を聞いてすぐにそっちを振り向いて硬直している。まあ・・・そうなるよな。俺が『お面野郎(ジン)』なら絶対そうなる。

 

「御前は・・・ツバキ=ヤヨイ・・・なのか・・・?」

 

「いいえ。私はノワール・・・。残念だけど、ツバキ=ヤヨイじゃないわ。

というか・・・そんなにその人と私は似てるの?」

 

お面野郎の途切れ途切れで発する言葉を、ノワールは罪悪感を抱きながら否定する。

ただ、流石に否定するだけにはいかないと思ったノワールはお面野郎に質問をしてみた。

 

「・・・御前の声が・・・彼女と同じだった・・・。故に私は誤解をした」

 

「そうだったのね・・・。なら仕方ないか・・・」

 

お面野郎の言葉が沈み気味だった。恐らくは苦い思い出があったのだろう。

それを察したノワールは深いことを訊こうとはせず、ここで切り上げることにした。

 

「ところでだけど、ラグナ・・・。さっき、ハクメンさんのこと・・・『ジン』って呼んだよね?それって・・・」

 

「ハクメンさん・・・もしかして違う名前なの・・・?」

 

「・・・違うの?」

 

「・・・・・・」

 

セリカの問いを聞いて、皆は『お面野郎』の方を見る。

特にロムとラムは不安そうに訊く。それを見てお面野郎は即座に言葉を詰まらせ、答えることができなかった。

 

「待て待て・・・ここで急かしてもしょうがねえだろ・・・。

それは『お面野郎(そいつ)』が決めることだ。俺たちがとやかく言うことじゃない・・・」

 

その空気に耐えかねた俺は一度空気を変えるべく言葉を発する。

お面野郎は今、『ハクメン』として己の道を貫き続けるか、『ジン=キサラギ』として一度立ち止まるか選べる機会を、俺のあの一言で結果的に得られていた。

だが・・・あいつはこんなことで止まりはしないだろう・・・何となくだが、そう感じた。

 

「私はあの時から、『ジン=キサラギ』の名はとうに捨てている・・・。それを今更拾い直そうとする心算は無い」

 

『お面野郎』の回答はとっくのとうに出ていた。お面野郎はその回答を告げていく。

 

「我が名は『ハクメン』・・・一振りの剣にて、全ての『罪』を刈り取り、『悪』を滅する者なり・・・」

 

『お面野郎』の回答は『ハクメン』として戦い続ける道だった。

恐らくは『ジン=キサラギ』から『ハクメン』へなる時に選んだ道なんだろう・・・。そうであれば、俺たちが変えることはできない。

 

「・・・とは謂うものの、『悪』の一つが『正義の代行者』へと変わったが故に、滅する必要が無くなった者が早くも現れたが・・・」

 

お面野郎はそう言いながら俺を見る。皆はそれにつられるように俺を見た。

 

「・・・俺か?」

 

「その通りだ。『黒き者』・・・いや、『蒼の男(・・・)』、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』よ」

 

「『蒼の男』か・・・そういやナインも最後はそんな風に俺を呼んでたな・・・」

 

『・・・・・・『蒼の男』?『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』?』

 

ここで、俺へのお面野郎の呼び方が遂に変わった。

その呼ばれ方で、ナインをはじめとする何人かが俺をそう呼んでいることを思い出した。案の定、皆が混乱しているので、後ほど話すとしよう。

 

「ああ・・・それはまた後で話す・・・。

何でもいいけど・・・『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』って呼び方、やっぱり長すぎねえか?こっちの世界じゃ俺は『死神』じゃねえしな・・・なんか別の呼び方はあるか?」

 

「そうだな・・・。ならば、私も『ラグナ』と呼ばせてもらおう。御前のことだ・・・堅苦しい呼び名は苦手であろう?」

 

なるほど・・・それなら納得だ。

確かに、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』だなんていうあんな長ったらしい呼ばれ方するよりは、その方がいいな。

 

「ああ・・・それで構わねえ。なら、俺も『お面野郎』だなんてめんどい呼び方やめて、普通に『ハクメン』って呼ばせてもらうわ」

 

「そうか・・・ならば、これからは共に志を同じく歩む身だ・・・よろしく頼むぞ。『ラグナ』よ・・・」

 

「おう。こっちこそよろしく頼むぜ、『ハクメン』」

 

俺とお面野郎改めてハクメンは互いに右手で握手を交わした。これは永き戦いの終わりと共に、新しい道の始まりを告げていた。

俺たちの行動を見て、それが分かった皆は穏やかな表情で、俺たちのことを暖かく迎え入れてくれた。

 

「じゃあ・・・二人の戦いも終わったし・・・ハクメンの歓迎会と行きますか」

 

ネプテューヌの言葉に皆は頷いた。やっぱりというか何というか・・・。みんな集まって何かするのが好きなのかもしれない。

・・・アレ?そういやハクメンって飲食できなくねえか?まあ、話すだけでもいいとは思うが・・・こいつらのことだから飯とか大量に用意するんだろうな・・・。

 

「・・・良いのか?仮にも私はラグナと敵対していた身だぞ?」

 

「大丈夫大丈夫。前までのいざこざなんて、食べて飲んで・・・みんなと話せば万事解決だよっ!」

 

(いや)・・・私は飲食出来ぬ身であってだな・・・」

 

ハクメンの問いにネプテューヌはいつもの明るい笑顔を見せながら答える。

「飲んで食べて」の下りを聞いてハクメンは自身のことを説明すべく言葉を発するが・・・。

 

「ハクメンさん行こうよっ!みんなハクメンさんのために用意してくれるからっ!」

 

「・・・行こ♪」

 

「・・・分かった。ならば私も行くとしよう」

 

ロムとラムがハクメンを引っ張りながら誘うもんだから、ハクメンは説明を諦めて頷くしかなかった。

 

「ハクメン・・・貴方、すっかり妹たちに懐かれたわね・・・」

 

「私はただ『悪』を滅しただけなのだがな・・・」

 

ブランが微笑んで話しかけた内容に、ハクメンは呆れ半分で返した。

ハクメン自身、自分の使命に従って行動しただけだから、何とも言えない気分になるのは無理もないよな・・・。

ロムとラムに引っ張られ、流れに任せてついていくハクメンを見て、俺は新しい時間がまた始まったなと感じた。

 

「ラグナ・・・」

 

「ん?どうした?」

 

俺はネプテューヌに声をかけられてそっちを見る。そこには左からネプギア、ネプテューヌ、セリカの順番で三人が並んでいた。

三人の方を振り返ったのを見るや、ネプテューヌが二人の顔を見合わせる。

 

『お帰りなさい。ラグナ(お帰りなさい。ラグナさん)』

 

「ああ・・・ただいま。皆・・・」

 

俺も俺で、生きた心地のしなかった時間がようやく終わり、いつも通りの時間に帰ってこれたのだった。




というわけで、ラグナとハクメンの決着がつきました。

またしても改造動画を参考にした動きが大量に発生しました・・・(汗)。

ハクメンからラグナを呼ぶときは、六英雄の手助けをした『ブラッドエッジ』でも良かったかもしれませんが、『ブラッドエッジ』呼びだと混乱する恐れがあったのでこうさせていただきました。

次回はラグナとハクメンによる一対一の会話が入るかと思います。
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